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9月 26 2023 糖尿病教育入院後の血糖管理に性格特性の一部が独立して関連
糖尿病教育入院患者を対象として、性格特性と退院後の血糖コントロール状況との関連を検討した結果が報告された。ビッグファイブ理論に基づく5因子のうち、神経症傾向のスコアと、退院3カ月後、6カ月後のHbA1c低下幅との間に、独立した負の相関が見られたという。宮崎大学医学部血液・糖尿病・内分泌内科の内田泰介氏、上野浩晶氏らの研究によるもので、詳細は「Metabolism Open」6月発行号に掲載された。
糖尿病は患者の自己管理が治療(血糖管理)の良し悪しを大きく左右する疾患であり、その自己管理をどの程度徹底できるかは、個々の患者の性格特性によってある程度左右される可能性が考えられる。ただし、過去に行われたこのトピックに関する研究結果は一貫しておらず、議論の余地が残されている。また、それらの研究は主として外来患者を対象に実施されてきている。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。一方、糖尿病と診断されてから間もない患者や、外来治療を継続しても血糖管理不良が続く患者に対して、短期間入院してもらい、糖尿病治療に必要な知識や方法を集中的に指導する「教育入院」が行われる。その教育入院の効果にも、性格特性が関係している可能性が想定されるが、これまでのところ明らかにされていない。内田氏らは本研究を、「糖尿病教育入院患者の性格特性と退院後の血糖管理状況との関連を検討した、初の縦断的研究」と位置付けている。
研究対象は、2021年の1年間に同大学附属病院や古賀総合病院で糖尿病教育入院を受けたHbA1c7.5%以上の患者のうち、退院後6カ月間追跡可能だった117人。性格特性は、ビッグファイブ理論の5因子をそれぞれ1~7点のスコアで評価し、入院時のHbA1c、および退院1、3、6カ月後時点のHbA1c低下幅との関連を解析した。
対象者の入院時点の主な特徴は、平均年齢60.4±14.5歳、男性59.0%、2型糖尿病82.9%、罹病期間11.4±10.5年、BMI24.9±5.1で、性格特性を表すスコアは、神経症傾向3.9±1.4、外向性4.0±1.4、開放性3.9±1.0、協調性5.3±1.0、勤勉性3.8±1.3。HbA1cは、入院時が10.2±2.1%であり、退院1カ月後は8.3±1.4%、3カ月後7.6±1.4%、6カ月後7.7±1.5%と、有意に改善していた。
入院時のHbA1cや退院後のHbA1c低下幅を目的変数とし、年齢、性別、病型、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、治療内容(1日当たりの経口・注射薬の投与回数)、および性格特性を説明変数とする重回帰分析の結果、性格特性は入院時のHbA1c、および退院1カ月後時点のHbA1c低下幅との有意な関連は認められなかった。また、性格特性の各因子のスコアの中央値で高値群と低値群に二分した上で、退院1カ月後時点のHbA1c低下幅を比較した結果も、群間に有意差はなかった。
それに対して、退院3、6カ月後時点のHbA1c低下幅は、神経症傾向のスコアと独立した負の関連がある(神経症傾向が強いほどHbA1cが大きく改善している)ことが明らかになった。具体的には、退院3カ月後時点のHbA1c低下幅との関連はβ=-0.192(P=0.025)、退院6カ月後時点はβ=-0.164(P=0.043)だった。また、神経症傾向のスコアの中央値で二分して比較すると、退院3カ月後時点のHbA1c低下幅はスコア高値群の方が有意に大きく(P=0.034)、退院6カ月後時点も境界域の有意差が認められた(P=0.050)。なお、神経症傾向以外の性格特性は、いずれの時点のHbA1c低下幅とも有意な関連がなかった。
これらの結果は、教育入院期間中に行われる集中的な療養指導が、患者の性格特性にかかわらず有意なHbA1c改善効果をもたらすこと、および、神経症傾向が強い性格特性の患者では、教育入院の効果が長期間持続しやすいことを意味している。著者らは、「患者の性格特性は容易には変えられないが、性格特性に応じて治療アプローチをアレンジすることは可能である。今後の研究により、そのようなアレンジの手法を確立することが期待される」と述べている。
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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。
