• 自殺関連ツイート急増後に自殺した人の特徴

     マスメディアやソーシャルメディアでの自殺関連情報が、自殺リスクの高い人の自殺行動を促してしまう懸念が指摘される中、ツイッター(現:エックス)に自殺関連ツイート(同:ポスト)が急増した数日後に自殺に至った人の特徴を検討した研究結果が報告された。40歳以下、男性、失業中、都市生活者などは、ツイート件数増加後にハイリスクとなる可能性があるという。岡山大学病院新医療研究開発センターの三橋利晴氏の研究によるもので、詳細は「JMIR formative research」に8月10日掲載された。

     マスメディアでの自殺報道が自殺行動を増やす可能性があることから、世界保健機関(WHO)が自殺報道に際しての留意事項を公表するなどの対策が取られている。ただしこれまでのところ、どのような人がメディア情報の影響を受けやすいのかは不明。また近年は、ソーシャルメディアでの情報発信・閲覧の比重が増え、それらの情報と自殺行動との関連も指摘されている。メディア情報の影響を受けやすい人の特徴が分かれば、実効性の高い自殺予防対策を確立する一助となると考えられる。これを背景として三橋氏は、ツイッター上の自殺関連ツイート数が急増した後に、自殺既遂に至った人の属性を解析することにより、その特徴を明らかにすることを試みた。

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     解析対象期間は2011~2014年で、この間の全ツイートの約1割にあたるランダムサンプルの中から、「自殺」、「自死」などの自殺関連の単語を含むツイートを抽出。そこから、「予防」、「対策」、「プロジェクト」、「支援・サポート」、「ディスカッション」、「カンファレンス」など、自殺予防活動に関連する単語が含まれているツイートを除外し、残ったツイートを「自殺関連ツイート」としてカウントした。一方、この間の自殺による死亡については、厚生労働省「人口動態統計」から情報を得た。また感度分析として、自殺以外の「予期せぬ死亡」についても同様の検討を行った。

     1日当たりの自殺関連ツイート数は、57~6万875件の範囲に分布していた。前日からの変動は0.14~44.3倍の範囲であり、その95パーセンタイルに相当する、前日比1.79倍を超過して増加していた日を「自殺関連ツイートが急増した日(曝露日)」と定義。曝露日の3日後および7日後の自殺による死亡者の特徴〔年齢(40歳以下/41歳以上)、性別、就業状況、婚姻状況、居住地域(都市部/非都市部)〕を、ケースオンリー解析(症例内のみでの比較)により検討した。ケースオンリー解析は、もとは遺伝因子と環境因子の相互作用の検討に用いられていたが、近年では、時間経過とともに変化するリスクへの曝露と関連が予測される因子との相互作用の検討などにも用いられている。

     解析に必要な情報が欠落している死亡者は除外した。なお、解析対象日を曝露日の3日後と7日後とした理由は、気温と死亡リスクとの関連を検討した先行研究が曝露日当日と2日後のデータを解析しており、ツイート件数と自殺との関連はそれよりもややタイムラグが長いと考えられたため。また、データ取得時期(2011~2014年)のツイッター利用率が40歳以下で高いことから、年齢は40歳を基準に二分した。

     解析対象期間の自殺による死亡者数は15万9,490人(平均年齢58.5±20.6歳、男性65.1%)だった。曝露日の3日後に自殺既遂に至った人には、以下のような特徴が認められた。年齢が40歳以下〔オッズ比(OR)1.09(95%信頼区間1.03~1.15)〕、男性〔OR1.12(同1.07~1.18)〕、失業者〔自営業に対してOR1.12(1.02~1.22)〕、離婚〔婚姻関係ありに対してOR1.11(1.03~1.19)〕、都市に居住〔OR1.26(1.17~1.35)〕。一方、婚姻状況が死別の場合はオッズ比の有意な低下が認められた〔OR0.83(0.77~0.89)〕。就業状況に関しては、会社員、農業従事者、および「その他」は、関連が非有意だった。

