体重が実際より重いと思っている人は筋量で評価したサルコペニアに該当する可能性が高い――大阪府摂津市での研究

サルコペニアとは筋量や筋力が低下し、疾患や要介護のリスクが高い状態である。自分の体重が実測値よりも重いと思っている人はサルコペニアの診断基準の1つである低筋量に該当する可能性が高いことを示す研究結果が報告された。医薬基盤・健康・栄養研究所 身体活動研究部の中潟崇氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Physiological Anthropology」に5月5日掲載された。

体重の自己認識の誤り(実際より軽い、または重いとの誤解)が、さまざまな疾患のリスクと関連していることが報告されている。ただし、自己認識の誤りと筋量との関連はまだ報告がないため、中潟氏らは大阪府摂津市の地域住民を対象とした、大阪府との共同事業「大阪府健康格差の解決プログラム促進事業」で得られた研究データを解析し、この点を検討した。

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研究参加者は、40~91歳の成人525人(年齢の中央値72歳、83%が女性、平均BMIは22.5)であり、同市の広報誌などを通じて募集された。指標として、「サルコペニア」の診断基準の1つである「腕と脚の筋量を身長の2乗で除した骨格筋指数(SMI)」を用いた。アジア人のサルコペニアの診断でのSMIの基準値は、男性7.0未満、女性5.7未満(生体電気インピーダンス法による)で、本研究の参加者の該当者割合は9.3%だった。

研究参加者に、まず自分の体重を0.1kg単位で申告してもらい、その後に体重を測定。自己申告の体重から実測値を減算して誤差を割り出し、その誤差の幅を実測値に対する比率として評価した。例えば、自己申告が65.0kgで実際の体重が66.0kgの場合、〔-1.0÷66.0×100=-0.51〕で、誤差は-0.51%。

参加者全体の誤差は、中央値0.9%(四分位範囲-0.3~2.0)だった。体重の過小評価から過大評価の幅で男女ごとに3群に分類すると、過小評価群は中央値-0.8%(過小評価)、中央群は同0.9%(過大評価)、過大評価群は2.4%(過大評価)だった。平均BMIは同順に、23.5、22.3、21.6で、自分の体重を過大評価している群は、実際のBMIが低い傾向だった。

SMIがサルコペニア基準値未満の割合は、全体では前述のように9.3%であり、これを3群別に見ると、過小評価群から順に、4.6%、6.8%、16.6%となった。つまり、自分の体重が実際よりも重いと思っている人ほど、低筋量に該当する割合が高かった。

次に、年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、自己申告に基づく体力・健康度・社会経済的状況の影響を調整し、中央群を基準として、SMIがサルコペニア基準値未満に該当するオッズ比を計算。結果、過大評価群はオッズ比2.37(95%信頼区間1.03~5.44)とオッズ比が統計的に有意に高かった。過小評価群はオッズ比0.97(同0.34~2.86)で、中央群と有意差は見られなかった。

以上より、自分の体重が実際よりも重いと思っている40歳以上の日本人は、サルコペニアの診断基準の1つである低筋量に該当するオッズ比が2.37倍高いことが明らかになった。著者らは、「われわれの研究結果は、人々が自分自身の体重を正しく認識することへの働きかけが、公衆衛生上の重要な戦略である可能性を示唆している」と結論付けている。

なお、体重の過大評価が低筋量に該当する可能性が高いことの理由として、著者らは「横断研究のためこれらの因果関係は不明であるが、体重を過大申告する人はBMIが低い傾向にあり、このことはエネルギー摂取量がエネルギー必要量を下回っている可能性があること、また、体重測定をあまり行わない人ほど誤差が大きくなることなどの影響があるのではないかと考察している。

医薬基盤・健康・栄養研究所は、医薬基盤研究所(大阪府茨木市)と国立健康・栄養研究所(東京都新宿区)が平成27年に統合されて国立研究開発法人としてスタートを切り、今年度中に著者らの所属する国立健康・栄養研究所が現在の東京から本研究が行われた大阪府摂津市に移転予定。中潟氏らは健康な日本人を対象とした腸内細菌叢に関する研究も展開しており、「移転後の北大阪健康医療都市(健都)からも、日本人の健康寿命延伸に資するエビデンスを発信していきたい」と述べている。

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参考情報:リンク先大阪府/働く世代からのフレイル予防動画国立健康・栄養研究所/腸内細菌叢データベース
HealthDay News 2022年6月13日
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