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9月 26 2023 脳梗塞急性期の尿酸値低下が転帰不良に関連――福岡脳卒中データベース研究
脳梗塞急性期に尿酸値が大きく低下するほど、短期転帰が不良であることを表すデータが報告された。九州大学大学院医学研究院病態機能内科学の中村晋之氏、松尾龍氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に6月29日掲載された。この関連は交絡因子調整後にも有意であり、かつ年齢や性別、入院時の尿酸値、脳梗塞の重症度にかかわらず、一貫して認められるという。
高尿酸血症は脳梗塞を含む心血管疾患発症のリスクマーカーであることは明らかになっており、独立したリスクファクターである可能性も示唆されている。その一方で尿酸には強力な抗酸化作用があり、尿酸値高値と健康関連指標の一部が良好であることとの関連を示した報告も散見される。ただし、脳梗塞急性期の尿酸値の変動と予後との関連は、ほとんど研究されていない。中村氏、松尾氏らはこの点について、福岡県内の急性期病院7施設が参加している「福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry:FSR)」(研究代表者:北園孝成氏)のデータを解析して検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。2007年6月~2019年9月に脳梗塞発症後1週間以内に入院した患者1万5,569人から、発症以前に生活機能障害のあった患者、追跡期間が発症後3カ月未満の患者、入院中に尿酸値が入院初日を含め2回以上測定されていなかった患者などを除外し、4,621人(平均年齢70.1±12.2歳、男性64.4%)を解析対象とした。主要評価項目は、脳梗塞発症3カ月時点の転帰不良〔修正ランキンスケール(mRS)が3~6点〕と、機能的依存〔mRSが3~5点(転帰不良から死亡を除外)〕とし、副次的に入院中の神経学的改善〔米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)が4点以上低下または退院時に0点〕、神経学的悪化(NIHSSが1点以上上昇)などを評価した。
入院時の尿酸値は、男性が平均6.01±1.61mg/dL、女性は5.11±1.65mg/dLであり、男性・女性ともに入院1~3日目、4~6日目、7~10日目に測定されていた値は、入院初日より有意に低値だった。入院中の尿酸値の低下幅(入院初日と入院期間中に記録された最低値)の四分位で4群に分けて比較すると、低下幅の大きい群ほど高齢で女性の割合が高く、BMIが低値であり腎機能(eGFR)が低く、再灌流量療法施行率が高くNIHSSスコアが高値であり、入院期間が長いという有意な傾向が認められた。
解析結果に影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、eGFR、発症前mRSスコア、入院時尿酸値、NIHSSスコア、入院期間、喫煙・飲酒習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動の既往、脳梗塞病型(心原性/非心原性)、再灌流療法の施行など〕を統計学的に調整後、入院中の尿酸値の低下幅と主要評価項目との間に有意な関連が見られた。具体的には、尿酸値低下幅の第1四分位群を基準として第3四分位群は転帰不良のオッズ比(OR)が1.51(95%信頼区間1.16~1.96)、第4四分位群はOR2.66(2.05~3.44)であり、機能的依存については同順にOR1.48(1.13~1.95)、OR2.61(2.00~3.42)だった(ともに傾向性P<0.001)。
副次的評価項目の神経学的改善は入院中の尿酸値の低下幅が大きいほどオッズ比が低く、反対に神経学的悪化は尿酸値の低下幅が大きいほどオッズ比が高かった(ともに傾向性P<0.001)。
続いて、年齢(75歳未満/以上)、性別、脳梗塞病型、神経学的重症度(NIHSSスコア5点未満/以上)、慢性腎臓病の有無、入院時の尿酸値(男性は5.9mg/dL、女性は4.9mg/dLで二分)で層別化したサブグループ解析を実施。その結果、いずれの群においても、入院中の尿酸値の低下幅が大きいほど、転帰不良のオッズ比が高いという有意な傾向性が示された。
