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7月 07 2025 高齢の日本人男性で腸内細菌叢がサルコペニアと相関か
我々の腸内には、約1,000種類・100兆個にも及ぶ細菌が存在している。これらの細菌は、それぞれ独自のテリトリーを維持しながら腸内細菌叢(GM)という集団を形成している。近年では、GMが全身疾患と関連していることが明らかになってきた。今回、日本の高齢者を対象とした研究において、男性サルコペニア(SA)患者では、非SA患者に比べてGMのα多様性が有意に低下しβ多様性にも有意な違いを認めることが報告された。研究は順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科の浅岡大介氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に5月21日掲載された。
SAは、加齢に伴い骨格筋量、筋力、身体機能が低下する病気だ。SAを患う患者は転倒、入院、死亡のリスクが高まるため、早期発見と適切な介入が不可欠となる。また、近年、SAの発症にはGMが関与することが示唆されている。GMの細菌構成が乱れた状態(ディスバイオシス)では、腸管透過性が亢進し、いわゆる「リーキーガット(腸管壁侵漏)」による炎症が引き起こされ、結果としてSAの進行につながっている可能性がある。日本人は独特な食習慣の影響で、他の集団とは著しく異なるGMプロファイルを持つことが知られている。しかし、特に高齢の日本人集団におけるGMとSAの関係については、まだ十分に解明されていない。このような背景から著者らは、アジアにおけるSA診断基準としては2019年に改訂された最新のアジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS)2019基準で診断された高齢者のSAとGMプロファイルとの関係を検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究では、2022年6月から2023年1月にかけて、順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科に外来通院していた65歳以上の患者から採取した便検体を用い、前向きの横断研究を実施した。SAはAWGS2019診断基準に基づき、握力、歩行速度、DXA法による骨格筋量指数(SMI)に基づき診断された。GMプロファイルは16S rRNA遺伝子シーケンス解析を用いて解析し、(1)SAに関するGMのα多様性(個体内のGMでどの種がどの位均等に存在しているか)・β多様性(個体間のGMでどれ位多様性が異なるか)・性差、(2)SAに関連する腸内細菌属の占有率や検出率、(3)SMI、握力、歩行速度と腸内細菌属との相関を調査した。
本研究の最終的な解析対象は356名(男性144名、女性212名)であり、このうちSAは50名(男性35名、女性15名)含まれた。β多様性は男女間で有意に異なっていたため、性別によるサブグループ解析を実施した。その結果、男性のSA群ではα多様性のいくつかの指標が低かった(ディスバイオシスの状態)。男性のGMのβ多様性は、SA群と非SA群で有意な違いが認められた。一方で女性の場合は、α多様性およびβ多様性のいずれにも有意な違いは認められなかった。
次に、SAに関連する腸内細菌属の占有率を調べたところ、6種の細菌属(Eubacterium I、Fusicatenibacter、Holdemanella、Unclassified Lachnospira、Enterococcus H、Bariatricus)の腸内占有率が男性のSA群で低いことが明らかになった。一方で、女性のSA群と非SA群の細菌構成比に明らかな違いは認められなかった。スピアマンの順位相関係数を用いて、これらの細菌属と筋力に関連する指標との相関を調べたところ、男性の検体において、Unclassified Lachnospira は握力と、FusicatenibacterおよびEnterococcus Hは握力および歩行速度との間に有意な正の相関を示した。HoldemanellaはSMIと正の相関を示していた。しかし、女性の検体ではこれらの菌属とSMI、握力または歩行速度との間に有意な相関は認められなかった。
本研究について著者らは、「本研究は、日本で初めて臨床において高齢者集団のGM組成とAWGS2019診断基準で診断されたSAとの関連を調査した研究である。今回の結果から、高齢の日本人男性において、GMの組成がSAと関連することが示された。これは、日本の高齢男性におけるSA予防のために、腸内細菌をターゲットとした戦略が有効である可能性を示唆している」と述べている。
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5月 26 2025 スポーツを現地観戦する高齢者は幸福感が高い
主観的な幸福感を高めることは、高齢者が晩年を健康的に過ごすために極めて重要だが、今回、年数回のスポーツ現地観戦をすることで高齢者の幸福感が向上する可能性がある、とする研究結果が報告された。テレビ・インターネットではなく、会場で観戦することが重要だという。研究は千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に4月9日掲載された。
