• スポーツの「観戦」にも有意な健康効果――日本人対象の縦断的研究

     スポーツを「する」のではなく、「見る(観戦する)」ことも、健康増進につながることを示した、国内での縦断的研究の結果が報告された。観戦頻度の高い人は1年後のメンタルヘルスや生活習慣の指標が良好だったという。ただし、テレビなどのメディアでの観戦では、一部の身体疾患のリスクが上昇する可能性も示唆されたとのことだ。公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine」12月号に掲載された。

     スポーツを含む身体活動を実践することの健康効果については、膨大なエビデンスの裏付けがある。しかし、スポーツを観戦することが健康に与える影響については、因果関係の証明にはならない横断研究の報告があるものの、因果関係を検討可能な長期間の縦断研究は過去に行われていない。これを背景として川上氏らは、健診受診者対象の前向きコホート研究「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」のデータを用いた縦断的解析を行った。

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     この研究の解析対象は、2017~2019年度にMYLSスタディに参加した6,327人。主な特徴は、平均年齢50.7歳、女性48.9%、既婚者71.8%、大学卒以上81.7%であり、27.8%が週に1日以上、メディアでスポーツの試合を観戦し、21.7%は年に2日以上、現地で直接観戦していた。

     ベースライン時点から1年後、身体的な健康や生活習慣、幸福感などに関する20項目のアウトカムを評価。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、教育歴、就労状況、婚姻状況、独居/同居、暮らし向き、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・睡眠障害に対する処方薬数)を調整後、以下のような関連が明らかになった。

     まず、現地でのスポーツ観戦が過去1年間に1日もなかった群(65.5%)に比較して、2日以上観戦していた群(21.7%)は、中等度の心理的ストレスを抱えるリスクが17%低く(リスク比〔RR〕0.83〔95%信頼区間0.72~0.95〕)、重度の心理的ストレスの該当者も有意に少なかった(オッズ比0.43〔同0.23~0.79〕)。

    また、現地での観戦頻度が高いほど心理的ストレスを抱えるリスクが低下するという関連が認められた(傾向性P値が中等度ストレスについては0.011、重度ストレスは0.016)。同様に、現地で観戦した人は脂質異常症のリスクが低く(1年間に2日以上観戦でRR0.89〔0.79~1.00〕、傾向性P=0.049)、さらに生活習慣の改善に前向きであった(行動変容ステージが前熟考期であることのRRが0.77〔0.64~0.93〕、傾向性P=0.005)。

     次に、メディアでの観戦が過去1カ月間に1日もなかった群(41.6%)に比較して、週に1日以上観戦していた群(27.8%)は、身体活動不足であることが少なく(RR0.94〔0.88~1.00〕、傾向性P=0.038)、朝食欠食が少なく(RR0.85〔0.75~0.96〕、傾向性P=0.008)、幸福感が高かった(RR1.08〔1.00~1.17〕、傾向性P=0.048)。

     ただし、メディアでの観戦は、BMIの上昇(β=0.03〔0.00~0.05〕、傾向性P=0.025)のほか、高血圧(RR1.09〔1.01~1.19〕、傾向性P=0.026)や糖尿病(RR1.16〔1.02~1.31〕、傾向性P=0.018)のリスク上昇と関連していた。

     著者らは本研究を「スポーツ観戦の頻度と健康状態などとの関連を、大規模かつ縦断的に解析した初めての研究」と位置づけ、「現地観戦でもメディアでの観戦でも、スポーツを見ることでメンタルヘルスや生活習慣が良好になる可能性が示された。一方で、メディアでの観戦には肥満や生活習慣病のリスクが潜んでいることも示唆された」と総括している。なお、メディア観戦がいくつかのアウトカムに負の影響を及ぼし得る点については、「座ったままで飲食をしながら観戦するという、いわゆる“カウチポテト”になりやすいことの影響も考えられる」と考察している。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2024年12月16日
    Copyright c 2024 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
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  • 野菜を先に食べている糖尿病患者は高次生活機能が高い

     野菜を先に食べる習慣のある高齢糖尿病患者は、高次生活機能が高いとする研究結果が報告された。一方で最初にタンパク質や炭水化物の食品を食べることは、高次生活機能との関連が有意でないという。伊勢赤十字病院糖尿病・代謝内科の井田諭氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Nutrition」に9月27日掲載された。

     高齢の糖尿病患者が増加していることを背景に、糖尿病臨床においては血糖管理のみならず、患者の高次生活機能の低下を防ぐことが重要な課題となってきている。高次生活機能とは、買い物や金銭の管理などの手段的日常生活動作(IADL)のほか、知的な活動や社会的な活動を積極的に行うための機能であり、食後の高血糖がこの機能を低下させるリスク因子の一つである可能性が指摘されている。一方、食事の際に野菜を最初に食べることは、食後高血糖の抑制に役立つ。これらを背景として井田氏らは、野菜から食べ始めることが、糖尿病患者の高次生活機能の維持に対して保護的に働いているのではないかとの仮説の下、以下の横断的研究を行った。

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     研究参加者は、2022年7~12月の同院糖尿病外来受診者のうち、60歳以上の346人(平均年齢72歳、男性59%、HbA1c7.6%)。このうち、野菜を最初に食べると回答した患者は39.7%で、炭水化物が最初は28.6%、タンパク質が最初は14.4%であり、19.3%の患者は食べる順序を意識していなかった。

     高次生活機能の評価には、東京都長寿医療センターで開発された「老研式活動能力指標(TMIG-IC)」を用いた。TMIG-ICは13項目の質問で評価され、スコアが高いほど高次生活機能が高いと判定する。前記の4群のTMIG-ICスコアは、野菜優先群は11.1±2.3、炭水化物優先群は10.2±2.9、タンパク質優先群は10.0±2.3、決まった順番なし群が9.7±2.8だった。

     次に、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、HbA1c、運動習慣、併存症、社会的フレイル〔外出頻度が少ないことなどで判定〕)を調整変数に含めた重回帰分析を行い、食べる順番とTMIG-ICとの関連の偏回帰係数を求めた。すると、男性、運動習慣なし、社会的フレイルは、TMIG-ICと負の有意な関連が認められた一方、野菜を最初に食べる習慣は有意な正の関連が認められた(係数1.00〔95%信頼区間0.33~1.66〕)。炭水化物またはタンパク質を最初に食べる習慣は、TMIG-ICと有意な関連がなかった。

     続いて、調整変数として栄養不良(MNA-SFスコア)と認知機能(自記式質問票のスコア)を追加した解析を行ったところ、野菜を最初に食べる習慣は、係数0.77(95%信頼区間0.23~1.31)とやや関連性が弱まったが、引き続き正の有意な関連因子だった。なお、性別に解析した場合、男性では全体解析と同様に有意な関連が認められた一方、女性では関連が非有意となった。

     これらの結果から、野菜を最初に食べるという習慣は高次生活機能を保護するように働くと考えられ、その関連の一部は栄養状態や認知機能によって媒介されることが示唆された。著者らは、本研究が専門外来受診者を対象とした横断研究であり、教育歴や摂取エネルギー量などが考慮されていないことなどの限界点を挙げた上で、「野菜を最初に食べるという簡単な食習慣が、糖尿病患者の高次生活機能の維持につながる可能性がある」と総括している。

     なお、性別の解析で女性では関連が示されなかったことについて、「女性は男性に比べて食習慣が良好であるためではないか」との考察が加えられている。実際、本研究における野菜優先の割合は、男性が31.9%に対して女性は48.8%と、ほぼ半数に及んでいた。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2024年12月16日
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