• 朝食抜きや夕食後の間食、食行動の「数」が抑うつと関連

     抑うつにはさまざまな因子が関係するが、不健康な食行動が多いこともその一つと言えそうだ。朝食を抜く、夕食後に間食をするといった不健康な食行動について、その「数」に着目した研究が新たに行われた。その結果、これらの食行動の数が多い人ほど、抑うつのリスクが高かったという。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らによる研究結果であり、詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」に12月22日掲載された。

     朝食を抜くことと抑うつリスクとの関連については、著者らの先行研究を含め、これまでにもいくつか報告されている。しかし例えば、夕食後の間食が朝食抜きに影響を及ぼす可能性などもあることから、食行動のそれぞれではなく、その積み重ねと抑うつとの関連を検討する方が現実に即している。ただ、この観点での研究はほとんど行われていなかった。そこで、これらの点を踏まえて今回、食行動の数による影響が詳細に検討された。

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     著者らは、栄養疫学調査に参加した製造業の従業員を対象とし、ベースライン時(2012年4月と2013年5月)と3年間の追跡期間後(2015年4月と2016年5月)に調査を実施した。抑うつ症状は自己評価尺度(CES-D)を用いて評価した。不健康な食行動は、朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食の3つについて、週に3回以上行っている行動の数を調査。その他、生活習慣や労働環境、栄養摂取の状態なども調査した。

     解析対象者は19~68歳の914人(男性816人、女性98人)だった。不健康な食行動の数で分類すると、1つもない人は429人(平均43.0歳、男性87.4%)、1つの人は364人(同41.4歳、89.8%)、2~3つの人は121人(同39.6歳、94.2%)だった。不健康な食行動の数が多い人ほど、若年齢、男性・交代勤務・喫煙者の割合が高い、残業時間が長い、仕事・家事・通勤中の身体活動が多いという傾向があった。また、仕事のストレスが大きく、一人暮らしの傾向があり、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、亜鉛の摂取量が少なかった。

     3年間の追跡期間中、抑うつ症状(CES-D≧16)を発症したのは155人(17.0%)だった。対象者の背景因子や職業・生活習慣因子の違いによる影響を調整して解析した結果、不健康な食行動が2~3つの人は、1つもない人と比べて、抑うつのリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.87、95%信頼区間1.10~3.21)。しかし、栄養因子による影響を加えて調整すると、抑うつリスクの差は有意ではなくなった(同1.67、0.96~2.90)。一方、重度の抑うつ症状(CES-D≧23)については、全ての因子を調整しても、不健康な食行動が2~3つの人の方がリスクは有意に高かった。

     著者らは、これまでの研究との違いに関して、「抑うつの予防効果が示唆されている、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、n-3系多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、亜鉛の摂取量」による影響を含めて検討したと説明している。その上で、「朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食という不健康な食行動の数が抑うつのリスク上昇と関連していた」と結論付け、「この関連は、気分を改善する効果のある栄養素の摂取量が少ないことにより、部分的に説明できるかもしれない」と述べている。

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  • パンデミック中、妊娠合併症と出産の転帰の一部が悪化

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、妊娠合併症と出産の転帰の一部は悪化していたことが判明した。日本の100万件以上の出産データを調査した結果、パンデミックにより妊娠高血圧や胎児発育不全、新生児の状態などに影響が見られたという。獨協医科大学医学部公衆衛生学講座の阿部美子氏らによる研究結果であり、「Scientific Reports」に11月29日掲載された。

     パンデミックによる影響については国際的にも多く研究されており、死産の増加や妊産婦のメンタルヘルスの悪化などが報告されてきた。しかし、パンデミックの状況や国・地域の制限レベルなどにより、その影響は異なるだろう。日本でのパンデミックと妊娠や出産の転帰に関しては検討結果が限られており、日本全国レベルでの大規模な研究が必要とされていた。

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     そこで阿部氏らの研究グループは、日本産科婦人科学会(JSOG)が管理する全国データから、2016~2020年の妊娠・出産のデータを用いて、パンデミックによる影響を評価した。妊娠合併症については、妊娠高血圧と胎児発育不全を調査。出産の転帰は、分娩時の妊娠週数、出生体重、新生児のアプガースコア7点未満の有無(7点未満は新生児仮死の可能性を示唆する)、死産などを調査した。これらに対するパンデミックの影響は、胎児数(単胎妊娠と多胎妊娠)による影響を考慮し、分けて検討された。