世界でも高い水準で高齢化が進んでいる日本においては、高齢者がいかに幸福度を維持しながら老後を過ごしていくかが課題の一つとなっている。過去には、スポーツによる身体活動だけでなく、スポーツ観戦といった受動的な参加によっても主観的幸福感が向上することが報告されてきた。しかし、スポーツ観戦においては、現地、テレビ、インターネットなどでそれぞれ幸福感との関係が異なる可能性も示唆されており、既存の研究の中では十分な検討がなされていない。そのような背景を踏まえ、著者らはスポーツ観戦をする高齢者は、観戦しない高齢者よりも幸福感が高いという仮説を立て、現地、テレビ・インターネットでのスポーツ観戦と幸福感との関連を大規模疫学研究のデータを用いて検討することとした。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。解析対象には、地域在住の65歳以上を対象とした日本老年学的評価研究(JAGES)データベースより、2019年と2022年の両方でスポーツ観戦に関する質問に回答した1万1,265人が含まれた。研究における幸福感は、0~10までの間で全体的な幸福感を評価してもらいスコア化した。スポーツ観戦の頻度は、「現地観戦(プロ、アマ含む)」、「プロスポーツの現地観戦」、「テレビ・インターネットでの観戦」それぞれについて、「全く観戦しない」、「年に数回」、「月に1~3回以上」、「週に1回以上」の選択肢の中から回答してもらい集計した。カテゴリごとに十分なサンプル数を確保するために、各選択肢は、「全く観戦しない」、「年に数回」、「月に1回以上」という3つのグループに分類した。
解析対象1万1,265人の平均年齢(±標準偏差)は73.6±5.6歳であり、女性は5,883人(52.2%)含まれた。年齢、性別などの交絡因子を調整後、スポーツ観戦と幸福感に関する線形回帰分析を行った結果、「現地観戦」では「年に数回」の観戦をした高齢者は、「全く観戦しない」高齢者よりも幸福感スコアが高かった(偏回帰係数B 0.11〔95%信頼区間0.03~0.19〕)。「プロスポーツの現地観戦」に関しても、「年に数回」の観戦は幸福感スコアの上昇と有意に関連していた(B 0.12〔0.02~0.22〕)。「テレビ・インターネットでの観戦」については、観戦頻度に関わらず、スポーツ観戦と幸福感スコアの間に有意な関連は認められなかった。
次に、スポーツ観戦と高い幸福感スコア(スコア8以上)の出現割合比(PR)について検討を行った。交絡因子を調整後、修正ポアソン回帰分析を行った結果、「現地観戦」では「年に数回」および「月に1回以上」観戦をした高齢者では、「全く観戦しない」高齢者よりPRが有意に高かった(それぞれPR 1.07〔1.03~1.12〕、PR 1.07〔1.00~1.14〕)。「プロスポーツの現地観戦」では、「全く観戦しない」高齢者に比べ、「年に数回」の観戦でPRが有意に高くなっていた(PR 1.06〔1.01~1.12〕)。「テレビ・インターネットでの観戦」に関しては、観戦頻度に関わらず、有意なPRの上昇は認められなかった。
「スポーツの現地観戦、プロスポーツの現地観戦において年に数回の観戦が幸福感の高さと関連する」というこの傾向は、スポーツクラブへの参加の有無、年齢、性別の層別解析により、スポーツクラブ不参加、男性、および75歳未満の高齢者でより顕著であることが分かった。
本研究について著者らは、「本研究の強みは大規模データベースを用いた点、幸福な人がスポーツ観戦を好むという逆因果関係の可能性を低減する工夫をした点にある。今回得られた結果は、高齢者の幸福感を高めるには、スポーツ観戦へのアクセスを促進する、的を絞った介入策が重要であることを示唆しているのではないか」と述べている。
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3月 10 2025 デジタルゲームは高齢者に健康と幸せをもたらすのか
ネット・ゲーム依存は身体活動の低下といった健康問題につながるが、高齢者の場合では、デジタルゲームにより身体活動が低下する可能性は低いということが明らかになった。千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の中込敦士氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Internet Research」に1月27日掲載された。
デジタルゲームは高齢者の間でも人気が高まっており、認知的、社会的、身体的なメリットをもたらす可能性がある。しかしながら、高齢者において、デジタルゲームが健康と幸福にどのような影響を及ぼすかは依然として不明だ。中込氏らは、全国で実施された日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを使用して、デジタルゲームが高齢者の健康と幸福に与える多面的な影響を評価した。
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2021年のデータの中で、過去5年間におけるデジタルゲーム(PC、携帯電話、スマートフォン、タブレット、またはコンソールによるビデオゲームと定義)の経験に関する質問に対して、「定期的にプレイしている」と答えた参加者を含む2,504人を対象とした。2022年に、これらの参加者に対してデジタルゲームに関する評価が行われた。また、2,504人の参加者のうちランダムに選択された1,243人(「定期的にプレイしている」192人を含む)に対しては、健康やウェルビーイングを含む人としての豊かさを評価する「Human Flourishing Index」評価も行われた。
評価項目は6つの領域にわたる18の質問で構成されていた。領域は、1;幸福と生活満足度、2;心身の健康、3;意味と目的、4;性格と美徳、5;親密な社会関係、6;健康に関する行動、とされ領域の1~5に「Human Flourishing Index」の各2問の質問が設定された。全般的な豊かさである「Overall flourishing」は領域1~5までの平均とした。さらに領域2、5、6に関連する項目が追加された。
Bonferroni法で補正し多重検定を行った結果、デジタルゲームは「Overall flourishing」、「Human Flourishing Index」のいずれとも有意な関連は認められなかった(P=0.12~P>0.99)。また、領域6の「座位時間の増加」(リスク比 1.055〔95%信頼区間0.788~1.105〕、P=0.72)、「屋外での活動減少」(平均差異0.026〔-0.081~0.133〕、P=0.64)とも関連していなかった。Bonferroni法で補正した結果、有意とはならなかったが、「趣味のグループへの参加」(平均差異0.124〔0.037~0.210〕、P=0.005)「友人との交流」(平均差異0.076〔0.010~0.142〕、P=0.02)でデジタルゲームとの強い関連が示された。
