• 肝腫瘍の「深さ」が手術成績を左右する?ロボット手術が有利となる2.5cmの境界線

     肝臓の腫瘍手術では、腫瘍の大きさや位置が成績を左右することが知られている。なかでも「どれだけ深い場所にあるか」は、手術の難易度に直結する重要な要素だ。今回の研究では、肝腫瘍までの深さに着目し腹腔鏡手術とロボット手術を比較した結果、深さ2.5cmを超える肝部分切除ではロボット手術が有利となる可能性が示された。研究は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学の藤智和氏、高木弘誠氏、藤原俊義氏らによるもので、詳細は11月27日付で「Langenbeck’s Archives of Surgery」に掲載された。

     ロボット支援下肝切除術(RLR)は普及が進んでいるが、高額なコストや限られた手術枠での運用のために、従来から行われてきた腹腔鏡下肝切除術(LLR)との使い分けの議論が続いている。肝部分切除は比較的難易度が低いとされているが、切除する腫瘍の深さによって手術難度が異なることを経験する。そこで著者らは、肝部分切除において腫瘍の深さが手術難度に関与すると仮定し、肝切離深度(LTD)に着目して、肝部分切除におけるRLRとLLRの手術成績を比較検討した。

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     本研究は、岡山大学における低侵襲手術トレーニングプログラム(TAKUMI-5)の一環として実施された。解析対象には、2018年1月~2024年12月までに岡山大学病院肝胆膵外科でRLRまたはLLRを受けた患者249名を含めた。LTDが手術成績に及ぼす影響を評価するため、組み入れ基準は単発病変に対する肝部分切除として、RLRまたはLLRを施行した患者とした。前向きに収集したデータベースを用い、患者背景、腫瘍因子、手術因子、術後転帰を解析した。LTDは画像解析ソフトで肝切離面シミュレーションを行い、肝表面から離断最深部までの深さとして計測した。まずRLRとLLRの成績を比較し、次いでLTDと手術時間などの周術期指標との関連を検討した。さらに多変量解析により手術困難の規定因子を同定し、LTDのカットオフ値別に両術式の成績を比較した。

     本研究ではRLR 56名、LLR 49名が解析対象となった。RLR群では、手術時間が有意に短く(139分 vs 195分、P<0.001)、出血量も少なく(0mL vs 50mL、P=0.002)、開腹移行率も低い(0% vs 8.2%、P=0.03)など、手術成績が良好であった。術後転帰は両群間に有意差は認められなかった。

     RLR群とLLR群でLTDの中央値に差は認められなかった(RLR 2.6cm、LLR 2.6cm、P=0.77)。LTDは両術式において手術時間と有意に相関しており(RLR:R²=0.07、P=0.042;LLR:R²=0.08、P=0.046)、切離深度が深いほど手術時間が延長する傾向が示された。

     次に手術困難(手術時間中央値170分を超える)に関連する予測因子を検討した。多変量解析の結果、LTD(オッズ比〔OR〕 2.0/1cm、P=0.004)およびLLR(OR 6.9、P<0.001)が、手術時間の延長と独立して関連する有意な因子として同定された。

     また、LTDを用いたROC解析により、手術時間延長を予測するカットオフ値は2.5cmと算出された(AUC=0.63)。LTDが2.5cm以下の症例ではRLRはLLRに比べて手術時間が短い(137分 vs 176分、P=0.02)以外の差は認めなかったが、2.5cmを超える症例では、RLRはLLRに比べて手術時間の短縮がより顕著で(145分 vs 231分、P<0.001)、出血量も少なく(0mL vs 100mL、P=0.006)、術後の成績を総合的に評価する指標であるtextbook outcome達成率も高かった(77% vs 42%、P=0.01)。

