COVID-19予防行動の順守率は何から情報を得たかで異なる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の情報をどのような経路で入手したかによって、感染抑止のための予防行動の順守状況に差が見られるとする研究結果が報告された。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの草間太郎氏らの研究によるもので、詳細は「Healthcare」に3月13日掲載された。

 COVID-19パンデミックの初期から、マスク着用や三密回避などの感染予防行動が繰り返し推奨されてきている。しかし、それらをどの程度順守するかは人によって異なる。草間氏らは、COVID-19関連情報の入手経路が予防行動の順守に影響を与えている可能性を想定して、以下の検討を行った。

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 解析対象は、2020年8~9月に実施した「日本における新型コロナウイルス問題による社会・健康格差評価研究」、および2021年2月に実施した「日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査」という2つのWeb調査に回答した20~79歳の成人1万8,151人(平均年齢51.7±15.9歳、男性51.3%)。

 評価した予防行動は、マスク着用、部屋の換気、ソーシャルディスタンス、混雑回避という4項目。情報源については、人や組織(家族、友人、職場や学校、医療従事者、有名人、専門家、政府、学術機関)、SNS(YouTubeなどの動画共有サイト、LINE、Twitter、Facebook、Instagram)、メディア(Webニュース、新聞、雑誌、本、テレビニュース、テレビの情報番組、ラジオ)という計20種類の利用状況を把握した。そのほかに共変量として、性別、年齢、教育歴、所得、同居者の有無、ヘルスリテラシー(CCHLという指標で評価)に関する質問の回答を得た。

 結果について、まず利用率の高い情報入手経路を見ると、テレビニュースがトップで84.2%であり、Webニュース68.3%、テレビの情報番組66.2%、家族57.8%、新聞53.6%、友人46.4%、政府44.2%と続き、専門家は33.7%で9位、医療従事者は20.8%で13位だった。情報入手経路の下位は、Instagram(7.7%)、本(7.8%)、Facebook(8.9%)、学術機関(10.0%)、Twitter(14.1%)などだった。

 2020年調査における予防行動の順守率は、マスク着用86.2%、部屋の換気46.9%、ソーシャルディスタンス45.4%、混雑回避62.6%であり、2021年調査では同順に89.3%、38.2%、47.2%、61.6%だった。これら4種類の予防行動と情報入手経路との関連を、多変量解析にて前述の共変量を調整して検討した。その結果、以下の有意な関連が認められた。

 Webニュースから情報を得た人は、マスク着用(絶対差7.3%)、部屋の換気(5.5%)、混雑回避(5.5%)という3種類の行動の順守率が有意に高かった。また、Twitterから情報を得た人は、マスク着用(3.8%)、部屋の換気(4.7%)、ソーシャルディスタンス(6.4%)という3種類の行動の順守率が有意に高かった。このほかに、医療従事者、専門家、政府、テレビニュースから情報を得た人は、4種類の予防行動のうちのいずれか2種類の順守率が有意に高かった。

 一方、順守率の低下と有意な関連の見られた情報入手経路もあった。例えば、Instagramから情報を得た人は、マスク着用の順守率が-18.9%、Facebookから得た人はソーシャルディスタンスが-6.8%、有名人から得た人は混雑回避が-4.7%だった。また、新聞から情報を得た人は、マスク着用の順守率が有意に高いが(3.1%)、部屋の換気の順守率は有意に低かった(-2.8%)。

 これらの結果を基に著者らは、「特定の情報源を利用していることが、COVID-19に対する予防行動の順守に関連していることが明らかになった。一方、検討した4種類全ての予防行動の順守と有意に関連していた情報源は観察されなかったことから、各情報源が発信していた情報が網羅的なものでなく、内容にむらがあった可能性がある。全ての人の予防行動を喚起する情報提供体制の構築が重要ではないか」と総括している。

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HealthDay News 2022年5月2日
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