• 女性はタンパク質摂取量と肺炎による死亡率に有意な関連――JPHC研究

     国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)から、総摂取エネルギー量に占めるタンパク質の割合が高いほど、肺炎による死亡リスクが低いことが明らかになった。ただし、これは女性に特徴的な現象で、男性ではこの関係は認められなかったという。研究の詳細は、「The American Journal of Clinical Nutrition」に12月16日掲載された。

     JPHC研究からはこれまでに、植物性タンパク質の摂取比率の高さが全死亡や循環器疾患死のリスク低下に関係することが報告されている。ただし、日本人高齢者の主な死因である肺炎については、死亡リスクとタンパク質摂取量との関連が未だ明確になっていない。

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     今回発表された研究の対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、東京都葛飾区、長野県佐久、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部など11の保健所管内に居住していた40~69歳の地域住民。そのうち、がん、循環器疾患、腎疾患、糖尿病に罹患しておらず、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答した8万3,351人。これらの対象者を2016年まで追跡して、動物性タンパク質、植物性タンパク質、および総タンパク質の摂取量と、肺炎死亡リスクとの関連を調べた。

     食事調査の結果を用いて、総摂取エネルギー量に対するタンパク質摂取量の割合を男女別に算出。得られた割合の四分位で全体を四群に分けた。そして、第1四分位群(タンパク質摂取量の割合が最も低い下位4分の1)を基準に、残り3群での肺炎による死亡リスクを比較した。

     解析に際しては、結果に影響を及ぼす可能性のある交絡因子(年齢、地域、体格、喫煙状況、アルコール摂取量、余暇の身体活動量、降圧薬の服用の有無、コーヒー・緑茶の摂取頻度、摂取エネルギー量、閉経の有無)を調整した。

     平均18.4年の追跡期間中に、990人(男性634人、女性356人)が肺炎で死亡した。総タンパク質摂取割合と肺炎死亡リスクの関連には、明らかな男女差が認められた。すなわち、女性の場合、総タンパク質摂取割合の増加が、肺炎リスク低下と有意な関係を示した一方、男性の場合には、総タンパク質摂取割合と肺炎リスクとの間に、統計学的に有意な関連は認められなかった。

     より詳しく見ると、女性では第1四分位群に対して第4四分位群(タンパク質摂取量の割合が最も高い上位4分の1)の肺炎死亡リスクは、ハザード比(HR)0.71(95%信頼区間0.53~0.97)であり、全体の傾向性P値が0.01だった。一方、植物性タンパク質と動物性タンパク質ごとの摂取割合を基に肺炎死亡リスクを算出したところ、男女とも、統計学的に有意な関連は認められなかった。

     女性で認められた有意な関連が男性では確認されなかったことについて、研究グループでは、「男性のタンパク質摂取量の割合が女性より低いこと、喫煙や飲酒といった生活習慣の影響が大きかったことによるのではないか」との考察を加えている。

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    HealthDay News 2022年2月21日
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  • 「買い物リハ」で高齢者の身体・認知機能が改善

     買い物をナッジとして活用する「買い物リハビリテーション」によって、高齢者の身体機能や認知機能が改善することが報告された。雲南市立病院地域ケア科の毛利直人氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に1月5日掲載された。

     加齢に伴う身体機能や認知機能の低下予防・改善にはリハビリテーションが有効だが、リハビリ開始に至るまでの動機付けがネックとなることが少なくない。それに対して近年、行動科学の知見に基づき「ナッジ」(わずかに後押しする行為)を応用する試みがなされている。毛利氏らは、ナッジとして高齢者の買い物をサポートする試みを行い、その後の身体機能や認知機能の変化を検討した。

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     研究参加者は雲南市内に居住する高齢者72人。そのうち59人が6カ月間にわたる平均月4回の「買い物リハ」を終了した。

     買い物リハは同市内最大のショッピングセンターで、1回につき約120分かけて行われた。その内容は、まず、高齢者9~12人に対し作業療法士2人が付き添い、30分かけてショッピングセンター内で買い物をしてから、屋内イベントスペースでの60分ほどの体操を挟み、その後、再度30分のショッピングを楽しんでもらうというもの。このほか、自宅での運動方法を指導するなどの働きかけを行った。なお、参加者の95%は、自宅とショッピングセンター間の移動にシャトルバスを利用していた。

     介入を終了した59人の平均年齢は86.32±4.67歳で、93%が女性であり、64%が家族と同居、36%は独居だった。年齢や女性の割合、認知症有病率、飲酒・喫煙習慣、チャールソン併存疾患指数、居住環境(戸建てか共同住宅か)などは、家族同居群と独居群とで有意差はなかった。

     運動機能と認知機能の評価には、厚生労働省の基本チェックリストを用い、介入開始時点と介入6カ月後の計2回評価した。基本チェックリストは点数が高いほど要介護リスクが高いことを意味する。本研究では、既報論文を基に合計点数8点以上をリスクの高い状態と判定し、その割合を検討した。

     介入開始時点の基本チェックリスト合計点数は平均6.71±3.34点であり、家族同居群(6.87±3.22点)、独居群(6.43±3.60点)との間に有意差はなかった(P=0.632)。また、8点以上の割合は、全体の39%、家族同居群では37%、独居群では43%だった。

     6カ月間の介入により、基本チェックリスト合計点数が8点以上の割合は27%となり、有意に減少した(P=0.050)。ただし、家族との同居か否かで層別化した解析では、同居群では24%へと有意に減少していたが(P=0.050)、独居群は33%へと減少したものの介入前との差は有意でなかった(P=0.428)。なお、介入に伴う有害事象は観察されなかった。

     この結果を基に著者らは、「リハビリテーションに買い物を組み込むことで、基本チェックリストの点数が向上する可能性が示された。買い物という行動が高齢者の社会活動を刺激することで生活に変化が生じ、フレイルリスクの抑制、生活の質(QOL)の向上につながるのではないか」と結論付けている。なお、独居者は基本チェックリストの合計点数8点以上の割合がやや高く、かつ介入前後の変化が有意でないという結果に関連して、「家族の助けのない独居高齢者は、買い物の際、食料品を含む生活必需品を十分に入手できていない可能性も考えられる」とし、今後の詳細な研究の必要性を指摘している。

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    HealthDay News 2022年2月21日
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