• 脂質低下療法後の受診頻度、心血管イベントや死亡と有意に関連せず

     脂質異常症の治療では、薬物療法と定期的な受診が行われる。では、受診頻度が高いほど、心血管イベントや死亡のリスクは低くなるのだろうか。今回、日本の国保データベースを用いた研究で、脂質低下療法を開始した患者では、月1回程度の受診と2~3カ月に1回程度の受診で、心血管イベントや死亡のリスクに統計学的に有意な差は認められなかった。研究は、藤枝市立総合病院・藤枝市家庭医療センターの松永拓氏、名古屋医療センター臨床研究センターの中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は8月2日付の「Journal of Health, Population and Nutrition」に掲載された。

     脂質異常症は心血管疾患や脳血管疾患の主要なリスク因子であり、生活習慣の改善や薬物療法による管理が重要となる。定期的な受診は服薬状況の確認や治療調整に役立つ一方、受診間隔が心血管イベントや死亡のリスクに及ぼす影響は明らかでない。日本では1人当たりの年間受診回数が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中央値を上回っており、脂質異常症では月1回程度の受診が多い。2022年にはリフィル処方制度も導入されたが、受診間隔の延長が治療効果に及ぼす影響には不明な点が残る。そこで本研究では、脂質低下療法開始後の受診頻度と長期的な心血管・脳血管イベント、死亡との関連を検討した。

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     研究グループは、静岡県市町国保データベースを用いて、2012年4月1日~2021年9月30日に脂質低下療法を開始した40歳以上の患者を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した。治療開始前1年間の評価があり、開始前6カ月以内に健診を受けた患者を対象とし、心イベント・脳血管イベントの既往、がん、維持透析、インスリン自己注射を行っている患者は除外した。治療開始後2年間の受診回数により、22回以上の高頻度受診群(月1回程度に相当)と8~12回の低頻度受診群(2~3カ月に1回程度に相当)に分類。6カ月ごとの区間で2回未満の受診となった患者も除外した。傾向スコアマッチング(1:3)を行い、治療開始後2年以内にイベントが発生した患者を除外した上で、低頻度群1,435人、高頻度群4,412人を解析した。平均5.3年間追跡し、心イベント、脳血管イベント、死亡の発生を比較した。

     平均5.3年間の追跡期間中、心イベント、脳血管イベント、死亡を合わせた複合アウトカムの発生率は、低頻度受診群、高頻度受診群ともに5.6%で、両群間に有意差は認められなかった(ハザード比〔HR〕1.08、95%信頼区間〔CI〕0.84~1.38、P=0.571)。さらに、治療開始後1年以内に健診で測定されたLDL-C(悪玉コレステロール)は、低頻度受診群113.64 mg/dL、高頻度受診群114.39 mg/dLで、両群間に有意差はなかった(P=0.478)。

     個別のアウトカムでは、心イベントの発生率は低頻度受診群3.8%、高頻度受診群3.6%(HR 1.13、95%CI 0.83~1.54)、脳血管イベントはそれぞれ1.3%、1.2%(HR 1.13、95%CI 0.67~1.90)、死亡は1.7%、1.9%(HR 0.94、95%CI 0.60~1.48)で、いずれも有意差は認められなかった。

     著者らは、病状が安定している一部の患者では、受診間隔を2~3カ月に延ばすことが合理的な選択肢になり得るかもしれない。受診間隔の延長は、リフィル処方制度の利用や医療資源の効率化につながる可能性がある。ただし、心血管リスクが高い患者や治療強化が必要な患者では、延長の可否を個別に判断する必要があると指摘している。

     一方、本研究の限界として、服薬状況や受診頻度に影響する未測定の要因を把握できず、因果関係を検証できないことなどを挙げている。また、心血管イベントや脳血管イベントの既往がある患者には結果を一般化できないとしている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2026年9月28日
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  • 外傷後敗血症はまれでも死亡リスク高く――日本の外傷患者12万人超で検討

