• タバコを吸いたくなくなる食べ物は、果物や乳製品

     喫煙の欲求は、特定の食べ物や飲み物と関連する。新たな研究により、紙巻きタバコ・加熱式タバコ喫煙者において、摂取するとタバコを吸いたくなる飲食品は、ビールなどのアルコール飲料、コーヒー、脂肪の多い食品などであることが判明した。反対に、タバコを吸いたくなくなる飲食品は果物や乳製品であり、喫煙者では非喫煙者と比べて、果物や乳製品の摂取量が有意に少なかったという。京都女子大学家政学部食物栄養学科の三好希帆氏、宮脇尚志氏らによるこの研究は、「Tobacco Induced Diseases」に1月5日に掲載された。

     タバコの健康リスクや依存性は広く指摘されている。喫煙の欲求は摂取する食品と密接に関連しているが、欲求を効果的にコントロールする栄養学的な方法は確立されていない。また、日本で最近広まった加熱式タバコについては、まだ研究が少ない状況である。そこで著者らは、紙巻きタバコや加熱式タバコの喫煙者に対し、喫煙の欲求に関連する食品や味、調理方法などを横断的に調査した。

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     この研究は、非喫煙者178人、紙巻きタバコ喫煙者242人、加熱式タバコ喫煙者237人の計657人(40〜69歳)を対象に行われた。対象者のうち男性は322人(年齢中央値53歳)、女性は335人(同52歳)だった。習慣的な食事の調査として、「簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)」を用い、一般的な58種類の食品の摂取量を推定。喫煙者には、「摂取するとタバコを吸いたくなるか否か、どちらでもないか」を、各食品・味(甘い、苦い、辛いなど9種)・調味料(砂糖、塩、酢など7種)・調理方法(揚げる、炒める、煮るなど7種)・料理のカテゴリー(和食、中華、西洋、韓国料理)のそれぞれについて尋ねた。

     その結果、摂取すると最もタバコを吸いたくなる飲食品はビール(78%)であり、アルコール飲料の多くが上位に位置した。また、ブラックコーヒー(65.6%)、焼き肉(44%)、ラーメン(33.3%)なども上位だった。最もタバコを吸いたくなる味、調味料、調理方法、料理のカテゴリーは、それぞれ油脂味(33.3%)、ソース(13%)、揚げ物(30.9%)、中華料理(42.9%)だった。反対に、摂取するとタバコを吸いたくなくなる飲食品は、果物や乳製品が上位に位置した。

     非喫煙者と比較すると、喫煙者の方がアルコール飲料の摂取量(中央値)は有意に多かった(非喫煙者10.3、紙巻きタバコ喫煙者76.6、加熱式タバコ喫煙者39.4mL/1,000kcal/日)。一方、喫煙者の摂取量(中央値)が有意に少なかったのは、乳製品(同順に76.3、48.2、57.6g/日)および果物(同順に46.4、22.2、31.4g/1,000kcal/日)であり、喫煙欲求と関連する飲食品とその摂取量には関連があることが明らかになった。

     さらに著者らは、加熱式タバコと紙巻きタバコ喫煙者では、喫煙欲求と関連する飲食品は異なるのかを検討している。「摂取するとタバコが吸いたくなる」と答えた人の割合を比較した結果、ラーメン(加熱式タバコ喫煙者38.4%対紙巻きタバコ喫煙者28.5%)、焼き肉(48.9対39.3%)、辛味(35.6%対23.3%)、油脂味(38.4%対28.5%)などの刺激の強い食品、油脂の多い食品は、紙巻きタバコ喫煙者よりも加熱式タバコ喫煙者の方が強く喫煙欲求と関連していた。調味料や味、調理方法、料理のカテゴリーの中にも有意差が見られるものがあったが、紙巻きタバコ喫煙者の方が割合が高いものはなかった。

     以上から著者らは、「特定の食品やアルコールなどの飲み物、果物、乳製品は喫煙の欲求と関連している」と結論。果物や乳製品などについては、これらの食品に含まれる有機酸が唾液のpHに影響し、ニコチンの吸収を低下させる可能性があるため、喫煙者で摂取量が少ない可能性があると説明している。加熱式タバコと紙巻タバコで喫煙の欲求に違いが見られたことに関しては、ニコチンのレベルや味覚への影響の違いを可能性として挙げた上で、「さらなる研究が必要だ」としている。