以上を基に著者らは、「脳梗塞急性期の尿酸値の低下は好ましくない短期転帰と独立して関連していることが明らかになった」と結論付けている。なお、「本研究が観察研究であるため因果関係は不明」と述べた上で、脳梗塞急性期に尿酸値が変化するメカニズムとしては、輸液などによる体液量の変化や栄養素摂取量の低下などの影響を考察として記している。また、尿酸値低下と転帰不良との関連のメカニズムに関しては、尿酸が酸化ストレス抑制を介して脳神経細胞や血管内皮細胞に対して保護的に働く可能性があり、その作用の減弱によるものではないかとしている。
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9月 19 2023 アジア人の肥満は重症COVID-19転帰不良のリスク因子でない可能性――多施設共同研究
アジア人の肥満は、人工呼吸器を要する重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、転帰不良のリスク因子ではないことを示唆するデータが、国内多施設共同研究の結果として報告された。東京医科大学病院救命救急センターの下山京一郎氏らによる論文が、「Scientific Reports」に7月24日掲載された。
COVID-19パンデミックの比較的初期の段階で、肥満が重症化リスク因子の一つであると報告された。しかし重症化して人工呼吸器を要した患者において、肥満が予後に影響を与えるのかは未解明であった。また、アジア人においては大規模なコホート研究がされておらず、知見がより少ない。これを背景として下山氏らは、国内のCOVID-19治療に関するレジストリである「J-RECOVER」のデータを用いた過去起点コホート研究により、ICUに収容され人工呼吸器を要した患者の転帰に肥満が関与しているか否かを検討した。J-RECOVERは国内66施設が参加して実施され、2020年1~9月に退院したCOVID-19症例4,700件の診療報酬包括評価(DPC)データや治療転帰などの情報が登録されている。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。解析対象は、ICUにて侵襲的機械換気(IMV)が施行されていた580人から、BMIデータが記録されている477人とした。またアジア人の肥満の影響を検討するという目的から、アジア人以外は除外している。
この477人の年齢は中央値67歳(四分位範囲56~75)、男性78.4%、BMI中央値25.0(22.3~28.1)であり、BMI25未満の非肥満群が242人(50.7%)、BMI25以上の肥満群が235人(49.3%)。各群のBMI中央値は、非肥満群22.4、肥満群28.2だった。
肥満の有無で比較すると、年齢は肥満群のほうが若年で(中央値61対70歳、P<0.001)、糖尿病が多い(33.2対22.7%、P=0.014)という有意差が見られた。ただし、両群ともにチャールソン併存疾患指数(CCI)が中央値0、ICU患者の重症度の指標であるSOFAスコアは4、ICU滞在期間13日で、いずれも同等であり、慢性腎臓病、心不全の有病率も有意差がなかった。
主要評価項目として検討した院内死亡は、非肥満群が71人(29.3%)、肥満群は49人(20.9%)であり、肥満群の方が少なかった(P=0.035)。単変量解析の結果、肥満は院内死亡との有意な負の関連が見られた〔オッズ比(OR)0.634(95%信頼区間0.417~0.965)〕。ただし、説明変数に年齢、性別、CCIを加えた多変量解析では単変量解析で見られた負の関連は消失し、肥満は院内死亡との関連は見られなかった〔OR1.150(同0.717~1.840)〕。
副次的評価項目として検討した体外式膜型人工肺(VV-ECMO)の施行は、非肥満群が38人(15.7%)、肥満群は52人(22.1%)であり有意差がなかった(P=0.080)。単変量解析の結果、肥満は有意な関連因子でなく〔OR1.530(同0.960~2.420)〕、多変量解析の結果も非有意だった〔OR1.110(同0.669~1.830)〕。
著者らは、本研究が後方視的解析であることなどの限界点を述べた上で、「国内のICUにてIMVを要したCOVID-19患者では、肥満は院内死亡リスクと関連がないことが示された。肥満を有することは重症COVID-19転帰不良のリスク因子ではないのではないか」と結論付けている。
なお、欧米での一部の先行研究と異なる結果となった理由について、アジア人の肥満は欧米人ほどBMIが高くなく、本研究においても肥満群のBMIは中央値28.2であって欧米の過体重の範囲にあるという相違の影響を、考察として指摘している。また、肥満群のほうが若年であったこと、および、パンデミック当初に肥満が重症化リスク因子であると報告されていたため、肥満患者に対してより早期に積極的な治療が行われていた可能性の関与も考えられるという。
