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1月 13 2026 1歳6ヵ月時点の母乳育児がむし歯発症と関連、口腔衛生指導の重要性を示す縦断研究
乳幼児のう蝕(むし歯)は生活習慣や食事習慣など複数の要因が絡み、授乳との関係はこれまで議論が続いてきた。今回、日本の子ども約6,700人を1歳6ヵ月~3歳6ヵ月まで追跡した縦断研究で、1歳6ヵ月時点で母乳育児を続けていた子どもで、その後のむし歯発症との関連が示された。一方で、母乳育児を継続していても多くの子どもはむし歯を経験しておらず、母乳育児そのものではなく、食事習慣や口腔衛生習慣などのケアが重要である可能性が示唆された。研究は大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学講座の三笠祐介氏、大継將寿氏、仲野和彦氏、同大学口腔生理学講座の加藤隆史氏らによるもので、11月27日付で「Scientific Reports」に掲載された。
乳歯のむし歯は世界で5億人以上の子どもに影響する公衆衛生上の重要な健康課題であり、日本では全体として減少傾向にあるものの、依然として高リスク層への偏在がみられる。むし歯の原因は多因子的だが、母乳栄養とむし歯の関係については研究間で一致した結論が得られていない。1歳以降の授乳をむし歯リスクとする報告がある一方で、1歳6ヵ月までの授乳はむし歯リスクの低下と関連するとの報告や、砂糖摂取こそが主要因であるとする研究もあり、見解は分かれている。また、早期に歯が萌える(はえる)こともむし歯リスクに関与するとされるが、縦断的な検討は限られている。そこで本研究では、日本の中核都市の子どもを対象に、1歳6ヵ月〜3歳6ヵ月のむし歯発症と、1歳6ヵ月時点の授乳状況および萌えている歯の数との関連を縦断的に検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究では、大阪府豊中市、豊中市歯科医師会と連携のもと、市の乳幼児健康診査の受診者を対象に調査を行った。2018年4月から2020年3月までの間に、豊中市の3つの保健センターで歯科健診を受けた3歳6ヵ月の子どもを対象とした。1歳6ヵ月時および3歳6ヵ月時に身体計測と歯科健診を行い、萌えている歯の本数やむし歯の有無(dmft指数)を評価した。1歳6ヵ月時には、口腔内細菌の状態を評価するむし歯リスク検査と、授乳状況や食事習慣、就寝時刻などに関する保護者向けアンケートを実施し、3歳6ヵ月時点でのむし歯発症との関連をロジスティック回帰分析で検討した。
5,161名の子どものうち、3歳6ヵ月時点でむし歯を経験していた子どもは738人(14.3%)であった。内訳は、1歳6ヵ月時点ですでにむし歯を有していた子どもが50人(1.0%)、1歳6ヵ月~3歳6ヵ月の間に新たにむし歯を発症した子どもが688人(13.3%)であった。1歳6ヵ月時点ですでにむし歯を有していた50人を除外し、5,111人を対象として、1歳6ヵ月~3歳6ヵ月におけるむし歯発症に関する追加のリスク解析を行った。
出生順位、歯の本数、むし歯リスクの検査結果、食事習慣、授乳・哺乳状況などの潜在的な交絡因子を調整した多変量解析の結果、3歳6ヵ月時点でのむし歯発症は、1歳6ヵ月時に萌えている歯が12本以下であること(オッズ比〔OR〕0.78、95%信頼区間〔CI〕0.63~0.97、P<0.05)と負の関連を示した。一方、17本以上であること(OR 2.06、95%CI 1.12~3.79、P<0.05)、母乳のみで授乳していたこと(OR 2.03、95%CI 1.68~2.46、P<0.001)、および母乳と哺乳瓶の併用(OR 2.45、95%CI 1.36~4.44、P<0.01)は、むし歯発症と有意な正の関連を示した。
著者らは、「本研究は、1歳6ヵ月時点の歯の萌え方や授乳状況が、その後のむし歯発症と関連することを示した。得られた知見から、乳歯が萌え始める早期の段階から歯科受診や適切な口腔ケア、食事習慣に関する指導を行うことで、母乳育児の利点を活かしつつ、将来的なむし歯リスクを低減できる可能性が示唆される」と述べている。
