• 身体活動が少なすぎ/多すぎの双方がメンタルヘルス不良と関連――日本人での横断研究

     身体活動の量や時間とメンタルヘルスとの間に、U字型の関連があるとする研究結果が報告された。東京医科大学精神医学分野の志村哲祥氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Psychology」に1月13日掲載された。

     スポーツや運動、または仕事や家事なども含む「身体活動」は、一般的にはメンタルヘルスに良い影響を与えると考えられている。ただし、身体活動が多ければ多いほどメンタルヘルスがより良好になるのかという用量反応関係は不明。多すぎる身体活動がメンタルヘルスの悪化と関連しているとする報告もあるが、検証が十分行われておらず、最適な身体活動レベルも明らかになっていない。志村氏らはこのような状況を背景として、自記式アンケートを用いた日本人成人を対象とする研究を行った。

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     このトピックに関する既報研究を基に、有意な結果を得るための最適なサンプル数は105~651と計算された。有効回答率を50%と予測し、同大学の関係者を通じて募集された都内の一般住民(メンタルヘルス関連の治療を受けていない人)1,237人からアンケートの回答を得た。そのうちデータ欠落などのない有効回答者数は526人(平均年齢41.2±11.9歳、男性43.3%)だった。

     アンケートでは、身体活動レベルを国際標準化身体活動質問票(IPAQ)で把握。IPAQは、余暇時間での運動と、家事や仕事、移動のための身体活動を質問し、その回答から1週間当たりの身体活動の量(MET分/週)と身体活動の時間(時/週)を推計した。そのほかに、抑うつ(PHQ-9)、不安(STAI-Y)、心理的レジリエンス(CD-RISC)、ストレスによる睡眠への影響(FIRST)などを把握し、身体活動レベルとの関連を解析した。

     解析対象者全体の身体活動量は合計で平均2,480METs分(標準偏差±3,467METs分)/週で、身体活動時間は合計で平均10.4±14.3時間/週だった。なお、「METs」は運動量の単位で、例えば、料理は2METs、歩行は3METsに相当する。60分のウォーキングをすると、180METs分の運動量となる。

     解析の結果、身体活動レベル(量と時間の双方)とメンタルヘルス評価指標との間に線形の関連はなく、U字型の有意な関連があることが分かった。つまり、身体活動が多ければ多いほどメンタルヘルスの評価指標が良好になるわけではなく、少なくても多くても不良となりやすい可能性が示唆された。本研究で示された、メンタルヘルス評価指標が最も良好な値となる身体活動レベルは以下の通り。

     まず、身体活動量との関連では、うつレベルは6,953METs分/週、状態不安(一過性の不安)は5,277METs分/週、特性不安(不安を抱きやすい傾向)は5,678METs分/週、ストレスによる睡眠への影響は9,152METs分/週で、それぞれ最小となっていた。心理的レジリエンスに関しては、身体活動量と統計的に有意な関連は示されなかった。次に、身体活動時間との関連では、うつレベルは25.7時間/週、状態不安は21.6時間/週、特性不安は22.6時間/週、ストレスによる睡眠への影響は31.2時間/週、心理的レジリエンスは25.4時間/週で、それぞれ最小となっていた。

     この結果を著者らは、「身体活動レベルと、さまざまなメンタルヘルス評価指標は、線形の関連ではなく、U字型の関連であることが確認された。週に約21~31時間の身体活動(毎日3~4.5時間)、または5.3~9.2kMETs分/週の身体活動である場合に、最適なメンタルヘルス状態であり、このレベルを下回るか上回る身体活動は、メンタルヘルスの評価指標の悪化と関連していた」と総括している。5.3~9.2kMETs分/週の身体活動とは、体重が60kgの人の場合、毎日750~1,300kcal程度を消費する身体活動に相当する。志村氏は、「デスクワークの人はなるべく体を動かすことを意識することが大切であり、一方で、仕事でかなり体を使っている人は、オフにはゆっくり過ごしても良いのかもしれない」と述べている。

     なお、本研究の限界点としては、横断研究であるため因果関係は不明であること、研究参加者が大学関係者を介して募集されており、一般人口の代表とは言えないこと、身体活動レベルを主観的評価で判定していること、研究の実施が新型コロナウイルス感染症パンデミック前であり、現在は人々の身体活動量やメンタルヘルス状態に変化が生じている可能性のあることなどが、論文中に記されている。

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  • 覚醒剤使用受刑者の4人に3人は小児期に逆境体験があり、希死念慮と関連

     国内の覚醒剤使用による受刑者600人以上を対象とする調査から、小児期に逆境を体験している者の割合が高く、そのことが希死念慮や非自殺性の自傷行為のリスクの高さと関連していることが明らかになった。お茶の水女子大学生活科学部心理学科の高橋哲氏らの研究によるもので、詳細は「Child Abuse & Neglect」9月号に掲載された。