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9月 19 2023 自殺関連ツイート急増後に自殺した人の特徴
マスメディアやソーシャルメディアでの自殺関連情報が、自殺リスクの高い人の自殺行動を促してしまう懸念が指摘される中、ツイッター(現:エックス)に自殺関連ツイート(同:ポスト)が急増した数日後に自殺に至った人の特徴を検討した研究結果が報告された。40歳以下、男性、失業中、都市生活者などは、ツイート件数増加後にハイリスクとなる可能性があるという。岡山大学病院新医療研究開発センターの三橋利晴氏の研究によるもので、詳細は「JMIR formative research」に8月10日掲載された。
マスメディアでの自殺報道が自殺行動を増やす可能性があることから、世界保健機関(WHO)が自殺報道に際しての留意事項を公表するなどの対策が取られている。ただしこれまでのところ、どのような人がメディア情報の影響を受けやすいのかは不明。また近年は、ソーシャルメディアでの情報発信・閲覧の比重が増え、それらの情報と自殺行動との関連も指摘されている。メディア情報の影響を受けやすい人の特徴が分かれば、実効性の高い自殺予防対策を確立する一助となると考えられる。これを背景として三橋氏は、ツイッター上の自殺関連ツイート数が急増した後に、自殺既遂に至った人の属性を解析することにより、その特徴を明らかにすることを試みた。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。解析対象期間は2011~2014年で、この間の全ツイートの約1割にあたるランダムサンプルの中から、「自殺」、「自死」などの自殺関連の単語を含むツイートを抽出。そこから、「予防」、「対策」、「プロジェクト」、「支援・サポート」、「ディスカッション」、「カンファレンス」など、自殺予防活動に関連する単語が含まれているツイートを除外し、残ったツイートを「自殺関連ツイート」としてカウントした。一方、この間の自殺による死亡については、厚生労働省「人口動態統計」から情報を得た。また感度分析として、自殺以外の「予期せぬ死亡」についても同様の検討を行った。
1日当たりの自殺関連ツイート数は、57~6万875件の範囲に分布していた。前日からの変動は0.14~44.3倍の範囲であり、その95パーセンタイルに相当する、前日比1.79倍を超過して増加していた日を「自殺関連ツイートが急増した日(曝露日)」と定義。曝露日の3日後および7日後の自殺による死亡者の特徴〔年齢(40歳以下/41歳以上)、性別、就業状況、婚姻状況、居住地域(都市部/非都市部)〕を、ケースオンリー解析(症例内のみでの比較)により検討した。ケースオンリー解析は、もとは遺伝因子と環境因子の相互作用の検討に用いられていたが、近年では、時間経過とともに変化するリスクへの曝露と関連が予測される因子との相互作用の検討などにも用いられている。
解析に必要な情報が欠落している死亡者は除外した。なお、解析対象日を曝露日の3日後と7日後とした理由は、気温と死亡リスクとの関連を検討した先行研究が曝露日当日と2日後のデータを解析しており、ツイート件数と自殺との関連はそれよりもややタイムラグが長いと考えられたため。また、データ取得時期(2011~2014年)のツイッター利用率が40歳以下で高いことから、年齢は40歳を基準に二分した。
解析対象期間の自殺による死亡者数は15万9,490人(平均年齢58.5±20.6歳、男性65.1%)だった。曝露日の3日後に自殺既遂に至った人には、以下のような特徴が認められた。年齢が40歳以下〔オッズ比(OR)1.09(95%信頼区間1.03~1.15)〕、男性〔OR1.12(同1.07~1.18)〕、失業者〔自営業に対してOR1.12(1.02~1.22)〕、離婚〔婚姻関係ありに対してOR1.11(1.03~1.19)〕、都市に居住〔OR1.26(1.17~1.35)〕。一方、婚姻状況が死別の場合はオッズ比の有意な低下が認められた〔OR0.83(0.77~0.89)〕。就業状況に関しては、会社員、農業従事者、および「その他」は、関連が非有意だった。
曝露日の7日後に自殺既遂に至った人の解析結果も、失業者で関連が非有意であることを除き、曝露3日後の解析結果と同様だった。一方、感度分析として行った「予期せぬ死亡」(11万5,072人、男性55.3%)については、婚姻状況が死別の場合に曝露7日後のオッズ比が有意に高いこと以外〔OR1.08(1.02~1.15)〕、予期せぬ死亡との関連は認められなかった。そのため、この研究で得られた結果は、自殺による死亡に特異的と考えられた。
