身長が5mm低くなっただけで死亡リスクが有意に上昇――日本人での縦断研究
加齢に伴い、わずかに身長が低くなっただけで、死亡リスクが有意に高くなる可能性を示唆するデータが報告された。2年間で5mm以上低くなった人は、そうでない人より26%ハイリスクだという。福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科の田中健一氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月3日掲載された。
身長は椎間板の変形や椎骨骨折などの影響を受けて、歳とともに徐々に低くなる。そのような身長短縮の影響は骨粗しょう症との関連でよく検討されており、また死亡リスクとの関連も検討されている。ただし後者については、2cm以上という顕著な身長短縮が見られた場合を評価した研究が多く、わずかな身長短縮と死亡リスクの関連は明らかになっていない。田中氏らは、特定健診研究(J-SHC study)のデータを用いて、軽微な身長短縮の死亡リスクへの影響を縦断的に検討した。
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福島や大阪、沖縄などの7府県の2008年、2010年両年の特定健診受診者から、データ欠落者や測定誤差と見なされる身長の変化(2年間で5cm以上)が記録されていた人を除外した22万2,392人(平均年齢63.4±7.3歳、男性39.7%)を解析対象とした。このうち31.2%が、2年間で身長が5mm以上低くなっていた。身長短縮幅が5mm以上の群は5mm未満の群(対照群)に比べて、高齢で女性が多かった。また、ベースライン時データに関しては、身長が対照群より低く体重は軽くて、ウエスト周囲長が大きいという有意差が見られた。BMIについては同等だった。
平均4.8±1.1年の観察で、1,436人が死亡。死亡リスクの評価に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、ベースライン時の身長、BMI、喫煙習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心血管疾患の既往)を調整後、身長短縮幅が5mm以上の群は、主要評価項目の全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが26%有意に高いことが示された〔対照群を基準とする調整ハザード比(aHR)1.26(95%信頼区間1.13~1.41)〕。性別に見ても、男性はaHR1.24(同1.08~1.43)、女性はaHR1.28(1.07~1.52)であり、ともに有意なリスク上昇が認められた。
二次評価項目として設定されていた心血管死については、全体解析〔aHR1.34(1.04~1.72)〕と女性〔aHR1.60(1.08~2.37)〕では、身長短縮幅が5mm以上の場合に有意なリスク上昇が認められたが、男性はこの関連が非有意だった〔aHR1.18(0.85~1.64)〕。男性では非有意となった理由として著者らは、心血管死が少なかったこと(全体で279人、男性は172人)が一因ではないかとの考察を加えている。
これらの結果を基に論文の結論は、「日本人を対象とする研究から、2年間でわずか5mmの身長短縮も全死亡リスクと関連のあることが明らかになった。身長の変化は、死亡リスクを層別化して評価するための、低コストで簡便なマーカーとして利用できるのではないか」とまとめられている。
なお、身長短縮が全死亡リスクを上昇させるメカニズムについては、既報研究に基づき、骨粗しょう症による骨折リスクや骨格筋量の減少、サルコペニア、フレイル、心肺機能や消化器機能への影響などを介した機序に言及。また、身長短縮を防ぐための介入として、骨粗しょう症の治療や身体活動が有効なのではないかとしている。ただし、身長短縮を防ぐという目的での介入が全死亡リスクを低下させ得るかは、「今後、検討されるべき課題」と述べている。
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