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2月 23 2022 女性はタンパク質摂取量と肺炎による死亡率に有意な関連――JPHC研究
国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)から、総摂取エネルギー量に占めるタンパク質の割合が高いほど、肺炎による死亡リスクが低いことが明らかになった。ただし、これは女性に特徴的な現象で、男性ではこの関係は認められなかったという。研究の詳細は、「The American Journal of Clinical Nutrition」に12月16日掲載された。
JPHC研究からはこれまでに、植物性タンパク質の摂取比率の高さが全死亡や循環器疾患死のリスク低下に関係することが報告されている。ただし、日本人高齢者の主な死因である肺炎については、死亡リスクとタンパク質摂取量との関連が未だ明確になっていない。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。今回発表された研究の対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、東京都葛飾区、長野県佐久、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部など11の保健所管内に居住していた40~69歳の地域住民。そのうち、がん、循環器疾患、腎疾患、糖尿病に罹患しておらず、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答した8万3,351人。これらの対象者を2016年まで追跡して、動物性タンパク質、植物性タンパク質、および総タンパク質の摂取量と、肺炎死亡リスクとの関連を調べた。
食事調査の結果を用いて、総摂取エネルギー量に対するタンパク質摂取量の割合を男女別に算出。得られた割合の四分位で全体を四群に分けた。そして、第1四分位群(タンパク質摂取量の割合が最も低い下位4分の1)を基準に、残り3群での肺炎による死亡リスクを比較した。
解析に際しては、結果に影響を及ぼす可能性のある交絡因子(年齢、地域、体格、喫煙状況、アルコール摂取量、余暇の身体活動量、降圧薬の服用の有無、コーヒー・緑茶の摂取頻度、摂取エネルギー量、閉経の有無)を調整した。
平均18.4年の追跡期間中に、990人(男性634人、女性356人)が肺炎で死亡した。総タンパク質摂取割合と肺炎死亡リスクの関連には、明らかな男女差が認められた。すなわち、女性の場合、総タンパク質摂取割合の増加が、肺炎リスク低下と有意な関係を示した一方、男性の場合には、総タンパク質摂取割合と肺炎リスクとの間に、統計学的に有意な関連は認められなかった。
より詳しく見ると、女性では第1四分位群に対して第4四分位群(タンパク質摂取量の割合が最も高い上位4分の1)の肺炎死亡リスクは、ハザード比(HR)0.71(95%信頼区間0.53~0.97)であり、全体の傾向性P値が0.01だった。一方、植物性タンパク質と動物性タンパク質ごとの摂取割合を基に肺炎死亡リスクを算出したところ、男女とも、統計学的に有意な関連は認められなかった。
女性で認められた有意な関連が男性では確認されなかったことについて、研究グループでは、「男性のタンパク質摂取量の割合が女性より低いこと、喫煙や飲酒といった生活習慣の影響が大きかったことによるのではないか」との考察を加えている。
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4月 13 2021 1日2杯以上コーヒーを飲む高齢者は肺炎が少ない―国内多施設共同研究
コーヒーを1日に2杯以上飲む高齢者は肺炎のリスクが低い可能性を示唆するデータが報告された。他方、緑茶の摂取は肺炎リスクとの関連が見られないという。大阪市立大学医学部の近藤亨子氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月10日掲載された。
コーヒー摂取量が多い人は心血管疾患や糖尿病のリスクが低いことが複数の研究から示唆され、米国からは肺炎のリスクとコーヒー摂取量が逆相関するとのデータも報告されている。肺炎は日本人の死因の上位に位置し、特に高齢者ではそのリスクが高いため、コーヒー摂取で肺炎リスクが低下するのなら、予防医学上のメリットも少なくない。ただ、日本人でのコーヒー摂取量と肺炎リスクの関連はまだ十分に検討されていない。近藤氏らの研究は、この点を明らかにする試みであり、コーヒーとともに日本人の生活に定着している緑茶の摂取量との関連も検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。この研究は2009年10月1日~2014年9月30日に、東京、愛知、福岡など1都6府県、24カ所の病院を受診した患者を対象とする、症例対照研究として実施された。65歳以上の肺炎患者199人を症例とし、肺炎以外の疾患で同じ医療機関(病院、クリニック)を同時期に受診した性別と年齢(±5歳)が一致する患者374人を対照とした。対照はできるだけ、呼吸器科とその他の診療科から各1人、計2名を選択した。除外基準は、老人ホーム入居者、誤嚥性肺炎患者、悪性腫瘍の患者、経口ステロイドや免疫抑制剤による治療を現在受けている患者、脾摘出の既往歴を有する患者。