これらの結果から三橋氏は、「自殺関連ツイートへの感受性と関連する個人的特徴が明らかになった。若年者、男性、失業者、離婚者などは、自殺関連ツイートの急増に対して脆弱な可能性がある」と結論付けている。
ツイート件数と自殺行動が関連し得る背景として同氏は、「自殺関連ツイートを閲覧することによって受ける影響と、ツイートを見なくてもその時点の社会情勢などから受ける影響という二つの経路で、自殺行動のリスクが上昇してしまうのではないか」とし、特に前者についてはツイッター利用率の高い若年者でより大きな影響が生じる可能性を考察。また、「自殺リスクの高い人はネガティブな情報にアクセスする傾向が指摘されており、ツイッターのリツイート機能などを介して、そのような人たちがクラスター化することもあるようだ」と述べ、そういったハイリスク者を特定した上での公衆衛生対策を推進する必要性を指摘している。
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9月 13 2023 手首の骨折の実態が明らかに――好発年齢は性別により顕著な差
手首の骨折〔橈骨遠位端骨折(DRF)〕の国内での発生状況などの詳細が明らかになった。自治医科大学整形外科の安藤治朗氏、同大学地域医療学センター公衆衛生学部門の阿江竜介氏、石橋総合病院整形外科の高橋恒存氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Musculoskeletal Disorders」に6月13日掲載された。
DRFは転倒時に手をついた際に発生しやすく、発生頻度の高い骨折として知られており、高齢化を背景に増加傾向にあるとされている。ただし日本国内でのDRFに関する疫学データは、主として骨粗鬆症の高齢者を対象とする研究から得られたものに限られていて全体像が不明。これを背景として安藤氏らは、北海道北部の苫前郡にある北海道立羽幌病院の患者データを用いて、全年齢層を対象としたDRFの疫学調査を行った。なお、北海道立羽幌病院は苫前郡で唯一、整形外科診療を行っている医療機関であり、同地域の骨折患者はほぼ全て同院で治療を受けている。そのため、著者によると、「単施設の患者データの解析ではあるが、骨折に関しては、地域全体の疫学研究に近似した結果を得られる」という。
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まず性別に着目すると、女性が73.6%を占め、男女比は1対2.8と女性が多かった。年齢は全体平均が67.0±21.5歳(範囲2~99)で、男性は49.9±30.4歳、女性は73.0±12.9歳だった。発生年齢は二峰性で、最初のピークは10~14歳に見られ大半が男性であり、二つ目のピークは75~79歳でその多くは女性が占めていた。
高齢化の影響を除外するために年齢調整をした上で、人口10万人年当たりの発生率の推移を見ると、女性は222.0~429.2の範囲に分布しており、2011年から2020年にかけて有意に低下していた(P=0.043)。それに対して男性は74.0~184.6の範囲であって、解析対象期間での有意な変化は観察されなかった(P=0.90)。
DRFの発生場所は屋外が67.1%を占めていたが、85歳以上では屋内での発生が多かった。受傷機転は、15歳以上(234人)では転倒が85.3%と多くを占め、次いで高所からの転落が6.9%だった。一方の15歳未満(24人)ではスポーツ中の受傷が50.0%、交通事故が33.3%であって、年齢層により大きな相違が見られた。DRF発生の季節変動も認められ、冬季に多く、とくに冬季の屋外での発生が多かった。
骨折は53%が左手、47%が右手に起きていた。骨折の形態についてはAO/OTA分類という分類で、15歳以上の患者についてはAタイプ(関節外骨折)が78.7%、Bタイプ(関節内部分骨折)が1.7%、Cタイプ(関節内完全骨折)が19.6%と診断されていた。
治療については、15歳未満の患者は全て保存的に治療され、15歳以上では29.1%に外科的治療が行われていた。カプランマイヤー法により、骨折後1年間の死亡率は2.8%、5年間では11.9%と計算された。