     曝露日の7日後に自殺既遂に至った人の解析結果も、失業者で関連が非有意であることを除き、曝露3日後の解析結果と同様だった。一方、感度分析として行った「予期せぬ死亡」(11万5,072人、男性55.3%)については、婚姻状況が死別の場合に曝露7日後のオッズ比が有意に高いこと以外〔OR1.08(1.02~1.15)〕、予期せぬ死亡との関連は認められなかった。そのため、この研究で得られた結果は、自殺による死亡に特異的と考えられた。

     これらの結果から三橋氏は、「自殺関連ツイートへの感受性と関連する個人的特徴が明らかになった。若年者、男性、失業者、離婚者などは、自殺関連ツイートの急増に対して脆弱な可能性がある」と結論付けている。

     ツイート件数と自殺行動が関連し得る背景として同氏は、「自殺関連ツイートを閲覧することによって受ける影響と、ツイートを見なくてもその時点の社会情勢などから受ける影響という二つの経路で、自殺行動のリスクが上昇してしまうのではないか」とし、特に前者についてはツイッター利用率の高い若年者でより大きな影響が生じる可能性を考察。また、「自殺リスクの高い人はネガティブな情報にアクセスする傾向が指摘されており、ツイッターのリツイート機能などを介して、そのような人たちがクラスター化することもあるようだ」と述べ、そういったハイリスク者を特定した上での公衆衛生対策を推進する必要性を指摘している。

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  • 生活保護を受けている高齢者は自殺リスクが高い可能性

     近年、国内の自殺者数は一時期よりは減少したものの、高齢者では高止まりしている。そしてさらに、生活保護を受給している高齢者の自殺リスクは、非受給者よりも有意に高いことを示すデータが報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の木野志保氏(研究時の所属は京都大学大学院医学研究科社会疫学分野)らが、日本人高齢者を対象に行った調査の結果であり、詳細は「Journal of Epidemiology and Community Health」に7月20日掲載された。

     高齢者の自殺リスクを高める主な原因は、健康問題と貧困の二つと考えられている。生活保護を受けることは貧困を意味しているが、これまでのところ、生活保護を受給している高齢者の自殺リスクは十分に検討されていない。そこで木野氏らは、全国の自治体が参加して行われている「日本老年学的評価研究(JAGES)」の2019年調査の回答者のデータを用いて、横断的な解析を行った。

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     データ欠落者などを除外後、65歳以上の高齢者1万6,135人を解析対象とした。このうち202人(1.25%)が生活保護を受給していた。生活保護受給者は非受給者に比べて、男性が多く、同居者数が少なく、教育歴が短く、世帯収入が低い傾向があった。また、老年期うつ病評価尺度(GDS15)で評価したうつレベルが高く、複数の疾患に罹患している人が多かった。

     「今までの人生の中で、本気で自殺をしたいと考えたことがありますか」との質問により自殺念慮を抱いた経験の有無を把握し、また、「今までに自殺しようとしたことがありますか」との質問によって自殺未遂経験の有無を把握した。その結果、自殺念慮を抱いた経験がある人は772人(4.8%)、自殺未遂の経験のある人は355人(2.2%)だった。なお、質問に「答えたくない」と回答した人は解析対象から除外されている〔自殺念慮については1,100人(6.30%)、自殺未遂については861人(4.93%)〕。

     生活保護受給状況別に比較すると、非受給者は自殺念慮の経験ありが4.6%であるのに対して、受給者は14.9%に上った。また自殺未遂の経験ありの割合も同順に2.1%、9.9%と、後者の方が高かった。自殺リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、世帯員数、教育歴、世帯収入、うつ症状(GDS15スコア5以上)、手段的日常生活動作(IADL)、併存疾患数、居住している自治体など〕を調整後も、生活保護受給者は自殺念慮や自殺企図の経験のある割合が有意に高かった。

     具体的には、生活保護受給者で自殺念慮を抱いた経験のある割合は非受給者より47%高く〔有病率比(PR)1.47(95%信頼区間1.02~2.13)〕、自殺未遂経験のある割合は91%高かった〔PR1.91(同1.20~3.04)〕。生活保護の受給以外では、うつ症状を有することが自殺念慮(PR4.00)と自殺未遂(PR3.26)の経験の双方と有意な関連があった。また、併存疾患が三つ以上あることは自殺念慮の経験と有意な関連があった(PR1.25)。

