• 若年女性で膵がん増加の兆候、高齢者では手術も増加――全国データ解析

     膵がんは依然として予後不良ながんの一つであり、その発症動向の変化が注目されている。今回、日本の全国データを解析した研究で、若い女性における膵がん罹患率の上昇を示す兆候が確認された。また、高齢者では膵体尾部切除を中心に膵がんの手術件数が増加していることも明らかになった。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学外科学教室消化器外科学部門の森村玲氏らによるもので、詳細は「Annals of Gastroenterological Surgery」に1月22日付でオンライン掲載された。

     膵がんは世界的に罹患率が上昇しており、2022年には世界で約51万人が新たに診断され、がん死亡原因の上位を占めている。日本は人口10万人当たりの罹患率(粗罹患率)が世界で最も高く、2023年には男女ともにがん死亡原因の第3位となるなど、その影響は大きい。近年は若年発症例の増加も国際的に懸念されているが、日本における最新の発症動向や術式別の手術実態については、全国規模での詳細な検討が十分とはいえない。そうした中、本研究では、日本の全国規模データを用いて、近年の膵がん罹患率の推移と年齢・性別ごとの特徴、さらに術式別の手術動向について包括的に検討した。

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     膵がんの罹患データ(2016~2021年)は、国立がん研究センターの全国がん登録データを用いて解析した。手術件数(2016~2023年)は、厚生労働省の管理する匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)から抽出した。膵臓は、「膵頭部(すいとうぶ)」「膵体部(すいたいぶ)」「膵尾部(すいびぶ)」の3つの部位に分けられる。膵がんの手術は、膵体尾部切除(膵体部・尾部を切除)と膵頭十二指腸切除(膵頭部や十二指腸などを切除)に分類し、さらに開腹手術と腹腔鏡手術に区分した。なお、コード定義の変更により、膵頭十二指腸切除および術式別(開腹・腹腔鏡)のデータは2020~2023年のみ取得可能であり、膵体尾部切除は2016~2023年の期間で解析した。人口10万人当たりの罹患率・手術率を算出し、ポアソン回帰分析で年間リスク比(RR)を推定した。多重比較の影響を考慮し、ボンフェローニ補正を適用した。

     2016~2021年の調査期間中、日本では年間平均約4万3,000人が膵がんと診断され、症例の約8割は65歳以上であった。

     年齢調整後の膵がん罹患率は、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に上昇した(RR=1.007、1.016、1.011、いずれもP<0.0001)。特に10~29歳の女性では顕著な上昇がみられた(RR=1.347~1.449、いずれもP<0.0009)。

     膵体尾部切除の手術率も、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に増加した(RR=1.033、1.032、1.033、いずれもP<0.0001)。年齢別にみると、65~89歳の高齢者で特に増加が顕著であった(RR=1.018~1.114、いずれもP<0.0012)。膵頭十二指腸切除の手術率も2020~2023年にかけて増加したが、解析期間が短いため年次推移の統計的評価は行えなかった。

     2023年の膵がん手術は計1万4,397件で、その内訳は膵頭十二指腸切除が65.6%(9,444件)、膵体尾部切除が34.4%(4,953件)であった。アプローチ別では、開腹手術が77.0%(1万1,079件)と主流で、腹腔鏡手術は23.0%(3,318件)、ロボット支援手術は8.8%(1,271件)であった。

     著者らは、「日本の膵がん疫学において、若年女性での罹患増加の兆候と、高齢者での膵体尾部切除の増加という二つの変化がみられた」と述べている。若年女性については組織型の違いも含めた原因解明とハイリスク群への層別スクリーニングが、高齢者については低侵襲手術を含む外科治療体制の整備が、今後の課題として重要になるとしている。

     なお、本研究の限界として、病期・組織型などの臨床情報を含まないデータの使用、コード変更に伴う解析期間の制約、異なるデータベースを用いた推定による解釈の不確実性などを挙げている。

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    HealthDay News 2026年3月16日
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