地域活動への参加、オーラルフレイルリスク低下と関連――3万人超の縦断研究
日本の地域在住高齢者約3万人を3年間追跡した研究で、地域活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連することが示された。さらに、その関連は社会経済的地位(SES)が低い高齢者でより強く認められ、社会参加がオーラルフレイルの健康格差の縮小と関連する可能性が示唆された。研究は、北海道大学大学院保健科学研究院地域看護学/公衆衛生看護学教室の富岡那奈子研究員、田髙悦子教授らによるもので、詳細は7月24日付の「PLOS One」に掲載された。
オーラルフレイルは、かむ力や飲み込む力など口腔機能の軽度な衰えが積み重なった状態で、要介護リスクとの関連が指摘されている。口腔健康には社会経済的格差が存在することが指摘されており、国民皆保険制度の下でもその解消は課題となっている。所得や教育歴などで示されるSESは健康を左右する重要な要因であり、SESが低い高齢者では健康状態の悪化との関連が報告されている。近年、人とのつながりや地域活動への参加などを示す社会関係資本が健康に及ぼす影響が注目されているが、この社会関係資本とオーラルフレイルとの関連や、SESによる違いについては十分に明らかになっていなかった。そのような背景から、著者らは、日本の地域在住高齢者を対象に、個人レベルおよび地域レベルの社会関係資本とオーラルフレイルリスクとの関連を検討し、その関連がSESによって異なるかを解析した。

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研究では、2019年と2022年に実施された日本老年学的評価研究(JAGES)の縦断データを用いた。対象は、両調査に参加した自治体に住む65歳以上の高齢者のうち、ベースライン時に要介護認定を受けていない3万1,378人とした。オーラルフレイルリスクは、年齢、残存歯数、咀嚼機能、嚥下機能などを用いた予測モデルにより評価した。SESは等価世帯所得をもとに評価し、年間所得200万円未満を低SES群、200万円以上を中~高SES群とした。社会関係資本は、市民活動への参加、社会的結束、互助関係の3領域について評価した。さらに、本人の社会的つながりを示す「個人レベル」と、居住地域全体のつながりを示す「地域レベル」の両面から解析した。解析では、これらの社会関係資本とオーラルフレイルリスクとの関連を、多変量ロジスティック回帰分析により検討した。さらに、SESによって関連の強さが異なるかを解析した。
3年間の追跡期間中、対象者の21.6%にオーラルフレイルリスクが認められた。SES別では、低SES群で24.6%、中~高SES群で19.9%となり、低SES群でリスク発生割合が高かった。
社会関係資本との関連を解析したところ、個人レベルの社会関係資本が高い人ほど、オーラルフレイルリスクは低かった。特に、市民活動への参加が多い人ではリスク低下との関連が認められ、この関連は低SES群でより強かった。また、個人レベルの社会的結束や社会関係資本全体のスコアについても、オーラルフレイルリスク低下との関連が認められた。
地域レベルの社会関係資本では、市民活動への参加が活発な地域ほどオーラルフレイルリスクが低かった。一方、社会的結束や互助関係などについては、地域レベルでの明確な関連は認められなかった。
著者らは、社会参加、特に市民活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連する可能性を指摘している。特に低SESの高齢者で関連が強かったことから、社会参加、特に市民活動への参加を促す取り組みが、口腔健康における社会経済的格差の解明や対策を考える上で重要な手がかりになるとしている。
なお、著者らは、本研究は観察研究であることから因果関係については結論できないこと、またオーラルフレイルは自己申告項目を用いた予測モデルで評価していることから臨床検査に基づくものではないことについて留意する必要があるとしている。
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