コーヒーや緑茶の摂取量は、最近1カ月の摂取量を聞き取り、以下のように分類した。コーヒーについては(1日あたり)、飲まなかった、1杯未満、1杯、2杯以上の4群。緑茶については(1日あたり)、1杯未満、1~2杯、3~4杯、5杯以上の4群。
肺炎群と対照群を比較すると、BMI18.5未満が肺炎群で多く、基礎疾患の高血圧と糖尿病は対照群で多かった。その他、年齢、性別、肺炎やインフルエンザのワクチン接種、日常生活動作(ADL)、6歳以下の子どもとの同居、喫煙・飲酒習慣などは両群で差はなかった。
肺炎のリスクに影響を与える可能性のある因子〔ワクチン接種、BMI、基礎疾患(呼吸器疾患、高血圧、糖尿病、心疾患)、ADL、子どもとの同居、喫煙・飲酒習慣など〕で調整後の解析で、コーヒー摂取と肺炎の間に以下の関連が認められた。
コーヒーを全く飲まなかった人と比較すると、1杯未満/日の人の肺炎に対するオッズ比(OR)と95%信頼区間は0.69(0.39~1.21)、1杯/日では0.67(0.38~1.18)、2杯以上/日では0.50(0.28~0.88)となり、1日に2杯以上コーヒーを飲んでいた人のオッズ比は有意に低く、用量反応関係も有意だった(傾向性P=0.024)。
一方、緑茶の摂取については、1杯未満/日の人と比較すると、肺炎に対するオッズ比は1~2杯/日の人は1.22(0.68~2.19)、3~4杯/日では1.18(0.67~2.05)、5杯以上/日では1.08(0.61~1.93)となり、有意な関連は認められなかった。
これらの結果から著者らは、「コーヒーを飲まなかった人に比べて、1日に2杯以上を飲んだ人で肺炎に対するオッズ比の低下が認められた。緑茶の飲用は肺炎と関連がなかった」とまとめている。
この結果の背景として著者らは、「カフェインやその代謝産物のテオフィリンによる呼吸機能改善作用や抗炎症作用、ポリフェノールによる腸内細菌叢の調整作用が、肺炎リスクを抑制する可能性がある」と考察している。また、緑茶の摂取と肺炎の関連を解明するためには、「コーヒーの作用にカフェインが関与しているとすると、コーヒー2杯分のカフェイン量は緑茶では6杯分に相当するため、緑茶をより多く飲む人での分析が必要であろう」としている。
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8月 24 2017 マイコプラズマ肺炎に負けないための予防と対処法
マイコプラズマ肺炎は、潜伏期間に特徴があり、感染の拡大が恐れられています。見えない病原菌から自分を守るには、マイコプラズマ肺炎を知り、早期に予防することです。マイコプラズマ肺炎について詳しくご紹介します。- 1. はじめに
- 2. マイコプラズマ肺炎ってどんな敵?
- 3. マイコプラズマのルーツを知ろう!
- 4. マイコプラズマ肺炎はいつ侵入するのか
- 5. マイコプラズマ肺炎を発症しやすい人は意外な年層
- 6. マイコプラズマ肺炎に使われる治療薬
- 7. まとめ
はじめに体力、免疫力が無い人にとっては、感染症が流行る時期はつらいかと思います。冬は特に学校や保育園の閉鎖が生じ、自分の子供が心配になる方もいるのではないでしょうか?
しかし、マイコプラズマ肺炎は、子供たちだけの感染症ではありません。
元気な若い世代の人たちにも矛先が向く感染症なのです。そんなマイコプラズマ肺炎の詳しい情報を得て、子供にとっても、ご自身にとっても、しっかりと対策予防しましょう。予防は治療の一つです。
マイコプラズマ肺炎ってどんな敵?原因となるのは細菌?ウイルス?
肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)という細菌が体内に入って肺炎の症状を起こします。通常に良く知られる肺炎球菌による感染症状と違っており異型扱いされていました。
聴診器を使って肺音を聞くと、通常は痰がたまった音(ゼーゼー、ゼロゼロ)が聞かれます。しかしマイコプラズマ肺炎の場合は、特徴的な音が聞こえません。
理由は、肺の中でも炎症が起きる場所が異なるからです。12歳以下の小児や若者に多く、一度感染して治癒しても再度感染することもあります。
どんな症状?
