• 日本人では重症COVID-19にもレムデシビルが有効の可能性

     ICU入室を要する重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にも、抗ウイルス薬のレムデシビルが有効であることを示すデータが報告された。発症9日以内に同薬が投与されていた場合に、死亡リスクの有意な低下が観察されたという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Virology」に9月23日掲載された。

     COVID-19に対するレムデシビルの有効性はパンデミックの早い段階で報告されていた。同薬は現在までに流行した全ての変異株に有効とされてきており、世界保健機関(WHO)のCOVID-19薬物治療に関するガイドラインの最新版でも、軽症患者への使用が推奨されている。ただし重症患者での有効性のエビデンスが少なく、同ガイドラインでも条件付きの推奨にとどまっている。

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     他方、日本国内では機械的人工呼吸や体外式膜型人工肺(ECMO)を要するような重症COVID-19患者の死亡率が、他国よりも低いことが報告されている。このような日本の医療環境下であれば、海外とは異なる治療戦略が有効な可能性も考えられる。これを背景として藤原氏らは、同大学病院の医療記録を用いて、重症患者でのレムデシビルの有効性を後方視的に検討した。

     解析対象は、2020年4月~2021年11月に同院に入院しICU入室を要した患者のうち、新型コロナウイルス検査が陽性のCOVID-19患者で、ステロイド治療が行われた168人。このうち131人(78%)は、観察開始日(入院日または発症日のどちらか遅い日)に高流量酸素または人工呼吸器による治療を受けていた。

     解析対象者168人中、96人は発症9日以内にレムデシビルが投与され、37人は発症10日目以降に同薬が投与されていた。他の35人には同薬が投与されていなかった。全期間の院内死亡率は19.0%であり、前記の3群で比較すると、同順に10.4%、16.2%、45.7%だった。なお、解析対象期間の2020年4月~2021年11月は、パンデミック第1波から第5波に相当するが、院内死亡率については大きな違いはなかった。

     入院日、併存疾患数、腎機能・肝機能障害、酸素需要量、胸部CT検査による肺炎の重症度などの交絡因子を調整したCox回帰モデルで、レムデシビルが投与されていなかった群を基準として院内死亡率を比較。その結果、同薬を発症9日以内に投与されていた群では院内死亡率が9割低いことが示された〔ハザード比(HR)0.10(95%信頼区間0.025~0.428)〕。一方、発症10日目以降に同薬が投与されていた群では、有意な死亡率低下は観察されなかった〔HR0.42(同0.117~1.524)〕。

     重症のCOVID-19患者ではレムデシビルの有効性が認められないとするこれまでの研究の多くは、アジア人以外の人種での研究だった。一方、今回の研究の解析対象は大半が日本人であり、日本人以外(対象の4.8%)も全てアジア人だった。著者らは、「アジア人種の重症COVID-19患者にはレムデシビルが有効である可能性を、実臨床で示すことができた意義は大きい」と述べている。

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    HealthDay News 2022年11月14日
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  • 肥満の有病率が高い都道府県は透析導入率が高い

     都道府県ごとの肥満の有病率が、透析導入率と有意な関連のあることが報告された。また女性に関しては、タンパク尿の有病率とも有意な関連があるという。新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学寄附講座の若杉三奈子氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に10月8日掲載された。

     肥満は慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)の重要なリスク因子の一つであり、また日本人は欧米人に比べて腎機能が低く、ESKDの罹患率が高いことが知られている。一方、日本国内の肥満の有病率には地域差があり、それがESKD罹患率の差となり透析導入率の差として現れている可能性が考えられる。ただし、これまでそのような視点での研究は行われていない。若杉氏らはこの点について、日本透析医学会のレジストリ、特定健診データ・医療費請求データなどを利用して検討した。なお、透析導入率には性差が存在するため、解析は性別に行った。

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     解析の基礎データとなる2016~2017年の透析導入率は、男性1,000人年当たり0.42、女性0.18だった。また特定健診の対象である40~74歳での肥満(BMI25以上)の有病率は、男性33.7%、女性19.7%、タンパク尿(1+以上)の有病率は同順に5.0%、2.6%だった。

     各都道府県の人口構成の違いを調整した標準化透析導入比は、男性は0.72~1.24の範囲、女性は0.69~1.41の範囲に分布していて、全体的に男性の方が高いものの、男性と女性で強い相関があった(r=0.83)。同様に、肥満の有病率(r=0.87)や、タンパク尿の有病率(r=0.88)、および一般住民の標準化死亡比(r=0.74)も、男性と女性で強く相関していた(全てP<0.001)。

     次に、研究の主題である、各都道府県の肥満の有病率と標準化透析導入比との関連を見ると、男性では中程度の相関が認められ(r=0.46、P<0.001)、タンパク尿の有病率とも弱い有意な相関が確認された(r=0.30、P=0.04)。また、肥満の有病率(r=0.35、P=0.02)やタンパク尿の有病率(r=0.33、P=0.02)は、一般住民の標準化死亡比とも弱い有意な相関があった。

     女性については、各都道府県の肥満の有病率と標準化透析導入比との間に弱い相関があり(r=0.37、P=0.01)、タンパク尿の有病率とは中程度の相関が認められた(r=0.41、P=0.004)、また、肥満の有病率は標準化死亡比とも弱い有意な相関があった(r=0.33、P=0.03)。ただし男性と異なり、タンパク尿の有病率と一般住民の標準化死亡比との関連は非有意だった(r=0.005、P=0.97)。

     肥満の有病率とタンパク尿の有病率、および各都道府県の医師数に占める腎臓病専門医の割合を説明変数とする回帰分析の結果、男性では肥満の有病率のみが標準化透析導入比と有意な関連が認められ(β=0.42、P=0.004)、タンパク尿は有意な関連がなかった。一方、女性では肥満の有病率(β=0.39、P=0.004)とともに、タンパク尿の有病率(β=0.41、P=0.003)も標準化透析導入比と有意な関連が認められた。

     パス解析からも、男性の標準化透析導入比に有意に関連するのは肥満有病率のみであり(β=0.43、P<0.001)、女性では肥満有病率(β=0.40、P<0.001)とタンパク尿の有病率(β=0.33、P=0.01)が、それぞれ独立して標準化透析導入比に関連していることが示された。

     以上を基に著者らは、肥満の有病率が高い都道府県は標準化透析導入比が高いという有意な関連が明らかになった。これは、一般住民および医療専門職者に向けた、普通体重を維持することが腎臓を守るために重要であるという明確なメッセージとなり得る」と結論付けている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2022年11月14日
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