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  • 女子小中学生ではスマホを含むスクリーンタイムの長さと肥満が関連

     日本人の小学5年生から中学2年生の女子では、スマホを含む電子機器の画面を見るスクリーンタイムが長いほど肥満リスクが有意に高まるという研究結果を、新潟大学血液・内分泌・代謝内科学研究室の池田和泉研究員、藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループが「Endocrine Journal」に1月11日発表した。1日のスクリーンタイムの総計が4時間以上、スマホは2時間以上と一定の長さを超えるグループにおいても、身体活動や睡眠時間を十分にとることで肥満リスクを低減できる可能性も示された。一方で、男子ではスクリーンタイムと肥満の関連は認められなかった。

     スクリーンタイムの増加は小児の肥満リスクを高めることが報告されている。しかし、先行研究の多くはテレビやパソコン、電子ゲームを対象としたもので、スマホの使用が小児肥満に与える影響を定量的に検討した研究や、身体活動や睡眠時間などの生活習慣因子の影響を考慮した研究は限られていた。そこで、研究グループは、新潟県内の小中学生を対象とした横断研究(NICE EVIDENCE Study 4)を行い、スクリーンタイムをスマホとそれ以外の電子機器に分け、生活習慣因子を考慮した上で、肥満との関連を男女別に検討した。

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     研究は、2018~2019年の間に、新潟県阿賀野市と三条市が実施する生活習慣病予防事業に参加した10~14歳の小児2,242人(平均年齢11.8歳、うち女子1,278人)を対象とした。肥満は、国際肥満タスクフォースの定義に従って診断した。自記式質問票を用い、スクリーンタイムや身体活動量、睡眠時間を調査した。ロジスティック回帰モデルを用い、スクリーンタイムと肥満との関連を分析した。

     男子の14.5%、女子の9.9%が肥満と診断された。全体の30.1%がスマホを使用しており、女子の方が使用率は高かった(女子34.5%、男子25.3%)。ロジスティック回帰分析の結果、女子では、スクリーンタイムの総時間が1日に4時間以上5時間未満、またはスマホを3時間以上4時間未満あるいはスマホ以外の電子機器を2時間以上使用すると、それぞれ2時間未満、非使用、1時間未満の場合と比べて肥満が約3倍有意に増加した。一方で、男子ではこのような関連は認められなかった。

     また、女子では、1日にスマホを3時間以上かつスマホ以外の電子機器を2時間以上使用すると、それぞれ3時間未満かつ2時間未満の場合と比べて肥満のオッズ比は6.79倍に上昇していた。スマホまたはスマホ以外の電子機器のいずれかが基準を満たしても、肥満のオッズ比は約3倍高値であった。スクリーンタイムの総時間が4時間以上5時間未満、またはスマホの使用時間が2時間以上の女子では、身体活動量が60分(23メッツ・時)/週以上または睡眠時間が8.5時間/日以上であれば、肥満のリスクは有意に上昇しなかった。

     スクリーンタイムと肥満の関連に男女差が見られた理由として、池田氏らは「女子は男子と比べて座位時間が長く、身体活動量が少なかったことが影響したのではないか」と指摘した。また、肥満の原因として、女子は座位時間の長さが挙げられるのに対し、男子では過剰なエネルギー摂取の方が重要な可能性があるとしている。

     以上から、研究グループは「小中学生の女子では、スマホなどのスクリーンタイムの長さと肥満リスクは有意に関連することが明らかになった。女子の小児肥満を予防するためには、スマホの使用は1日に3時間未満、スマホ以外の電子機器は2時間未満、スクリーンタイムの総時間は4時間未満に抑えながら、十分な運動と睡眠時間をとることが必要だと考えられる」と述べている。

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  • 漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連