     小児期の逆境体験(adverse childhood experience;ACE)が、成人後の薬物使用リスクに関連のあることが報告されている。あらゆる犯罪の中で薬物使用は最も再犯率が高く、受刑者に対する治療介入に改善の余地がある可能性が指摘されている。一方、ACEは成人後の希死念慮や非自殺性の自傷行為(non-suicidal self-injury;NSSI)のリスクとも関連があり、また受刑者が釈放された後の主要な死因の一つが自殺であることも知られている。ただし、これらの関連は主として海外での研究から報告されたもので、国内での実態は不明点が多い。

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     このような背景のもと、高橋氏らは法務省法務総合研究所と国立精神・神経医療研究センター薬物依存部が共同で行った薬物使用犯罪者を対象とする調査のデータを用いた解析を行った。解析対象は、2017年7~11月に覚醒剤(メタンフェタミン)使用により全国78カ所(医療刑務所以外)の刑務所に入所した受刑者のうち、調査への参加拒否者や回答に不備のあった者を除外した636人。

     質問票により、18歳以前のACE体験の有無を調査。家庭機能に関する7項目(保護者の飲酒、薬物乱用、精神疾患、死別や離婚、受刑、家庭内暴力など)と、虐待に関する5項目(身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトなど)、計12項目を把握し、0~12点にスコア化して評価した。また、希死念慮およびNSSIの有無を把握した。NSSIについては、「自殺するつもりがなく、故意に自傷行為をしたことがあるか」との質問への回答で判断した。

     解析対象者は、平均年齢43.4±10.0歳、男性65.7%、累犯者73.7%であり、性別での比較からは、男性の方が高齢で未婚者が多く、累犯者率が高いという有意差が見られた。全体の4人に3人以上(76.1%)に一つ以上のACE体験が認められ、半数以上(54.1%)は複数のACE体験を報告していた。なお、先行研究によると、国内の一般人口のACE体験を有する割合は32%、世界21カ国の平均は38%とされており、今回の研究ではそれらよりもはるかに高い値が示された。

     ACEスコアは平均2.45±2.36で、女性(3.26±2.56)は男性(2.03±2.14)より有意に高値だった(P<0.01)。最も多く認められたACEは、親との死別または離婚であり、53.5%が該当した。希死念慮は28.9%(男性20.3%、女性45.4%)、NSSIは19.3%(男性8.1%、女性40.8%)が有しており、女性においてそれらの割合が高かった(いずれもP<0.001)。

     希死念慮を目的変数、年齢、性別、過去の受刑回数、ACEスコアを説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、女性〔調整オッズ比(aOR)2.84(95%信頼区間1.94~4.16)〕、ACEスコア〔aOR1.18(同1.09~1.27)〕が、それぞれ独立して希死念慮を有することに関連していることが分かった。また、NSSIについては、女性〔aOR6.96(同4.39~11.18)〕とACEスコア〔aOR1.18(同1.08~1.28)〕が有意な正の関連因子、年齢〔aOR0.96(同0.93~0.99)〕が有意な負の関連因子として特定された。希死念慮とNSSIを統合した解析では、女性〔aOR5.84(同3.36~10.17)〕とACEスコア〔aOR1.21(同1.10~1.34)〕が有意な関連因子だった。

     著者らは、「われわれの研究結果は、トラウマ体験に対する早期の予防と介入の重要性を示唆している。また、世代間の虐待の連鎖を断ち切るために、特に女性受刑者に対してジェンダーの特性を考慮した介入が必要と考えられる」と述べている。さらに、「現在、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりメンタルヘルス関連の問題が増加しており、違法薬物使用の潜在的なリスクが高まっているため、この問題への対策が急がれる」とも付け加えている。

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    HealthDay News 2022年8月29日
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  • 国内高校教師のメンタルヘルスリテラシーに改善の余地

     日本の高校教師のメンタルヘルスリテラシーは高いとは言えないとする論文が、「BMC Psychiatry」に9月30日掲載された。東京大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻身体教育学講座の佐々木司氏らが行った調査研究であり、同氏らは高校教師に対してメンタルヘルス関連の教育プログラムを提供する必要があると提言している。

     思春期は精神疾患の発症リスクが高い時期に当たり、この年齢の子どもは1日の多くを学校で過ごすことから、教師には生徒のメンタルヘルスの問題を認識し的確に支援する姿勢が求められる。しかし、海外からは、教師のメンタルヘルスリテラシー(MHL)は不十分だとする調査結果が報告されている。一方、国内では教師のMHLに関する研究がほとんど行われておらず、実態が不明。これを背景として佐々木氏らは、公立高校(27校)の教師を対象にMHLに関する調査を行った。調査に回答したのは参加校の全教師の53.3%に当たる665人で、男性が67.8%。

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     メンタルヘルスや精神疾患に関して設定された、20問の質問に対する平均正答率は58.1±18.6%だった。個々の質問の正答率を見ると、例えば「思春期は精神疾患の発症が急増する時期である」を「正しい」と正答したのは51.7%だった。同様に「うつ病の生涯有病率は10%以上」は37.8%、「統合失調症の生涯有病率は約1%」は19.8%のみが「正しい」と正答し、いずれも不正解が目立った。また「精神疾患の生涯有病率は約20人に1人」を「間違い」と答えられた教員は21.9%しかいなかった(正解は5人に1人)。

