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1月 05 2026 “血小板の大きさ”が知らせる腎臓の危険信号、糖尿病患者の追跡調査で判明
病院で行う通常の血液検査では、白血球数や赤血球数、血小板数などとともに「平均血小板容積(MPV)」という指標も測定されることが多い。今回、日本の2型糖尿病患者を対象とした追跡研究で、このMPVが腎機能悪化のリスク把握に役立つ可能性が示された。MPVが高い人ほど腎臓の状態が悪化しやすい傾向が確認されたもので、身近な指標から早期のリスク評価につながる可能性が注目される。研究は、福島県立医科大学腎臓高血圧内科の渡辺秀平氏、田中健一氏、風間順一郎氏らによるもので、詳細は11月27日付で「Journal of Diabetes Investigation」に掲載された。
糖尿病は世界的に多くみられる疾患で、糖尿病性腎症をはじめとする合併症により予後が悪化する。2023年には、新規慢性透析導入患者の38.3%が糖尿病性腎症によるもので、糖尿病患者の腎機能悪化が透析につながる深刻な問題であることが示された。MPVは血小板の大きさを示す指標で、心血管疾患や糖尿病性微小血管合併症との関連が報告されているが、腎機能悪化との関係は十分に検討されていない。こうした背景を踏まえ、本研究では、福島コホート研究のデータを用い、MPVと腎イベント(腎機能低下や透析導入)の関連を後ろ向きに解析し、リスク予測への活用可能性を評価した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究では、福島県立医科大学病院で実施された福島コホート研究より、2012年6月~2014年7月に登録された2型糖尿病患者1,076人を対象とした。患者はベースライン時のMPV値に基づき、Q1~Q4の四分位群に分類した。主要評価項目は腎イベントとし、推定糸球体濾過量(eGFR)がベースラインから50%以上低下するか、腎代替療法が必要となる末期腎不全への進行と定義した。副次評価項目は新規心血管イベントの発症とした。
連続変数の群間比較にはKruskal–Wallis検定を、割合の差はカイ二乗検定で評価した。MPV四分位ごとのイベント無再発生存率はKaplan–Meier法とlog-rank検定で比較した。MPVと腎イベントまたは心血管イベントとの関連は、潜在的交絡因子を調整したCox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。
コホートの平均年齢は66.0歳で男性は56.7%含まれた。中央値5.3年の追跡期間中、参加者1,076人のうち97人が腎イベントを発症した。Kaplan–Meier曲線では、MPVの四分位群間で無イベント生存率に有意な差が認められた(P=0.018)。
腎イベントの発生率は四分位群間でQ2が最も低かったため、Q2群を基準群とした。Q2群を基準とした場合、Q4群の参加者は単変量Coxモデルで有意に腎イベントリスクが高く、年齢・性別、既往歴、検査値、降圧薬使用などの交絡因子を調整した多変量解析でも有意性は維持された(調整HR 2.05、95%CI 1.13~3.72)。また、MPVを連続変数として解析すると、1 fL増加ごとに腎イベントリスクは32%上昇した(95%CI 1.04~1.68)。
心血管イベントは追跡期間中に124人で発症した。腎イベントと同様、心血管イベントの発生率もQ2群で最も低かった。Q2群を基準とした多変量解析では、MPVの上昇が心血管イベントリスクの上昇と有意に関連していた(調整HR 1.66、95%CI 1.01~2.72)。MPVが1 fL増加するごとに心血管イベントリスクは27%上昇した(95%CI 1.04~1.55)。
著者らは、「日本人の2型糖尿病患者において、MPVの上昇は腎イベントおよび心血管イベントの両方と独立して関連していた。MPVは、このリスクの高い集団における腎疾患進行を予測するための、簡便で有用なバイオマーカーとして役立つ可能性がある」と述べている。
なお、MPVと腎イベント発症リスクについて「J字型」の相関が示されたことについては、低MPVが造血能低下や骨髄機能障害を示している可能性を指摘し、「MPVが高い場合と低い場合では、それぞれ異なるメカニズムを介して腎疾患の進行に寄与する可能性があるのでは」と述べている。
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糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。
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5月 19 2025 日本人の糖尿病関連腎臓病、研究で病原性変異が明らかに
糖尿病関連腎臓病(DKD)は2型糖尿病の長期合併症であり、心血管系合併症や死亡率の高さに関連している。今回、日本国内におけるDKD患者の病原性変異について明らかにした研究結果が報告された。研究は東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科の羽柴豊大氏らによるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に4月8日掲載された。
DKDは、長期の糖尿病罹病期間と糖尿病網膜症の合併に基づき、腎生検を必要とせずに臨床的に診断される。糖尿病患者の中には、同様に血糖コントロールを行っているにもかかわらず、腎機能障害を発症する患者としない患者がいることから、遺伝的要因が糖尿病およびDKD発症の根底にある可能性がある。実際、2021年には米国の1型および2型糖尿病を患うDKD患者370名を対象とした研究から、白人患者の22%で病原性変異が特定されている。しかし、この割合は民族やデータベースの更新状況によって異なっている可能性も否定できない。このような背景を踏まえ、著者らは最新のデータベースを用いて、日本の2型糖尿病を伴うDKD患者のサンプルから全ゲノム配列解析(WGS)を実施し、病原性変異を持つ患者の割合を決定することとした。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究には、東京大学糖尿病性腎疾患コホートよりWGSの検体提供に同意した79人(平均年齢72歳)のDKD患者が組み入れられた。全体の25名(31.6%)に糖尿病網膜症が認められ、9名(11.4%)に腎臓病の家族歴があった。
