-
3月 09 2026 意欲低下と抑うつの併存、高齢者の多面的フレイルと関連か
高齢者のフレイルは身体機能だけでなく、認知、社会、口腔など多面的な側面を持つことが知られている。今回、地域在住高齢者を対象とした研究で、意欲低下(アパシー)と抑うつ症状はいずれも身体・認知・社会フレイルと関連し、両者を併存する場合には口腔を含む多面的フレイルとの関連が示唆された。研究は、島根大学医学部内科学講座内科学第三の黒田陽子氏、同大学地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)の安部孝文氏らによるもので、詳細は2月6日付で「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。
日本の超高齢社会では健康寿命の延伸が重要課題であり、フレイルは加齢に伴う生理的予備能の低下によりストレスへの抵抗力が弱まった状態で、要介護や転倒、入院、死亡などと関連することが知られている。日本では多面的評価を可能とする「後期高齢者の質問票(Questionnaire for Medical Checkup of the Old-Old:QMCOO)」が導入されたが、各フレイル領域との関連、とくに情動機能との関係は十分に検討されていない。抑うつはフレイルとの関連が報告されている一方、アパシーとフレイルの関連や両者の違いは不明な点が多い。本研究は、地域在住高齢者を対象に、アパシーと抑うつ症状を独立して評価し、身体・口腔・認知・社会の各フレイル領域との関連を明らかにすることを目的とした。
【認知症の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究は、2024年のShimane CoHRE Studyに参加した島根県雲南市在住の75歳以上の高齢者465人を対象とした横断研究として実施された。アパシーは日本語版Starkstein Apathy Scale(やる気スコア)で16点以上、抑うつ症状はSelf-rating Depression Scaleで40点以上を基準に定義した。フレイルは、身体・認知・社会・口腔の各領域についてQMCOOを用いて評価した。解析では、年齢、性別、BMI、Multimorbidityで調整したロジスティック回帰分析を行った。
参加者の年齢中央値は78歳(四分位範囲76.0~82.0)、女性は約半数(49.7%)を占めた。参加者におけるアパシー、抑うつ症状、および両者の併存の有病割合は、それぞれ30.8%、29.9%、14.6%であった。二変量解析では、アパシー群は非アパシー群と比べて認知的フレイル(特に時間の見当識障害)や社会的フレイル(相談相手の不在など)の割合が高く、抑うつ症状群では身体機能低下を中心とした身体的フレイルとの関連が目立った。
多変量解析では、アパシーおよび抑うつ症状はいずれも身体的フレイル、運動習慣の欠如、認知的フレイル、記憶障害、社会的交流の不足と独立して関連していた。さらに、アパシーは時間の見当識障害、社会的フレイル、閉じこもり、相談相手の不在と関連し、抑うつ症状は咀嚼機能低下や身体機能低下との関連が特徴的であった。
また、アパシーと抑うつ症状の併存群では口腔・身体・認知・社会のすべてのフレイル領域と有意な関連が認められた。
著者らは、アパシーと抑うつ症状は共通して身体的・認知的フレイルと関連する一方、アパシーは特に社会的フレイルとの関連が示唆されたと結論づけている。また、「両者が併存する場合には口腔領域を含む複数のフレイル領域と関連し、多面的な脆弱性が強まる可能性がある。フレイル予防には情動機能の評価と個別化された対応が重要であり、因果関係の解明には今後の縦断研究が求められる」と述べている。
なお、本研究の限界として、横断研究デザインのため因果関係を検討できない点や自己報告によるバイアス、QMCOOのみでのフレイル評価、健診受診者に限定された集団による一般化可能性の制限などを挙げている。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
3月 09 2026 BMIでは見えない死亡リスク? 新体型指標の可能性
体格評価に広く用いられるBMI(体格指数)だが、その限界も指摘されている。近年、体型の丸みや腹囲を反映する指標であるBody Roundness Index(BRI)や、体型形状を考慮したA Body Shape Index(ABSI)が提案されている。今回、日本人約78万人を対象とした大規模研究で、これらの指標が死亡リスク評価に新たな視点をもたらす可能性が示された。研究は、東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座の木村悠哉氏らによるもので、詳細は1月31日付で「Journal of Obesity」に掲載された。
BMIは体脂肪の指標として広く用いられているが、脂肪と筋肉を区別できない点や脂肪分布を反映しない点が課題とされている。同じBMIでも体組成や死亡リスクが異なる可能性があり、近年は腹囲や内臓脂肪を反映した新たな体型指標であるBRIやABSIが提案されている。欧米や糖尿病患者を対象とした研究では、これらの指標がBMIより死亡リスク評価に優れる可能性が示唆されているが、アジア人の一般集団でのエビデンスは限られている。本研究では、日本人を含むアジア集団において、BMI・BRI・ABSIと全死亡との関連を比較し、BMIカテゴリ内でのより詳細なリスク層別化が可能かを検証することを目的とした。
【肥満症の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究では、全国を代表する日本のレセプトデータベース(2014~2022年)を用いた後ろ向きコホート研究として、健康診断を受診した77万8,812人を解析対象とした。主要評価項目は全死亡とした。3つの身体計測指標は、制限付き三次スプライン曲線から算出したカットオフ値に基づき5群(Q1~Q5)に分類した。人口統計学的因子、生活習慣および併存疾患で調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、これらのカテゴリ変数と全死亡との関連を評価した。
参加者の平均(標準偏差)年齢は62.8(9.6)歳で、女性は44万5,250人(57.2%)であった。死亡例ではABSIが生存者より高値であった一方、BMIおよびBRIには明確な差はみられなかった。また、BRIはBMIと強い相関を示したのに対し、ABSIはBMIとほとんど相関が認められなかった。
追跡期間中央値(四分位範囲)4.53(3.28~6.23)年の間に、1万4,690件の死亡が確認された。BMIおよびBRIでは、値が低すぎても高すぎても死亡リスクが上昇する「U字型」の関連がみられた。一方、ABSIでは低値域ではリスク上昇が比較的緩やかで、高値になるほど急激にリスクが増加する「J字型」の関係が示された。
基準カテゴリ(Q3)と比較した死亡リスクの有意差は、BMIではQ1・Q2・Q5の3カテゴリに認められたのに対し、BRIおよびABSIでは基準カテゴリ(Q3)以外のすべて(Q1・Q2・Q4・Q5)で認められた。
著者らは、「本研究はアジア人集団における死亡リスク評価において新たな身体計測指標を考慮することの有用性を示唆している。また、これらの知見は、体組成評価や肥満管理におけるより包括的なアプローチの発展に寄与する可能性がある」と述べている。
なお、本研究の限界として、民族差を検討できない点、死因別死亡が解析できない点、観察期間が比較的短い点、選択バイアスや社会経済的要因を調整できないことによる残余交絡の可能性がある点などを挙げている。
肥満症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。