     「うつ病」、「統合失調症」、「パニック障害」の症例を数行にまとめた文を読み、それぞれの疾患名を回答する質問(前記3疾患に「社会不安障害」、「疾患ではない」、「分からない」を加えた6者択一)では、同順に54.1%、35.3%、78.0%の正答率だった。また、この設問での「うつ病」の症例提示文である「生徒Aは医務室で頭痛や腹痛、倦怠感を訴えた。睡眠に問題があり、食欲がなく、好きなテレビ番組が楽しくなくなり、勉強に集中できないという。最近、遅刻が増えた」について、約4人に1人はこれを「医学的問題ではなく個人の弱さに関連すること」と回答した。

     さらに、「この生徒Aに対して、適切に支援する自信はあるか」という質問には、80.1%が「自信がない」と回答した。また、「メンタルヘルスの知識を生徒に教える自信はあるか」には、88.9%が「自信がない」と回答した。

     多変量解析の結果、女性教師は男性教師に比較し、うつ病、統合失調症、パニック障害の症例提示文からの疾患名の正答率が有意に高かった。また、20~30代の教師は40~60代の教師に比較し、統合失調症の正答率が有意に高かった。うつ病とパニック障害の正答率は、年齢層による有意差はなかった。なお、メンタルヘルス・精神疾患関連の20の質問に対する正答率は、性別や年齢層による有意差がなかった。

     著者らは本研究を「日本の高校教師のMHLを調査した初の研究」と位置付け、「日本の高校教師のMHLは低いことが明らかになった。MHLの低い教師は生徒のメンタルヘルスの問題に気付かない可能性があり、仮に気付いたとしても効果的な支援が難しいと考えられる。教師のMHLを高めるために、教師養成課程に教育プログラムを組み込む必要があるのではないか」と述べている。

     なお、海外からの報告と本研究との比較から、日本の高校教師は特に統合失調症に関する認識が低いことが明らかになった(症例提示での正答率が欧州の研究では6~7割に対し、本研究では前述のように35.1%)。この点について著者らは、かつて使われていた「精神分裂病」からの病名変更が、疾患の正しい理解という点では妨げとなった可能性や、国内の統合失調症患者の入院期間が長いために、社会生活で出会う機会が少ないことが影響しているのではないか、との考察を加えている。

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    HealthDay News 2021年11月8日
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  • ゲーム内のアイテム購入が多動性や不注意と関連――国内中学生の調査

     オンラインゲームを有利に進めるために、ゲームの中で販売されているアイテムを購入するという行為と、行動特性やメンタルヘルス状態との関連が報告された。弘前大学教育学部の新川広樹氏(研究時点の所属は同大学大学院医学系研究科子どものこころの発達研究センター)、川崎医療福祉大学医療福祉学部の横光健吾氏らが、日本人中学生を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Frontiers in Psychology」に8月3日掲載された。

     オンラインゲーム市場は世界中で急速に拡大しており、特に日本での成長が著しい。2019年の統計では、世界のオンラインゲームによる収益の23%(14.5億ドル)を日本が占めていたと報告されている。オンラインゲームの特徴として、ゲームの中で販売されているアイテムを購入することで、有利にプレーを進められることが挙げられる。例えばルートボックス(国内では「ガチャ」と呼ばれる)という手法で購入すると、ゲーム攻略上の利便性が異なる多くのアイテムの中から、ランダムに選択されたアイテムを使えるようになる。

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     このようなオンラインゲームの持つ射幸性が、ギャンブル依存症のリスクにつながる可能性が指摘されている。特に未成年は成人に比較して射幸心を煽る刺激に脆弱であり、影響がより大きいと考えられる。ただし、国内の未成年のオンラインゲーム中のアイテム購入の実態や、行動特性、メンタルヘルスとの関連は明らかになっていない。このような現状を背景として新川氏らは、国内の中学生を対象とする以下のアンケート調査を行った。

     調査に回答したのは2校の中学校の生徒344人。地域の教育委員会の協力を得て、オフラインで実施された。データ欠落のない335人(男子51.6%。1年生100人、2年生138人、3年生97人)を解析対象とした。アンケートではオンラインゲームのプレー時間やアイテム購入の経験を質問するとともに、行動特性やメンタルヘルス状態を「子どもの強さと困難さアンケート」(SDQ)および「こころとからだの質問票(思春期版)」(PHQ-A)で評価した。

     結果について、最初にオンラインゲームのプレー状況を見ると、対象者の大半が1日1時間以上プレーしていた(平日は70.1%、休日は83.9%)。また、37.0%は平日に1~2時間プレーし、22.4%は休日に2~3時間プレーしていた。

     アイテム購入経験については、全体の30.7%が経験ありと回答した。このうち16.7%はお小遣の収支を考えて計画的に購入していたが、14.0%は収支を考慮せずに購入(計画外購入)した経験があった。なお、お小遣の平均は月額2,347円だった。アイテムを計画外購入したことがあると回答した生徒の23.4%は、お小遣の月額平均を上回る金額を購入に充てていた。

