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12月 22 2025 拡張型心筋症患者に対する早期心リハの有用性、傾向スコアマッチングを用いた全国規模解析
拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は、心臓の筋肉が弱まり、心臓が拡張して十分に血液を送り出せなくなる病気で、心不全の主要な原因の一つとされる。このDCM患者に対し、入院早期から心臓リハビリテーション(心リハ)を開始すると、90日死亡率が有意に低下することが、日本の全国入院データベースを用いた研究で明らかになった。解析では、早期に心リハを始めた患者群では早期から心リハを受けなかった群と比べて90日以内の死亡リスクが低く、退院時の日常生活動作(ADL)もやや高値であったという。研究は大阪大学/奈良県立医科大学の安福祐一氏らによるもので、詳細は10月24日付で「Scientific Reports」に掲載された。
DCMは、心筋の収縮低下と左室拡張を特徴とし、一部の患者は慢性心不全や急性増悪を繰り返す進行性心筋疾患である。心リハは、機能回復や再入院予防を目的として行われる運動療法や生活指導などを含んだ包括的な治療プログラムであり、急性心不全患者への早期導入も行われている。しかし、DCM患者に対する早期心リハの有効性を検証した報告は限られており、十分なエビデンスは得られていない。本研究では、日本の全国入院データベースを用い、症候性心不全を呈するDCM患者における早期心リハ開始と90日以内の死亡率との関連について検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究では、2010年7月1日から2020年3月31日までのDPCデータベースから、DCMおよび心不全(NYHA心機能分類Ⅱ~Ⅳ度)と診断された患者を解析対象とした。患者は入院後3日以内に心リハを開始したかどうかに基づき、早期心リハ群と遅延または非心リハ群に分類した。主要評価項目は入院後90日以内の死亡率とし、副次評価項目は退院時のADLスコアと在院日数とした。欠測値は多重代入法を用いて統計的に補完し、患者背景や2015年度病床機能報告から取得した入院施設の医療機能の違い等を調整するため1対1の傾向スコアマッチングを行った。
本研究では、早期心リハ群3,130名および遅延または非心リハ群2万7,166名の計3万296名を適格患者と判定した。遅延または非心リハ群のうち7,340名(27%)が入院後3日目以降に心リハを受けていた。1対1の傾向スコアマッチングを行った結果、最終的に各群3,129名(計6,258名)が解析対象となった。
多重代入および傾向スコアマッチングの結果、入院後90日以内の死亡率は遅延または非心リハ群に比べて早期心リハ群で有意に低かった(オッズ比:0.70、95%信頼区間〔CI〕:0.53~0.93、P値=0.01)。また、早期心リハ群では退院時ADLスコアも若干高かった(平均差〔Average Treatment Effect on the Treated;ATT〕:0.43、95%CI:0.08~0.78、P値=0.02)が、在院日数には有意な差は認められなかった(ATT:−2.1日、95%CI:−4.7~0.5日、P値=0.11)。
著者らは、「今回の研究の意義は、これまで世界的にもエビデンスが乏しかったDCM患者に対する早期心リハの短期予後(90日以内の死亡率)に対する効果を明らかにした点にある。今後は、本研究で得られた結果の背景にある生理学的メカニズムや、特に有効であった心リハの具体的なプログラム、個々の患者属性の違いにより生じる心リハの効果の異質性等を解明し、より個別化された効果的な心リハプログラムを開発する必要がある」と述べた。
なお本研究の限界点として、DPCデータベースに含まれる指標の制約により、心エコーや生理学的検査等の交絡因子の調整が制限されたこと、心リハの具体的なプログラムの差異による影響の違いについて検討していないこと、詳細な身体・精神機能や入院中の有害事象に対する早期心リハの影響について検討していないこと等が挙げられる。
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