WGSの結果、27人(34.1%)の患者で、24の遺伝子(29の部位)に位置する病原性変異が同定された。すべての変異はヘテロ接合型であり、ホモ接合型は検出されなかった。同定されたヘテロ接合型病原性変異は、大きく、糸球体症関連(23.7%)、尿細管間質性腎炎関連(36.8%)、嚢胞性腎疾患/繊毛病関連(10.5%)、その他疾患関連(28.9%)に分類された。
27人の患者で同定された変異のうち、常染色体顕性(優性)遺伝パターンに関連し、疾患の発症に潜在的に影響を及ぼすものを「診断的変異」と定義した。診断的変異は7つの遺伝子(ABCC6、ALPL、ASXL1、BMPR2、GCM2、PAX2、WT1)において10人(12.7%)の患者で認められた。これらの遺伝子はすべて常染色体顕性遺伝性疾患と関連していた。
本研究の結果について著者らは、「日本では、相当数のDKD患者において腎臓関連のヘテロ接合型病原性変異が特定された。これらの知見は、この変異に民族間の差異が存在する可能性を示唆しており、データベースの更新が変異検出に与える影響を浮き彫りにしている」と述べている。今回、DKD患者で認められた変異の臨床的意義については、「依然として不明であり、その意義をさらに検討するためにはより大規模なコホート研究が必要」と付け加えた。
本研究の限界点として、サンプル数が少なく、日本国内の単一施設のコホート研究であったことから、一般化に制約があることが挙げられる。また、WGS解析はDKD集団のみを対象としており、健常者や腎障害のない糖尿病患者との比較が行われなかったため、本研究は記述的研究にとどまるものとされている。
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糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。
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10月 25 2024 DPP-4i既存治療の有無で腎予後に有意差
2型糖尿病患者の腎予後がDPP-4阻害薬(DPP-4i)処方の有無で異なるとする研究結果が報告された。同薬が処方されている患者の方が、腎機能(eGFR)の低下速度が遅く、末期腎不全の発症リスクが低いという。東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の佐藤倫広氏、同大学医学部内科学第三(腎臓内分泌内科)教室の橋本英明氏らが行ったリアルワールド研究の結果であり、詳細は「Diabetes, Obesity & Metabolism」に7月31日掲載された。
インクレチン関連薬であるDPP-4iは、国内の2型糖尿病治療薬として、プライマリケアを中心に最も多く処方されている。同薬は、基礎研究では血糖降下以外の多面的な効果が示唆されており、腎保護的に作用することが知られているが、臨床研究のエビデンスは確立されていない。過去に行われた臨床研究は、参加者が心血管疾患ハイリスク患者である、またはDPP-4i以外の血糖降下薬の影響が調整されていないなどの点で、結果の一般化が困難となっている。これを背景として佐藤氏らは、医療情報の商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いて、実臨床に則した検討を行った。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。2014~2021年のデータベースから、透析や腎移植の既往がなく、eGFR15mL/分/1.73m2超の30歳以上でデータ欠落のない2型糖尿病患者を抽出。eGFRが45mL/分/1.73m2以上のコホート(6万5,375人)ではeGFRの変化、eGFR45mL/分/1.73m2未満のコホート(9,866人)では末期腎不全への進行を評価アウトカムとして、ベースライン時点でのDPP-4iの処方(既存治療)の有無で比較した。
傾向スコアマッチングにより、患者数1対1のデータセットを作成。eGFR45以上のコホートは1万6,002のペア(計3万2,004人)となり平均年齢68.4±9.4歳、男性59.6%、eGFR45未満のコホートは2,086のペア(計4,172人)で76.5±8.5歳、男性60.3%となった。ベースライン特性をDPP-4i処方の有無で比較すると、両コホートともに年齢、性別、eGFR、各種臨床検査値、併存疾患、DPP-4i以外の血糖降下薬・降圧薬の処方などはよく一致していたが、DPP-4i処方あり群はHbA1cがわずかに高く(eGFR45以上は6.9±0.9対6.8±0.9%、eGFR45未満は6.8±1.0対6.7±0.9%)、服薬遵守率がわずかに良好だった(同順に84.1対80.4%、83.9対77.6%)。
解析の結果、eGFR45以上のコホートにおける2年後のeGFRは、DPP-4i処方群が-2.31mL/分/1.73m2、非処方群が-2.56mL/分/1.73m2で、群間差0.25mL/分/1.73m2(95%信頼区間0.06~0.44)と有意であり(P=0.010)、3年後の群間差は0.66mL/分/1.73m2(同0.39~0.93)に拡大していた(P<0.001)。ベースライン時に標準化平均差が10%以上の群間差が存在していた背景因子を調整した解析でも、同様の結果が得られた。
eGFR45未満のコホートでは、平均2.2年の観察期間中にDPP-4i処方群の1.15%、非処方群の2.30%が末期腎不全に進行し、カプランマイヤー法により有意差が認められた(P=0.005)。Cox回帰分析から、DPP-4iの処方は末期腎不全への進行抑制因子として特定された(ハザード比0.49〔95%信頼区間0.30~0.81〕)。
著者らは、「リアルワールドデータを用いた解析から、DPP-4iが処方されている2型糖尿病患者の腎予後改善が示唆された」と結論付けている。同薬の腎保護作用の機序としては、本研究において同薬処方群のHbA1cがわずかに高値であり、かつその差を調整後にもアウトカムに有意差が認められたことから、「血糖改善作用のみでは説明できない」とし、既報研究を基に「サブクリニカルに生じている可能性のある腎虚血や再灌流障害を抑制するなどの作用によるものではないか」との考察が述べられている。ただし本研究ではDPP-4i処方後の中止が考慮されていない。また、既存治療者を扱った研究デザインのため残余交絡の存在が考えられることから、新規治療者を対象とした研究デザインによる再検証の必要性が述べられている。
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糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。
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