COVID-19入院中のせん妄が死亡率と有意に関連――近畿中央呼吸器センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者のせん妄の発症率、リスク因子、および転帰との関連が報告された。国立病院機構近畿中央呼吸器センターの倉原優氏らの研究によるもので、詳細は「Internal Medicine」に2月26日掲載された。COVID-19入院中のせん妄発症は、院内死亡率に独立して関連しているという。

 せん妄は一過性の意識障害で入院中に発症しやすく、特に高齢者に多い。入院中のせん妄は一般に、入院期間の延長や予後の悪化と関連することが知られている。ただし、COVID-19での入院時のせん妄の実態はまだよく分かっていないことから、倉原氏らは以下の研究を行った。

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 解析対象は、COVID-19のため2020年4月~2021年9月に、同院に入院した全患者、連続600人〔年齢中央値61.0歳(四分位範囲49.0~77.0)、女性37.3%〕。ICU入室、機械的人工換気、体外式膜型人工肺(ECMO)のいずれかを要した場合、あるいはCOVID-19によって死亡した場合に「重症COVID-19」と定義した。また、せん妄の発症は、米国精神神経医学会の疾患診断基準(DSM-5)または医師の臨床判断に基づいて判定した。なお、同院の医師の9割以上が、緩和ケア継続教育プログラムを修了しており、全看護師が多職種せん妄対応プログラムを修了している。

 入院中にせん妄を発症した患者は、61人(10.2%)だった。そのうち95.1%に当たる58人は入院第1週にせん妄を発症し、他の3人は第2週に発症していた。せん妄を発症した患者は非発症患者に比べて、高齢で〔年齢中央値84.0歳(四分位範囲77.5~88.0)対56歳(同49.0~74.0)、P<0.01〕、心血管疾患、認知症、慢性腎臓病の既往者が多く、またCOVID-19が重症の定義に当てはまる割合(32.8%対11.3%)が高かった(すべてP<0.01)。一方、高血圧や糖尿病の有病率は有意差がなく、また性別(男女比)も有意差がなかった。

 検査データ関連では、炎症マーカー(CRP)や凝固マーカー(D-ダイマー)、および乳酸脱水素酵素(LDH)がせん妄を発症した患者で高く、有意差が認められた。治療内容に関しては、酸素投与(65.6%対53.6%、P=0.012)、呼吸困難に対するモルヒネ投与(14.8%対0.4%、P<0.01)の施行率が、せん妄発症患者で高かった。ステロイド投与や機械的人工換気の施行は、有意な差がなかった。また、せん妄を発症した患者は入院期間〔中央値18日(四分位範囲12~23)対11日(10~15)〕が長く、院内死亡率(24.6%対1.6%)が高かった(いずれもP<0.01)。

 多変量解析(強制投入法とステップワイズ法)の結果、せん妄の発症に独立して関連する因子として、高齢〔1歳ごとにオッズ比(OR)1.092~1.120〕、重症COVID-19(OR3.937~4.497)、認知症(OR5.279~8.046)、およびLDH高値(10IU/LごとにOR1.046~1.057)が抽出された。また、せん妄の発症は院内死亡率と独立して関連していた〔変数増減法でOR3.476(95%信頼区間1.105~11.900)、P=0.047〕。

 著者らは、「COVID-19入院患者でのせん妄発症率は高く、また転帰不良と関連している。パンデミック中に全てのCOVID-19患者に対して手厚いケアを行うことは困難だが、せん妄のリスクを認識して最適な管理を目指す必要があるだろう」と結論付けている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2022年4月4日
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