パーキンソン病で「痩せる理由」、体重減少の背景にあるエネルギー代謝の変化
パーキンソン病(PD)は、手足の震えや動作の遅れなどの運動症状で知られる神経変性疾患だが、体重減少も重要な非運動症状の一つとされている。今回、PD患者では糖を使うエネルギー代謝が低下し、脂質やアミノ酸を利用する代謝へとシフトしている可能性が示され、体重減少が疾患特異的な代謝変化と関係していることが明らかになった。研究は、藤田医科大学医学部脳神経内科学教室の東篤宏氏、水谷泰彰氏らによるもので、詳細は11月30日付で「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry(JNNP)」に掲載された。
PDにおける体重減少は、疾患進行や予後と関連する重要な非運動症状であり、体脂肪量の低下が主であることは知られていた。しかし、その背景でエネルギー代謝がどのように変化しているのか、糖・脂質・アミノ酸の利用経路がどう再編されているのかは明らかでなかった。本研究では、PD患者の体組成と血漿中のエネルギー代謝に関連する物質を包括的に解析し、体重減少が単なる栄養不足ではなく、エネルギー利用のシフトを伴う代謝異常と関連する可能性を検討した。

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本研究では、藤田医科大学病院脳神経内科においてPDと診断された91名の患者と、対照として年齢・性別をマッチさせた健常人47名が登録された。体組成は生体電気インピーダンス法を用いて評価した。血漿代謝物は、質量分析法により、解糖系およびクエン酸回路に関連する代謝物、脂質やアミノ酸代謝に由来する代謝物など、計17種類の代謝物を測定した。これらのデータを用いて、PDにおける体組成の変化と血漿代謝物との関連を解析した。PD患者と健常対照の体重、BMI、体脂肪量、血漿代謝物濃度などの比較には、Wilcoxon順位和検定を使用した。体組成成分と血漿代謝物濃度との関連については、Spearmanの順位相関係数により相関解析を行った。多重検定の影響を考慮し、血漿代謝物解析では偽発見率(FDR)補正も併用して統計学的有意性を評価した。
PD患者では、健常対照と比べて体重(P=0.003)、BMI(P=0.001)、体脂肪量(P<0.001)がいずれも有意に低かった。一方、筋量は両者で有意な差はなかった(P=0.476)。 血漿代謝物解析の結果、PD患者では解糖系およびクエン酸回路に関連する代謝物(乳酸〔P=0.015〕、コハク酸〔P=0.002〕)が低下していた一方で、脂質の分解によって産生される代替エネルギー源であるケトン体(アセト酢酸〔P=0.039〕、3-ヒドロキシ酪酸〔P=0.013〕)、アミノ酸分解に関連する代謝物(2-ヒドロキシ酪酸〔P=0.045〕、2-オキソ酪酸〔P=0.001〕)、ならびに酢酸〔P=0.010〕が上昇していた。 特に、PD患者においては、血漿中のアセト酢酸および3-ヒドロキシ酪酸濃度がBMIと負の相関を示し(アセト酢酸:rs=-0.372、P<0.001;3-ヒドロキシ酪酸:rs=-0.352、P=0.001)、これらの相関はFDR補正後も有意性を保っていた(それぞれq=0.005、q=0.006)。 さらに、リン脂質の一種であるホスファチジルコリン(40:2)はPD患者の血漿で健常対照の約1.6倍と高値を示し、Hoehn & Yahr重症度分類が進行した患者ほどその値が高かった(rs=0.320、P=0.002)。この関連はFDR補正後も維持された(q=0.045)。 著者らは、「本研究は、パーキンソン病における体脂肪減少と関連する代謝変化を明らかにし、代謝バランス異常を早期に捉える指標となる可能性を示した。これらの知見は、エネルギー代謝異常が病態進行に果たす役割の解明や、栄養状態悪化リスクの高い患者を早期に同定する手がかりとなり、今後の食事・治療戦略ではより広い代謝経路を考慮する必要性を示唆している」と述べている。
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