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7月 14 2023 糖尿病腎症の病期が網膜症と黄斑浮腫の発症・重症度に関連
糖尿病腎症の病期が、糖尿病網膜症・黄斑浮腫の発症リスクおよび重症度と、独立した関連のある可能性を示すデータが報告された。JCHO三島総合病院の鈴木幸久氏、自由が丘清澤眼科(東京)の清澤源弘氏の研究によるもので、詳細は「Biomedicines」に5月22日掲載された。
かつて長年にわたって成人の失明原因のトップであった糖尿病網膜症(DR)は、近年の治療の進歩により失明を回避できることが多くなった。とはいえ、緑内障や加齢黄斑変性と並び、いまだ失明の主要原因の一角を占めている。また糖尿病ではDRが軽症であっても黄斑浮腫(DME)を生じることがある。黄斑は眼底の中央に位置し視力にとって重要な網膜であるため、ここに浮腫(むくみ)が生じるDMEでは視力が大きく低下する。DMEの治療も進歩しているが、効果が不十分な症例が存在すること、高額な薬剤の継続使用が必要なケースのあることなどが臨床上の問題になっている。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。一方、DRと同じく糖尿病による細小血管合併症に位置付けられている糖尿病腎症(DN)では、血圧上昇や浮腫が生じやすい。DRやDNはいずれも高血糖が主要なリスク因子だが、DNはそれに伴う高血圧や浮腫という高血糖とは異なる機序によっても、DRやDMEのリスクを押し上げている可能性がある。清澤氏らはこれらの点を、以下のケースシリーズ研究によって検討した。
研究対象は、三島総合病院の眼科を受診した2型糖尿病患者261人(平均年齢70.1±10.1歳、男性54.8%)。このうち127人(48.7%)にDR、64人(24.5%)にDMEが認められた。DMEが認められた患者は全てDRを有していた。
DR群と非DR群を比較すると、年齢、性別、BMI、血清脂質値、および高血圧や虚血性心疾患の有病率には有意差がなかった。一方、DR群の方が糖尿病罹病期間が長く、過去のHbA1cの平均値および最高値が高いという有意差があった。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が低く(56.2±26.4対67.1±17.0mL/分/1.73m2)、DNの病期が進行していた(1~5期の病期分類で2.4±1.2対1.4±0.6)。
次に、DRの発症・重症度、およびDMEの発症・重症度という4項目それぞれを目的変数とし、性別、糖尿病罹病期間、BMI、過去のHbA1cの平均値・最高値、血清脂質値、高血圧や虚血性心疾患の既往、およびRAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方を説明変数とする多重回帰分析を施行。その結果、糖尿病の罹病期間が長いことや平均HbA1cとともに、DNの病期がDRおよびDMEの発症と重症度の全てに、それぞれ独立して関連していることが明らかになった。
例えば、DME発症に対して、糖尿病罹病期間はオッズ比(OR)1.33(95%信頼区間1.01~1.75)、平均HbA1cはOR5.52(同1.27~24.1)、DNの病期はOR2.80(同1.37~5.72)だった。性別やBMI、血清脂質値、高血圧や虚血性心疾患の既往、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方は、DRおよびDMEの発症や重症度と独立した関連が示されなかった。HbA1c最高値はDRの発症についてのみ、有意な説明因子として抽出された。
このほか、単変量解析からは、eGFRはDRおよびDMEの発症や重症度と有意な負の相関があり、アルブミン尿は有意な正の相関があることが示された。RAS阻害薬やSGLT2阻害薬の処方は、いずれに対しても有意な関連が見られなかった。
以上を基に著者らは、「糖尿病腎症が糖尿病による網膜疾患の発症と進展に関与している可能性が考えられ、腎症の病期は糖尿病網膜疾患の予測因子となり得る」と結論付けている。
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7月 14 2023 小学生のコロナ感染リスクに近隣の社会経済環境が関連――大阪市での研究
自宅周辺の社会経済環境と、小学生の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染リスクとの関連が報告された。高学歴者の多い環境で暮らす小学生は感染リスクが低く、卸売・小売業の従事者が多い環境の小学生は感染リスクが高いという。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の大石寛氏(大学院生)、同大学スポーツ健康科学部の石井好二郎氏らの研究の結果であり、詳細は「Children」に4月30日掲載された。
居住地域の社会経済環境とCOVID-19感染リスクとの間に有意な関連があることは、既に複数の研究から明らかになっている。ただしそれらの研究の多くは海外で行われたものであり、またCOVID-19重症化リスクの低い小児を対象とした研究は少ない。日本は子どもの相対的貧困率が高いこと、および、当初は低いとされていた子どものCOVID-19感染リスクもウイルスの変異とともにそうでなくなってきたことから、国内の子どもたちを対象とした知見が必要とされる。これを背景として石井氏らは、大阪市内の公立小学校の282校の「学区」を比較の単位とする研究を行った。なお、大阪市内には生活保護受給率が全国平均の3倍を上回る地区が複数存在している。
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COVID-19に感染した小学生の数を目的変数、社会経済環境関連の指標を説明変数とし、共変量で調整後の解析で、大学卒業者が多く住んでいる学区では小学生のCOVID-19罹患率が有意に低いという負の相関が認められた〔罹患率比(IRR)0.95(95%信頼区間0.91~0.99)〕。一方、卸売・小売業従事者が多い学区では小学生のCOVID-19罹患率が有意に高いという正の相関が確認された〔IRR1.17(同1.06~1.29)〕。他者との対面の必要性の高いそのほかの職業従事者の割合やADIは、小学生のCOVID-19罹患率との有意な関連がなかった。
パンデミックの波ごとに解析した場合も、自宅近隣に卸売・小売業従事者が多いことは第4・5波で、小学生のCOVID-19罹患率と正の相関が認められた。また、解析対象とした第2~5波の中で最も罹患率の高かった第5波では、医療・社会福祉関連業の従事者が多い学区でも正の相関が見られ〔IRR1.16(1.05~1.28)〕、反対に大学卒業者が多い学区では負の相関が見られた〔IRR0.94(0.90~0.99)〕。このほかに第2波では、宿泊・飲食業の従事者が多い学区で小学生の感染リスクが3倍近く高かったことが分かった〔IRR2.85(1.33~6.43)〕。
以上より著者らは、「自宅近隣の社会経済環境が小学生のCOVID-19感染リスクと関連していることが明らかになった。特に、卸売・小売業従事者が多い地区で罹患率が高く、高学歴者が多い地区は罹患率が低い」とまとめている。また、ADIが有意な関連因子として抽出されなかったことから、「感染防止行動に必要な情報の収集、理解、評価とその実践につながる地域住民の実行力が、社会経済的な格差の有無にかかわらず、その地区の子どもたちのCOVID-19感染リスクを押し下げる可能性がある」と考察。「われわれの研究結果は、COVID-19感染リスクの地域格差を是正するための公衆衛生政策に有用な情報となり得る」と付け加えている。
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