     次に、アイテム購入経験がない群(非購入群、232人)、計画的購入群(56人)、計画外購入群(47人)の3群に分類。これら3群を比較すると、お小遣の平均金額には有意差がなかったが、休日のプレー時間は非購入群に比較しアイテム購入経験のある2群は有意に長かった。平日のプレー時間には有意な群間差がなかった。

     行動特性やメンタルヘルス状態には、以下のような群間差が認められた。

     まず、SDQのサブスケールのうち、行為の問題は、非購入群、計画的購入群、計画外購入群の順にスコアが高く、それぞれの群間差が有意だった。多動/不注意は、非購入群に対してアイテム購入経験のある2群は、購入が計画的か否かにかかわらず、有意にスコアが高かった。仲間関係の問題は、非購入群と計画的購入群には有意な群間差がないものの、計画外購入群は有意にスコアが高かった。PHQ-Aについては、有意な群間差がなかった。

     本研究について著者らは、「横断的研究であるため因果関係については言及できず、将来の縦断的研究が望まれる」としつつ、「この結果は、オンラインゲーム内でアイテムを計画せずに購入する未成年の行動特性や、メンタルヘルス上の問題の理解に役立つ」と述べている。

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    HealthDay News 2021年9月27日
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  • 食事の時間が不規則な人にはメンタル不調者が多い――国内労働者対象調査

     食事を取るタイミングが不規則な人は、メンタルヘルス状態が良くないという関連性を示唆するデータが報告された。早稲田大学理工学術院の田原優氏らが、日本人労働者4,000人以上を対象に行ったWebアンケート調査の結果を解析したもので、詳細は「Nutrients」に8月13日掲載された。夜勤や睡眠障害などの影響を及ぼし得る因子を調整してもなお、食事を取る時刻の乱れが主観的メンタルヘルスの悪さと有意に関連していたという。

     朝食の欠食や睡眠前の摂食が、肥満や糖尿病などの身体疾患のリスク因子であるとする研究報告は少なくない。ただし、食事を取るタイミングの不規則性に着目した研究は少なく、特にメンタルヘルスとの関連は明らかになっていない。今回発表された研究は、ライオン株式会社が調査を実施し、田原氏らが調査結果を解析したもので、日本各地から9,000人近くが回答。そのうち年齢(20~69歳)や有職者であることなどの適格条件を満たす4,490人分のデータが解析された。

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     解析対象者は平均年齢47.4±0.1歳、男性が73.3%、BMIは22.69±0.05であり、15.5%は夜間労働者だった。アンケートは最大318問の質問項目で構成され、食習慣、身体活動習慣、性格特性、主観的健康感、主観的幸福感、メンタルヘルス状態、睡眠の質などを評価。このうち食習慣については、食事摂取時刻の頻繁な変動、噛む回数、食事に充てる時間、外食頻度などを1~7点のスコアで回答してもらった。また、メンタルヘルス状態の評価には、事業所に義務付けられているストレスチェック制度で用いられている手法を利用した。

     「食事摂取時刻が不規則か?」との質問に対して、1~4点(全くそう思わない~どちらとも言えない)と回答した人を食事時刻が不規則でないとすると、3,410人(75.9%)が該当。一方、5~7点(ややそう思う~強くそう思う)と回答した食事時刻が不規則な人は1,080人(24.1%)だった。

     食事時刻が不規則な人は、そうでない人に比較して年齢が若く(45.36対48.06歳)、夜間労働者の割合が高く(28.4対11.4%)、主観的幸福感が低い(SWLSという35点満点のスコアで16.35対17.52点)という有意差が見られた(いずれもP<0.001)。男女比やBMIは差がなかった。

     また食事時刻が不規則な人は、神経症傾向と正の相関、誠実性とは負の相関があり、身体活動の頻度や主観的健康感が低く、睡眠障害のスコアは高く、メンタルヘルス状態が不良だった。相関係数を比較すると、主観的健康感の低さよりもメンタルヘルス状態が良くないことの方が、食事時刻の不規則性との相関が強かった。食習慣との関連では、食事時刻が不規則な人は、噛む回数や野菜摂取量が少なく、食事に充てる時間が短く、朝食の欠食や外食頻度が高く、食後から睡眠までの時間が短く、塩辛い物をよく食べるといった傾向が明らかになった。

     次に、主観的な健康アウトカムを目的変数、食事時刻の不規則性を説明変数とし、年齢、性別、BMI、身体活動習慣、夜勤の有無、主観的幸福感、睡眠の質を交絡因子とするロジスティック回帰分析を施行。その結果、評価した大半の健康アウトカムが、食事時刻の不規則性と有意に関連していた。これにはサンプルサイズが大き過ぎることの影響が考えられたため、対象を無作為に抽出し1,405人に絞り込んで解析。

     すると、主観的健康アウトカムのうち、身体面の健康(体重や血清脂質・血糖値・血圧などが心配か、体の痛みはあるか、病気になりやすいかなど)の大半は有意性が消失したのに対し、メンタルヘルス関連の健康(とても疲れている、だるい、緊張している、気になることがある、気分の落ち込み、食欲低下など)の大半は有意性が保たれていた。よって、食事時刻が不規則であることは、身体的な健康の悪化を介せず直接的にメンタルヘルスの悪化につながる可能性が考えられた。

