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8月 07 2024 うつ病と心血管疾患発症の関連、女性でより顕著
日本人400万人以上のデータを用いて、うつ病と心血管疾患(CVD)の関連を男女別に検討する研究が行われた。その結果、男女とも、うつ病の既往はCVD発症と有意に関連し、この関連は女性の方が強いことが明らかとなった。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らによる研究であり、「JACC: Asia」2024年4月号に掲載された。
うつ病は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などのCVD発症リスク上昇と関連することが示されている。うつ病がCVD発症に及ぼす影響について、性別による違いを調べる研究はこれまでにも行われているものの、その明確なエビデンスは得られていない。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、日本の外来・入院医療のレセプト情報データベース(JMDC Claims Database)より、2005年1月~2022年5月における健診データが利用でき、18~75歳の人のうちCVDや腎不全の既往のある人などを除いた412万5,720人(年齢中央値44歳、男性57%)を対象とする後方視的コホート研究を行った。初回健診以前にうつ病と診断されていた人を、うつ病の既往ありと定義した。CVDには心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動を含め、これらの複合を主要評価項目として男女別に解析した。
対象者のうち、うつ病の既往のあった人は男性が9万9,739人(4.2%)、女性が7万8,358人(4.5%)だった。平均追跡期間1,288±1,001日(最短1日~最長5,534日)において、CVDは男性で11万9,084件(1万人年当たり発症率140.1)、女性で6万1,797件(同111.0)発症した。
うつ病とCVD発症との関連について、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足の影響を統計学的に調整して解析した結果、うつ病の既往のCVD発症に対するハザード比は、男性で1.39(95%信頼区間1.35~1.42)、女性では1.64(同1.59~1.70)であり、男女ともに有意な関連が認められた。この関連には性別の影響が認められ、女性の方が男性と比べて関連が強いことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。また、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動のそれぞれとうつ病との関連、および性別の影響を解析した場合も、同様の結果が得られた(全て交互作用P<0.05)。
さらに、サブグループ解析として50歳以上と50歳未満に分けて検討した結果と、肥満の有無で分けて検討した結果のいずれにおいても、うつ病の既往とCVD発症との関連は、女性の方が強いことが明らかとなった。また、複数の感度分析を行った結果も一貫していた。
今回の研究により、うつ病とその後のCVD発症の関連は、女性の方がより顕著であることが示された。著者らは、考えられるメカニズムの一つとして、妊娠や閉経など、ホルモンが変化する重要な時期にうつ病を経験しやすいため、女性では心血管系への影響がより大きくなる可能性があると説明。一方で、男女差が生じるメカニズムの完全な解明には、さらなる研究が必要だとしている。著者らは、「うつ病とCVDの関連についての性差をよりよく理解し、うつ病の男性と女性のそれぞれに最適なケアを提供することで、心血管系の健康につながる可能性がある」と述べている。
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6月 11 2024 卵を摂取するほど、抑うつのリスク低下と関連
400人以上の従業員を対象として、日常的に摂取している食品の中から抑うつと関連する食品群を調べる研究が行われた。その結果、卵類の摂取量が多いほど、抑うつのリスク低下と関連することが明らかとなった。また女性では、抑うつと野菜の摂取量との関連も見られた。山形県立米沢栄養大学健康栄養学科および山形大学大学院医学系研究科の北林蒔子氏らによる研究であり、「BMC Nutrition」に1月30日掲載された。
