• パンデミック下での職場いじめと精神的苦痛や希死念慮の実態――全国オンライン調査

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で実施された、職場いじめと労働者のメンタルヘルスの実態に関する調査の結果が報告された。労働者の15%が職場いじめに遭っていたこと、在宅勤務の開始は職場いじめに遭う確率を下げるものの、男性では精神的苦痛や希死念慮の増加につながっていたことなどが明らかになった。神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科の津野香奈美氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に11月2日掲載された。

     職場でのいじめは労働者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが想定されるが、その実態は明らかになっていない。また、COVID-19パンデミックに伴い人々の生活はそれまでと一変し、特に労働者では雇用環境の悪化や在宅勤務の開始などにより、新たなメンタルヘルスへの負荷が加わったと考えられる。津野氏らはこれらの点について、COVID-19パンデミックの社会・医療への影響を把握するために実施された大規模調査「JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究」のデータを解析し検討した。

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     JACSIS研究は、国内でのパンデミック第2波から第3波の合間にあたる2020年8~9月にwebを用い、性別、年齢、居住地を人口構成に一致させた上で無作為に抽出された調査パネルに回答を依頼し実施された。2万8,000人が回答した時点で受付を締切り。本研究では無職の人や不自然な回答を除外して、有職者1万6,384人を解析対象とした。その主な特徴は、平均年齢45.7±13.8歳、男性58.6%であり、経営者が5.7%、管理職12.3%、管理職以外の正社員44.0%、契約または派遣社員8.7%、アルバイト18.7%など。業種は製造業が16.8%で最も多く、その他は全て10%未満だった。

     「パンデミックに伴い身体的負荷が増えたか?」に「はい」と答えた人が20.7%で、心理的負荷については33.1%が「増えた」と回答した。26.5%の人は在宅勤務を行っており、そのうちの8.4%はパンデミックに伴い在宅勤務を開始し、18.1%はパンデミック前から行っていた。「2020年4月から半年間で職場いじめに遭ったか?」との質問には14.9%が「はい」と回答し、17.9%は「職場いじめを目撃した」と答えた。また、8.8%は精神的苦痛が重度と判定され(K6という評価スコアが24点中13点以上)、11.5%は過去半年間に「死にたいと思ったことがある」と回答した。

     職場いじめに遭った人の特徴を、性別、年齢、居住地、婚姻状況、教育歴、世帯収入、職位・業種・企業規模・勤務内容、うつ病の既往歴などの交絡因子を調整して解析。すると、以下の有意な関連因子が浮かび上がった。男性(該当者率が女性より+32%)、若年(65歳未満は65歳以上より+64~171%)、低収入(世帯収入600万円未満は1000万円以上より+16~82%)、経営者(アルバイトより+76%)、管理職(同+40%)、管理職以外の正社員(同+27%)、身体的負荷の増加(増加なしに比べて+40%)、心理的負荷の増加(同+21%)。その一方、パンデミック後に在宅勤務を開始した人は、職場いじめの該当者率が有意に低かった(-19%)。

     次に、職場いじめに遭遇したことと重度の精神的苦痛および希死念慮との関連を、前記と同様の交絡因子を調整して検討。すると、自分がいじめに遭った場合には、重度の精神的苦痛に該当する割合が184%、希死念慮を有する割合が113%、それぞれ有意に多いことが分かった。さらに自分が職場いじめに遭わなくても、その場面を目撃しただけで、同順に90%、41%、それぞれ該当者率が有意に高いことが示された。

     続いて、重度の精神的苦痛や希死念慮に関連する因子を性別に検討したところ、男性では、パンデミック後に在宅勤務を開始したことが、有意な関連因子の一つとして抽出された(重度の精神的苦痛は+20%、希死念慮は+23%)。女性ではこの関連は非有意だった。

     論文の考察の中で著者らは、本研究結果のうち注目すべき点として、女性より男性、非正規雇用者よりも正社員や管理職・経営者の方が、より多くの職場いじめに遭遇していた点を挙げている。これらは以前の研究報告にはあまり見られない結果であり、パンデミックにより状況が変化した可能性があるという。その背景として、「パンデミックに伴う勤務環境の変化への不満が、職位がより高い人に向けられた可能性があること、職位が高い人に女性よりも男性が多いことが影響しているのではないか」と推測している。

