性格は仕事のやる気より“燃え尽きやすさ”に関係か

 仕事への「やる気」や「燃え尽き」は、個人の性格によってどの程度左右されるのか。今回、日本の企業で働く正社員を1年間追跡した研究から、性格特性はワーク・エンゲージメント(やる気)とは関連しなかった一方で、バーンアウト(燃え尽き)とは有意に関連することが示された。研究は、鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学講座の福崎俊貴氏、獨協医科大学大学院看護学研究科の岩田昇氏によるもので、詳細は1月7日付で「PLOS One」に掲載された。

 近年、労働者のメンタルヘルスでは、仕事への前向きさを高め、健康障害を防ぐ「ポジティブな心理状態」が重視されており、その理論的枠組みとして仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)が用いられている。このモデルでは、仕事の資源(職場のサポートや報酬)がワーク・エンゲージメントを高める一方、仕事の要求がバーンアウトを引き起こすとされる。また、職場環境だけでなく、自己効力感やレジリエンス、性格といった個人要因も重要と考えられている。中でも性格特性は、ワーク・エンゲージメントやバーンアウトとの関連が示唆されてきたが、多くは横断研究にとどまり、職場要因を同時に考慮した縦断的検証は行われていない。さらに、従来のバーンアウト尺度には測定上の課題がある。

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 そこで本研究では、新たなバーンアウト評価尺度(Burnout Assessment Tool:BAT)を用い、日本の労働者を対象に、性格特性とワーク・エンゲージメントおよびバーンアウトとの関連を、職場要因を調整した上で縦断的に検討した。

 本研究では、楽天インサイト株式会社に登録された約220万人のモニターパネルのうち、国内の企業・組織に勤務する正社員を対象に、1年の間隔をあけてオンライン調査を2回実施した(ベースライン調査:2022年11~12月、追跡調査:2023年11~12月)。両調査に回答した500人(男性299人、女性201人、追跡率33.3%)のデータを解析に用いた。性別や年齢などの人口統計学的変数に加え、仕事の要求度・裁量、上司や同僚の支援、外在的報酬といった職場要因を質問票で評価した。ワーク・エンゲージメントとバーンアウトは日本語版尺度を用いてベースラインおよび追跡調査で測定し、性格特性(ビッグファイブ)はベースライン時に評価した。解析には階層的重回帰分析を用い、ベースライン時のワーク・エンゲージメントとバーンアウトおよび人口統計学的変数を調整した。

 本研究の参加者の平均年齢は45.9歳で約60%が男性であった。1年間追跡した解析の結果、ワーク・エンゲージメントは低下した一方で、バーンアウトの程度には大きな変化はみられなかった。

 ワーク・エンゲージメントについては、性格の違いによる影響はほとんど認められず、年齢に加えて、高い外在的報酬(標準化回帰係数〔β〕=0.15、P<0.001)や同僚からの支援(β=0.12、P<0.05)といった仕事の資源の要因が強く関係していた。これに対し、バーンアウトについては、仕事の要求度が大きいほど(β=0.10、P<0.01)、また神経症傾向が高いほど(β=0.08、P<0.05)高く、誠実性が高い人ほど(β=-0.08、P<0.05)低い傾向が認められた。

 著者らは、「今回の結果は、ワーク・エンゲージメントを高めるには性格よりも資源の豊富な職場環境の整備が、バーンアウトを防ぐには仕事の負担や個人特性への配慮が重要であることが示唆された」と述べている。

 本研究の限界として、参加者はオンライン調査パネルの登録者に限られていた点、職務要因(仕事の負荷や職場環境)は一部しか評価していない点などを挙げている。加えて、因果関係の向きや日本特有の文化的背景も考慮に入れる必要があるとしている。

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HealthDay News 2026年2月16日
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