     解析された妊娠・出産のデータは、パンデミック前(2016~2019年)が95万5,780件、パンデミック中(2020年)が20万1,772件だった。また、この5年間の単胎妊娠は108万4,724件、多胎妊娠は7万2,828件だった。この間、出産年齢が高い人(35歳以上)の割合は徐々に増加し、他の年齢層(20~34歳、19歳以下)の割合は減少していた。

     妊娠合併症に関して比較すると、パンデミック前よりもパンデミック中の方が増加していた。関連因子(出産年齢、出産地域、妊娠前のBMI、不妊治療、胎児発育不全)による影響を調整した検討の結果、単胎妊娠では妊娠高血圧が有意に増えており(調整オッズ比1.064、95%信頼区間1.040~1.090)、多胎妊娠では胎児発育不全が有意に増えていた(同1.112、1.036~1.195)。

     出産の転帰についても同様に比べると、単胎妊娠では、早産(同0.958、0.941~0.977)と低出生体重(同0.959、0.943~0.976)は有意に減少していた一方で、アプガースコア7点未満の新生児は、生後1分(同1.030、1.004~1.056)と生後5分(同1.043、1.002~1.086)の両方で有意に増加していた。新生児死亡や死産および妊産婦死亡に関しては、有意な影響は見られなかった。また、多胎妊娠では、これらの出産の転帰に対する有意な影響は認められなかった。これらの結果は、各年に含まれた分娩施設の影響を考慮した感度分析でも同様の傾向を示した。

     結果を受けて著者らは、2021年以降の傾向が分析できていないことなどに言及した上で、「日本において、パンデミック中に妊娠合併症と分娩の転帰は悪化した」と結論付けている。パンデミック初期、感染者数はまだわずかであったにもかかわらずこのような転帰の悪化を認めたことに対し、著者らは、パンデミック初期から見られた自宅待機などの行動の変化、情報の混乱、社会的恐怖などによる影響を挙げ、「日本のように強制力のない制限であっても、パンデミック時の社会変化が、妊娠の転帰に悪影響を及ぼす可能性を示唆している」と述べている。

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  • 3歳時点の就寝時間の早さが就学後の学力や非認知能力と関連

     3歳の時に就寝時間が早かった子どもは、就寝時間が遅かった子どもと比べて、小学校1年生時点の学力が高く、勤勉さや思いやりを表す非認知能力も高いという研究結果を、神戸大学大学院小児科学分野の西山将広氏らの研究グループが「Scientific Reports」に11月27日発表した。同氏らは「幼児期の最適な睡眠習慣が、子どもたちの将来にプラスに働く可能性がある」と述べている。

     幼児期の睡眠習慣が就学後の学力に与える影響は明らかになっていない。また、睡眠と学力の関連を調べた研究は数多くあるものの、ほとんどは横断的な研究に限られていた。そこで、研究グループは、兵庫県尼崎市による3歳児健診のデータと小学校1年生時の学力データ(国語および算数)を用い、幼児期の睡眠習慣と就学後の学力との関連を検討するため、縦断コホート研究を実施した。

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     研究では、2011年4月から2012年3月または2013年4月から2014年3月の間に尼崎市で生まれた子ども4,395人を対象に学童期まで追跡調査を行った。3歳時点の睡眠習慣については、3歳児健診データから就寝時間(18時、19時、20時、21時、22時および23時)と起床時間を収集。学力は、1年生時の国語と算数のテストの点数(100点満点)に基づき評価した。非認知能力については、自尊心(あなたは良い人間だと思いますか?)と勤勉さ(何事にも熱心に取り組みますか?)、思いやり(あなたは思いやりのある人ですか?)という3つの質問に対し、子どもたちに「はい」か「いいえ」で回答してもらった。

     調査に参加した子どものうち、就寝時間は21時が46.5%(2,045人)と最も多く、22時(35.4%、1,555人)、18時~20時(11.5%、506人)が続いた。小学校1年生時のテストの平均点は、国語が68.7±19.9点、算数が67.2±22.5点だった。