     一方、教育歴の長さは、自殺念慮や自殺未遂の経験が少ないことと有意な関連があり、同居している家族の多さは、自殺念慮の経験が少ないことと有意な関連があった。なお、性別は、自殺念慮、自殺未遂のいずれとも有意な関連がなかった。

     著者らは結論として、「国内で生活保護を受けて暮らしている高齢者は自殺リスクが高い可能性がある。今後はその要因を特定し、エビデンスに基づく政策立案に反映させていく必要がある」と総括している。なお、「この研究は生活保護の受給の有無と自殺念慮や自殺未遂経験とを同時に調査しているため、両者の因果関係は分からない点に注意を要する。生活保護を受けている状況が自殺のリスクとなる可能性もあるし、自殺のリスクが高まるような状況が生活を困窮させ、生活保護に至る可能性もある」と付け加えている。また、両者の関連のメカニズムについて、既報研究を基に以下のような考察を述べている。

     まず、生活保護受給者に対しては根強い偏見や差別が存在するため、差別的な扱いを受けてメンタルヘルスを悪化させやすい可能性が考えられるという。また身体的な疾患は自殺の大きなリスク要因であることが知られているが、生活保護受給者などの社会経済的なストレスを抱えている人は大量飲酒や喫煙など、健康に悪影響のある行動の頻度が高く、慢性疾患の有病率が高いことが報告されており、そのため自殺リスクも高い可能性も考えられるとしている。

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  • 精神科受診勧奨で自殺が減った可能性――日本医科大学

     国内の自殺者数は、新型コロナウイルス感染症の影響という不確定要素はあるものの近年、減少傾向にある。このような傾向に、希死念慮を抱く自殺リスク者の精神科受療率の向上が寄与している可能性を示すデータが報告された。日本医科大学精神医学教室の舘野周氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Psychiatry」に3月29日掲載された。

     国内の自殺者数は1998年に急増し高止まりしていたが、2012年以降は漸減している。自殺者数減少の理由は複合的なものと考えられるが、その一つとして、リスクのある人への精神科受診勧奨が多くの場面でなされるようになったことの影響が考えられる。ただし、それを証明するデータは得られていない。

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     日本医科大学付属病院は1977年に国内初の救命救急センター(CCM)を開設し、年間1,600~1,800人の救急患者を受け入れており、その約5%を自殺未遂者が占めている。舘野氏らは、同院CCMに入院した自殺未遂者の精神科受療率の動向と、都内の自殺者数の推移とを比較することで、精神科受診と自殺行動との関連を検討した。

     解析対象期間は2006~2017年で、この間の都内の自殺者数は3万2,783人だった。解析に必要な年齢が不明なデータを除外した上で、自殺者数の減少が始まる前の2006~2011年(前期)と、自殺者数減少局面にあった2012~2017年(後期)に二分すると、前期の自殺者数は1万7,364人、後期は1万4,888人となった。年齢・性別の検討から、20~39歳の男性と女性、および40歳以上の男性は、前期に比べて後期は自殺者数が有意に減少していた。

     一方、この間の同院CCMの入院者数は2万1,271人だった。自殺未遂のためにCCMに搬送され、少なくとも2日以上の入院を要した患者は942人だった。これを前期と後期に分けると、前期は573人(同期間のCCM入院者数の5.0%)、後期は369人(同3.8%)だった。年齢・性別の検討から、20~39歳では男性・女性ともに、前期に比べて後期は自殺未遂者数が有意に減少していた。

     自殺未遂の前3カ月以内に精神科受診歴がある場合を「精神医学的治療を受けていた」と定義すると、前期は男性の44.6%、女性の69.5%がこれに該当。一方、後期はその割合が男性63.1%、女性74.1%であり、男性の精神科受療率が有意に上昇していた(P<0.001)。女性の変化は有意水準に至らなかった。なお、女性の精神科受療率は、前期(P<0.001)、後期(P=0.025)とも、男性よりも有意に高かった。

