アルコール依存症患者の飲酒関連がん、遺伝的体質でリスクに差

 飲酒は頭頸部がんや食道がんなどの飲酒関連がんの重要なリスク因子として知られている。今回、日本人のアルコール依存症患者を対象とした研究で、アルコール代謝に関わる遺伝的体質によって、こうしたがんのリスクが異なることが明らかになった。研究は、国立病院機構久里浜医療センターアルコール内科の横山顕氏、国立保健医療科学院生涯健康研究部の横山徹爾氏によるもので、詳細は7月7日付の「Cancer Medicine」に掲載された。

 飲酒は頭頸部がんや食道がん、肝がん、大腸がん、胃がんなどのリスク因子として知られている。また、東アジア人ではアルコール代謝に関わるADH1BとALDH2の遺伝子多型が、飲酒習慣や飲酒関連がんのリスクに影響することが報告されている。著者らはこれまで、アルコール依存症患者では依存症治療前に飲酒関連がんの治療を受けている例が少なくないことを報告している。しかし、がん治療とアルコール依存症の進行との時間的な関係や、ADH1B・ALDH2遺伝子多型との関連は十分明らかになっていなかった。そこで今回、日本人男性のアルコール依存症患者を対象に、飲酒関連がんの治療時期や遺伝子多型との関連などを調べた。

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 著者らは、2005~2020年に久里浜医療センターで初めてアルコール依存症の治療を受けた日本人男性5,214人(20~79歳、平均53.3歳)を対象に、初診時の問診や診療録を用いた後ろ向き調査を実施した。飲酒関連がんの治療歴や飲酒歴を調査するとともに、全例でADH1B(アルコールの分解速度に関与)およびALDH2(アルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドの分解に関与)の遺伝子型を解析し、代謝能力が異なる遺伝子型ごとに飲酒関連がんとの関連を評価した。また、飲酒を制御できなくなった時期や離脱症状の出現時期などを基に、アルコール依存症の進行時期を定義し、がん治療時期との関係を検討した。

 解析対象となった5,214人のうち、飲酒関連がんの既往があった患者は385人(7.38%)だった。内訳は胃がんが最も多く、次いで大腸がん、食道がん、頭頸部がん、肝がんだった。また、飲酒関連がんの多くは、アルコール依存症が進行した時期以降に治療されていた。

 遺伝子型との関連を解析したところ、ADH1B代謝低速型の患者では頭頸部がん、食道がんのリスクが高かった一方、胃がんとの関連は逆に低かった。ALDH2低活性型の患者では、頭頸部がんや食道がんに加え、胃がん、大腸がんのリスクも高くなっていた。

 特に、ADH1B代謝低速型とALDH2低活性型を併せ持つ患者では、頭頸部がんと食道がんのリスクがそれぞれ17.05倍、35.03倍と大幅に上昇していた。また、ADH1BとALDH2の組み合わせは、複数の臓器にわたる飲酒関連がんの発症とも関連していた。

 著者らは、「アルコール依存症患者では飲酒関連がんの治療歴を有する例が少なくなく、多くは依存症の進行後にがん治療を受けていた」とした上で、「ADH1BやALDH2の遺伝子型に応じたリスク評価と問題飲酒のスクリーニングを組み合わせることで、飲酒関連がんとアルコール依存症の双方に対する早期介入につながる可能性がある」と結論付けている。

 また、胃がん患者の約9割は胃切除術を受けており、胃切除後はアルコールが胃にとどまらず小腸へ速やかに移行して吸収されやすくなるため、アルコール関連の問題が生じる可能性があり、経過観察が重要だと指摘している。

 著者らは、対象がアルコール依存症治療を受けた患者に限られることや、後ろ向き横断研究であるため因果関係は証明できないことなどを限界として挙げている。

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HealthDay News 2026年8月17日
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