     解析の結果、3歳の時点で早く就寝した子どもほど、小学校1年生時の学力が高かった(就寝時間が「18時~20時」「21時」「22時」「23時以降」の児童の平均点は、国語はそれぞれ71.2±19.7点、69.3±19.4点、68.3±20.1点、62.5±21.3点、算数はそれぞれ70.3±21.8点、67.6±22.0点、66.9±22.6点、61.8±25.4点)。重回帰分析の結果、3歳時点の就寝時間は小学校1年生時の学力と関連していることが分かった。一方で、睡眠の長さ(「6~8時間」「9時間」「10時間」「11時間以上」)と学力の間には有意な関連は認められなかった。

     非認知能力との関連については、3歳時点の就寝時間は自尊心との関連は見られなかったが、就寝時間が遅い子どもほど勤勉さは低下し(就寝時間18~20時に対するオッズ比は、「21時」1.98、「22時」2.15、「23時以降」2.33)、思いやりが弱かった(同じくオッズ比は「22時」1.76、「23時以降」2.15)。

     研究グループは、今回の研究には、転居などの理由で小学校まで追跡できなかった子どもが多かったこと、非認知能力は子どもたちの自己申告に基づいていることなどの限界があるとしながらも、「子どもの性別や3歳時点の精神発達、家庭の経済状況とは関係なく、3歳時点の就寝時間は小学校1年生時の国語と算数の学力と関連していることが分かった。また、幼児期の就寝時間の早さと非認知能力の高さとの間には正の関連があることも初めて示された」と結論付けている。

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  • 双極性障害外来患者の離婚を予測する4つの因子を同定

     実臨床データの解析から、双極性障害外来患者の離婚の予測因子として、若年、BMI(肥満度)低値、双極Ⅰ型障害、抗不安薬の使用の4つの因子が同定され、これらの因子には男女差が見られたと、獨協医科大学精神神経医学講座の菅原典夫氏らの研究グループが「Annals of General Psychiatry」に12月12日発表した。同氏らは、これらの因子を持つ患者に対して予防的介入を行うことで、患者本人だけでなく、家族に対しても社会的支援の提供につながるとの見方を示している。

     双極性障害は、躁症状とうつ症状を繰り返すうちに人間関係の悪化や社会的な信用の喪失のほか、家族関係も破綻しやすく、別居や離婚に至るケースも多い。離婚による社会的孤立は、精神症状のさらなる悪化や再発リスクの増大、経済的困難、治療アドヒアランスの低下を招く可能性があると報告されている。しかし、実臨床における双極性障害患者の離婚の予測因子は明らかになっていない。そこで、菅原氏らは、日本臨床精神神経薬理学会と日本精神神経科診療所協会が合同で行う、双極性障害外来患者の病状や経過、治療内容を調査するMUSUBI(Multicenter Treatment Survey for Bipolar Disorder in Psychiatric Clinics)研究のデータを用い、双極性障害外来患者の離婚の予測因子の同定を試みた。

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     この研究は、日本精神神経科診療所協会に所属する176カ所の精神科クリニックで実施した質問票調査と診療録のデータを後ろ向きに解析したもの。2017年9月から10月までの収集データをベースラインとし、その後2年間の離婚率を調べた。離婚の独立した予測因子には、性、BMI、ベースライン時の年齢、双極性障害の発症年齢やサブタイプ、ベースライン時の就労状況、学歴、知能指数、向精神薬の使用、発達障害、身体的併存疾患、物質乱用、自殺念慮などが含まれた。

     解析対象とした双極性障害外来患者1,071人のうち、追跡期間中に2.8%(30人)が離婚を経験した。この離婚率は、厚生労働省の統計による2020年の年間離婚率0.157%(人口1,000人当たり1.57人)を大きく上回っていた。二項ロジスティック回帰分析の結果、ベースライン時の年齢が若いこと(オッズ比0.941、P=0.036)、BMI値が低いこと(同0.880、P=0.043)は、参加者全員において離婚の有意な予測因子であることが分かった。

     また、離婚の予測因子を男女別に分析したところ、男性では、ベースライン時の年齢が若いこと、双極Ⅰ型障害であること(対双極Ⅱ型障害)が有意な予測因子だったのに対し、女性ではBMI低値と抗不安薬の使用が挙げられた。

     以上から、研究グループは「日本人の双極性障害外来患者の予測因子として、若年、BMI低値、双極Ⅰ型障害、抗不安薬の使用という4つの因子が同定された。家庭生活を安定させるには、食生活を中心とした日常生活の支援体制を確立するとともに、併存する不安障害や双極Ⅰ型障害を適切に治療し、治療アドヒアランスの確認を行うことが重要だ」と結論。その上で、「医療者は、離婚という事象の重大さを認識し、患者だけでなく、その家族の視点に立った支援を行うことが求められる」と付言している。