抑うつと栄養素の関係については、これまでにn-3系多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、鉄、亜鉛、ビタミンD、ビタミンB12、葉酸などに関する報告がある。ただ、抑うつの予防には、日常的に摂取する食品や食事パターンを調査することも重要だ。野菜や果物、魚介類、乳製品などに関する研究はあるものの、その数は少なく、特に日本人を対象とする研究は限られていた。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、2020年10月から11月に、山形県米沢市役所の従業員を対象とする横断研究を実施。過去1カ月間の食事内容を「簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)」で尋ね、各食品の摂取量を調査した。また、15種類の食品群(穀類、いも類、砂糖類、豆類、緑黄色野菜、その他の野菜、全野菜類、果物、魚介類、肉類、卵類、乳製品、油脂類、菓子類、嗜好飲料)の摂取量(g)を算出した。抑うつの評価には自己評価尺度の「CES-D」を用い、16点以上を「抑うつあり」と判定した。
解析対象は423人で、そのうち男性は251人(平均年齢43.1±10.5歳)、女性は172人(同40.7±11.2歳)だった。CES-Dの平均点は、全体で13.0点、男性12.1点、女性14.3点であり、女性の方が有意に高かった。抑うつあり(16点以上)の人の割合は、全体で28.4%、男性24.3%、女性34.3%だった。
抑うつの有無で15種類の食品群の摂取量を比較すると、抑うつありの男性は抑うつなしの男性に比べて、いも類、その他の野菜(緑黄色野菜以外)、全野菜類、肉類、卵類の摂取量が有意に少なかった。女性でも、抑うつありの人の方がこれらの食品群の摂取量は少ない傾向にあったものの、有意な差はなかった。
次に、いも類、その他の野菜、肉類、卵類について、摂取量が「多い」「中間」「少ない」の3グループに分け、抑うつとの関連を調べた。年齢、睡眠時間、運動、飲酒や喫煙の影響を調整して解析すると、男性では、卵類の摂取量が少ないグループが抑うつと有意に関連していた(多いグループと比較したオッズ比2.59、95%信頼区間1.21~5.54)。女性では、卵類の摂取量が少ない(同2.68、1.07~6.70)または中間(同2.59、1.06~6.33)のグループと、その他の野菜の摂取量が少ない(同2.86、1.11~7.36)または中間(同2.72、1.09~6.82)のグループが、抑うつと有意に関連していた。また、男性では卵類、女性では卵類とその他の野菜の摂取量が少ないほど、抑うつのオッズが高くなるという有意な傾向が認められた。
著者らは、横断研究であるため因果関係は示されないという限界点を挙げた上で、「抑うつのオッズは、卵の摂取量が少ない男性と女性、野菜の摂取量が少ない女性で高い」と結論。日本人を対象とした先行研究では、職種により抑うつの割合は27.8~37%と異なっているが、本研究の米沢市役所の従業員では28.4%であり、特に抑うつが多いという対象ではなかったとしている。また、抑うつの要因として神経伝達物質であるセロトニンの不足を挙げ、卵にはトリプトファン(セロトニンの材料となる必須アミノ酸)が豊富に含まれていると説明。抑うつのリスクには食事、睡眠、運動などが関連するとされるが、今回の研究は、基本的な食材の重要性を示すものといえる。
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1月 29 2024 朝食抜きや夕食後の間食、食行動の「数」が抑うつと関連
抑うつにはさまざまな因子が関係するが、不健康な食行動が多いこともその一つと言えそうだ。朝食を抜く、夕食後に間食をするといった不健康な食行動について、その「数」に着目した研究が新たに行われた。その結果、これらの食行動の数が多い人ほど、抑うつのリスクが高かったという。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らによる研究結果であり、詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」に12月22日掲載された。
朝食を抜くことと抑うつリスクとの関連については、著者らの先行研究を含め、これまでにもいくつか報告されている。しかし例えば、夕食後の間食が朝食抜きに影響を及ぼす可能性などもあることから、食行動のそれぞれではなく、その積み重ねと抑うつとの関連を検討する方が現実に即している。ただ、この観点での研究はほとんど行われていなかった。そこで、これらの点を踏まえて今回、食行動の数による影響が詳細に検討された。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。著者らは、栄養疫学調査に参加した製造業の従業員を対象とし、ベースライン時(2012年4月と2013年5月)と3年間の追跡期間後(2015年4月と2016年5月)に調査を実施した。抑うつ症状は自己評価尺度(CES-D)を用いて評価した。不健康な食行動は、朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食の3つについて、週に3回以上行っている行動の数を調査。その他、生活習慣や労働環境、栄養摂取の状態なども調査した。