     外傷後に生じる重篤な合併症の一つが敗血症であり、発症すると患者の予後に大きな影響を及ぼす。今回、日本の外傷患者12万人超を対象とした研究で、外傷後敗血症はまれである一方、発症した患者では院内死亡率が著しく高いことが明らかになった。研究は、順天堂大学救急・災害医学講座の宮里篤之氏(現在は沖縄県立南部医療センター・こども医療センター所属)、近藤豊氏らによるもので、詳細は8月18日付で「BMJ Open」に掲載された。

     敗血症と外傷はいずれも主要な死因の一つで、日本では近年、両者の死亡率が低下している。一方、外傷に敗血症を合併すると予後が不良となることが報告されており、海外の研究では、敗血症を発症した外傷患者で死亡率が高く、ICU滞在期間も長いことが示されている。また、外傷後敗血症の臨床的なリスク因子も報告されている。しかし、日本における外傷後敗血症の疫学やリスク因子については明らかになっていない。こうした背景から著者らは、日本外傷データバンク(JTDB)を用いて、日本における外傷後敗血症の疫学的特徴とリスク因子を後ろ向きに解析した。

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    本研究では、JTDBに2004~2019年に登録された鈍的または穿通性外傷の患者のうち、Abbreviated Injury Scale(AIS)スコア3以上で、集中治療室(ICU)入室後72時間以上生存した成人患者を対象とした。解析に必要なデータに欠測がある患者は除外した。外傷後に敗血症を発症した患者の院内死亡率を主要評価項目とし、敗血症発症に関連するリスク因子を多変量ロジスティック回帰分析で検討した。

     対象となった12万6,433人のうち、外傷後に敗血症を発症した患者は972人(0.77%)だった。敗血症を発症した患者の院内死亡率は42.4%で、非発症患者の4.6%と比べて有意に高かった(P<0.001)。また、入院期間の中央値は敗血症発症患者で47日、非発症患者で20日と、敗血症を発症した患者で有意に長かった(P<0.001)。

     敗血症群では、胸部外傷(39.9%対29.5%)、腹部・骨盤外傷(25.8%対8.6%)、下肢外傷(37.3%対22.0%)が非敗血症群より多く、Injury Severity Score(ISS)が25を超える重症外傷の割合も43.3%対19.3%と高かった。また、搬入後24時間以内に輸血を受けた患者の割合も59.3%対21.5%と高かった(いずれもP<0.001)

     多変量ロジスティック回帰分析の結果、高齢(調整オッズ比〔aOR〕1.02、95%信頼区間〔CI〕1.02~1.03)、男性(同1.48、1.27~1.73)、重症度の高い外傷(同1.58、1.39~1.80)、搬入後24時間以内の輸血(同2.78、2.36~3.26)、腹部・骨盤外傷(同2.28、1.91~2.73)、下肢外傷(同1.66、1.42~1.94)は、外傷後敗血症の発症と独立して関連していた。一方、頭部外傷は敗血症発症リスクの低下と関連していた(同0.67、0.55~0.80)。ISSで層別化した解析でも、多くの因子で同様の傾向が認められた。

     また、非敗血症群ではISSが高くなるほど死亡率が上昇したのに対し、敗血症群ではISSにかかわらず死亡率が一貫して高かった。

     著者らは、外傷後敗血症はまれである一方、発症すると外傷の重症度にかかわらず死亡率が高くなることから、早期のリスク評価と介入が重要だと指摘している。また、男性、高いISS、搬入後24時間以内の輸血、腹部・骨盤外傷、下肢外傷が敗血症発症のリスク因子だったことから、これらの因子を持つ患者では外傷の重症度にかかわらず敗血症に注意する必要があるとしている。一方、頭部外傷が敗血症リスクの低下と関連した点については、さらなる検証が必要としている。

     なお、研究の限界として、敗血症の発症時期や感染源、治療介入の時期、併存疾患などの情報が不足していること、担当医の臨床判断に基づく敗血症判定による誤分類や過小診断の可能性などを挙げている

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  • 季節性アレルギー性鼻炎、外来受診患者数年間2470万人・処方薬費1829億円