     結論は、「職場でのいじめやメンタルヘルスの問題を減らすには、以前から明らかになっていたリスク因子を有する労働者だけでなく、ハンデミックに伴う環境の変化の影響を受けている労働者にも焦点を当てる必要がある」とまとめられている。

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  • 睡眠が不規則な人は全死亡リスクが最大1.5倍高い――日本人8万人の縦断的研究

     自分の睡眠が不規則だと自覚している人は、睡眠時間を含む多数の交絡因子を調整後も全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが高いというデータが報告された。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の大道智恵氏、小山晃英氏らの研究によるもので、詳細は「Sleep Health」に10月10日掲載された。

     睡眠時間の長短がさまざまな疾患の発症や全死亡のリスクと関連のあることは、多くの研究により明らかになっている。また近年では、シフト勤務などによる不規則な睡眠も健康リスクとなり得ることが示唆されている。小山氏らも既に、主観的な評価に基づく不規則な睡眠が、メタボリックシンドロームのリスクと有意な関連のあることを報告している。主観的な評価は客観性に欠けるという欠点があるものの、煩雑な検査を必要としないため、一般住民など大人数の睡眠に関連する健康リスクを、簡便かつ低コストで評価できるというメリットがある。今回、小山氏らは、主観的な評価による不規則な睡眠と全死亡リスクとの関連の有無を、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)」のデータを用いて検討した。

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     J-MICC研究は、日本人の生活習慣病リスクの解明を目的として2005年から14拠点で継続されている前向きコホート研究。2004~2014年に35~69歳の成人9万2,527人がベースライン登録されている。そのうち、習慣的に睡眠薬を服用している人や追跡期間が1年未満の人を除外して8万1,382人(男性44.2%)を解析対象とした。睡眠の規則性については、ベースライン時の自記式アンケートに含まれていた「就床・起床時刻は規則的か?」の回答から判定。9,768人(12.0%)が「不規則」と回答した。なお、平均睡眠時間は6.6±1.0時間だった。

     73万6,319人年(平均9.01年)の追跡で、3,376人が死亡。1,000人年当たりの死亡率は4.59だった。睡眠時間と睡眠が規則的か否かによって全体を6群に分け死亡率を比較すると、長時間睡眠群と睡眠が不規則な群で高いことが分かった。具体的には、睡眠時間6時間未満で規則的な場合は4.5、不規則な場合5.1、睡眠時間6~8時間未満では同順に4.1、5.2、睡眠時間8時間以上では6.3、7.6だった。

     死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、飲酒・喫煙・運動習慣、教育歴、虚血性心疾患・脳卒中・がんの既往、および調査拠点)を調整後の全死亡リスクは、睡眠時間6~8時間未満に比較し8時間以上の群で15%高く〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間)1.05~1.25〕、睡眠が規則的な群より不規則な群は30%高かった〔HR1.30(同1.18~1.44)〕。性・年齢別に解析すると、男性は年齢(60歳未満/以上)にかかわらず、睡眠が不規則な群は有意に死亡リスクが高かった。一方、女性では睡眠が不規則なことと死亡リスク上昇との関連が有意なのは60歳未満のみであり、60歳以上や女性全体では有意な関連がなかった。

     次に、睡眠時間が6~8時間未満でかつ規則的な群を基準として、他の5群の死亡リスクを比較。その結果、睡眠が規則的な場合は睡眠時間が8時間以上の群で有意なリスク上昇が認められ〔HR1.14(1.04~1.24)〕、睡眠が不規則な場合は睡眠時間にかかわらず、全てのカテゴリーで有意な死亡リスク上昇が認められた。具体的には、6時間未満はHR1.21(1.02~1.44)、6~8時間未満はHR1.23(1.09~1.40)、8時間以上はHR1.52(1.18~1.96)であり、最大で52%ハイリスクだった。

     著者らは本研究を、「睡眠の規則性に対する主観的な評価と、全死亡リスクとの関連性を示した初の報告」としている。結論は、「睡眠障害を含む慢性疾患の既往歴が不明のため、交絡因子の調整が十分でない可能性などが限界点として挙げられるものの、死亡リスクの評価には睡眠時間の長短だけでなく、睡眠の規則性も把握する必要があることが明らかになった」とまとめられている。