解析対象者は19~68歳の914人(男性816人、女性98人)だった。不健康な食行動の数で分類すると、1つもない人は429人(平均43.0歳、男性87.4%)、1つの人は364人(同41.4歳、89.8%)、2~3つの人は121人(同39.6歳、94.2%)だった。不健康な食行動の数が多い人ほど、若年齢、男性・交代勤務・喫煙者の割合が高い、残業時間が長い、仕事・家事・通勤中の身体活動が多いという傾向があった。また、仕事のストレスが大きく、一人暮らしの傾向があり、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、亜鉛の摂取量が少なかった。
3年間の追跡期間中、抑うつ症状(CES-D≧16)を発症したのは155人(17.0%)だった。対象者の背景因子や職業・生活習慣因子の違いによる影響を調整して解析した結果、不健康な食行動が2~3つの人は、1つもない人と比べて、抑うつのリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.87、95%信頼区間1.10~3.21)。しかし、栄養因子による影響を加えて調整すると、抑うつリスクの差は有意ではなくなった(同1.67、0.96~2.90)。一方、重度の抑うつ症状(CES-D≧23)については、全ての因子を調整しても、不健康な食行動が2~3つの人の方がリスクは有意に高かった。
著者らは、これまでの研究との違いに関して、「抑うつの予防効果が示唆されている、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、n-3系多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、亜鉛の摂取量」による影響を含めて検討したと説明している。その上で、「朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食という不健康な食行動の数が抑うつのリスク上昇と関連していた」と結論付け、「この関連は、気分を改善する効果のある栄養素の摂取量が少ないことにより、部分的に説明できるかもしれない」と述べている。
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10月 30 2023 一人暮らしでペットを飼っている人は、うつ病リスクが高い?
ペットを飼っている独居者には、うつ症状のある人が多いことを示すデータが報告された。ペットのいない独居者よりも、そのような人の割合が高い可能性があるという。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の三宅遥氏らの研究結果であり、詳細は「BMC Public Health」に9月11日掲載された。
うつ病は各国で増加しており、世界的な公衆衛生上の問題となっている。抗うつ薬で寛解に至るのは患者の3分の1程度にとどまるため、うつ病の発症を予防する因子の特定は喫緊の課題である。これまでに行われた複数の研究からは、独居がうつ病のリスク因子の一つであることが示唆されている。一方で、家族の一員としても捉えられることもあるペットを飼育することが、独居によるうつ病リスクを押し下げるかどうかについて、詳細な検討はされていない。三宅氏らは、一人暮らしの人はうつ病リスクが高いとしても、ペットを飼育している場合は、その関連が減弱されるのではないかとの仮説を立て、同居家族やペットの有無別に、うつ症状のある人の割合を比較検討した。
この研究は、同センターが中心となり国内の複数の企業が参加して行われている職域多施設研究(J-ECOHスタディ)の一環として、2018~2021年に実施された。大手企業5社の従業員のうち健診を受診した1万7,078人の中で、1万2,847人が本研究のためのアンケート調査に回答した。解析に必要なデータが不足している人を除外し、1万2,763人(平均年齢42.5±12.4歳、女性12.1%)を解析対象とした。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。アンケートにより、同居家族やペットの有無を把握し、全体を以下の4群に分類した。同居者あり/ペットなし群(54.4%)、独居/ペットなし群(27.9%)、同居者あり/ペットあり群(16.5%)、独居/ペットあり群(1.2%)。また、うつ病のリスクは「うつ病自己評価尺度(CES-D)」で評価し、33点中9点以上の場合をうつ症状ありと判定した。
まず、独居か否かで二分して比較すると、同居者あり群(9,050人)では27.1%がうつ症状ありと判定され、独居群(3,713人)でのその割合は39.9%だった。うつ病リスクに影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、婚姻状況、教育歴、職位など)を調整後、同居者あり群を基準とした場合、独居群でのうつ症状ありの有病割合比(prevalence ratios;PR)は1.17(95%信頼区間1.09~1.26)と有意に高く、独居がうつ病のリスク因子であることが示唆された。