     漢方薬は日本で1500年以上にわたり伝統的に用いられているが、使用することにより「偽アルドステロン症」などの副作用が生じることがある。今回、日本のデータベースを用いて漢方薬の使用と副作用報告に関する調査が行われ、偽アルドステロン症と高血圧や認知症との関連が明らかとなった。また、女性、70歳以上などとの関連も見られたという。福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座の畝田一司氏らによる研究であり、詳細は「PLOS ONE」に1月2日掲載された。

     偽アルドステロン症は、血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにもかかわらず、高血圧、むくみ、低カリウムなどの症状が現れる状態。「甘草(カンゾウ)」という生薬には抗炎症作用や肝機能に対する有益な作用があるが、その主成分であるグリチルリチンが、偽アルドステロン症の原因と考えられている。現在、保険が適用される漢方薬は148種類あり、そのうちの70%以上に甘草が含まれている。

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     今回の研究では、「医薬品副作用データベース(JADER)」を用いて、漢方薬による偽アルドステロン症と関連する臨床的要因が検討された。同データベースには、患者背景、使用薬、有害事象に関する自己報告データが含まれている。2004年4月から2022年11月までの期間に報告された有害事象から、保険適用の漢方薬148種類に関する報告を抽出。不完全な報告データを除外して、有害事象のデータ2,471件(偽アルドステロン症210件、他の有害事象2,261件)が解析対象となった。

     解析の結果、偽アルドステロン症では他の有害事象と比べて、漢方薬に含まれる甘草の投与量が有意に多く(平均3.3対1.5g/日)、漢方薬の使用期間が有意に長いことが判明した(中央値77.5対29.0日)。偽アルドステロン症の報告で最もよく使用されていた漢方薬は、「芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)」(90件)、「抑肝散(ヨクカンサン)」(47件)、「六君子湯(リックンシトウ)」(12件)、「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」(10件)などだった。

     さらに、偽アルドステロン症と関連する因子を検討した結果、女性(オッズ比1.7、95%信頼区間1.2~2.6)、70歳以上(同5.0、3.2~7.8)、体重50kg未満(同2.2、1.5~3.2)、利尿薬の使用(同2.1、1.3~4.8)、認知症(同7.0、4.2~11.6)、高血圧(同1.6、1.1~2.4)との有意な関連が認められた。また、甘草の1日当たりの投与量(同2.1、1.9~2.3)および漢方薬の14日以上の使用(同2.8、1.7~4.5)も、偽アルドステロン症と有意に関連していた。

     著者らは、今回の研究は自己報告のデータを対象としており、過少報告の可能性や臨床的背景の情報が限られることなどを説明した上で、「漢方薬による偽アルドステロン症の実臨床における関連因子が明らかになった」と結論付けている。ただし、今回の研究では抽出された関連因子と偽アルドステロン症との因果関係については検証できず、今後の課題だという。著者らはまた、関連因子のうち、高血圧を特定できたことの意義は大きいとしている。さらに、「複数の因子を持つ患者に対して、甘草を含む漢方薬が14日以上処方される場合は、偽アルドステロン症を予防するために注意深い経過観察が必要である」と述べている。

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  • 白内障手術で軽度認知障害患者の認知機能が改善か

     高齢の軽度認知障害(MCI)患者は、白内障手術を受けると認知機能が改善する可能性のあることが、順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の吉田悠人氏らの研究グループが実施した前向きコホート研究から明らかになった。一方で、認知症患者では白内障手術前後で認知機能テストのスコアに有意な変化は見られなかったことから、研究グループは「認知機能の改善を期待するには、認知症の前段階で白内障手術を行うことが望ましい可能性がある」と述べている。研究の詳細は「Acta Ophthalmologica」に12月25日掲載された。

     白内障は、世界的に視覚障害の原因の一つとなっている。先行研究では、白内障手術を受けた患者は、手術を受けていない患者に比べて認知症の発症リスクが低減することなどが報告されているが、これらの関連は明らかになっていない。また、臨床現場では、重度の認知症患者においては白内障手術後に認知機能の改善が見られるケースは少ない。そこで吉田氏らは、重度の認知症患者よりもMCI患者は白内障手術後に認知機能が大幅に改善する可能性があるという仮説を検証するため、75歳以上の高齢者を対象とした多施設共同前向きコホート研究を実施し、白内障手術が認知機能に与える影響を検討した。