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  • 重症ED患者はアディポネクチン高値だが心血管リスクが高い可能性

     勃起障害(ED)の重症度が高い男性は、“善玉”のサイトカインとされているアディポネクチンが高値であるというデータが報告された。ただし、それにもかかわらず、重症ED患者をアディポネクチン値の高低で比較すると、低値群の方がBMIや体脂肪率が高く、糖・脂質代謝は悪化しているという。金沢大学大学院医薬保健学総合研究科泌尿器集学的治療学の重原一慶氏らが、性腺機能低下症の男性を対象に行った研究の結果であり、詳細は「The Aging Male」に10月3日掲載された。

     EDは近年、心血管イベントの関連因子の一つとして位置付けられており、ED患者では血管内皮機能が低下したり、糖・脂質関連指標が悪化していることが多い。一方、アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されているサイトカインであり、インスリン感受性を高めたり炎症を抑制する作用があり、一般的には“善玉”と呼ばれている。ただ、EDとアディポネクチンとの関連はよく分かっていない。重原氏らは、金沢大学附属病院の患者データを後方視的に解析し、この関連を検討した。

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     解析対象は、2008~2015年に同院にて治療を受けた性腺機能低下症〔遊離テストステロン(FT)が11.8pg/mL未満〕の患者のうち、解析に必要なデータのある218人。ED治療薬や男性ホルモン製剤などが処方されている患者、心不全・腎不全患者などは除外されている。解析対象者の平均年齢は65.1±8.3歳、FTは7.4±2.2pg/mL、腹囲長86.8±9.4cm、BMI23.6±3.3、体脂肪率22.8±6.7%であり、男性用性健康調査票(SHIM)のスコアは11.1±6.3だった。なお、SHIMスコアは低いほどED重症度が高いと判定される。

     SHIMスコアが12点以上をEDなし~中等症EDと定義すると104人(47.7%)が該当し、12点未満の重症EDは114人(52.3%)だった。両群を比較すると、年齢とアディポネクチンに有意差が認められた一方、BMIや腹囲長、体脂肪率、FT、糖・脂質代謝関連指標、併存疾患の有病率には有意差がなかった。

     具体的には、年齢は重症ED群の方が高く(67.4±7.6対62.5±8.5歳、P<0.001)、アディポネクチンも重症ED群の方が高かった(6.9±5.1対5.6±3.5μg/mL、P=0.0168)。重回帰分析からも、重症EDの有意な関連因子として抽出されたのは、年齢とアディポネクチンレベルのみだった。心血管イベントリスクが高いと考えられる重症ED群の方がアディポネクチンレベルが高いという結果について、著者らは「驚くべきことであり、このような関連を示したデータは本研究が初めてではないか」と述べている。

     次に、重症ED群(114人)をアディポネクチン7.0μg/mLをカットオフ値として、低値群36人(31.6%)と高値群78人(68.4%)に二分して比較。すると、この検討では全体的に、アディポネクチン低値群の方が検査指標〔BMI、腹囲長、体脂肪率、空腹時血糖、中性脂肪、HDL-コレステロール、動脈硬化指数(AI)〕の悪化を示しており、有意差が認められた。年齢についてはアディポネクチン低値群の方が若年だった(65.9±7.2対70.5±7.7歳、P=0.00156)。

     著者らは本研究の対象者が性腺機能低下症の患者に限られていること、EDの重症度を自己評価に基づき判定していることなどを限界点として挙げている。その上で、「非EDまたは中等症以下のED患者よりも、重症ED患者の方がアディポネクチンレベルが高かった。それにもかかわらず、さまざまな心血管代謝関連指標は、アディポネクチンレベルが低い重症ED患者の方が、有意にハイリスクであることを示していた。アディポネクチン低値の重症ED患者は、心血管イベントリスクが高い可能性がある」と結論付けている。

     なお、重症ED患者の方がアディポネクチンレベルが高いという意外な結果の背景については、「不明」としながらも以下のような考察を述べている。まず、CKD患者ではアディポネクチン高値の方が心血管イベントリスクが高いといった、アディポネクチンを“善玉”とは言い切れないことを示すデータが報告されているという。また、透析患者ではアディポネクチンレベルは上昇するがその受容体は減少しているという報告もあり、アディポネクチンの作用が低下した代償としてアディポネクチン高値となる現象も想定されるのではないかとしている。ただし、「これは仮説であり、今後の研究による検証が求められる」と記されている。