     著者らは、「本研究は、肝腫瘍の深さ(肝切離深度)という指標を用いて、肝部分切除における術式選択の目安を示した。とくに深さ2.5cmを超える症例では、ロボット手術が手術時間や出血量、術後成績において優れており、患者さんにとって有益となる可能性が示された。術前画像に基づく合理的な術式選択につながる知見といえる」と述べている。

     なお、本研究の限界として、症例数が限られていることや単一施設での後ろ向き研究であること、長期転帰を評価していないことなどを挙げている。

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    HealthDay News 2026年1月13日
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  • 食事からのメラトニン摂取、肝がんのリスク低下と関連

     食事からのメラトニン摂取と肝がん罹患との関連を評価する研究が、3万人以上の日本人を対象に行われた。その結果、メラトニンの摂取量が多いほど肝がんのリスクが低下することが明らかとなった。岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野の和田恵子氏らによる研究結果であり、「Cancer Science」に2月14日掲載された。

     メラトニンは、概日リズムを調整し、睡眠を促す内因性ホルモンである。主に脳の松果体で生成されるが、体内組織に広く分布し、抗酸化、抗炎症、免疫調節などにも関与している。メラトニンは肝臓でも合成・代謝され、細胞保護や発がん予防などの作用があることも示されている。

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     一方、メラトニンは体外からも摂取される。医療上の用途は主に睡眠の調節に限られるが、肝がんなどの他疾患への臨床応用も期待されている。また、食品中にも含まれることが知られており、含有量が比較的多い食品として、野菜、植物の種子、卵が挙げられる。医薬品やサプリメントと比べると、食品中のメラトニン含有量はかなり少ないが、メラトニンが豊富な食品の摂取により血中メラトニン濃度が上昇することが報告されている。著者らは過去の研究で食事からのメラトニン摂取量が多いほど死亡リスクが低下することを示したが、メラトニン摂取量とがん罹患の関連についてはこれまでに研究されていない。

     そこで著者らは、岐阜県高山市の住民対象コホート研究「高山スタディ」のデータを用いて、食事からのメラトニン摂取量と肝がん罹患との関連を検討した。研究対象は、1992年9月時点で35歳以上だった人のうち、がんの既往歴がある人を除いた3万824人(男性1万4,240人、女性1万6,584人)。食事に関する情報を食物摂取頻度調査票(FFQ)から入手し、食品中のメラトニン含有量の測定には液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いた。

     その結果、対象者のメラトニンの主な摂取源は、野菜(49%)、穀類(34%)、卵(5%)、コーヒー(4%)だった。エネルギー調整済みのメラトニン摂取量の三分位で3群に分けて比較したところ、メラトニン摂取量の多い群は、女性が多い、糖尿病の既往歴がある、睡眠時間が短い、喫煙歴がない、コーヒーを1日1杯以上飲むなどの傾向が見られた。メラトニン摂取量の少ない群はアルコール摂取量が多かった。

     平均13.6年の追跡期間中、189人が肝がんを罹患し、その内訳はメラトニン摂取量の多い群が49人、中間の群が50人、少ない群が90人だった。COX比例ハザードモデルを用いて、患者背景の差(性別、年齢、BMI、教育年数、糖尿病歴、身体活動、喫煙状況、アルコール摂取量、総エネルギー摂取量、コーヒー摂取量、閉経の有無、睡眠時間)を調整して解析した結果、メラトニンの摂取量が少ない群と比べて、中間の群と多い群では、肝がんのリスクが有意に低下する傾向が認められた(ハザード比はそれぞれ0.64と0.65、傾向性P=0.023)。性別による交互作用は見られなかった(交互作用P=0.54)。一方、メラトニンの前駆体であるトリプトファンの摂取量は、肝がんのリスクとは関連していなかった。

     以上の結果について著者らは、さらなる研究で確認される必要があるものの、結論として「食事からのメラトニンの摂取により、肝がんのリスクが低下する可能性が示唆された」と述べている。

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    HealthDay News 2024年4月1日
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