著者らは、「本研究により日本国内のDRFの疫学が明らかになった。DRF発生率は諸外国から報告されている数値と類似していた」とまとめるとともに、女性のDRF発生率が経年的に低下していることについて、「骨粗鬆症の標準化された治療法が普及してきていることを反映しているのではないか」との考察を加えている。また、好発年齢が二峰性で男性では若年者、女性では高齢者に多いことに関連し、「若年男性のスポーツ外傷と高齢女性の転倒を防ぐための公衆衛生対策の必要性が示唆される」と付言している。
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9月 13 2023 化学物質を扱う労働者のがんリスクの実態
国内で化学物質を取り扱う職業に就いている労働者は、がんに罹患するリスクが有意に高く、勤務歴が長いほどそのリスクが上昇する可能性を示すデータが報告された。東海大学医学部衛生学公衆衛生学の深井航太氏らの研究によるもので、詳細は「Occupational & Environmental Medicine」に6月9日掲載された。
がんリスクを高める因子として加齢や遺伝素因のほかに、喫煙や飲酒、運動不足といった生活習慣が知られており、がん予防のため一般的には後者のライフスタイル改善の重要性が強調されることが多い。一方、複数の先進国から、全てのがんの2~5%程度は職業に関連するリスク因子が関与して発生しているという研究結果が報告されている。それに対してわが国では、労災認定される職業がんは年間1,000件ほどにとどまり、約100万人とされる1年当たりの全国のがん罹患数に比べて極めて少ない。さらに、労災認定されるがんはアスベスト曝露による肺がんや中皮腫が大半を占めていて、多くの職業がんが見逃されている可能性がある。深井氏らはそのような職業がんの潜在的リスク因子として、化学物質への曝露の影響に着目し、以下の検討を行った。
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症例群と対照群を比較すると、前者の方が喫煙者・前喫煙者および習慣的飲酒者の割合が高かった。前記のデータセット作成時にマッチングさせた因子(年齢、入院年度、入院医療機関)と、喫煙、飲酒、および職歴(就業年数が最長の職種)を交絡因子として調整したロジスティック回帰分析の結果、化学物質の取り扱い期間(職業的曝露年数)が1年以上の労働者は、以下に記すように、化学物質の取り扱いがない労働者に比べ、全がんと複数の部位のがんの罹患率が有意に高いことが明らかになった。全がんはオッズ比(OR)1.05(95%信頼区間1.01~1.10)、肺がんはOR1.87(同1.66~2.11)、食道がんOR1.63(1.21~2.21)、膵臓がんOR1.80(1.35~2.41)、膀胱がんOR1.38(1.16~1.65)。胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆道がんの罹患率には有意差がなかった。
次に、職業的曝露年数の三分位で3群に分類してがんリスクを検討。その結果、全がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、膀胱がんについては、曝露年数が長いほど罹患リスクが高いという有意な相関が認められた(全て傾向性P<0.01)。曝露年数を、1~10年、11~20年、21年以上の3群で層別化した検討の結果も同様だった。
続いて、喫煙習慣の有無と職業的曝露年数(曝露なし、20年以下、21年以上)とで全体を6群に分類。喫煙歴と職業的曝露がともにない群を基準としてがん罹患リスクを検討した。すると、喫煙歴がなければ曝露年数が21年以上の場合に肺がんのオッズ比上昇が認められたが、曝露年数20年以下では非有意であり、かつ、肺がん以外のがんは曝露年数にかかわらず、有意なオッズ比上昇は見られなかった。それに対して喫煙者では、曝露年数にかかわらず、全がん、肺がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、膀胱がん罹患のオッズ比が有意に高かった。
以上の結果を基に著者らは、「化学物質の取り扱いに従事する期間が長いほど、がんリスクが高い可能性が示され、特に喫煙習慣が重なった場合にはよりハイリスクとなると考えられる」と結論付けている。ただし、入院患者対象の症例対照研究であるためサンプリングバイアスが存在すること、残余交絡の存在を否定できないことなどの限界点を挙げた上で、「労働安全衛生法施行令の一部改正により、2023年4月より新たな化学物質規制の制度がスタートしている。今後、他のコホート研究などでの追試や、化学物質への職業的曝露を抑制するアプローチが、がん予防につながるのかの検証が求められる」と付言している。
