• 妊婦の抑うつ、不安、オキシトシンが子どもへの情緒的絆に影響

     妊娠中の母親の抑うつや不安、唾液中オキシトシン濃度が、子どもに対する情緒的な絆に影響する可能性を示唆する研究結果が新たに報告された。この研究は大阪大学大学院ウィメンズヘルス科学教室の渡邊浩子氏、金粕仁美氏らによるもので、「Archives of Women’s Mental Health」に2月26日掲載された。

     子どもに対する情緒的な絆を「ボンディング」という。この情緒的な絆が十分に形成されない状態は、ボンディング障害やボンディング不全と呼ばれる。周産期のメンタルヘルスにおいてボンディング障害は重要な問題であり、産褥期に子どもに対する拒絶や怒りの感情を経験することもある。育児行動にも影響を及ぼすことから、ボンディングの改善は子ども虐待の防止にもつながる。

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     著者らは今回の研究で、京都府の1つの医療機関において、初産婦、20~40歳、精神疾患の既往がないなどの基準を満たす妊婦を対象に、妊娠中のメンタルヘルスやホルモン濃度と産後のボンディングとの関連を検討した。妊娠中期に抑うつと不安の状態を評価し、血中コルチゾール濃度と唾液中オキシトシン濃度を測定した。ボンディングは、「赤ちゃんをいとしいと感じる」「赤ちゃんのことが腹立たしくいやになる」などの質問(10項目)からなる「赤ちゃんへの気持ち質問票(MIBS-J)」を用いて、産後2~5日、1カ月、3カ月の時点で評価した。なお、MIBS-Jは得点が低いほどボンディングが良好であることを示す。

     評価対象者66人(平均年齢31.8±3.8歳)のうち、妊娠中に抑うつのあった人(エジンバラ産後うつ病質問票による評価で9点以上)は14人(21.2%)、不安のあった人(状態・特性不安検査による評価で42点以上)は19人(28.8%)だった。ホルモン濃度の中央値(四分位範囲)は、コルチゾールが21.0(16.6~24.1)μg/dL、オキシトシンが30.4(19.2~114.2)pg/mLという結果が得られた。

     ボンディングの指標であるMIBS-Jの得点の中央値(四分位範囲)は、産後2~5日が2.00(1.00~3.00)、1カ月が1.00(0.00~3.00)、3カ月が0.00(0.00~2.00)だった。すなわち、ボンディングは産後2~5日および1カ月の時点では低いが、3カ月の時点で有意に高くなることが示された。

     次に、MIBS-Jの得点と関連する要因が検討された。産後2~5日では、産後の社会的支援、妊娠中の抑うつ、不安、オキシトシン濃度の4つが、MIBS-Jの得点と有意に関連していることが明らかとなった。産後1カ月の時点では、世帯収入、流産歴、産後の社会的支援、妊娠中の不安の4つが有意に関連していた。3カ月の時点では、有意な関連が見られたのは産後の社会的支援のみだった。妊娠中のコルチゾール濃度に関しては、いずれの時点でもMIBS-Jとの有意な関連は認められなかった。

     以上の結果から著者らは、「妊娠中の抑うつ、不安、唾液中オキシトシン濃度の低さは産後2~5日のボンディングの低下を予測し、妊娠中の不安は1カ月時点のボンディングの低下も予測する」と結論。妊娠中にこれらをスクリーニングすることで、ボンディング障害のリスクを評価し、介入できる可能性があると述べている。また、産後の社会的支援が全ての時点でボンディングの高さと関連していたことから、その重要性についても指摘している。

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    HealthDay News 2024年4月22日
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  • 2型糖尿病患者の消化器症状は不眠症と関連

     糖尿病患者には、上部消化器症状(胸やけ、胃痛、胃もたれなど)や下部消化器症状(便秘、下痢など)がしばしば見られる。日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、これらの消化器症状が患者の不眠症と強く関連していることが判明した。これは京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の南田慈氏、岡田博史氏、福井道明氏らによる研究結果であり、「Journal of Diabetes Investigation」に3月5日掲載された。

     消化器症状は、糖尿病患者におけるQOL低下の一因である。一方、夜間頻尿により睡眠が中断されることや、糖尿病神経障害による痛み、夜間の血糖値の急激な変化、抑うつなどを伴うことで、糖尿病患者には不眠症が生じ得ることも報告されている。しかし、糖尿病患者における消化器症状と不眠症の関係についてはこれまでにほとんど検討されていない。

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     そこで著者らは、「KAMOGAWA-DMコホート研究」に参加している2型糖尿病患者を2014年1月~2022年1月に登録し、横断研究を行った。消化器症状の評価には、胸やけ、胃痛、胃もたれ、便秘、下痢の5つの症状を評価する「出雲スケール」を用いた(各症状とも3つの質問項目から0~15点で評価され、スコアが高いほど症状が悪い)。また、睡眠は「アテネ不眠症尺度」で評価し、合計スコア6点以上または睡眠薬を使用している場合を不眠症と定義した。

     解析対象者は175人(男性100人、女性75人)、年齢中央値は66歳(四分位範囲57~73歳)で、そのうち68人が不眠症に該当した。不眠症の人はそうでない人と比べ、収縮期血圧および拡張期血圧が有意に高かった。

     出雲スケールの結果を比較すると、総スコアの中央値(四分位範囲)は、不眠症の人の方がそうでない人よりも有意に高く、それぞれ14点(5.25~20.75点)と5点(2~10点)だった。症状ごとの結果も同様で、胸やけは2点(0~4点)と0点(0~1点)、胃痛は0点(0~4点)と0点(0~0点)、胃もたれは2点(0~4点)と0点(0~2点)、便秘は4点(2~6点)と2点(0~4点)、下痢は3点(1~5点)と1点(0~3点)であり、全て不眠症の人の方が有意に高かった。

     次に、不眠症と関連する要因がロジスティック回帰分析により検討された。年齢、性別、BMI、収縮期血圧、HbA1c、糖尿病神経障害、インスリン療法、夜間頻尿の影響を調整した解析の結果、出雲スケール総スコアの1点上昇ごとのオッズ比(95%信頼区間)は1.10(1.06~1.16)であり、不眠症と有意に関連することが明らかとなった。同様に、症状ごとのスコアについても有意な関連が認められ、オッズ比は胸やけ1.32(1.13~1.55)、胃痛1.38(1.16~1.63)、胃もたれ1.33(1.13~1.56)、便秘1.21(1.08~1.36)、下痢1.29(1.12~1.47)だった。

     以上の結果から著者らは、「消化器症状は2型糖尿病患者の不眠症と強く関連している」と結論。また、糖尿病患者の睡眠障害は血糖コントロールやQOLに影響を及ぼす可能性があることから、「消化器症状の管理に注意を払う必要がある」と指摘している。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2024年4月22日
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