     アレルギー性鼻炎(AR)の有病率は世界的に増加しているが、日本におけるその経済的負担については、全国規模のデータが限られている。今回、全国のレセプトデータを用いて季節性ARの受診状況や処方薬費を調べた研究から、外来受診患者数は年間2470万人、処方薬費は1829億円と推計された。研究では、これらを季節性ARにかかる医療支出の最低限の規模を示す推計としている。研究は、千葉労災病院耳鼻咽喉科の郡山みな美氏らによるもので、詳細は8月1日付の「Allergology International」に掲載された。

     ARの医療費に関する研究は欧米からの報告が多く、季節性ARと通年性ARを区別することが難しいため、季節性ARに特化した経済的負担は十分に明らかになっていない。日本では、スギやヒノキ花粉による季節性ARが最も多く、「国民病」とも呼ばれている。こうした日本特有の季節性ARの医療負担を明らかにするため、研究グループは全国のほぼ全人口をカバーする厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて春の季節性ARを中心に評価した。

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     研究では、2018~2019年のNDBを用い、診断・薬剤コードから季節性AR患者と季節性AR関連処方を抽出した。季節性AR関連処方には抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド、点眼薬、免疫療法などの1450製品をカウントした。春季ARは疑い病名を除き、2018年と2019年の両年の1~4月に季節性ARの診断があり、各年14日以上の季節性AR関連薬の処方を受けた患者と定義。通年性ARのみの患者は除外し、季節性ARをできるだけ正確に抽出した。夏季AR(5~8月)、秋季AR(9~12月)も同様に定義した。各季節の患者数、10万人当たり患者数、受診回数、処方薬費を算出し、都道府県別の春季AR患者数とスギ・ヒノキ花粉飛散量との関連も評価した。

     春季AR患者は年間1290万人で、女性が男性の1.36倍だった。人口10万人当たりでは1万783人で、年齢別では5~9歳で最も多く、20~29歳で最も少なかった。30~39歳以降は年齢とともに増加する傾向がみられた。平均受診回数は年間3.05回で、83%が無床診療所を受診していた。年間の処方薬費は1018億円、患者1人当たり7,874円だった。

     都道府県別の春季AR患者数には地域差があり、人口10万人当たりの患者数が全国平均を20%以上上回ったのは群馬、東京、山梨、静岡の4都県だった。一方、13県では20%以上下回った。都道府県別の患者数とスギ・ヒノキ花粉飛散量には中等度の相関が認められた(Spearmanの順位相関係数 r=0.61)。

     夏季AR患者は570万人、秋季AR患者は610万人で、女性が男性より多かった(女性/男性比はそれぞれ1.45、1.46)。平均受診回数は夏季3.49回、秋季3.73回で、処方薬費はそれぞれ387億円、424億円だった。春季、夏季、秋季のAR患者数は計2470万人、処方薬費は計1829億円と推計された。

     著者らは、今回の推計値はレセプトの疑い病名を除外するなど、厳しい基準で患者抽出をしたものであり、医療機関を受診した季節性AR患者にかかる医療費の最低限の規模を示すものと指摘。市販薬で対処するなど医療機関を受診しない患者はNDBでは把握できないため、季節性ARの経済的負担全体はさらに大きい可能性があるとしている。

     なお、本研究では、14日未満の処方患者や医療機関を受診しなかった患者を把握できないこと、レセプト情報のみでは臨床症状の情報がわからないため季節性AR以外の目的の処方や、通年性AR合併の場合、どちらに対して処方されたかを完全に区別できないことなどを限界点として挙げている。

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  • 第2世代抗精神病薬の低Na血症リスクに薬剤間差――5万人超の大規模研究

     第2世代抗精神病薬(SGA)の副作用の一つとして低Na(ナトリウム)血症が知られている。今回、米国の副作用報告データベースで、個々のSGAと低Na血症の報告との関係を調べ、その結果を日本の大規模な医療データベースで検証したところ、アリピプラゾールを使用した患者では、オランザピンを使用した患者と比べて低Na血症リスクが48%低いことが分かった。研究は藤田医科大学薬物治療情報学の波多野正和氏らによるもので、詳細は8月13日付の「JAMA Network Open」に掲載された。