なお、本研究では、歯の本数のみを評価し歯種や萌える順番を評価していない点や、保護者向けアンケートにて夜間授乳や授乳頻度について評価していない点を限界として挙げている。
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1月 13 2026 肝腫瘍の「深さ」が手術成績を左右する?ロボット手術が有利となる2.5cmの境界線
肝臓の腫瘍手術では、腫瘍の大きさや位置が成績を左右することが知られている。なかでも「どれだけ深い場所にあるか」は、手術の難易度に直結する重要な要素だ。今回の研究では、肝腫瘍までの深さに着目し腹腔鏡手術とロボット手術を比較した結果、深さ2.5cmを超える肝部分切除ではロボット手術が有利となる可能性が示された。研究は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学の藤智和氏、高木弘誠氏、藤原俊義氏らによるもので、詳細は11月27日付で「Langenbeck’s Archives of Surgery」に掲載された。
ロボット支援下肝切除術(RLR)は普及が進んでいるが、高額なコストや限られた手術枠での運用のために、従来から行われてきた腹腔鏡下肝切除術(LLR)との使い分けの議論が続いている。肝部分切除は比較的難易度が低いとされているが、切除する腫瘍の深さによって手術難度が異なることを経験する。そこで著者らは、肝部分切除において腫瘍の深さが手術難度に関与すると仮定し、肝切離深度(LTD)に着目して、肝部分切除におけるRLRとLLRの手術成績を比較検討した。
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本研究ではRLR 56名、LLR 49名が解析対象となった。RLR群では、手術時間が有意に短く(139分 vs 195分、P<0.001)、出血量も少なく(0mL vs 50mL、P=0.002)、開腹移行率も低い(0% vs 8.2%、P=0.03)など、手術成績が良好であった。術後転帰は両群間に有意差は認められなかった。
RLR群とLLR群でLTDの中央値に差は認められなかった(RLR 2.6cm、LLR 2.6cm、P=0.77)。LTDは両術式において手術時間と有意に相関しており(RLR:R²=0.07、P=0.042;LLR:R²=0.08、P=0.046)、切離深度が深いほど手術時間が延長する傾向が示された。
次に手術困難(手術時間中央値170分を超える)に関連する予測因子を検討した。多変量解析の結果、LTD(オッズ比〔OR〕 2.0/1cm、P=0.004)およびLLR(OR 6.9、P<0.001)が、手術時間の延長と独立して関連する有意な因子として同定された。
また、LTDを用いたROC解析により、手術時間延長を予測するカットオフ値は2.5cmと算出された(AUC=0.63)。LTDが2.5cm以下の症例ではRLRはLLRに比べて手術時間が短い(137分 vs 176分、P=0.02)以外の差は認めなかったが、2.5cmを超える症例では、RLRはLLRに比べて手術時間の短縮がより顕著で(145分 vs 231分、P<0.001)、出血量も少なく(0mL vs 100mL、P=0.006)、術後の成績を総合的に評価する指標であるtextbook outcome達成率も高かった(77% vs 42%、P=0.01)。
著者らは、「本研究は、肝腫瘍の深さ(肝切離深度)という指標を用いて、肝部分切除における術式選択の目安を示した。とくに深さ2.5cmを超える症例では、ロボット手術が手術時間や出血量、術後成績において優れており、患者さんにとって有益となる可能性が示された。術前画像に基づく合理的な術式選択につながる知見といえる」と述べている。
なお、本研究の限界として、症例数が限られていることや単一施設での後ろ向き研究であること、長期転帰を評価していないことなどを挙げている。
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