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  • 妊娠中期のEPA/DHA摂取量が少ないと低出生体重児の割合が高い

     日本人女性では、妊娠中期の食事やサプリメントから摂取するエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系脂肪酸の摂取量が少ないと、低出生体重(low birth weight;LBW)児の割合が高いという研究結果を、山形大学大学院看護学専攻の藤田愛氏、吉村桃果氏らの研究グループが「Nutrients」に11月18日発表した。妊娠中期までのn-3系脂肪酸の摂取不足は、LBWの危険因子の一つだとしている。

     これまでの研究から、妊娠中の母親の栄養不足はLBWの危険因子であり、中でも食事中のEPAやDHA不足はLBWリスクの上昇と関連することが報告されている。ただし、これまでの解析では、EPA、DHAの摂取量は食事からのものに限られており、サプリメントによる摂取量は考慮されていなかった。そこで、研究グループは、The Japan Pregnancy Eating and Activity Cohort Study(J-PEACH Study、代表:春名めぐみ氏)の一環として、妊娠中期(妊娠14~27週)におけるEPA/DHAの摂取量とLBWとの関連を検討する前向きコホート研究を実施した。

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     J-PEACH Studyは、妊娠中の食事摂取や身体活動などのライフスタイルと、妊娠中および産後1年間の健康状態との関連を明らかにすることを目的とした多施設共同の前向きコホート研究だ。今回は、2020年2月から10月までに、J-PEACH Studyに参加した504人の妊婦から収集した妊娠中期(妊娠14~27週)と分娩時のデータを用いて分析した。

     研究では、まず、参加者に2種類の質問票に回答してもらった。一つは、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて58種類の食品や飲料の摂取量を尋ね、EPA/DHAの摂取量を算出した。もう一つは、自記式質問票を用いて、過去1カ月以内のDHAおよび/またはEPAサプリメントの摂取頻度(毎日、週に5~6回、3~4回、1~2回、時々、まったく摂取しない)を尋ねた。さらに、医療記録から、分娩時のアウトカムに関する情報を得た。参加者を、食事とサプリメントからのEPA/DHA総摂取量に基づき、低摂取群(172.3mg未満)、中摂取群(172.3mg以上374.9mg未満)、高摂取群(374.9mg以上)の3つに分けた上で、EPA/DHA摂取量とLBWとの関連を分析した。

     分娩時の母親の平均年齢は34.2歳、妊娠中の体重増加は平均9.9kg、妊娠週数は平均38.9週だった。生まれた児は男児が47.0%、平均出生体重は3068.6gで、33人(うち男児8人)はLBW(2500g未満)だった。解析の結果、妊娠中期のEPA/DAH総摂取量が低い群ではLBW児の割合が高かった(P=0.04)。LBW児の割合には、男児、女児ともに有意な傾向は認められなかった。

     以上の結果を踏まえ、研究グループは「妊娠中期までにn-3系脂肪酸の摂取量が少ない妊婦では、LBW児の割合が高くなる可能性がある。妊娠後期に十分量のEPAとDHAを胎児に移行するためにも、妊娠中期のうちにこれらを十分に摂取し、蓄積しておくことが重要ではないか」と強調。「そのためには、少なくとも妊娠中期までには食習慣を改善し、EPAやDHAなどの必要な栄養素を自ら摂取できるようにするため、妊婦一人ひとりの生活習慣や考え方に合わせた栄養指導を行うことが必要だ」と述べている。

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  • 自殺未遂者のうち精神疾患の既往がない人ほど身体所見の重症度が高い

     精神疾患は自殺の主な危険因子の一つであり、自殺予防対策では精神疾患のある人への支援が重要視されている。秋田大学大学院看護学講座の丹治史也氏らが秋田市内の自殺未遂者のデータを分析した結果、精神疾患の既往のない人は、その既往がある人と比べて、致死性の高い自殺企図の手段を選ぶ傾向があり、身体所見の重症度も高いことが分かった。同氏らは、精神疾患のある人だけでなく、精神疾患のない人にも配慮した自殺予防対策が重要だとしている。詳細は「Journal of Primary Care & Community Health」に11月19日掲載された。