     これらの結果から著者らは、「食事のタイミングが不規則なことは、主観的なメンタルヘルスが不良であることの良いマーカーであることが示唆される」と結論付け、「職場での健康管理に、食事のタイミングを規則的にするという介入も必要ではないか」と提言している。

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    HealthDay News 2021年9月21日
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  • 緑地の存在が自殺リスクの低さと関連――初の全国調査

     日本国内の全ての市区町村の公園や森林などの緑地と、自殺による死亡率との関連を解析した研究結果が報告され、緑地の存在が近隣住民の自殺リスクの低下につながっている可能性が示された。早稲田大学政治経済学術院の上田路子氏らの研究によるもので、詳細は「Social Science & Medicine」8月号に掲載された。

     緑地の多さがその地域に住む人々のメンタルヘルスに良い影響を与えている可能性を指摘した研究報告は少なくない。しかし、緑地の多さと自殺との関連は十分検討されていない。これを背景として上田氏らは1975年までデータを遡り、緑地と自殺リスクとの関連に関する初の全国調査を行った。

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     調査対象は、国内の全ての市区町村(合併などによる境界線の変化を考慮に入れた2015年の情報に基づく1,741)。政府統計に基づき、大都市(43)、中小都市(790)、農村(908)に分類。市区町村の規模により影響は異なる可能性があることから、それぞれの分類ごとに、性別・年齢層別に緑地の多さと自殺による死亡率との関連を比較検討した。分析には国勢調査の実施に合わせて1980年から2010年までの10年ごとのデータを用いた。

     緑地の多さの評価には、農林水産省などのデータに基づき全ての自然/人工公園8万4,370カ所と森林について、各調査年につき市区町村ごとに人口当たりの数と面積を算出し変数として用いた。自殺による死亡率は、厚生労働省のデータに基づき、市区町村ごとに人口10万人当たり調査年を中心とした10年間の平均値を算出し(例えば1980年のデータには1975~1984年の平均値を使用)、その対数変換した値を分析に用いた。なお、18歳未満、外国人または国外で死亡した日本人、死亡場所の情報がない人のデータは解析から除外した。

     解析に際しては、自殺リスクに影響を及ぼし得る以下の要因を調整した。人口密度、産業構造(第一・二次・三次産業の人口比)、収入(1人当たりの税収)、失業率、および人口当たりの単身世帯数、離婚・結婚件数、居住外国人数、精神科病院数。また、市区町村および各調査年に固有の要因の影響も調整した。

     1975~2014年の自殺による死亡者数は、88万6,440人であった。自殺による死亡率の全体的な傾向として、日本の北東部と南西部で高く、男性は女性より高かった。緑地の多さと自殺死亡者率との間には、以下のような有意な関連が存在した。

     まず、大都市では、人口当たりの公園の数が多いほど、65歳以上の女性の自殺死亡者率(人口10万人当たり死亡率の対数変換値)が低かった(係数-1.24±0.19、P<0.001)。推計結果は人口当たりの公園の数が1標準偏差分多いごとに、当該グループの自殺死亡者率が約24.8%少ない傾向にあり、10万人当たり自殺死亡者数は8.1人少ないことを示唆している。そのほかにも、18~39歳の男性(-0.51±0.18、P<0.01)、同女性(-0.62±0.18、P<0.001)、40~64歳の女性(-0.39±0.20、P<0.05)、65歳以上の男性(-0.64±0.22、P<0.01)で、人口当たりの公園の数と自殺死亡者率の低さの有意な関連が認められた。一方、公園や森林の面積とは有意な関連がなかった。

     続いて中小都市では、公園の面積の広さが、40~64歳の女性(-4.19±1.97、P<0.05)、65歳以上の女性(-5.08±1.37、P<0.001)の自殺死亡者率の低さと有意に関連し、人口当たりの公園の多さは65歳以上の男性(-0.07±0.03、P<0.05)の自殺死亡者率の低さと有意に関連していた。森林の面積とは有意な関連がなかった。

     農村では、公園の面積や人口当たりの公園の数は、自殺死亡者率との間に有意な関連がない一方で、森林の面積の広さが自殺死亡者率の低さと関連していた。具体的には、65歳以上の男性の自殺死亡者率については森林面積が有意に負の関係にあった(-3.44±1.73、P<0.05)。これは人口当たりの森林面積が1標準偏差分多いごとに、自殺死亡者率が約5.5%低下して、10年で10万人当たり14.9人減少することを意味する。また、40~64歳の男性も森林面積の広さが自殺死亡者率の低さと有意に関連していた(-3.32±1.35、P<0.05)。

     著者らは、「都市部の公園と農村の森林は自殺死亡率に対する保護効果があるようだ」と結論付けるとともに、本研究では検討対象に含めなかった未成年者について今後の研究が必要としている。

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    HealthDay News 2021年8月10日
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  • 孤立している高齢者のメンタルを犬が救う?――大田区民での調査

