ロボット支援直腸がん手術、術後1日目のCRPで合併症予測が可能に

術後合併症や感染症への対応には、早期発見と迅速な対処が求められる。今回、直腸がんに対するロボット支援下直腸手術(RARS)後の合併症リスクが、術後1日目のC反応性蛋白(CRP)値で予測できるとする研究結果が報告された。術後早期のCRP測定が、高リスク患者の見極めや迅速な介入に役立つ可能性があるという。研究は国立病院機構福山医療センター消化器・一般外科の寺石文則氏らによるもので、詳細は8月28日付けで「Updates in Surgery」に掲載された。
RARSは、骨盤内の限られた視野で高い操作性を発揮し、従来の腹腔鏡手術や開腹手術と同等かそれ以上の成績を示すことが報告されている。しかし、依然として術後合併症は患者予後を左右する大きな課題であり、早期に高リスク患者を見極めることが重要だ。炎症マーカーであるCRPは大腸手術後の合併症予測に有用とされるが、ロボット支援手術における術後早期のCRP値の予測的価値は十分に検討されていない。このような背景を踏まえ著者らは、RARS後の合併症リスク因子を解析し、特に術後1日目のCRP測定の有用性を評価することを目的とした後ろ向きコホート研究を実施した。

郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。
本解析では、岡山大学病院にて、2020年9月から2025年1月にかけて、原発性直腸がんに対して待機的にロボット支援手術を受けた連続症例を対象とした。血清CRP値は、術前および術後1日目と4日目に測定された。主要評価項目は、手術後30日以内に発生したすべての合併症の有無であり、Clavien–Dindo(C–D)分類に基づいて評価した。群間比較は、連続変数についてはt検定またはMann-Whitney U検定、カテゴリ変数についてはカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を用いた。また、単変量解析で有意な因子や臨床的に重要な因子を多変量ロジスティック回帰モデルに投入し、術後1日目のCRPを含む独立した合併症予測因子を特定した。さらに、ROC解析で最適カットオフ値を算出し、Youden指数で評価した。
追跡期間中に直腸がんに対してロボット支援手術を受けた患者117名が本研究の対象となった。平均年齢は66歳で、男性は59.0%を占めた。術後合併症は26名(22.2%)に発生し、腸閉塞(10例)、腹腔内膿瘍および吻合不全(7例)、リンパ漏(2例)などが認められた。手術後30日以内の死亡はなかった。単変量解析により、これらの合併症は高齢、ASAスコア(米国麻酔学会の全身状態評価)の上昇、術前補助療法、ストーマ造設、手術時間の長さ、術後1日目・4日目のCRP値上昇などと有意に関連することが示された。これらの因子を含めた多変量ロジスティック回帰分析を行った結果、術後1日目のCRP値は術後全体の合併症の強力かつ独立した予測因子であることが明らかとなった(調整オッズ比 0.77、95%信頼区間〔CI〕 0.63~0.93、P<0.01)。
5分割交差検証を用いたROC解析では、AUCは0.735(ブートストラップ法によるバイアス補正95%CI 0.544~0.848)であった。術後1日目のCRPの最適カットオフ値は5.63 mg/dLで、この値でYouden指数は最大(0.484)となり、感度 0.615、特異度 0.868を示した。これらの結果から、術後1日目のCRP測定は、直腸がんに対するロボット支援直腸手術後の合併症を予測する有用かつ独立したバイオマーカーであることが示唆された。
本研究について著者らは、「術後1日目のCRP値測定を術後管理に組み込むことで、高リスク患者の早期発見が可能となり、迅速な介入や最終的な手術成績の改善につながる可能性がある」と述べている。
また著者らは、今後の研究において前向きかつ多施設での検証が必要であることを強調するとともに、CRPと他のバイオマーカーを組み合わせることで、予測精度をさらに高められる可能性があることにも言及している。

治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。