     次にこの結果を年齢層別に見ると、男性では、20~59歳の層で、自殺未遂者の精神科受療率が有意に上昇していた。ただし、60歳以上の層では有意な変化が見られなかった。また、女性に関しては、全ての年齢層で有意な変化が見られなかった。なお、60歳以上の精神科受療率は男性・女性で共通して全年齢層中最低で、この傾向は後期においても同様であった。

     続いて20~59歳の男性の自殺者数と精神科受療率との関連を検討した結果、両者に有意な負の相関があることが明らかになった(r=-0.59、P=0.042)。これは、自殺リスクの高い人の精神科受療率の上昇が、自殺者数の減少と関連していることを意味する。

     以上より著者らは、「自殺リスクの高い人の精神科受療率の向上が都内の自殺者数の減少に貢献した可能性がある」と結論付けている。一方で、精神科医療における対応のさらなる充実が必要であると指摘し、精神疾患に対する治療のみならず、「精神科医療従事者がリスクの高い患者を特定した場合に、関係機関と連携して自殺予防に取り組む」などを提案している。

     さらに、自殺者数が多い高齢者層の精神科受療率がいまだ低値であることを重視し、「高齢者は孤立や社会的支援の欠如、身体疾患などの希死念慮につながるリスク因子を有していることが少なくない。自殺者数のさらなる抑制のため、高齢者に対するアプローチが喫緊の課題だ」と述べている。

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    HealthDay News 2022年4月25日
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  • ネット検索語句から自殺者数変動を迅速に予測できる

     インターネット検索サイトの検索語句の分析から、自殺者数の変動を予測できるとする研究結果が報告された。京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の平和也氏らの研究によるもので、詳細は「JMIR Public Health and Surveillance」12月号に掲載された。同氏は、「迅速な予測が可能であることから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックで自殺者数の増加リスクのある、現在のような局面での有用性が高い」と述べている。

     自殺者数に関する公的な統計として、厚生労働省の人口動態統計や警察庁の自殺統計があるが、いずれも自殺発生を後方視的に把握したもの。そのため一定のタイムラグが存在し、社会情勢の変化に伴う自殺者数の変動を加味した、タイミングの良い自殺予防策の立案に役立てることは難しい。

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     一方、ネット検索サイトでの自殺に関連する単語の検索頻度が、自殺率の変動と相関するとする研究結果が、これまでに報告されている。ただし、それらの研究はパンデミック以前に行われたものであり、また、自殺行動に直接関連するキーワード(例えば自殺の方法など)との相関を検討したものが多い。よって、自殺企図の前段階に当たる希死念慮に関連する語句の検索頻度から、自殺者数の変動を予測し得るかを検討する必要がある。仮にそのような予測が可能であるなら、自殺リスクのある人が既遂に至るのを防ぐ対策の策定に、ネット検索情報が有用な情報となり得る。

     このような視点から平氏らは、自殺行動を目的とした検索語句ではなく、希死念慮の高まりに関連する可能性のあるフレーズや単語の検索頻度と自殺者数の変動との関連を探った。具体的には、「虐待」「仕事/行きたくない」「会社/辞めたい」「離婚」「お金がない」の5つ。これらの検索語句が2016年1月~2020年12月に「Yahoo!JAPAN」で検索された回数と、警察庁統計による2016年1月~2021年3月の自殺者数との相関を検討した。

     ベクトル自己回帰モデルという手法で検索語句の使用頻度を基に自殺者数の変動を予測し、実際の報告データとの乖離を検討。その結果、性別にかかわらず自殺者数の予測値と報告値が一致して変動することが明らかになった。以上の結果から著者らは、「自殺を直接的に意味する語句ではなく、自殺に関連する可能性のあるフレーズの検索頻度も、自殺者数の予測に有効」と結論付けている。

     なお、性別に見ると、男性では特に「離婚」、女性では「お金がない」という語句の検索回数による予測能が高かった。パンデミック下で国内でも女性の自殺者数の増加が報告されており、その背景としてシングルマザーの経済的困難の存在が指摘されているが、本研究でもその裏付けが得られた。また、本研究の解析対象期間には含まれていないが、男性ではリーマンショック時に自殺率が上昇したことが明らかになっている。