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  • 収入の低い糖尿病男性は食物繊維摂取量が少ない

     2型糖尿病患者の世帯収入と食習慣との関連を調査した研究から、収入の低い男性は食物繊維の摂取量が少なく、食事性酸負荷が高いという有意な関連が報告された。京都医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の高橋芙由子氏、福井道明氏、松下記念病院糖尿病・内分泌科の橋本善隆氏、京都府立大学大学院生命環境科学研究科の小林ゆき子氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に8月7日掲載された。

     健康的な食習慣は2型糖尿病治療の根幹であり、食物繊維の摂取量と血糖コントロールや酸負荷の高い食事と腎機能低下などの関連が報告されている。一方、世帯収入がさまざまな疾患のリスクと関連しており、その一因として健康的とされる食品は高価なことが多く、収入が低い場合はそれらの食品の摂取が限られることの関連が考えられている。ただし、これまでのところ、2型糖尿病患者の世帯収入と食物繊維摂取量や食事性酸負荷レベルとの関連は明らかになっていない。高橋氏らは、京都府立医科大学などが外来糖尿病患者を対象に行っている前向きコホート研究「KAMOGAWA-DMコホート」のデータを横断的に解析し、この関連を検討した。

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     解析対象者は同コホート研究参加者のうち、食習慣や世帯収入に関するアンケートに回答し、データ欠落のない201人(平均年齢69.0±8.8歳、男性63.7%、BMI23.8±3.5kg/m2、HbA1c7.3±0.9%、糖尿病罹病期間17.7±11.0年)。食習慣・栄養素摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)で評価した。その結果、食物繊維摂取量は、男性12.1±5.0g/日、女性12.3±4.9g/日だった。また、食事性酸負荷の指標として評価したPRALスコア(潜在的腎臓酸負荷の指標)は、男性7.6±12.2mEq/日、女性3.7±13.1mEq/日、NEAPスコア(内因性酸産生量の指標)は同順に50.1±10.7mEq/日、47.0±10.6mEq/日だった。なお、PRALスコアやNEAPスコアは、肉や魚などの酸性食品の摂取が多いことや、野菜や果物などのアルカリ性食品の摂取が少ないことで上昇する。

     世帯収入については500万円をカットオフ値として二分した。男性の32.8%、女性の16.4%が高収入に該当した。高収入群は低収入群に比べて有意に若年で(65.3±10.4対70.4±7.7歳)、男性が多かった(77.8対58.5%)。なお、BMIやHbA1cには有意差がなかった。

     一方で、食物繊維摂取量は高収入群の方が多かった(13.5±5.9対11.7±4.7g/日)。ただし男女別に解析すると、男性では全体解析と同様に高収入群の食物繊維摂取量が有意に多かったが、女性では世帯収入の多寡による有意差は見られなかった。一方、食事性酸負荷の指標(PRALスコアとNEAPスコア)は、いずれも全体解析では有意差がなく、性別の解析では男性のみ、高収入群の方が低いという有意差が認められた。

     次に、これらの関係に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病罹病期間、HbA1c、中性脂肪、高血圧、摂取エネルギー量)を調整し、世帯収入の多寡と食物繊維摂取量、NEAPスコアとの関連を検討。すると、女性では世帯収入と食物繊維摂取量およびNEAPスコアとの間に有意な関連が示されなかったが、男性では、高収入群は食物繊維摂取量が多く(P=0.010)、NEAPスコアは低い(P<0.001)という関連が認められた。

     以上より著者らは、「世帯収入は、男性の食物繊維摂取量と食事性酸負荷に関連していた。糖尿病診療を行う臨床医や栄養士は、世帯収入の低い男性の食事の質に注意を払う必要がある」と結論付けている。

     なお、女性でこの関連が有意でなかったことの理由については、「女性は男性よりも食事に関するセルフケアの意識が高く、収入に関わらず野菜や果物を男性より多く取る傾向があるためではないか」と考察している。また、既報研究で示されていた世帯収入とHbA1cとの関連が本研究では有意でなかったことに関しては、「本研究では参加者の大半が長期間外来受診を継続しており、血糖管理が一定水準以上に達していたためと考えられる」と述べている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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