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9月 05 2023 日本人NAFLD患者のCVDリスクはBMI23未満/以上で有意差なし
瘦せている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の心血管疾患(CVD)リスクは、痩せていないNAFLD患者と同程度に高いことが明らかになった。武蔵野赤十字病院の玉城信治氏、黒崎雅之氏、泉並木氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に6月17日掲載された。
NAFLDはメタボリックシンドローム(MetS)の肝臓における表現型と位置付けられており、世界人口の25%が該当するとされる主要な健康問題の一つ。NAFLD患者の多くは肥満だが、一部の患者は痩せているにもかかわらずNAFLDを発症する。欧米ではBMI25未満、アジアでは23未満のNAFLDが「痩せ型NAFLD」と定義されている。肥満併発NAFLDはCVDリスクが高いことは知られているが、痩せ型NAFLDもCVDハイリスクなのか否かは、これまでのところ十分明らかになっていない。黒崎氏らは同院の健診データを用いて、この点に関する後方視的研究を行った。
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痩せ型/非痩せ型NAFLDのベースラインデータを比較すると、年齢は有意差がなく(58±12対59±11歳)、性別は後者に男性が多いという有意差が見られた〔50.2対60.8%(P=0.02)〕。BMIは21.5±1.1対26.2±2.8(P<0.01)であり、そのほかに高血圧、糖尿病の有病率、AST、ALT、GGT、中性脂肪は非痩せ型の方が高く、HDL-Cは痩せ型の方が高いという有意差があった。喫煙者率、脂質異常症有病率、LDL-C、血小板数、アルブミンには有意差がなかった。なお、高血圧や糖尿病、脂質異常症患者は、比較的良好に管理されていた(血圧は中央値128/81mmHg、HbA1cは同6.8%、LDL-Cは同143mg/dL)。
3年間のCVD(虚血性心疾患、心不全、脳血管疾患、末梢動脈疾患)発症率は、痩せ型群2.3%、非痩せ型群3.9%で、有意差がなかった(P=0.3)。
次に、年齢、性別(男性)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、痩せ型/非痩せ型NAFLDを説明変数、CVD発症を目的変数とする単変量解析を施行。すると、年齢、高血圧、糖尿病と、CVD発症との有意な関連が認められた。続いて行った多変量解析の結果、CVD発症と独立した関連のある因子として、年齢のみが抽出された〔10歳ごとのオッズ比が2.0(95%信頼区間1.3~3.4)〕。
著者らは、単一施設での後方視的解析でありサンプル数が少なく、追跡期間も十分とは言えないことなどを本研究の限界点として挙げた上で、「われわれの研究結果は、痩せ型NAFLDでも非痩せ型NAFLDと同等のCVDリスクを有していると見なし、予防介入すべきであることを示している」と結論付けている。
また、CVDリスクに差がないことの背景としては、「非痩せ型NAFLDでは高血圧や糖尿病が多かったが、血圧、血糖値、およびLDL-Cが良好にコントロールされていたことが、CVDリスク低下に寄与していた可能性がある」との考察が述べられている。なお、本研究で示された痩せ型NAFLDの割合が37.7%という値は、国内の既報研究より高い。その理由として、「3年以上連続して健診を受けた対象での検討結果であり、既報研究に多い患者または一般集団での横断研究とは異なるためではないか」としている。
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4月 23 2020 体重と生活習慣の変化が非アルコール性脂肪肝の発症や改善に影響
生活習慣の改善または悪化と、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症または寛解が有意に関連することがわかった。禁煙や体重の増加でNAFLDの発症が増え、減量および男性では運動を始めることで寛解が増えるという。名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科の吉岡直輝氏、石上雅敏氏らの縦断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」1月16日オンライン版に掲載された。
NAFLDはいわゆる「脂肪肝」のうち、アルコール摂取はない、あるいは障害を起こすほどの量ではない人の肝臓に脂肪が蓄積する病気で、メタボリックシンドロームの影響が肝臓に現れている状態と考えられている。進行すると非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症し、肝がんのリスクが高まる。国内では近年ウイルス性肝炎が減っているのに対し、NAFLDやNASHの増加が問題になっている。