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肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。
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9月 05 2023 筋肉が脂肪化していると非肥満でもCOVID-19が重症化しやすい
体組成と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクとの関連が報告された。COVID-19が重症化した患者はBMIや内臓脂肪面積が高値であることのほかに、非肥満で重症化した患者は筋肉内の脂肪が多いことなどが明らかになったという。三重大学医学部附属病院総合診療部の山本貴之氏、山本憲彦氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に7月28日掲載された。
肥満がCOVID-19重症化のリスク因子であることは、パンデミックの初期から指摘されている。ただし、肥満か否かを判定するための指標であるBMIには体組成が反映されないため、例えば内臓脂肪の蓄積のみが顕著であまり太っているように見えない、いわゆる“隠れ肥満”では、肥満と判定されないことがある。反対に筋肉質であるために高体重の場合に肥満と判定されてしまうようなことが起きる。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。また最近では、COVID-19重症化リスクはBMIよりむしろ内臓脂肪量と強く相関することなどが報告されている。ただしこれまでのところ、体組成とCOVID-19重症化リスクとの詳細な関連は明確になっていない。加えて、BMIや体組成と疾患リスクとの関連は人種/民族により異なることから、日本発の知見が必要とされる。これらを背景として山本氏らは、日本人COVID-19患者におけるBMIや体組成と、COVID-19重症化リスクとの関連を検討した。
研究対象は、2020年8月~2021年9月に同院に入院したCOVID-19患者のうち、体組成を評価可能な画像検査データが記録されていた連続76症例。年齢は中央値59歳(範囲22~85)、男性71.1%、BMIは中央値26.8(同17~58.6)で、2型糖尿病が36.8%であり、59.2%に脂肪肝が認められた。体組成関連の指標は、内臓脂肪面積(VFA)が中央値128.7cm2(13.6~419.5)であり、また、筋肉の質の指標とされている筋肉内脂肪組織含有量(IMAC)は-0.33(-0.73~-0.02)だった。なお、IMACは値が高いほど、筋肉が脂肪化していることを意味する。
入院中に48人が気管挿管と人工呼吸管理を要する状態に重症化していた。重症化群と非重症化群を比較すると、前者は炎症マーカー(CRP、白血球数)が有意に高く、体重(中央値76.0対67.0kg)、BMI(27.7対24.0)、VFA(159.0対111.7cm2)も有意に高値だった。年齢、性別、糖尿病患者の割合、クレアチニン、リンパ球数、血小板数、凝固マーカー(Dダイマー)、およびVFA以外の体組成関連指標(IMACや大腰筋質量指数など)には有意差がなかった。
重症化した48人のうち13人が入院中に死亡した。この群を生存退院した35人と比較すると、腎機能の低下(クレアチニンが中央値1.41対0.73mg/dL)と、血小板数の減少(139対214×103/μL)が見られた。その一方で、年齢や性別、および体重・体組成関連指標も含めて、評価したその他の項目に有意差はなかった。
次に、全体を肥満度で3群(BMI25未満、25~30未満、30以上)に層別化し、重症化群と非重症化群の体組成を比較。するとBMI25以上の場合には体組成関連指標に有意差がなかったが、BMI25未満の場合は重症化群のIMACが非重症化群より有意に高値を示していた(P=0.0499)。また、BMI25以上では重症化群と非重症化群で年齢に有意差がなかったが、BMI25未満では重症化群の方が高齢だった(P=0.015)。なお、死亡リスクについては、肥満度にかかわらず、IMACとの有意な関連は認められなかった。
著者らは、本研究が単一施設で行われたものであり、サンプル数が比較的少ないなどの限界点があるとした上で、「非肥満の日本人ではIMACで評価される筋肉の質が低下しているほど、COVID-19罹患時に重症化しやすい可能性がある。ただし、肥満患者ではこの関連が見られず、またIMACは死亡リスクの予測因子ではないようだ」と結論付けている。なお、この関連の背景については既報研究を基に、「筋肉の質の低下によって呼吸器感染症からの防御に重要な咳嗽反応(せき)が十分でなくなること、筋肉由来の生理活性物質(サイトカイン)であり炎症反応などに関わるマイオカインの分泌が低下することなどの関与が考えられる」と考察している。