     抗精神病薬に関連する低Na血症は患者の3~6%に生じるとされ、軽度であっても入院期間の延長や再入院、死亡と関連することが報告されている。SGAは第1世代抗精神病薬と比べて低Na血症リスクが低い可能性が示されているものの、SGAの薬剤間でリスクにどの程度の違いがあるかは明らかになっていない。このような背景から、著者らは、米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)を用いて個々のSGAと低Na血症との関連を探索するとともに、日本の大規模なレセプトデータベースを用いてSGA間の低Na血症リスクを検討した。

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     研究は2段階で行われ、まずFAERSのデータを用いて、個々のSGAと低Na血症との関連を探索した。そこで得られた結果を検証するため、日本の515病院・約4,800万人のデータを収載するメディカル・データ・ビジョン社の医療データベースから、抗精神病薬を新たに処方された18~69歳の患者を抽出し、使用開始後180日以内の低Na血症発症リスクを比較した。オランザピンはFAERSで低Na血症の報告数が最も多く、臨床でも広く使用されていることから基準薬とした。患者背景は傾向スコアに基づく重み付けで調整した。低Na血症は、血清Na値が135 mEq/L未満、または抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などの診断が記録された場合と定義した。

     解析の結果、アリピプラゾール、アセナピン、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドンの7剤で、オランザピンより低Na血症の報告が少ないシグナルが認められた。特に、ブレクスピプラゾール(報告オッズ比〔ROR〕0.13、95%信頼区間〔CI〕0.08~0.19)とルラシドン(同0.19、0.14~0.24)のRORが低かった。

     日本の医療データベースでは、抗精神病薬を処方された96万1,010人のうち、条件を満たした5万5,394人を解析した。アセナピン、ルラシドン、パリペリドンは対象患者が1,000人未満だったため、コホート解析から除外された。解析対象者の平均年齢は50.4歳で、低Na血症は366人(0.7%)に発症した。患者背景を調整した解析では、アリピプラゾールはオランザピンと比べて低Na血症リスクが48%低かった(調整ハザード比0.52、95%CI 0.35~0.76)。一方、ブレクスピプラゾールでは調整後に有意差がなくなり、その他の薬剤でもオランザピンとの有意差は認められなかった。感度分析でも主要な結果は概ね一貫していた。

     著者らは、SGAでは低Na血症リスクに薬剤間差がある可能性があり、特にアリピプラゾールはオランザピンと比べて低Na血症リスクが低いことが、複数の解析で示されたと考察。低Na血症のリスクが高い患者では、抗精神病薬の選択に役立つ可能性があるとしている。一方、残余交絡やアウトカムの把握方法の違いなどの影響を否定できず、個々の抗精神病薬と低Na血症との関連を明らかにするには、さらなる研究が必要だとしている。

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  • 手術開始時刻で手術時間に差、午前は午後より長く

     手術の開始時刻は、手術の成績に影響するのだろうか。今回、手術開始時刻が手術時間に影響する可能性を示す研究結果が報告された。主要な泌尿器科手術2,627例を後ろ向きに解析したところ、午前に開始した手術は午後に開始した手術より時間が長かった一方、周術期合併症や全生存期間には差が認められなかった。研究は、広島大学腎泌尿器科学の小畠浩平氏、日向信之氏らによるもので、詳細は8月8日付の「World Journal of Urology」に掲載された。

     手術開始時刻が手術の効率や患者の転帰に影響する可能性が指摘されている。これまで、遅い時間帯の手術で合併症や死亡、入院期間などのリスクが高まるとの報告がある一方、手術時間や周術期成績に明らかな差はないとする研究もあり、結果は一貫していない。泌尿器科手術におけるエビデンスも限られている。このような背景から著者らは手術開始時刻と主要な泌尿器科手術の臨床転帰との関連を検討した。

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     著者らは、広島大学病院で主要な泌尿器科手術を受けた2,627例を対象に後ろ向き解析を実施した。手術開始時刻により、8~12時の「午前群」と12時以降の「午後群」に分類。手術時間、出血量、周術期合併症、全生存期間(OS)などを比較した。傾向スコアマッチング(PSM)で年齢、性別、BMI、併存疾患、腫瘍関連因子、術式、手術アプローチ、術者経験などの患者背景を調整し、手術開始時刻と手術時間の関連を線形回帰分析でも検討した。

