• ドライアイの女性は老眼になりやすい?――慶大

     ドライアイの女性は老眼になりやすい可能性を示唆するデータが報告された。慶應義塾大学医学部眼科の綾木雅彦氏、根岸一乃氏らの研究によるもので、詳細は「BioMed Research International」に1月28日掲載された。眼の表面の涙の膜の安定性が低い女性はそうでない女性よりも、水晶体の厚さの調節力が有意に低いという。一方、男性ではそのような関係が見られないとのことだ。

     眼は水晶体(眼のレンズ)の厚さを変えることで、瞳孔から入った光の屈折を調節し、網膜にピントを合わせている。ところが、加齢とともに水晶体の柔軟性が徐々に失われるため、ピントを合わせられる範囲が狭くなる。これが老眼であり、このような変化に伴い近くのものが見にくくなるほかに、眼精疲労などが起きやすくなる。一方、ドライアイは、涙の量が少ないことや、涙の膜の安定性が悪いために、眼の表面(角膜や結膜)が乾燥しやすくなる病気であり、眼精疲労のほかに眼の痛みや視力の低下などが自覚される。

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     ドライアイも老眼同様に加齢とともに増加するため、両者が視機能や自覚症状に互いに影響を及ぼす可能性があるが、それを検証した研究はこれまで行われていない。このような背景のもと綾木氏らは、ドライアイと老眼との関連を横断的に検討した。

     研究対象は、つくばセントラル病院眼科、および、おおたけ眼科つきみ野医院(神奈川県)の外来ドライアイ患者のうち、年齢40~69歳で、左右ともに有水晶体眼(白内障手術を受けていない眼)、矯正視力が20/30(小数点視力で0.7弱)以上の1,411人(平均年齢50.6歳、女性75.3%)。緑内障や白内障の患者、および視力に影響を及ぼし得るその他の疾患や、最近の眼科手術既往者は除外されている。

     老眼は、遠見視力と近見視力の双方が20/25(小数点視力で0.8)以上に到達するための「加入度数」という指標で評価。ドライアイは、開眼後に眼の表面の涙の層が失われる部分が生じるまでの時間である「涙液層破壊時間(BUT)」や、下の瞼にろ紙を挟み、涙で湿った長さで涙液分泌量を把握する「シルマーテスト」などで評価した。そのほかに、自覚症状のアンケートを行った。

     BUTは1,030人で測定されていた。女性の36.2%、男性の17.3%が3秒未満で涙液層が途切れ、女性の方が有意にBUT短縮型ドライアイが多かった(P<0.001)。一方、シルマーテストの値は性別による有意差がなかった。アンケートでは、乾燥感、痛み、まぶしさ、眼精疲労など6項目の評価指標の全てについて女性の訴えの方が強く、性別による有意差が認められた。

     続いて、加入度数が+3.00ディオプター以上を老眼と定義し、BUT3秒未満と以上とに二分して、カプランマイヤー法で加齢と老眼の関連を検討。その結果、女性ではBUT3秒未満の群は老眼の進行が有意に速いことが明らかになった(P=0.043)。一方、男性ではBUTが短いことと老眼の進行の速さとの間に関連は認められなかった(P=0.759)。

     女性では、ドライアイが老眼の進行に影響を及ぼす可能性が示されたことに関連して、著者らは、ドライアイによって水晶体の厚さを調節する毛様体の筋肉の痙攣が引き起こされるという報告に着目。「毛様体の筋肉の痙攣が屈折調節機能の低下につながるのではないか」と、ドライアイと老眼の関連のメカニズムを考察している。また、男性でこの関連が有意でなかったことについては、「女性に比べてサンプル数が少なかったことに加えて、BUT短縮型ドライアイの割合が低かったことも、結果に影響を及ぼしたと考えられる」と述べている。

     著者らは結論として、「BUTが短い女性ドライアイ患者では、老眼の進行が速いことが示唆された。今後は、水晶体の厚さや眼軸長などの眼局所のパラメーター、および、併存疾患などの全身因子も考慮に入れた上で、ドライアイと調節機能との関連の検討が望まれる」とまとめている。

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    HealthDay News 2022年4月4日
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