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9月 16 2025 デジタルピアサポート型禁煙プログラム、紙巻と加熱式で成功率に差
紙巻たばこと加熱式たばこ(heated tobacco products: HTP)、どちらが禁煙に成功しやすいか?日本の職場で実施されたデジタルピアサポート型禁煙プログラムにおいて、HTP使用者は紙巻たばこ喫煙者より高い禁煙成功率を示すことが明らかになった。小グループでのサポートとスマートフォンアプリを組み合わせた介入が効果を後押ししたと考えられる。研究は北里大学大学院医療系研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は「Journal of Medical Internet Research(JMIR)」に8月5日掲載された。
日本ではニコチン依存症者向けの外来禁煙プログラムが提供され、2020年からはHTP使用者も保険適用となった。このプログラムはニコチン代替療法と医師による面接や遠隔診療を組み合わせるが、完遂率は低い。一方、スマートフォンアプリなどのデジタル療法は禁煙支援に有効で、個別型アプリではHTP使用者が紙巻たばこ喫煙者より高い成功率を示すとの報告がある。さらにメタ解析では、仲間を取り入れたグループ型介入が禁煙成功率を高めることが示されている。しかし、ピアサポートを取り入れたグループ型アプリに関する研究は乏しく、タバコ製品の種類による効果差は明らかになっていない。このような背景から、著者らはニコチン代替療法とデジタルピアサポートアプリを組み合わせたグループ型禁煙プログラムに参加した現喫煙者を、使用しているたばこの種類別で分類し、禁煙成功率を比較する前向き研究を実施した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。研究は2023年6月~9月(12週間)にかけて行われ、参加者は国内の4つの企業よりリクルートされた。参加者は、禁煙プログラムに登録し、ニコチン代替療法(ニコチンパッチまたはガム)を無料で提供され、デジタルピアサポートアプリ(「みんチャレ」、A10 Lab Inc.)を併用した。このアプリでは、最大5人までの匿名グループチャットが可能で、写真やコメントを含む活動報告を共有することで交流や禁煙の取り組みを促した。参加者は紙巻たばこのみの喫煙者、HTPのみ使用者、併用(紙巻たばこ及びHTP)の3群に分類された。禁煙成功率の比較にはロジスティック回帰分析を用い、紙巻たばこのみの喫煙者を基準群としたオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)が算出された。
最終解析には435人が含まれ、内訳は紙巻37.5%、HTP 50.1%、併用 12.4%であった。参加者の平均年齢は46.6歳で、男性が大多数を占め(95.6%)、喫煙歴20年以上の者が68.1%を占めた。また、HTP使用者は、紙巻たばこ喫煙者と比べて喫煙歴が短く、禁煙補助薬の使用経験も少なかった。
禁煙成功率は、HTPのみ使用者で紙巻たばこのみ喫煙者よりも有意に高かった(63.3% vs 52.8%、調整OR 1.84、95% CI 1.57~2.16)。一方、併用者は紙巻たばこのみ喫煙者よりも成功率が低かったが、その差は統計学的に有意ではなかった(48.1% vs 52.8%、調整OR 0.96、95% CI 0.79~1.16)。
本研究について著者らは、「デジタルピアサポートアプリを用いたグループ型禁煙プログラムでは、HTPのみ使用者は紙巻たばこのみの喫煙者よりも高い禁煙成功率を示した。しかし、併用者は有意な差は認められなかった。これらの結果は、職場における禁煙プログラムにおいて、使用するたばこの種類を考慮することの重要性を示している」と述べている。
なお、著者らは、この研究結果をもって禁煙戦略として紙巻たばこからHTPへの切り替えを推奨するものではないと強調している。
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肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。
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6月 04 2024 禁煙後の体重増加は将来の高血圧発症と関連する可能性
禁煙後の体重増加は血圧の上昇につながり、将来の高血圧発症と関連する可能性があることが、鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学の二宮雄一氏らの研究グループによる研究から明らかになった。日本人の一般集団を対象に分析した結果、禁煙した群では、喫煙を継続した群と比べて体重がより増加し、血圧値も上昇することが分かったという。詳細は「Hypertension Research」に1月5日掲載された。
禁煙は、慢性疾患リスクの低減や寿命の延伸、QOLの向上など健康面にさまざまなメリットをもたらす。一方で、禁煙後には体重や肥満度が増加することが知られており、禁煙意欲を低下させる要因の一つとなっている。また、禁煙後の体重増加が引き起こす健康への悪影響については、これまで心血管疾患や2型糖尿病に焦点を当てた研究が多く、高血圧との関連は明らかになっていない。そこで、二宮氏らは、禁煙後の体重増加とその後の高血圧発症の関連を検討するため、後ろ向き研究を実施した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。2005年から2019年の間に、鹿児島厚生連病院健康管理センターで年1回の健康診断を受診した成人男女23万4,596人のうち、禁煙6年後のデータを入手し得た856人を対象に分析した。禁煙後の体重増加と高血圧発症の関連以外にも、禁煙1年後および6年後の血圧値と降圧薬処方率の変化を評価。また、傾向スコアでマッチングした禁煙群(856人)と喫煙継続群(854人)の体重と血圧値を比較した。さらに、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)に影響を与える因子を特定するため、重回帰分析を行った。
禁煙1年後の体重増加の中央値(1.8kg)を基に、体重増加が1.8kg以上だった群(high weight gain:HWG群、428人)と1.8kg未満だった群(low weight gain:LWG群、428人)に分けて分析した(平均年齢:HWG群46.5歳、LWG群45.2歳、男性の割合:それぞれ93%、90%)。その結果、HWG群とLWG群のベースライン時の体重は同程度だったが、LWG群に比べてHWG群では禁煙1年後および6年後の体重が有意に増加した(ベースライン→禁煙1年後→6年後の平均体重:HWG群64.9±10.5kg→68.9±10.6kg→69.2±10.9kg、LWG群66.3±10.7kg→66.1±10.5kg→66.8±10.9kg)。
また、禁煙から6年後の降圧薬の処方率にはHWG群とLWG群で有意な差はなかったが、ベースラインから6年後のSBP値およびDBP値の変化には有意差が認められた(SBP:HWG群10.3±13.8mmHg、LWG群6.2±12.8mmHg、P<0.001、DBP:HWG群6.0±9.3mmHg、LWG群3.1±9.7mmHg、P<0.001)。重回帰分析の結果、SBP値の変化は年齢と大幅な体重増加の影響を受けたのに対し、DBP値の変化は大幅な体重増加の影響のみを受けていた。さらに、禁煙群と喫煙継続群の比較では、禁煙群の方が体重の増加幅が有意に大きく、6年間のSBP値とDBP値の変化も大きかった。
以上から、同氏らは「禁煙後の体重増加は、その後の血圧上昇をもたらす可能性があり、禁煙を希望する人には減量指導を行うことが有効だ」と結論。その上で、「禁煙を勧める際には、禁煙による健康へのベネフィットは、禁煙後の体重増加による悪影響を上回ることを強調すべきだ。また、診療ガイドラインでは、禁煙後の体重管理療法の時期や期間について言及する必要があるだろう」と述べている。
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