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     この研究は、2019年から2021年の間に白内障手術を受けた75歳以上の患者88人(平均年齢84.9歳、男性28.4%、視覚障害の有病率43.2%)を対象に実施された。術前および術後3カ月の時点で最高矯正視力(BCVA)などの視力を測定し、同時にミニメンタルステート検査(MMSE)と視覚障害者向けのMMSE(MMSE-blind)を用いて認知機能を評価した。ベースライン時のMMSEスコアに基づき、対象患者を認知症群(MMSEスコア23以下:39人)とMCI群(同スコア23超27以下:49人)に分けて解析した。

     その結果、対象患者全体では、MMSEスコアは白内障手術前と比べて術後の方が有意に高かった(MMSE:22.55±4.7対23.56±5.54、P<0.001、MMSE-blind:15.34±3.94対16.11±5.01、P=0.001)。認知機能障害の重症度別に見ると、認知症群では白内障手術前後のMMSEスコアに統計学的な有意差は見られなかったのに対し、MCI群では、MMSEスコア(25.65±1.03対27.08±1.99、p<0.001)とMMSE-blindスコア(18.04±1.14対19.41±2.01、p<0.001)はいずれも術後の方が有意に高かった。また、対象患者全体とMCI群では、「注意/集中力」「即時想起」の2つの領域で術後のスコアが改善した。

     さらに、年齢や性別、手術前の認知機能などで調整したロジスティック回帰分析の結果、認知機能は、認知症群と比べてMCI群の方が有意に改善した(調整オッズ比2.85、95%信頼区間1.02~7.97、P=0.046)。なお、視力は、両群ともに白内障手術後に有意に改善した。

     著者らは、今回の研究には認知症のサブタイプ分類がなされなかったこと、観察期間が短かったこと、認知機能の評価がMMSEに限られていたことなど限界があったと指摘。その上で、「白内障手術によって、認知症患者のMMSEスコアには有意な変化は見られなかったが、MCI患者の認知機能は有意に改善することが分かった。この結果は、白内障手術後に認知機能が改善するかどうかは、術前の認知機能の状態に大きく影響を受ける可能性を示唆するものだ。今後さらなる研究で検証していく必要がある」と結論付けている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2024年2月13日
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  • 歯と口の健康は「オーラルフレイル」を知ることから

     食事の能力は、歯と口の機能に関連するさまざまな要因に支えられており、「オーラルフレイル」(口の機能が衰えること)が注目されてきている。今回、5,000人以上の成人を対象に行われた研究により、高リスクの人ほど、オーラルフレイルについて知らないことが明らかとなった。また、オーラルフレイルを認知していることと、性別や年齢、居住地域、生活習慣などとの関連も示された。神奈川歯科大学歯学部の入江浩一郎氏、山本龍生氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月3日掲載された。

     歯と口の健康には予防が重要だ。これまでにも例えば、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという「8020運動」を認知していることは、定期的な歯科受診と有意に関連することが報告されている。しかし、オーラルフレイルの認知がどのような影響を持つかについては明らかになっていない。そこで著者らは、オーラルフレイルを認知しているかどうかが、そのリスクに及ぼす影響を検討した。

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     対象は、神奈川県の歯科クリニックを受診または訪問歯科を利用した20歳以上の人で、2020年6月から2021年3月に研究に参加した。オーラルフレイルのリスクを評価し、自記式の質問紙により年齢・性別、居住地域(神奈川県を8つの地域に区分)、運動・喫煙の習慣などを調査。さらに、オーラルフレイルの認知(その意味または言葉を知っているか)、バランスの良い食事を心掛けているか、口の健康を意識しているかどうかを調査した。

     オーラルフレイルのリスク評価には、OFI-8(Oral Frailty Index-8)と呼ばれる質問紙が用いられた。OFI-8は、「半年前と比べて硬いものが食べにくくなったか」「お茶や汁物でむせることがあるか」「義歯を使用しているか」などの8項目に、「はい」「いいえ」で回答してもらい、スコア化するもの。合計スコアが4点以上で高リスクと判定される。