     著者らは、これらの知見からの考察として、「COVID-19パンデミックは女性により深刻な影響を及ぼしており、自殺抑止のため経済的な対策が必要とされる。また今後の研究では、『貧困』や『失業』などにつながるフレーズと自殺者数の関連を検討し、より実用的な予測モデルを開発したい」と述べている。

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    HealthDay News 2021年12月20日
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  • パンデミックで正規雇用労働者でも希死念慮が増大

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で、正規雇用労働者でも希死念慮が高まっていたという実態が明らかになった。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の佐々木那津氏、川上憲人氏らが行った縦断的Web調査の結果であり、「British Journal of Psychiatry Open」に10月29日、論文が掲載された。特に女性、若年者、高学歴の人などの間で、希死念慮の高まりが見られたという。

     COVID-19パンデミック発生後、国内外から自殺者数の増加が報告されている。しかし、この特殊な状況での自殺リスク因子については十分に検討されていない。佐々木氏らは、「新型コロナウイルス感染症に関わる全国労働者オンライン調査(E-COCO-J)」のデータを縦断的に解析し、この点を検討した。

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     E-COCO-Jは、COVID-19パンデミックの影響を全国レベルで追跡しているWeb調査。性別と年齢で層別化した上で抽出した正規雇用労働者に調査協力を依頼し、パンデミック第1波前の2020年3月19~22日のベースライン調査に1,448人から回答を得た。続いて第1波収束後の同5月22~26日に1回目、第2波のピークに当たる同8月7~12日に2回目の追跡調査を行った。

     追跡調査では、過去30日間の希死念慮と孤独感について質問した。それぞれ、「死にたい気持ちになるか」、「孤独だと感じるか」という質問に対する1~4点のリッカートスコアで回答を得て(ほとんどないは1点、時々は2点、しばしばは3点、ほとんどいつもは4点)、2点以上の場合に「希死念慮または孤独感あり」と判定。これらの判定結果と、性別、年齢、教育歴、職業、メンタルヘルス状態などとの関連を検討した。

     ベースライン調査から2回目の追跡調査まで回答したのは875人で、平均年齢41.74±10.4歳、男性52.9%、教育歴16年未満が46.3%であり、単純作業者(25.9%)より管理職/非単純作業者(74.1%)が多くを占めていた。また、ベースライン調査でメンタルヘルスの不調(うつや不安などの治療歴)があると回答した人は11.9%だった。

     追跡調査の1回目と2回目を比較すると、孤独感〔オッズ比(OR)1.60(95%信頼区間1.19~2.18)〕、希死念慮〔OR1.59(同1.13~2.26)〕ともに2回目の追跡調査の方が多く認められた。追跡調査1回目と2回目の間に生じた希死念慮の高まりを背景因子で層別化して解析すると、女性や若年者(39歳未満)、高学歴(16年以上)、および、ベースライン調査でメンタルヘルスの不調なしと回答していた人で、オッズ比の有意な上昇が認められた。

     続いて、2回目の追跡調査で希死念慮ありに該当することに関連する因子を、多重ロジスティック回帰分析で検討した。交絡因子として、年齢、性別、教育歴、職業(単純作業か、管理職または非単純作業か)、ベースライン調査でのメンタルヘルス不調の有無、追跡調査1回目での希死念慮および孤独感を調整した。その結果、若年〔調整オッズ比(aOR)1.57(95%信頼区間1.09~2.28)〕、ベースライン調査でのメンタルヘルス不調〔aOR2.17(同1.28~3.67)〕、1回目の追跡調査での希死念慮〔aOR15.40(同10.06~23.58)〕という3項目が、有意な関連因子として抽出された。

     これらの結果から著者らは、「COVID-19パンデミック下の2020年5~8月にかけて、労働者の希死念慮が高まっていたことが示唆される。年齢が若いことや、メンタルヘルス不調の既往などがリスク因子と考えられ、それらが該当する人に対する支援が必要とされる」と結論付けている。なお、本調査は正規雇用労働者のみを対象としている。失業者や非正規雇用労働者には、パンデミックでより深刻な影響が生じていると想定されることから、著者らは「本研究の結果は、希死念慮や孤独感のリスクを過少評価している可能性がある」と、解釈上の限界点を挙げている。

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    HealthDay News 2021年12月6日
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