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追跡期間(4.6±2.8年)中に、ベースライン時はNAFLDでなかった人の11.1%がNAFLDを発症し(年率2.4%/年)、NAFLDだった人の26.2%に寛解が見られた(同5.7%/年)。
NAFLD発症と関連する因子として多変量解析により、男性(調整オッズ比2.07)、追跡期間(同1.11)、脂質異常症(同2.39)とともに、喫煙者の禁煙(同2.86)が抽出された。
NAFLD寛解と関連する因子は、追跡期間(同1.12)と減量(同2.83)だった。性別に解析した場合は男性において、運動を開始すること(同2.38)も寛解と有意に関連していた。
次に、体重の変化量との関連を見ると、追跡期間中の体重増加量が大きいほどNAFLD発症が増え、体重減少量が大きいほど寛解が増えるという有意な関連が認められた。ベースライン時にNAFLDであった人の中で、年率1%/年以上の体重減少を維持できた人の約40%にNAFLDの寛解が見られた。なお、追跡期間中に禁煙した人は、非喫煙者や新たに喫煙を開始した人に比べ、体重が1%/年以上増加した割合が有意に高かった。
就寝前に食事を取ることはNAFLDと関連の深い生活習慣として知られ、今回の検討でも前述のように、ベースライン時ではNAFLD群で夕食を就寝前2時間以内に食べる人が有意に多かった。ただし、追跡期間中にこの生活習慣が変化した場合でも、その変化はNAFLD発症や寛解と独立し関連する因子ではなかった。
これらを踏まえ研究グループでは、「体重の変化はNAFLDの発症・寛解の双方と相関している。禁煙は、恐らく体重増加を介してNAFLD発症を増やすと考えられる。一方、運動の開始は男性においてはNAFLD寛解と有意に関連している」と結論をまとめている。
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12月 19 2019 少量飲酒の影響は脂肪肝の有無で異なる
少量の飲酒は体に良いと言われるが、脂肪肝の有無でその影響が異なる可能性を示す研究結果が「Biomedical Reports」11月号に掲載された。男性において脂肪肝がある人では少量の飲酒に良い面がある一方で、脂肪肝のない人では高血圧のリスクが高くなるかもしれないという。
市立福知山市民病院消化器内科の原祐氏らは、定期健康診断の受診者データを基に、少量の飲酒習慣の影響を脂肪肝の有無別に検討した。対象者は2017年1年間の男性の健診受診者2,096人から、酒類を1日にアルコール換算で20g以上摂取している人や肝炎患者などを除いた1,190人。このうち505人(42.4%)が非飲酒者、685人(57.6%)が少量飲酒者で、腹部超音波検査により561人(47.1%)が脂肪肝と判定された。
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次に、脂肪肝の有無別に非飲酒者と少量飲酒者を比較検討。すると、脂肪肝のない群では飲酒習慣の違いによる年齢やBMIに有意差はないものの、高血圧の有病率は、非飲酒者26.6%、少量飲酒者が35.3%で、少量飲酒者の方が有意に高かった。
一方、脂肪肝のある群では、脂質異常症、MetS、IGTの有病率は少量飲酒者の方が低く、群間に有意差があった。CKDの有病率も有意でないが少量飲酒者の方が低かった。年齢やBMIに関しては飲酒習慣の違いによる有意差はなかった。
年齢、定期的な運動習慣、喫煙、使用中の薬剤で調整しオッズ比(OR)を見ると、脂肪肝のない群において少量飲酒者の高血圧のORは1.73(95%信頼区間1.04~2.88)だった。脂肪肝のある群の少量飲酒者においては、脂質異常症0.64(0.44~0.95)、MetS0.63(0.44~0.92)、IGT0.57(0.37~0.88)、CKD0.58(0.36~0.94)だった。
これらの結果を踏まえ原氏らは、「脂肪肝の有無により少量飲酒の影響が異なることが示された。脂肪肝のない人では少量飲酒で高血圧のリスクが上昇し、脂肪肝のある人ではMets関連因子の有病率を低下させる可能性がある」と結んでいる。なお、脂肪肝のある群で少量飲酒がMets関連因子に好影響を及ぼす機序については、「脂肪肝はMetsの肝臓における表現型であり、実際に本検討でもMets有病率は脂肪肝のある群で高かった」という事実に着目し、有病率が高いために少量飲酒によって生ずるアディポネクチンレベルの上昇などの良い面が、脂肪肝のない群よりある群でより明確に表れた可能性があるとしている。
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