     日本の自殺率は近年減少傾向にあったが、新型コロナウイルス感染症の流行が影響して増加に転じている。自殺の主な危険因子には自殺未遂歴と精神疾患が挙げられる。自殺企図者の9割以上が精神疾患を有するとの報告もあり、精神疾患のある人は自殺リスクが高いと言われている。一方で、精神疾患のない人は致死性の高い自殺手段を選ぶ傾向のあることが報告されているが、精神疾患の有無と自殺未遂者の身体所見の重症度との関連は明らかになっていない。そこで、丹治氏らは今回、秋田市のデータを用い、自殺未遂者における精神疾患の既往の有無と救急搬送時の身体所見の重症度との関連を調べる二次データ解析を実施した。

     この研究は、秋田市内5施設で収集した自損患者診療状況シートのデータを用い、2012年4月から2022年3月の間に救急搬送された自殺未遂者806人を対象に実施したもの。精神疾患の既往を曝露変数とし、主要評価項目は、自殺未遂者の身体所見の重症度(中等症または重症)とした。対象者のうち女性が67.6%を占め、76.4%(616人)は1つ以上の精神疾患の既往を有していた。

     年齢と性、自殺企図の回数および支援者の有無で調整した解析の結果、自殺未遂者において、精神疾患の既往と身体所見の重症度との間に有意な負の関連が認められた〔有病割合比(PR)0.40、95%信頼区間0.28~0.59〕。つまり、自殺未遂者において、精神疾患の既往がない人は身体所見の重症度が高いことが分かった。この関連には年齢や性による差は認められなかった。また、自殺企図の手段に関する分析では、精神疾患の既往がある人は薬物過剰摂取などの致死性の低い方法を選ぶケースが多かったのに対し、既往のない人は、首つりや手首の深い損傷など致死性の高い方法を選ぶ傾向にあった。

     以上から、著者らは「致死性の高い自殺企図の手段を選択するということは、自殺死亡に至るリスクが高まることを意味する。今回の研究は、精神疾患の診断がつく前に自殺を企図する可能性は高いことを考慮することの重要性を強調するものだ」と述べ、「精神疾患がなくても精神科を受診したり、社会的な支援を得られたりしやすい環境を整えることが自殺率の低下につながる可能性がある」と付言している。

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  • 一人暮らしの高齢者は調理技術が低いと死亡リスクが高まる

     一人暮らしの高齢者は、調理技術が低いと死亡率が高まる可能性のあることが、東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野の谷友香子氏らによるコホート研究から示された。一人暮らしの高齢者では、調理技術が高い人と比べて、低い人では死亡リスクが2.5倍に上ったのに対し、同居をする高齢者では調理技術と死亡リスクに関連は見られなかった。研究結果の詳細は「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に11月10日掲載された。

     調理技術が低く、自炊する機会が少ない人は健康リスクが高まる可能性があり、一人暮らしの高齢者ほど、その傾向は強いと考えられている。そこで、谷氏らは今回、自立して生活する日本人高齢者を対象にコホート研究を実施し、参加者を同居の有無別に分け、調理技術が死亡率と関連するか否かを調べた。

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     この研究は、2016年から2019年に実施された住民ベースのコホート研究である日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)に参加した、全国23市町在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1万647人(女性54.5%、80歳以上が19.8%)を対象に、3年間追跡調査したものだ。調理技術は、ベースライン時に、「野菜や果物の皮をむくことができる」「野菜や卵をゆでることができる」「焼き魚を作ることができる」など7項目について6段階で自己評価(1~6点)してもらい、その合計点の平均点によって「高(4点以上)」「低」の2つのグループに分けた。

     参加者のうち4人に1人(25%)は調理技術が低いと分類された。また、一人暮らしは14%だった。参加者を同居の有無で層別し、それぞれ傾向スコアを用いて学歴や世帯年収、配偶者の有無、高次生活機能、近隣の食料品店の有無などをマッチさせた調理技術が高いグループと低いグループ(一人暮らしの高齢者171組、同居の高齢者2,161組)で、調理技術と全死亡リスクの関連を分析した。

