• 全国データで見えた舌がんの実像――年代・性別で異なる手術動向

     舌がんは、舌に発生する口腔がんの一つで、進行すると発話や嚥下に大きな影響を及ぼす。日本では舌がんの全国的な動向は十分に把握されてこなかったが、今回、全国レセプトデータを用いた解析により、舌がんが女性の特定年齢層で増加している可能性が示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の辻川敬裕氏らによるもので、詳細は1月18日付で「Cancer Medicine」に掲載された。

     舌がんの罹患率は世界的に増加しており、特に若年層や女性での増加が懸念されている。しかし日本では、舌がんは口腔・咽頭がんとして一括して統計化されており、全国的な実態は十分に把握されていない。国民皆保険制度のもと、95%以上の保険請求を網羅するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は、全国疫学研究に適したデータ基盤である。舌切除術が全病期で標準治療であることから、本研究では手術コード(医科K415および歯科J018)に基づき舌がん手術を新規症例の代替指標として用い、全国的な舌がん罹患の年次推移および年齢・性別別の特徴を明らかにすることを目的とした。

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     本研究では、医科(2014~2022年)および歯科(2016~2022年)のレセプトデータを用い、全体ならびに年齢階級別の男女比を算出した。さらに、人口10万人年あたりの手術率について、性別および年齢階級別に人口学的ピークの解析を行った。年次推移については、手術件数を線形回帰モデルで、手術率をポアソン回帰モデルで解析し、年次リスク比(RR)を推定した。なお、RR>1.0は人口10万人年あたりの手術率が年々増加していること、RR<1.0は減少していることを示す。

     2016~2022年の医科・歯科レセプトデータを用いた解析では、年間平均4,470.7件の手術が実施されていた(手術率:3.4件/10万人年)。男女比は全体で1.6:1であり、男性がやや優勢であることが示された。年齢階層別の男女比は、40歳未満ではほぼ1:1であったのに対し、60~70歳代では2.0:1となり男性優位の傾向が顕著に認められた。

     手術率は、男性では75~79歳でピーク(12.0件/10万人年)を示し、女性では75~84歳でピーク(5.9件/10万人年)を示した。年齢調整後の手術件数(医科)は2014年から2022年にかけて有意に増加していた。

     さらに年齢調整した手術率は、女性全体(RR=1.020、P<0.0001)および全体集団(RR=1.010、P=0.0006)で有意な増加を示した。年齢階級別の解析では、女性の40~44歳(RR=1.083、P=0.0001)および60~64歳(RR=1.055、P=0.0005)で有意な増加が認められた。

     本研究の結果から、特定の年齢層(中高年)の女性で、舌がんが増えている可能性が浮かび上がった。著者らは、「本研究で示された中高年女性での舌がん手術率の増加傾向は、今後、喫煙や飲酒などの修正可能なリスク因子に関する啓発を含め、女性を意識した予防・早期対応の重要性を示唆する結果といえる」と述べている。

     なお、本研究の限界として、レセプトデータを用いた解析であり、再手術や疾患分類の誤差、病期や生活習慣など患者背景を考慮できていない点を挙げている。また歯科レセプトの観察期間が短く、結果の解釈には注意を要するとしている。

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    HealthDay News 2026年2月24日
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  • がん患者の予後に影響する「糖尿病」――心血管疾患発症リスクを高める可能性

     がん治療の進歩により、生存期間が延びる患者が増える一方で、治療後に心血管疾患(CVD)を発症するリスクが新たな課題として注目されている。しかし、どのような患者がCVDを発症しやすいのかは、十分に明らかになっていない。今回、大阪府の大規模がん登録データを用いた解析で、がんの初回診断時に糖尿病を併存する患者では、CVDの新規発症および全死亡リスクが有意に高いことが示された。研究は、大阪国際がんセンターがん対策センターの桒原佳宏氏、宮代勲氏らによるもので、詳細は1月22日付で「PLOS One」に掲載された。

     がん治療の進歩により生存期間が延び、がんサバイバーが増加する一方、がんとCVDは共通の危険因子を多く持ち、治療自体もCVDリスクを高めることから、治療後のCVD発症が重要な課題となっている。しかし、がん患者においてCVD発症に影響する因子は十分に明らかではない。糖尿病は一般集団でCVDリスクを高めることが知られているが、がんの初回診断時にCVDを有さない患者における影響は不明である。欧州心臓病学会(ESC)が策定した心臓とがん医療に関するガイドラインでは、がん患者の糖尿病管理の重要性が示されているが、十分なエビデンスはそろっていない。本研究は、糖尿病併存がCVD発症および死亡に与える影響を明らかにすることを目的とした。

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     本研究は多施設の後ろ向きコホート研究であり、大阪府がん登録をDPCデータと連結した集団ベースのデータを用いた。2010~2015年にがんと診断され、初回診断時にCVDのない患者を対象とした。糖尿病の有無は糖尿病治療薬の処方歴から判定し、CVD発症はICD-10コードで同定した。がん診断後3年間追跡し、がん診断時の糖尿病併存の有無と全死亡およびCVD発症との関連を、年齢、性別、がん種、病期、BMIなどで調整したCox比例モデルおよび競合リスク解析で評価した。

     本研究の解析対象12万1,997人のうち、4,317人は、がんの初回診断時に糖尿病を併存していた。糖尿病を併存する群は、併存しない群と比較して男性の割合が高く、比較的高齢の患者が多かった。また、遠隔転移を有する患者の割合も高かった。

     糖尿病を併存する群の3年生存率は61.5%で、併存しない群の78.2%を下回っていた。交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルの結果、糖尿病を併存する群では、併存しない群と比較して全死亡リスクが有意に高く(調整ハザード比1.40〔95%信頼区間1.33~1.48〕)、予後不良との関連が示された。がん部位別解析では、糖尿病の併存は一部のがん種を除き、ほとんどのがん部位で予後不良と関連していた。がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外した感度解析でも、結果は一貫していた。

     死亡を競合リスクとして考慮した競合リスク回帰分析では、糖尿病を併存する患者は、併存しない患者と比較して全CVDの発症リスクが有意に高かった(同1.43〔1.34~1.53〕)。また、心血管イベントの種類やがん種によって関連の強さには差がみられたが、がん種別解析でも全体解析と同様の傾向が認められた。なお、がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外して解析しても、主要な結果は変わらなかった。

     死亡直前2か月以内に入院歴のあった2万1,292人を対象に死因を推定した解析では、糖尿病を併存する群でCVDによる死亡割合が高かった(6.94% vs. 4.57%)。交絡因子を調整したロジスティック回帰分析でも、糖尿病の併存はCVDによる死亡リスクの上昇と有意に関連していた(オッズ比1.47〔95%信頼区間1.19~1.81〕)。がん種別では、胃がんおよび胆嚢がんでこの関連が有意であった。

     著者らは、「がん診断時に心血管疾患のない患者でも、糖尿病を併存している場合、その後の心血管疾患の発症や予後に悪影響を及ぼす可能性が示された。糖尿病管理ががん患者の転帰改善につながるかどうか、今後の検証が必要である」と述べている。

     なお、本研究の限界として、診療報酬データに基づく後ろ向き観察研究である点、糖尿病やCVDの誤分類や未調整の交絡因子の影響を否定できない点などを挙げている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2026年2月24日
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