hinotoriによるロボット支援前立腺全摘、real-worldデータでda Vinciと比較
手塚治虫氏の漫画『火の鳥』にちなんで名付けられた国産手術支援ロボット「hinotori」の前立腺がん手術への臨床導入が進む中、real-worldデータを用いて「da Vinci」との治療成績を比較した研究結果が報告された。hinotoriでは手術時間が長かった一方、陽性切除断端率や尿禁制回復、早期の生化学的再発などの主要アウトカムはda Vinciと同等の成績だった。研究は、滋賀医科大学泌尿器科講座の西田将成氏らによるもので、詳細は6月15日付の「Asian Journal of Endoscopic Surgery」に掲載された。
前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘除術(RARP)は標準的な術式として広く普及しており、従来はインテュイティヴ・サージカル社のda Vinciが中心に用いられてきた。一方、近年は国産手術支援ロボットhinotori(メディカロイド社)の臨床導入も進んでいる。しかし、機種間の比較は手術時間や出血量などの周術期成績に関する報告が中心で、陽性切除断端(PSM:手術で切除した標本の端にがん細胞が残っている状態)率やその解剖学的部位別分布、生化学的再発(BCR)などの腫瘍学的アウトカムを比較した報告は限られている。こうした背景から著者らは、real-worldコホートを用い、hinotoriとda VinciによるRARPの周術期、病理学的、機能的および早期腫瘍学的アウトカムを比較した。

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著者らは、2013年5月~2025年3月に滋賀医科大学医学部附属病院で前立腺がんに対するRARPを受けた437人を対象に、単施設・後ろ向きコホート研究を実施した。なお、本研究にはRARP経験レベルの異なる17人の術者が関与し、そのうちhinotori症例は12人の術者が執刀した。傾向スコアマッチング後、da Vinci群130人とhinotori群65人を解析対象とした。さらに解析では手術年を考慮し、ロボット導入時期の違いによる影響を調整した。その上で、周術期成績、PSM率とその解剖学的部位別分布、尿禁制回復(尿もれがない状態への回復)、BCRなし生存率を比較した。
傾向スコアマッチング後の解析では、手術時間、コンソール時間(ロボット操作時間)、セッティング関連時間はいずれもhinotori群で長く、推定出血量も多かった。一方、輸血を要した症例はなく、合併症発生率や術後入院期間に群間差は認められなかった。
病理学的には、全体および病期別のPSM率に有意差は認められなかった。PSMは両群とも前立腺尖部(apex)および後外側(posterolateral)に多く認められ、その解剖学的部位別分布にも差はみられなかった。さらに多変量解析でも、ロボット機種(hinotoriかda Vinciか)はPSMの独立した関連因子とはならなかった。
機能的には、術後12カ月時点の尿禁制回復率はhinotori群87%、da Vinci群85%であり、両群で同等であった。さらに、追跡期間をそろえた解析では、BCRなし生存率は術後1年でそれぞれ94%、89%、術後2年で89%、85%と、いずれも明確な差は認められなかった。
著者らは、PSM率や尿禁制回復、早期BCRには差は認められず、多変量解析でも機種はPSMの独立因子ではなかったことから、hinotoriの短期的な腫瘍学的・機能的成績はda Vinciと同等である可能性が示唆されたと述べている。一方、手術時間やセッティング時間の延長、出血量増加については、hinotori導入初期症例であり術者経験のばらつきや習熟過程(learning curve)、機器特有の操作性の違いが影響した可能性を指摘した。
なお、著者らは後ろ向き単施設研究であることに加え、術者経験のばらつきや導入初期症例に伴うバイアスなどを限界として挙げている。
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