     PSM前は、午前群で高齢者や併存疾患のある患者が多く、手術時間や出血量が多かった。悪性疾患ではOSも午前群で不良だった。PSM後は各群954例となり、患者背景をそろえると、出血量、周術期合併症、OSに差は認められなかった。

     手術時間については午前群で長く(P=0.001)、手術室への入室時刻が1時間遅くなるごとに、手術時間は2.5分短縮した(P<0.001)。午前・午後早期(12~15時)・午後遅期(15時以降)の3群で比較しても、手術時間は有意に異なった(P=0.003)。一方、午後早期と午後遅期の間には有意差はなかった。

     著者らは、主要な泌尿器科手術では、手術開始時刻が午後になるほど手術時間が短くなる一方、周術期合併症やOSには影響しなかったと結論づけた。手術時間の差は臨床的には小さく、手術開始時刻が臨床転帰に及ぼす影響は限定的と考察している。手術時間が午前群で長かった理由については、午前中は時間的な制約が少ないことや、1日の手術を重ねるにつれて術者・チームが“ウォーミングアップ”し、手術が効率化する可能性を指摘。また、午後遅くなるほど手術時間が延びる傾向はみられなかったことから、時間経過に伴う術者の疲労が手術時間を延ばした主な要因とは考えにくく、午前の手術環境や時間的な余裕、症例の割り当てなどが影響した可能性があるとみている。

     なお、本研究の限界点として、後ろ向きの単施設研究で因果関係を判断できないこと、手術チームの構成や研修医の参加、症例の複雑さなどを十分に把握できていないことを挙げている。

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  • 脊髄くも膜下麻酔後の悪心・嘔吐――機械学習で関連因子を解析

     術後悪心・嘔吐(PONV)は、手術後にみられる頻度の高い合併症の一つで、患者満足度の低下や入院期間の延長にもつながる。今回、脊髄くも膜下麻酔で手術を受けた患者のPONVについて、5種類の機械学習アルゴリズムを用いた解析で、術後のフェンタニル使用が最も強く関連する因子として特定された。研究は、東北大学大学院歯学研究科歯科口腔麻酔学分野の星島宏氏らによるもので、詳細は8月5日付の「PLOS One」に掲載された。

     脊髄くも膜下麻酔下で下肢や下腹部の手術、帝王切開を受けた患者におけるPONVの発生率は5~42%と報告されている。これまでの研究では、女性、麻酔の穿刺レベル、術中低血圧などがリスク因子として挙げられているが、全身麻酔後のPONVで知られているリスク因子とは異なることから、見解は一致していない。近年、医療分野ではAI技術が進展し、機械学習を用いた解析も広がっている。そこで著者らは今回、脊髄くも膜下麻酔下で手術を受けた患者を対象に、機械学習を用いてPONVのリスク因子を検討した。

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     本研究は後ろ向き観察研究で、東北大学病院で2010~2022年に脊髄くも膜下麻酔下の手術を受けた20歳以上の患者を対象とした。診療記録から、性別、年齢、BMI、手術・麻酔時間、麻酔方法、使用薬剤、術後フェンタニル使用など31項目を収集した。PONVの有無による背景因子の偏りを抑えるため傾向スコアマッチングを行った。PONVの発生確率を予測するアンサンブルモデルを構築し、ランダムフォレスト、勾配ブースティングマシン、k近傍法、多層パーセプトロン、決定木の5種類の機械学習アルゴリズムを組み合わせた。各因子の予測への寄与度はShapley値を用いて評価した。

     解析対象となった4,574人のうち、269人(5.9%)がPONVを発症した。傾向スコアマッチング後、PONV群269例と非PONV群269例の計538例を解析した。

     機械学習によるアンサンブルモデルのPONV識別能を示すAUCは0.81で、比較対象としたモデルを上回った。PONVへの寄与度は、術後のフェンタニル使用が最も高く、次いで手術時間、BMI、総尿量、麻酔時間の順だった。