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9月 05 2023 日本人NAFLD患者のCVDリスクはBMI23未満/以上で有意差なし
瘦せている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の心血管疾患(CVD)リスクは、痩せていないNAFLD患者と同程度に高いことが明らかになった。武蔵野赤十字病院の玉城信治氏、黒崎雅之氏、泉並木氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に6月17日掲載された。
NAFLDはメタボリックシンドローム(MetS)の肝臓における表現型と位置付けられており、世界人口の25%が該当するとされる主要な健康問題の一つ。NAFLD患者の多くは肥満だが、一部の患者は痩せているにもかかわらずNAFLDを発症する。欧米ではBMI25未満、アジアでは23未満のNAFLDが「痩せ型NAFLD」と定義されている。肥満併発NAFLDはCVDリスクが高いことは知られているが、痩せ型NAFLDもCVDハイリスクなのか否かは、これまでのところ十分明らかになっていない。黒崎氏らは同院の健診データを用いて、この点に関する後方視的研究を行った。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。2017年1月~2022年5月に同院で健診を受け脂肪肝と診断され、3年以上追跡が可能だった人から、習慣的飲酒者(エタノール換算で男性は30g/日以上、女性は20g/日以上)、ベースライン時点でのCVD既往者、データ欠落者などを除外した581人のNAFLD患者を解析対象とした。このうち219人(37.7%)がBMI23未満の痩せ型NAFLDだった。
痩せ型/非痩せ型NAFLDのベースラインデータを比較すると、年齢は有意差がなく(58±12対59±11歳)、性別は後者に男性が多いという有意差が見られた〔50.2対60.8%(P=0.02)〕。BMIは21.5±1.1対26.2±2.8(P<0.01)であり、そのほかに高血圧、糖尿病の有病率、AST、ALT、GGT、中性脂肪は非痩せ型の方が高く、HDL-Cは痩せ型の方が高いという有意差があった。喫煙者率、脂質異常症有病率、LDL-C、血小板数、アルブミンには有意差がなかった。なお、高血圧や糖尿病、脂質異常症患者は、比較的良好に管理されていた(血圧は中央値128/81mmHg、HbA1cは同6.8%、LDL-Cは同143mg/dL)。
3年間のCVD(虚血性心疾患、心不全、脳血管疾患、末梢動脈疾患)発症率は、痩せ型群2.3%、非痩せ型群3.9%で、有意差がなかった(P=0.3)。
次に、年齢、性別(男性)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、痩せ型/非痩せ型NAFLDを説明変数、CVD発症を目的変数とする単変量解析を施行。すると、年齢、高血圧、糖尿病と、CVD発症との有意な関連が認められた。続いて行った多変量解析の結果、CVD発症と独立した関連のある因子として、年齢のみが抽出された〔10歳ごとのオッズ比が2.0(95%信頼区間1.3~3.4)〕。
著者らは、単一施設での後方視的解析でありサンプル数が少なく、追跡期間も十分とは言えないことなどを本研究の限界点として挙げた上で、「われわれの研究結果は、痩せ型NAFLDでも非痩せ型NAFLDと同等のCVDリスクを有していると見なし、予防介入すべきであることを示している」と結論付けている。
また、CVDリスクに差がないことの背景としては、「非痩せ型NAFLDでは高血圧や糖尿病が多かったが、血圧、血糖値、およびLDL-Cが良好にコントロールされていたことが、CVDリスク低下に寄与していた可能性がある」との考察が述べられている。なお、本研究で示された痩せ型NAFLDの割合が37.7%という値は、国内の既報研究より高い。その理由として、「3年以上連続して健診を受けた対象での検討結果であり、既報研究に多い患者または一般集団での横断研究とは異なるためではないか」としている。
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