     平均3.7年の追跡期間中に、計520人が死亡した。解析の結果、傾向スコアをマッチさせた後では、一人暮らしの高齢者では、調理技術が低いと高い場合に比べて全死亡リスクが2.5倍(ハザード比2.50、95%信頼区間1.10~5.68)有意に上昇したのに対し、同居する高齢者では1.05倍(同1.05、0.82~1.33)と有意な関連は見られなかった。また、調理技術の低さは、調理頻度の低さ、野菜や果物の摂取量の少なさ、外出頻度の低さや身体活動時間の短さと関連しており、これらが調理技術と死亡との関連を一部説明していることも分かった。

     以上から、著者らは「調理技術の低さは死亡リスクと関連し、この関連は同居の有無によって異なることが分かった。つまり、料理技術の高い高齢者は、たとえ一人暮らしであっても死亡リスクは上昇しないとも言える」と結論付けている。また、調理をする人は外出や立位などの身体活動が増えるほか、献立を考えることなどは認知機能の維持に働き、結果として死亡リスクの低減につながっている可能性があると考察。その上で、「高齢化が進む中、一人暮らしの高齢者は今後も増加が見込まれる。高齢者の調理技術を高めるための支援や介入などは公衆衛生上、重要な課題だ」と述べている。

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  • 抑うつ症状と仮面高血圧に関連あり

     大規模な横断研究から、診察室の血圧は正常でも家庭で測定した血圧は高値を示す「仮面高血圧」と抑うつ症状には関連があることが分かったと、東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の寳澤篤氏らが「Hypertension Research」に10月31日発表した。抑うつ症状は仮面高血圧の危険因子の一つである可能性が示されたとしている。

     高血圧の中でも仮面高血圧の患者は、正常血圧の人と比べて心血管疾患リスクが高く、仮面高血圧は心血管疾患の危険因子の一つだとされている。しかし、その診断には家庭血圧測定が必要なため、見過ごされやすく、適切な治療を受けていない可能性が高い。また、これまでの研究で、仮面高血圧のリスク因子として、男性、喫煙習慣、糖尿病、治療中の高血圧、診察室血圧で正常高値などが挙げられている。さらに、不安や抑うつ、ストレスなどの精神状態も血圧に影響を与える可能性が報告されている。そこで、寳澤氏らは今回、抑うつ症状と仮面高血圧の関連を評価する横断研究を実施した。

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     この研究は、東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査から2013~2016年に宮城県で実施したベースライン調査データを用い、研究センターで測定した血圧が正常血圧〔収縮期血圧(SBP)140mmHg未満かつ拡張期血圧(DBP)90mmHg未満〕だった成人男女6,705人(平均年齢55.7±13.7歳、女性74.9%)を対象に行われた。参加者には、自宅で1日2回(朝・晩)血圧と心拍数を2週間測定してもらった。抑うつ症状の評価には、うつ病自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale;CES-D)日本語版を用いた。仮面高血圧は、研究センターでは正常血圧かつ家庭高血圧の基準(SBP 135mmHg以上またはDBP 85mmHg以上)を満たす場合と定義した。

     参加者のうち、男性では18.4%(1,685人中310人)、女性では27.7%(5,020人中1,384人)が抑うつ症状を有していた。男女別に、年齢を調整した上で抑うつ症状の有無と血圧の関連を解析したところ、抑うつ症状のあるグループでは、抑うつ症状のないグループに比べて朝および晩の家庭血圧が有意に高かった(男性:朝のSBP 129.0mmHg対127.0mmHg、晩のSBP 126.0mmHg対124.0mmHg、女性:同順に121.0mmHg対119.5mmHg、117.7mmHg対116.2mmHg)。研究センターで測定した血圧には、男女とも抑うつ症状の有無で差は見られなかった。

     また、解析の結果、男女ともに、抑うつ症状のあるグループでは、抑うつ症状のないグループと比べて仮面高血圧の有病率が高いことが分かった。多変量解析によるオッズ比は、男性では1.72(95%信頼区間1.26~2.34)、女性では1.30(同1.06~1.59)と、その傾向は男性の方が強かった。

     以上から、著者らは「抑うつ症状と仮面高血圧には関連があり、抑うつ症状は仮面高血圧の危険因子の一つである可能性がある。このことから、抑うつ症状がある人では、家庭血圧測定を行うことで仮面高血圧の早期発見、早期治療に有用な可能性が示唆された」と結論。ただ、今回は横断研究だったため、今後、さらなる研究で因果関係を検証していきたいと付言している。

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    HealthDay News 2024年1月9日
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