生活習慣の欧米化でアディポネクチンに質的および量的な異常 – 遺伝的素因が共通する日系人と日本人を比較検討

遺伝的素因が同じ日本人であっても、生活習慣が日本式から米国式に変化すると、脂肪細胞から分泌されるホルモンの「アディポネクチン(APN)」に量的および質的な異常がもたらされ、インスリン抵抗性が惹起される可能性があることが、日本在住の日本人と米国在住の日系人とを比較した研究で分かった。広島大学病院内分泌・糖尿病内科の米田真康氏らと大阪大学内分泌・代謝内科学との共同研究によるもので、詳細は「Cardiovascular Diabetology」7月6日オンライン版に掲載された。

 日本から米国に移住した日系人は日本人と共通した遺伝的素因を持つ一方で、生活習慣は異なるため、「生活習慣の欧米化」という環境要因の変化が日本人の生活習慣に関連した代謝疾患に与える影響について検討する対象として最適とされる。広島大学の研究グループはこれまでに、血清中のAPN濃度が低いことは2型糖尿病発症の危険因子であることを報告している。APN濃度の低下はインスリン抵抗性と関連することも指摘されているため、APNは生活習慣の欧米化によって生じるインスリン抵抗性に関与している可能性がある。

 そこで同氏らは、疫学研究「ハワイ・ロサンゼルス・広島スタディ」で2009~2010年の医学調査の受診者のうち、30~70歳の広島在住の日本人325人およびロサンゼルス在住の日系人304人を対象に、生活習慣の違いがAPNの量的および質的な変化をもたらし、インスリン抵抗性に起因しているのかどうかを検討した。

 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で評価したインスリン分泌能、血清総APN濃度、さらにメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患のマーカーとして報告されている、血清総APN濃度に対するC1q-APN複合体濃度の比(C1q-APN/総APN比)を日本人と日系人で比較した。

 その結果、日本人と比べて日系人では正常耐糖能(NGT)群および耐糖能異常(IGT)群においてMatsuda indexが有意に低く、OGTTにおける血清インスリン濃度の総和、濃度-時間曲線下面積(AUC)が増大していた。一方、糖尿病群では同様の結果は得られなかった。また、日本人と比べて日系人ではNGT群およびIGT群で血清総APN濃度が有意に低く(量的変化)、C1q-APN/総APN比は有意に高いこと(質的変化)が示されたが、糖尿病群ではそのような結果は示されなかった。

 以上を踏まえ、米田氏らは「日本人において、生活習慣の欧米化はAPNの量的のみならず質的な変化をもたらし、インスリン抵抗性を惹起することが示された」と結論。また、糖尿病群ではこうした変化が認められなかった点については「APNは糖尿病自体による強い影響を受けるため、生活習慣の違いによる影響は検出されにくかった可能性がある」とし、さらには「日本在住の日本人であっても、糖尿病を発症した人たちの生活習慣は日系人の生活習慣とほとんど違いがなかった可能性がある」とも指摘している。

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HealthDay News 2017年7月24日
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