     社会的に孤立した生活の高齢者はメンタルヘルスが悪化しやすいことが知られているが、犬を飼っている人や過去に飼ったことのある高齢者は、そのリスクが低いという研究結果が報告された。一方、猫を飼うことには、そのような効果が認められなかったという。東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏らの研究によるもので、詳細は「Animals」に2月24日掲載された。

     ペットを飼うことによるメンタルヘルスへの影響を検討した研究は少なくないが、社会的に孤立した状態の高齢者での研究は少ない。池内氏らは、そのような高齢者でもペットを飼うことのメリットがあるとの仮説を立て、東京都大田区の住民を対象に行われている「大田元気シニアプロジェクト」のデータを用いて以下の検討を行った。

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     2016年8月に大田区在住の65~84歳で要介護状態でない高齢者1万5,500人にアンケートを郵送。得られた回答1万1,925件(回答率76.9%)から、記載内容に不備のあるものなどを除き、9,856人分の回答を解析対象とした。対象者の平均年齢は79.9±5.5歳、50.1%が女性であり、19.6%は独居だった。また93%以上の人は、移動や買い物、金銭管理などを自分自身でできると回答した。

     「友人や隣人と会ったり外出したりする頻度」、「電話で友人や隣人と話す頻度」などの4つの質問に対する全ての回答が「週に1回以下」だった場合に、「社会的に孤立している」と定義すると、家族と同居している人でのその割合は29.7%、独居の人では25.3%だった。

     メンタルヘルス状態は、世界保健機関による指標(WHO-5)で評価した。これは主観的な幸福感を25点満点でスコア化するもので、点数が低い場合にうつ傾向が強いと判定される。本研究では13点未満をメンタルヘルスが不良と定義したところ、27.7%がこれに該当した。

     ペットの飼育経験については、14.1%が現在、犬または猫を飼っており、29.7%は過去にいずれかを飼っていた時期があり、56.2%は犬や猫を飼ったことがなかった。

     これらのデータを基に、社会的孤立やペットの飼育経験とメンタルヘルス状態との関連を、多重ロジスティック回帰分析により検討した。なお、メンタルヘルス状態に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、独居/同居、収入、居住地域)は調整した。

     まず犬の飼育経験の有無で比較すると、犬の飼育経験があり社会的に孤立している高齢者に比べ、犬の飼育経験がなく社会的に孤立している高齢者は、メンタルヘルス不良の起こる可能性が有意に高いことが明らかになった〔オッズ比(OR)1.22、95%信頼区間1.03~1.46〕。その一方で、猫の飼育経験の有無で比較した場合、メンタルヘルス不良の起こる可能性に有意な差はなかった(OR1.11、同0.90~1.37)。

     なお、社会的に孤立していない高齢者では、犬や猫の飼育経験の有無にかかわらず、メンタルヘルス不良に該当する確率が、ペットの飼育経験があり社会的に孤立している高齢者より有意に低かった。

     この結果を基に著者らは、「犬の飼育経験がある社会的に孤立した高齢者のメンタルヘルス状態は、飼育経験がない人よりも良好と言える」と結論付けている。なお、猫の飼育経験と犬の飼育経験とで異なる結果となった理由については、犬を散歩させる習慣がメンタルヘルスに好影響をもたらす可能性や、犬は人間との豊かな意思疎通が可能であることが関係しているのではないかと考察している。

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    HealthDay News 2021年4月19日
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  • SNS利用頻度とメンタルヘルスへの影響――都民対象の調査

     ソーシャルネットワークサービス(SNS)の利用とメンタルヘルスとの関連が報告された。メンタルヘルス状態はLINE利用者で良好であり、一方でTwitter利用者は良くない傾向が見られるという。東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に3月3日掲載された。

     これまでの研究から、メンタルヘルスの維持には他者との交流が重要であることが分かっている。しかし、近年急速に普及してきたSNSでの交流が、メンタルヘルスの維持に有効であるかについては明らかでない。そこで桜井氏らは、都民を対象としてアンケート調査を行い、SNS利用の実態を把握するとともに、メンタルヘルスとの関連を調査した。

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     無作為に抽出した都民2万1,300人にアンケートを郵送、回答の得られた9,250人(回答率43.3%)から内容が不完全なものを除外し、8,576人を解析対象とした。評価項目は、主観的幸福感(WHO-5スコア)、悩みや抑うつ(K6スコア)、および孤独感(よく感じる~ほとんど感じないの四者択一)という3項目。なお、SNS利用頻度は、閲覧と発信に分けて、「毎日」「週に数回」「月に数回」「使用しない」の4つのカテゴリーに分類し、閲覧もしくは発信が週に数回以上を「頻繁な利用」と定義した。また、解析は年齢により若年(18~39歳の2,543人)、中年(40~64歳の3,048人)、高齢者(65歳以上の2,985人)という3つの層に分けて行った。

     最初に、SNSを利用するための機器(スマートフォン、タブレット、パソコン)の所有率を見ると、若年層はほぼ100%、中年層も95%以上であり、高齢者でも62.3%に上った。次に、利用しているSNSの種類を見ると、全世代でLINEが最も多く、Twitter、Instagram、Facebookの順に続いた。LINEは60代の半数、70代の3分の1が利用していた。