     その結果、解析対象となった5,051人(平均年齢59.9±18.7歳、女性3,144人)のうち、オーラルフレイルの高リスクと判定されたのは1,418人(28.1%)だった。

     また、オーラルフレイルを認知していたのは1,495人(29.6%)にとどまった。高リスク者の割合は、オーラルフレイルを認知していた人では18.7%だったのに対し、認知していなかった人では32.0%に上り、有意な差が認められた。

     さらに、オーラルフレイルの認知度が低いのは、男性、高齢の人、川崎市・相模原市の居住者、運動習慣がない人、バランスの良い食事を心掛けていない人、口の健康を意識していない人、オーラルフレイルのリスクが高い人、そして訪問診療の患者だった。

     以上から著者らは、「オーラルフレイルのリスクは、オーラルフレイルの認知と有意に関連していた」と結論。認知度が29.6%だったことに関しては、日本歯科医師会が2025年までの目標として設定した「50%」に届いていないと指摘している。また、「驚くべきことに、高リスクの人が若い年齢層にも存在した」と述べ、「今回の研究対象を65歳以上に限定しなかった理由は、若年期からのオーラルフレイル予防対策が重要であることを伝えることだった」と付言している。

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  • 6歳まで持続する牛乳アレルギー、約半数は12歳までに耐性獲得

     6歳の時点で牛乳アレルギー(cow’s milk allergy;CMA)が持続していても、約半数の子どもは12歳になるまでに耐性を獲得するという調査結果を、国立病院機構相模原病院小児科の研究グループが「Pediatric Allergy and Immunology」に12月24日発表した。研究では学童期にCMAが持続する3つの危険因子を同定。危険因子を全て保有すると耐性を獲得しにくい可能性も示された。

     即時型CMAを有する小児は、就学前までに約50~90%が耐性を獲得すると報告されている。しかし、これらの研究は乳幼児期に追跡調査を開始しているため、学童期にCMAが持続する場合の耐性獲得率は明らかになっていない。責任著者の柳田紀之氏らは同病院に通院し、6歳の時点でCMAが持続している児を12歳になるまで後ろ向きに調査し、牛乳への耐性を獲得する割合の推移を明らかにした。

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     対象は、6歳の時点でCMAが持続して見られた小児80人(男児69%)。38%(30人)は牛乳によるアナフィラキシーの既往があり、50%(40人)は食事から牛乳を完全に除去していた。6歳時点の牛乳特異的IgE抗体価(CM-sIgE)の中央値は12.0kUA/Lだった。なお、経口免疫療法を受けた児は解析から除外した。

     耐性獲得は、非加熱牛乳200mLの食物経口負荷試験結果が陰性だった場合、または、アレルギー症状を呈することなく非加熱牛乳200mLを家庭で摂取可能な場合と定義し、どちらの基準も満たさない場合をCMA持続と判定した。主要評価項目は12歳までの牛乳に対する耐性獲得とし、CMA持続の危険因子についても評価した。

     分析の結果、9歳までに25人(31%)が、12歳までに58%(46人)が耐性を獲得した。多変量Cox回帰分析から、CMAが持続する危険因子として、ベースライン時(6歳時点)のCM-sIgE高値(調整ハザード比2.29、95%信頼区間1.41~3.73、至適カットオフ値は12.7kUA/L)、牛乳によるアナフィラキシーの既往(同2.07、1.06~4.02)および牛乳の完全除去(同3.12、1.46~6.67)の3つが判明した。これらの危険因子をいずれも保有しなかった児の86%が12歳までに耐性を獲得したのに対し、危険因子を全て保有する14人のうち耐性を獲得した児はいなかった。

     以上から、著者らは「IgE依存性即時型CMAの自然経過を検討した結果、6歳までCMAが持続していた児は、経口免疫療法を受けた子どもを除くと12歳までに58%が耐性を獲得することが分かった。この耐性獲得率はピーナツアレルギーの21.5%(4~20歳、海外からの報告)よりも高いが、われわれが過去に報告した鶏卵アレルギーの60.5%(6~12歳)とほぼ同程度だった」と結論。また、「本研究ではCMAが持続する3つの危険因子が判明し、経口免疫療法を考慮すべき小児についても特定することができた」と述べている。

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