次に、前記の4群ごとに、うつ症状ありと判定された人の割合を見ると、同居者あり/ペットなし群は26.9%、独居/ペットなし群は39.7%、同居者あり/ペットあり群は27.9%、独居/ペットあり群は44.2%だった。同居者あり/ペットなし群を基準として、前記同様の交絡因子を調整すると、独居/ペットなし群はPR1.17(1.08~1.26)と、うつ症状のある人が17%多く、さらに独居/ペットあり群はPR1.42(同1.18~1.69)であって42%多いという結果になった。なお、同居者あり/ペットあり群はPR1.03(同0.95~1.11)で、同居者あり/ペットなし群と統計学的に有意な差が認められなかった。
これらの結果に基づき著者らは、「一人暮らしでのペットの飼育は、うつ症状を有する割合の高さと有意に関連しており、研究仮説は否定された」と結論付けている。また、ペットの飼育がメンタルヘルスに対してマイナスに働いてしまうメカニズムについて、先行研究を基に、「夜間のペットの行動によって睡眠が妨げられることなどが関係しているのではないか」との考察を加えている。
なお、本研究の限界点として著者らは、横断的解析であるため因果関係は不明なこと、解析対象者に占める女性の割合が低いこと、ペットの種類や対象者本人が世話に関わる程度を評価していないことなどを挙げている。特に一番目の点については、うつ症状のある独居者が孤独感を紛らわすためにペットを飼っているという、因果の逆転を見ている可能性もあるとし、「独居者のうつ病リスクを抑制する介入手段の探索のため、さらなる研究が必要である」と述べている。
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8月 21 2023 メンタルヘルスケアアプリ利用で産後うつリスクが低下する可能性
メンタルヘルスケアのために開発された、スマートフォンなどで利用可能なアプリケーションが、産後うつのリスクを抑制する可能性のあることが報告された。浜松佐藤町診療所(静岡県)の三浦弓佳氏らが行った、システマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「BMC Pregnancy and Childbirth」に6月14日掲載された。
国内の妊産婦の死亡原因のトップは自殺であり、これには産後うつの影響が少なくないと考えられている。産後うつによる自殺を防ぐためには、産後うつ状態の早期診断と適切なケアが重要だが、産後には育児などのために時間的な制約が生じることや、偏見などのために、うつリスクがあるにもかかわらず受療行動を起こさない女性が少なくない。このような状況に対応して、モバイルテクノロジーを用いたメンタルヘルスケアアプリが開発されてきた。ただ、それらのアプリの有用性の検証がまだ十分でなく、特に産後うつの「治療」ではなく「予防」という視点でのエビデンスはより不足している。そこで三浦氏らは、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。
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計2,515件がヒットし、タイトルと要約に基づくスクリーニング、全文精査を経て、最終的に16件を解析対象として抽出した。メタ解析に必要なデータが不足している場合は、論文の著者に連絡を取り提供を依頼した。
16件の研究は全て2015年以降に報告されたもので、中国、ポルトガル、シンガポールから各3件、米国から2件、そのほかに日本を含む数カ国から1件ずつ報告されていた。8件は出産前から介入が開始され、ほかの8件は出産後の介入だった。介入の内容は、認知行動療法に基づくものが6件、マインドフルネスに基づくものが3件であり、そのほかには心理教育的手法によるもの、愛着理論に基づくものなどが含まれていた。
産後うつの発症への影響を検討していた研究は3件で、そのうち1件はデータが不十分であったため、2件をメタ解析の対象とした。それら2件ともに有意な影響を報告しておらず、メタ解析の結果もリスク比(RR)0.80(95%信頼区間0.62~1.04)であって非有意だった(P=0.570)。
一方、EPDSスコアへの影響は14件の研究で検討されており、それらの中でカップルを対象とした2件の研究を除外し、母親のみに介入が行われた12件をメタ解析の対象とした。12件中4件は介入によるEPDSスコアの有意な低下を報告し、ほかの8件は非有意という結果を報告していた。メタ解析の結果は、標準化平均差(SMD)-0.96(-1.44~-0.48)であり、有意な効果が示された(P<0.001)。なお、データの不均一性が高かった(I2=82%)。
以上の結果に基づき著者らは、「心理社会的介入が可能なアプリによる産後うつ発症リスクの有意な低下は認められなかったが、EPDSスコアは有意に抑制されることが確認された。アプリによる介入が産後うつの発症を予防する可能性もあると言えるのではないか」と述べている。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、産後うつの増加が報告されていること、および、妊娠中から産褥期の感染リスク抑制のために介入可能な機会が減っていることから、「スマホやタブレットを用いた介入が今後、より注目されるようになると考えられる」と付け加えている。
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