     メンタルヘルスとの関連は、結果に影響を与え得る因子(性別、年齢、教育歴、生活環境、併存疾患、主観的健康感、経済状態、外出頻度、対面での対話や電話といったSNS以外の従来型コミュニケーションの頻度など)で調整後、以下のような結果が得られた。

     まず、主観的幸福感については、若年層のInstagramの頻繁な閲覧(B=0.89、95%信頼区間0.43~1.36)、中年層のFacebookの頻繁な発信(B=1.00、同0.15~1.84)が、主観的幸福感の高さと関連していた。また高齢者の場合、LINEの頻繁な発信(B=0.85、同0.41~1.29)および閲覧(B=0.97、同0.51~1.42)が、主観的幸福感の高さと関連していた。

     次に、悩みや抑うつについては、若年層のInstagramの頻繁な閲覧(B=-0.88、同-1.30~-0.45)、中年層のLINEの頻繁な発信(B=-0.52、同-0.87~-0.16)が、悩みや抑うつ傾向が低いことと関連していた。しかしその反対にTwitterの頻繁な利用は、若年層(発信B=0.83、同0.34~1.32。閲覧B=0.72、同0.33~1.12)と、中年層(発信B=0.98、同0.15~1.80。閲覧B=0.75、同0.34~1.17)ともに、うつや不安傾向が強いことと関連していた。高齢者では、SNSの利用と悩みや抑うつ傾向との関連は認められなかった。

     最後に、孤独感については、中年層のTwitterの頻繁な発信〔オッズ比(OR)2.22、同1.35~3.65〕と閲覧(OR1.70、同1.28~2.25)は、いずれも孤独感を感じる割合が高いことと関連していた。また高齢者のTwitterの頻繁な発信も、同様の関連が見られた(OR14.3、同4.00~51.2)。若年層では、SNSの利用と孤独感との関連は認められなかった。

     このほか、SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)が少ない人は、年齢層を問わず、全てのメンタルヘルスの指標が悪い傾向が認められた。

     本研究の結果について著者らは、「横断的な研究であり、因果関係を示したものではない」としている。その上で、「顔の見えるFacebookやLINE、または、肯定的なイメージのやりとりが主体になることの多いInstagramであれば、メンタルヘルスの維持に役立つ可能性がある。他方、匿名性と自由度の高いTwitterは、その逆の影響が現れる危険性を含んでいる」と考察し、「バランスのとれたSNS利用が必要と言える」と結論付けている。

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    HealthDay News 2021年3月22日
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  • メンタル不調に市販薬での治療は是か非か――国内3千人の調査

     不眠や気分の落ち込みなどのメンタルヘルス不調時に、医療機関を受診せず、市販薬(OTC)を中心とするセルフメディケーションで対処することについて、国内ではその是非を問われることが多い。しかし、メンタルヘルス不調時のセルフメディケーションの実態がそもそも明らかになっておらず、実のある議論が進みにくいのが現状。そこで、千葉大学社会精神保健教育研究センターの椎名明大氏らは、このテーマに関する一般市民の意識調査を行い、その解析結果を「PLOS ONE」に1月25日報告した。

     この調査は2019年10月に、Webアンケートサービス「楽天インサイト」を用いて行われた。調査回答時点でメンタルヘルス上の問題を抱えている「患者群」、過去にそのような問題を抱えていたことがある「元患者群」、そのような経験のない「非患者群」が、それぞれ1,000人(合計3,000人)になった時点で回答受付けを終了した。なお、本人または血縁者にメンタルヘルスの専門家や製薬企業社員がいる人は除外した。

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     取り上げたメンタルヘルス症状は、不安、うつ、不眠、幻覚、その他の5項目。これらの症状の経験者数は、患者群では740人、780人、732人、84人、75人であり、元患者群では610人、764人、618人、39人、37人だった。OTCに対するイメージなどを評価してもらい、その回答を前記の3群で比較したところ、以下のような結果が得られた。

     まず、不眠症状の有無で二分すると、経験のある人(1,350人)は経験のない人(650人)に比べて、OTCの有効性を否定的に捉えていた。ただし、不眠症状に対して実際にOTCを用いたことのある人(216人)と、用いたことのない人(1,134人)の比較では、評価に有意差がなかった。また、OTCの安全性についての評価は、OTCを利用したことがある人の方が肯定的だった(いずれもP<0.001)。

     次に、メンタルヘルス症状に対するOTCのメリットについては、「不調時に柔軟に対応できる」という意見に対して、患者群の259人、元患者群の294人、非患者群の213人が同意し、元患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった(P<0.001)。また、「OTCは安全である」に対しては患者群の169人、元患者群の145人、非患者群の117人が同意し、患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった(P<0.01)。

