震災後の住まい、6年後の孤立リスクに差

 災害後の生活再建では、住まいの確保が重要な課題となる。今回、東日本大震災後の東北地域住民を対象とした大規模研究により、震災から6年後の住居形態が社会的孤立と関連していたことが分かった。特に男性では、賃貸住宅で孤立リスク上昇、被災地で住宅再建した場合にはリスク低下との関連が示された。研究は、岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座(いわて東北メディカル・メガバンク機構兼務)の事崎由佳氏らによるもので、詳細は5月13日付の「BMJ Public Health」に掲載された。

 東日本大震災では、多くの住民が家屋被害や転居を経験し、慣れ親しんだ地域や人間関係の喪失による社会的孤立が懸念されてきた。社会的孤立は、社会的ネットワークの縮小や他者との接触不足を示す指標であり、心血管疾患、抑うつ症状、認知機能低下などとの関連が報告されている。震災後の研究でも、孤立が抑うつ症状や死亡リスク上昇と関連することが示されている一方、被災後の住居形態と孤立の関係を長期的に検討した研究は限られていた。こうした背景から、著者らはいわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査を用い、震災6年後の住居形態と社会的孤立との関連を検討した。

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 著者らは、いわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査(TMM CommCohort Study)に参加した人のうち、岩手県住民1万6,610人(男性5,828人、女性1万782人、平均年齢59.4±11.1歳)を対象に解析を行った。震災6年後の住居形態を、震災前からの自宅、仮設・みなし仮設住宅、賃貸住宅など8種類に分類した。社会的孤立はLubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を用いて評価し、12点未満を孤立と定義した。住居形態と社会的孤立との関連について、性別および65歳未満/65歳以上で層別化した上で、多変量ロジスティック回帰分析により調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。解析では、喫煙、飲酒、既往歴、就労状況、抑うつ症状に加え、ベースライン時点の社会的孤立も調整因子として考慮した。

 震災6年後の時点で、社会的孤立の割合は男女とも賃貸住宅居住者で高く、男性48.0%、女性36.0%だった。男性では、仮設・みなし仮設住宅や災害公営住宅でも社会的孤立が多くみられた。

 多変量解析の結果、男性では賃貸住宅に住む人で社会的孤立リスク上昇との関連が認められ、特に65歳未満で顕著だった(OR 1.87、95%CI 1.06~3.28)。一方、65歳未満で被災地に住宅を再建した男性では、社会的孤立リスク低下との関連が示された(OR 0.41、95%CI 0.20~0.86)。

 また、65歳以上の男性では、仮設・みなし仮設住宅居住者で社会的孤立リスク上昇との関連がみられたが、この関連はベースライン時点の社会的孤立を調整すると有意ではなくなった。女性では、65歳以上で親族・知人宅に住む人を除き、住居形態と社会的孤立との有意な関連は認められなかった。

 著者らは、災害後の住居形態が社会的孤立の重要な決定因子となる可能性があり、その影響は性別や年齢によって異なると結論付けている。その上で、災害復興時の住宅政策では、住居確保だけでなく、地域のつながりやコミュニティの維持、脆弱な集団への配慮といった社会的側面を組み込む重要性を強調している。

 なお、著者らは本研究の限界点として、住居形態と社会的孤立を同時点で評価しており因果関係を断定できないこと、観察研究であるため残余交絡を否定できないこと、さらに東日本大震災特有の状況であり他災害への一般化に限界があることなどを挙げている。

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HealthDay News 2026年6月15日
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