マイコプラズマ肺炎は、下記のような症状を起こします。- 発熱(※2~3日で下がりますが、中には1週間かかるケースもあります)
- 全身倦怠感
- 頭痛
- 痰の混じらない乾いた咳から痰混じりの咳に変化
- 下痢が見られることもある
- 咳がひどくなると耳痛や胸痛
合併症は?
- たいていはマイコプラズマ肺炎の症状だけで治癒しますが、病原菌が肺以外の臓器まで侵してしまうと他の器官で炎症が起きます。
(心筋炎、関節炎、中耳炎、副鼻腔炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎) - 気管支喘息を患っている人は、マイコプラズマ肺炎の病原菌の刺激がきっかけとなって、喘息発作を引き起こすこともあるので、気管支喘息で治療したことがある方は注意が必要です。
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マイコプラズマのルーツを知ろう!感染ルートは接触感染と飛沫感染の二つです。
マイコプラズマの病原体は、熱にも弱く感染力は比較的弱い方です。従って、感染が起きる環境は、接触の度合いが濃厚であってこそ感染するというもので、幼稚園や学校、施設などの集団で活閉鎖的な場所で感染拡大することが多いようです。
接触感染とは、病原菌が何か物体に接着しているところに直接触れ、その触れた手や足を口や鼻に持っていくことで感染するのが接触感染です。
飛沫感染とは、咳やくしゃみで病原体が空気中に飛び、これを吸い込んだために感染するのが飛沫感染です。飛沫は通常2メートル以上も飛ぶと言われるので、感染が拡大する場合もあります。
マイコプラズマ肺炎はいつ侵入するのか潜伏期間とは
病原菌は体内に侵入して増殖します。増殖した細菌は自分たちが過ごしやすい場所を選んで移動しますが、このために症状として色々な苦痛が出てきます。この侵入から、症状が出るまでの期間を潜伏期間と言います。
マイコプラズマ肺炎が人から人にうつる期間は?
マイコプラズマ肺炎は一年中感染する可能性がありますが、冬から早春にかけて感染者が多くなります。マイコプラズマは菌としては感染力が弱いのに、拡大する理由は潜伏期間にあります。
人から人に感染する期間は「潜伏期間+症状が出ているとき」です。両方の期間に感染力がありますので、症状が出ていなくても菌を持っている人の側に行くと、感染する可能性があるということになります。
潜伏期間は2~3週間。発症して治癒するまでが1~2週間、これらを合わせると1か月以上も感染に気を付けなければいけません。
マイコプラズマ肺炎を発症しやすい人は意外な年層肺炎は通常子供や高齢者などの抵抗力の少ない人に発症する病気ですが、マイコプラズマ肺炎は、小児はもとより、若くて比較的健康で普通に仕事もできている人に多く見られます。
その理由は、若者は異物侵入に対して、免疫機能が活発であるため駆除する力も強く、その分炎症も大きくなってしまいます。すると肺炎の程度も重症化してしまいます。
マイコプラズマ肺炎はこうして避けようマイコプラズマ肺炎にならないために、下記を注意して予防しましょう。
- 感染している人との接触はなるべく避ける
- 外出から帰ったら手洗いとうがいの徹底
- 外出はマスクをつける
- 感染症の流行時期は、できるだけ人ごみを避ける
- しっかりと栄養バランスのある食事を摂り基礎体力を低下させない
- 疲れやストレスをためないように免疫力を上げる
マイコプラズマ肺炎に使われる治療薬マイコプラズマ肺炎には抗生物質による治療です。
特効薬としてマクロライド系の抗生物質(リカマイシン、クラリス、クラリシッドなど)が使用されていましたが、マクロライド系をもって治療し過ぎてしまったのか、病原菌の耐性が強くなってしまって、これらが効果を示さなくなってきました。
最近では、テトラサイクリン系の抗生物質(ミノマイシンなど)や抗生物質ではないニューキノロン系の抗菌薬が使用されてきています。
まとめ冬はインフルエンザや食中毒などの感染症が多くなります。
感染症には潜伏期間という目に見えないが感染能力はしっかり生きている時間もあり、予防しきれない部分もあります。しかし、どんな人にも免疫機能というものがあり、身体を外敵から守ってくれます。
この機能をしっかり鍛えることと、病原菌を体内に入れないようにする手洗いなどのケアは、普段から行っておくことが感染の有無を左右します。重症になる前に、まずは見えない敵を防御をすることが大切です。
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治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
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