独身者はCOVID-19罹患後に抑うつや記憶障害が現れやすい――大分県での調査
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期を乗り切った後にも、独身者は抑うつや記憶障害が現れやすいことを示唆するデータが報告された。特に、COVID-19急性期の症状が軽症だった人や40歳代の人で、配偶者の有無でのリスク差が大きいという。大分大学医学部呼吸器・感染症内科学の小宮幸作氏らの研究によるもので、詳細は「Respiratory Investigation」3月号に掲載された。
COVID-19の急性期を脱した後にも長期間さまざまな症状が続くことが知られており、「post-COVID-19」または「long COVID」などと呼ばれている。Post-COVID-19のリスクに関連のある因子として、急性期の重症度の高さ、性別(女性)、社会経済的地位の低さなどとともに、婚姻状況(独身)が挙げられている。ただし、post-COVID-19に伴うメンタルヘルス症状と婚姻状況の関連は十分明らかになっていない。小宮氏らは、大分県と連携し、この点に的を絞った研究を行った。
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大分県内の医療機関でpost-COVID-19の治療を受けた20~80歳の患者2,116人に無記名のアンケートへの回答を依頼。791人から回答を得て、データに不備のあるものを除外した749人(女性53%)の回答を解析対象とした。このうち72%は「配偶者がいる」と回答。なお、別居状態の人は配偶者ありとした。
COVID-19急性期の重症度を世界保健機関(WHO)の定義に基づき分類すると、軽症が82%を占め、中等症は13%、重症が5%だった。患者の希望により入院したものの酸素投与の必要がなかった患者は軽症に分類した。
COVID-19感染から1カ月後に見られた症状として、倦怠感、呼吸困難、集中力低下、抑うつ、味覚障害、不眠、記憶障害などが多く挙げられた。これらの症状を、婚姻状況別に比較。すると、抑うつの見られる患者の割合は、配偶者あり群18%、なし群26%であり、後者の方が有意に高かった(P=0.019)。そのほかの症状については、婚姻状況による有意差がなかった。
次に、COVID-19急性期の重症度別に、抑うつと記憶障害を有する割合を解析すると、どちらも重症だった患者でそれらの訴えが多く見られた。ただし、婚姻状況の違いで顕著な差が見られたのは軽症だった患者群のみだった。具体的には、急性期に軽症だった患者で抑うつを訴える割合は、配偶者あり群15%、なし群25%と、後者の方が有意に高かった(P=0.006)。また急性期に軽症だった患者では、記憶障害を訴える割合も同順に5%、9%であって、非有意ながら後者で高かった(P=0.071)。
続いて年齢層別に解析すると、40歳代の記憶障害を訴える割合は、配偶者あり群7%、なし群26%であり、後者の方が有意に高かった(P=0.007)。40歳代で抑うつを訴える割合も同順に22%、39%であって、非有意ながら後者が高値だった(P=0.061)。40歳代以外の世代では、配偶者の有無による顕著な差は認められなかった。
以上より著者らは、「COVID-19急性期に軽症で独身の患者には、心理的サポートが必要ではないか」と結論付けている。なお、40歳代で婚姻状況による差が顕著であるという結果について、「この世代はメンタルヘルスの問題が発生しやすい年齢であり、社会や職場などで多くの責任を担っていることなどのために、孤独な状況の影響を強く受けるのではないか」との考察を加えている。
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