     PONVの関連因子として、患者関連では女性、BMI(25未満)が、麻酔・手術関連では手術時間(60分未満)、麻酔時間(100分未満)、帝王切開、術後フェンタニル使用、脊髄くも膜下腔へのフェンタニル/モルヒネ投与、硬膜外麻酔の穿刺レベル(Th7~12)が特定された。一方、年齢、出血量、輸血量、輸液量、脊髄くも膜下麻酔の穿刺レベル、鎮静薬や昇圧薬などの使用には明確な関連は認められなかった。

     著者らは、今回のAI解析はPONVのリスク因子を特定するのに十分な精度を示し、将来的なPONVの発生予測に活用できる可能性があるとしている。一方、本研究では、傾向スコアマッチング後の症例数が少なく一部の因子を十分に解析できなかったこと、単施設研究で外部検証を行っていないこと、帝王切開の割合が高いこと、鎮静薬の影響を十分に考慮できなかったことなどを限界として挙げている。

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  • 専門医への紹介を要したせん妄、認知症・せん妄既往・大量飲酒が関連

     せん妄は、注意・意識・認知機能が急性に変化し、患者の安全や治療経過に影響する。今回、専門チームへの紹介を経て診断されたせん妄には、認知症、せん妄既往歴、大量飲酒が関連することが、2万人超の入院患者を対象とした研究で明らかになった。研究は、奈良県立医科大学附属病院精神医療センターの松田恵美氏、同大学健康管理センター・精神医学講座の山室和彦氏らによるもので、詳細は7月30日付の「PCN Reports」に掲載された。

     せん妄は、入院中の合併症で、短期間に注意力や意識、認知機能の障害が生じ、高齢者や身体的に弱い患者に多い。入院期間延長や死亡リスクの上昇と関連し、患者の発症しやすさに、手術、感染症、薬剤などが重なって発症すると考えられる。実臨床では見逃される例もあり、全入院患者を対象に、院内スクリーニング項目と紹介後のせん妄診断との関連を検討したデータは限られていた。著者らは、入院患者のリスク因子の分布と、専門チームの診断に関連する因子を検討した。

    【認知症の治験について相談したい方へ】
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     研究では、2022年6月~2023年11月に奈良県立医科大学附属病院に入院した全ての連続患者2万980人を対象とし、除外基準は設けなかった。入院後3日以内に、厚生労働省の診療報酬制度に基づく院内チェックリストを用いて、年齢、認知症、せん妄既往、大量飲酒、薬剤使用、手術歴などを評価した。せん妄が疑われた場合は、主治医が認知症ケアチームまたは精神科に紹介し、専門チームがICD-10およびDSM-5-TRに基づき診断した。さらに、ロジスティック回帰分析により、関連因子を年齢と性別で調整して検討した。

     対象2万980人のうち、認知症ケアチームまたは精神科へのコンサルテーションは509人(2.4%)に行われ、209人(全対象の1.0%)がせん妄と診断された。この1.0%は、紹介後にせん妄と診断された患者の割合を示す。入院時のスクリーニングでは、1万1,823人(56.4%)が70歳以上に該当した。また、4,446人(21.2%)はいずれのリスク因子にも該当しなかった。

     年齢別にみると、この診断の割合は概ね年齢が高い群ほど高く、40歳未満では0%だったのに対し、80歳超では1.57%となった。また、認知症やせん妄既往歴は高齢群ほど多くみられた。一方、大量飲酒は中年層で多く、最も高齢の層では少なかった。

     未調整ロジスティック回帰分析では、年齢が1歳高くなるごとに、せん妄と診断されるオッズが3.2%高く、オッズ比(OR)は1.032(95%信頼区間〔CI〕1.020~1.043)だった。一方、年齢と性別を調整した多変量解析では、認知症(OR 3.995、95%CI 2.647~6.029)、せん妄既往歴(OR 3.649、95%CI 2.158~6.170)、大量飲酒(OR 1.648、95%CI 1.002~2.710)が、せん妄診断と独立して関連していた。一方、70歳以上、器質性脳疾患、せん妄リスクを高める薬剤の使用、全身麻酔下の手術などは、せん妄診断と独立して関連しなかった。