     一方、デメリットについては、「診察を受けずに薬剤を正しく選択することが困難」という意見に対して、患者群の652人、元患者群の647人、非患者群の523人が同意し、患者群と元患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった。また、「依存のリスクがある」に対しては患者群の540人、元患者群の529人、非患者群の413人が同意し、患者群と元患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった。「危険である」に対しては患者群の449人、元患者群の390人、非患者群の350人が同意し、患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった(いずれもP<0.001)。

     これらの結果から著者らは、「一般市民はメンタルヘルス不調の治療にOTCが向いていないと考える傾向があるが、OTCを使用したことのある人は、薬効を否定的に捉えていないようだ」との考察を述べている。また、不眠症に対してOTCを用いることにリスクを伴うとの回答が多いものの、やはりOTC使用経験のある人では、そのような捉え方は多くはなかったという。

     結論として、「メンタルヘルス関連セルフメディケーションのニーズは限定的と考えられる」とまとめている。その上で、国内では医師教育課程でOTCがほとんど取り上げられないこと、OTC以外にもオメガ3脂肪酸やビタミンDなどメンタルヘルスの維持・改善に有効な成分が存在することなどを指摘し、この領域のセルフメディケーションを推進する余地があることに言及。「適切なセルフメディケーションの普及のため、さらなる研究と教育が必要」と述べている。

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    HealthDay News 2021年2月22日
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  • EPAが人を幸せにする?――日本人女性医療福祉職者での検討

     魚を食べると幸せになれるかもしれない――。日本人女性を対象に行った研究から、魚油に多く含まれている「エイコサペンタエン酸(EPA)」の血中濃度が高い人ほど、幸福感が高いという関連が報告された。ただし、同じように魚油に多く含まれている「ドコサヘキサエン酸(DHA)」については、やや異なる結果が示された。両者はいずれもオメガ3(ω3)脂肪酸という必須脂肪酸だが、メンタルヘルスへの影響は同等でない可能性がある。

     この研究は、金沢大学医薬保健学域の坪井宏仁氏らが、女性医療福祉職者を対象に行ったもので、詳細は「Nutrients」に11月11日掲載された。ω3脂肪酸には心臓血管系の保護作用があることが知られているが、メンタルヘルス上のメリットも指摘されている。しかしそれらの研究の大半はEPAとDHAを区別していない。EPAの血中濃度はDHAよりも低く、脳を構成する脂質はほとんどがDHAとアラキドン酸であるが、神経系への影響はDHAよりも強い可能性が基礎研究から示されている。そこで坪井氏らは、両者を区別したうえで、主観的幸福感や、やり甲斐との関連を検討した。

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     研究の対象は、静岡県内の複数の医療関連施設の女性看護師および介護福祉関連職員、計140人。年次健診に合わせて、主観的幸福感(Subjective Happiness Scale;SHS)とやり甲斐(Visual Analogue Scaleで評価)を調査した。乳び血清のためω3脂肪酸の測定に影響が生じる可能性のある参加者などを除外し、133人のデータを解析対象とした。

     解析対象者の平均年齢は45.4±13.2歳で、閉経前の人が53.4%を占め、ω3脂肪酸濃度はDHAが414.7±150.5μmol/L、EPAが184.5±113.1μmol/Lであり、体内でDHAやEPAに変換されるα-リノレン酸(ALA)は81.8±30.8μmol/Lだった。なお、以下に記す結果について、論文中ではω3脂肪酸濃度を多価不飽和脂肪酸に占める割合(%)との関連で述べているが、坪井氏によると実測値で検討しても同様の関連が認められるという。

     年齢、BMI、閉経前か後か、身体活動習慣、間食習慣で調整した上で、ω3脂肪酸と幸福感や、やり甲斐との関連を解析。その結果、DHAとEPAは、幸福感ややり甲斐と有意な正の相関が認められた。一方、ALAは幸福感との相関はなく、やり甲斐とは有意な負の相関が認められた。幸福感に対する相関係数は、DHAがr=0.20、EPAがr=0.27であり、EPAの方が相関が強かった。なお、やり甲斐に対する相関係数は、DHAがr=0.21、EPAがr=0.20であり、ALAはr=-0.30。

     次に、幸福感を従属変数とする回帰分析を施行。すると、EPAとの相関はβ=0.25(P=0.03)で引き続き有意だったが、DHAはβ=0.13(P=0.19)となり、有意性が消失した。また、月経のある参加者は閉経後の人よりも、幸福感が高かった。

     以上のように、本研究ではEPAとDHAとでは幸福感との関連に差が存在することが示された。このような差が生じる背景について、著者らは、中枢神経系における両者の作用機序の違いを述べている。EPAの代謝物は、幸福感を高めるカンナビノイド受容体への親和性がDHA代謝物より圧倒的に高いこと、また神経機能を阻害する炎症に関わる接着分子(VCAM-1やICAM-1)の働きを低下させる機能が影響しているのではないかと考察している。

     著者らは今回の研究を、「幸福感とDHA、EPAの関係を個別に検討した初めての解析」と位置付けている。そして、横断研究であるために因果関係は不明なものの、「EPAがわれわれの幸福感の維持に多少なりともメリットがあるかもしれない」と、今後の研究に期待を示している。

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    HealthDay News 2020年12月21日
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