     著者らは、今回、認知症やせん妄既往などに着目し、早期にリスクを見極めて予防につなげる意義を指摘する。ただし、本研究で把握したのは、認知症ケアチームまたは精神科への紹介後に診断されたせん妄に限られる。紹介されず主治医が対応した症例や見逃し例は含まれないため、結果は入院患者全体のせん妄発症因子ではなく、紹介後の診断に関連する因子として解釈する必要がある。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2026年9月7日
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  • 国産手術支援ロボット「hinotori」、膵体尾部切除術でda Vinciと概ね同等の周術期成績

     国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori」は2020年に製造販売承認を受け、国内の消化器外科領域でも導入が進んでいる。今回、hinotoriを用いたロボット支援下膵体尾部切除術(RDP)の周術期成績をda Vinci Surgical System(da Vinci)と比較した研究で、両者は概ね同等の周術期成績を示した。また、hinotori群では入院費がda Vinci群と比べて有意に低く、この差は手術時期をそろえた解析でも認められた。研究は、獨協医科大学埼玉医療センター外科の川﨑圭史氏、吉富秀幸氏らによるもので、詳細は7月30日付の「Asian Journal of Endoscopic Surgery」に掲載された。

     hinotoriは、メディカロイド社が開発した国産の手術支援ロボットで、名称は漫画家・手塚治虫氏の「火の鳥」に由来する。世界で広く使用されている手術支援ロボット「da Vinci」と比べ、hinotoriには、アームとトロカーのドッキングが不要、トロカー間距離の自動計測、8軸の関節機構、術者が自由に調整できる3次元ビューアーなどの特徴がある。これまでにhinotoriを消化器外科領域で使用した報告はいくつかあるものの、da Vinciと短期的な周術期成績を比較した研究は限られていた。また、両システムの周術期にかかる費用を比較した報告はなかった。このような背景から著者らは、hinotoriを用いたRDPについて、短期的な周術期成績と安全性をda Vinciと比較して検討した。

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     研究では、獨協医科大学埼玉医療センターで2025年6月までにRDPまたは脾温存RDPを受けた73例を対象とした。da Vinciを用いたRDPは2020年7月、hinotoriを用いたRDPは2023年10月に導入された。hinotori導入後は、患者の臨床的要因や術者の好みではなく、機器の使用状況や手術スケジュールを主に考慮して使用するロボットを選択した。両システムによる手術は、同じ3人の認定を受けた専門医が担当した。患者背景、手術関連因子、術後経過などを後ろ向きに解析し、hinotori群とda Vinci群で周術期成績を比較した。また、手術器具費と入院費も比較した。

     hinotori群は22例、da Vinci群は51例で、年齢、性別、術前の全身状態や腫瘍の特徴など、患者背景に有意な差は認められなかった。手術時間の中央値はhinotori群381.0分、da Vinci群428.0分、出血量はそれぞれ100.0mL、62.5mLで、いずれも有意差は認められなかった。

     一方、術後合併症では、臨床的に意義のある術後膵液瘻(CR-POPF)の発生率がhinotori群で有意に低かった(0%対19.6%、p=0.027)。また、Clavien-Dindo分類IIIa以上の合併症もhinotori群で有意に少なかった(0%対27.4%、p=0.007)。術後入院期間もhinotori群で有意に短く(9.0日対13.5日、p=0.003)、手術費用と材料費を除いた入院費も有意に低かった(149万9,810円対173万5,355円、p=0.005)。手術器具の費用は両群でほぼ同等だった。

     さらに、両システムが使用可能となった2023年10月以降の症例に限定して再解析したところ、CR-POPFの発生率と術後入院期間の群間差は有意ではなくなった。一方、入院費はhinotori群で引き続き有意に低かった。

     著者らは、hinotoriを用いた膵体尾部切除術は安全に実施可能で、短期的な周術期成績はda Vinciと概ね同等だったと考察している。入院費は2023年10月以降の症例に限定した再解析でもhinotori群で有意に低かったが、今後はより大規模な多施設研究による検証が必要としている。

     一方、著者らは、症例数が少ないことや、hinotoriの導入時期がda Vinciより遅かったことによる時間的バイアス、ロボットシステムの導入・保守費用などを含まない費用分析を研究の限界として挙げている。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

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    HealthDay News 2026年9月7日
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