中込氏らは、この研究結果を、「リアルワールドデータにおいて、デジタルゲームが高齢者の健康と幸福に与える影響に関する貴重な洞察が得られた」とした上で、「(デジタルゲームが身体活動の低下と関連していなかった点について)デジタルゲームは、高齢者のバランスの取れたライフスタイルの一部となり、特に趣味のグループを通じて社会参加の機会を提供できるのでは」と述べている。なお、本研究の限界点として、データは1つの都市から得られたもので、調査結果の一般化はできないこと、本研究が観察研究であることなどを挙げている。
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軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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1月 28 2025 よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない
笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。
近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。2020~2021年の住民健診に参加した年齢60~79歳の1,717人のうち、研究参加への同意を得られ、データ欠落のない916人(平均年齢68.4±5.0歳、男性46.2%)を解析対象とした。両年度とも参加していた人については2020年度のデータを使用した。OFの評価には、「硬い食べ物を食べるのが困難か?」など8項目の質問から成る精度検証済みの質問票(Oral Frailty Index-8;OFI-8)を使用。そのスコアに基づき、OFなしが40.3%、プレオーラルフレイル(OFの予備群〔POF〕)が18.2%、OFが41.5%と判定された。笑いの頻度については、「声を出して笑う頻度は?」という質問で評価。ほぼ毎日が40.8%、週に1~5回が43.3%、月に1~3回が11.1%、ほとんどないが4.9%だった。
笑う頻度が「週1回未満」の群を基準として、年齢と性別の影響を調整した解析(モデル1)の結果、笑う頻度がほぼ毎日の群にはOFが有意に少なく(オッズ比〔OR〕0.38〔95%信頼区間0.26~0.57〕)、頻度が週に1~5回の群もOFが少なかった(OR0.51〔同0.35~0.76〕)。調整因子に、喫煙・飲酒・運動習慣、身体的フレイル、高血圧・糖尿病の既往を追加した解析(モデル2)では、笑う頻度が週に1~5回の群についてはOFとの関連の有意性が消失したが(OR0.66〔0.43~1.02〕)、頻度がほぼ毎日の群では引き続きOFが有意に少ないという関連が認められた(OR0.54〔0.34~0.86〕)。
モデル2において、笑う頻度以外に、抑うつ症状がないこともOFに対する負の有意な関連因子だった(「抑うつ症状あり」を基準とするOR0.39〔0.25~0.61〕)。その一方、高齢(1歳高齢であるごとにOR1.08〔1.05~1.11〕)、女性(OR1.74〔1.14~2.65〕)、喫煙(現喫煙がOR2.63〔1.57~4.40〕、過去喫煙がOR1.75〔1.15~2.66〕)、飲酒(毎日がOR1.70〔1.15~2.51〕、機会飲酒は非有意)は、正の有意な関連因子として特定された。運動習慣や地域活動への参加は、モデル1では有意な負の関連が認められたが、モデル2では非有意となった。
著者らは、本研究が新型コロナウイルスパンデミック中に実施されたことが結果に影響を及ぼしている可能性を否定できないといった限界点を挙げた上で、「交絡因子を調整後、毎日笑うことと抑うつ症状がないことが、OFの少なさと関連していた。公衆衛生戦略として、社会的なコミュニケーションを拡大して人々が声を出して笑える頻度を増やし、抑うつのリスクを抑制することが、フレイル予防・改善を通じて健康寿命を延伸する可能性があるのではないか」と述べている。
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11月 10 2024 ビタミンD値が低いとサルコペニアのリスクが高い可能性
血清ビタミンD値が低い高齢者は骨格質量指数(SMI)が低くて握力が弱く、サルコペニアのリスクが高い可能性のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学の赤坂憲氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月1日掲載された。
サルコペニアは筋肉の量や筋力が低下した状態であり、移動困難や転倒・骨折、さらに寝たきりなどのリスクが高くなる。また日本の高齢者対象研究から、サルコペニア該当者は死亡リスクが男性で2.0倍、女性で2.3倍高いことも報告されている。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。サルコペニアの予防・改善方法として現状では、筋肉に適度な負荷のかかる運動、および、タンパク質を中心とする十分な栄養素摂取が推奨されており、治療薬はまだない。一方、骨粗鬆症治療薬として用いられているビタミンD(VD)に、サルコペニアに対する保護的作用もある可能性が近年報告されてきている。ただし、一般人口におけるVDレベルとサルコペニアリスクとの関連は不明点が少なくない。これを背景として赤坂氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いて、年齢層別に横断的解析を行った。
SONIC研究参加者のうち、年齢層で分けた際のサンプル数が十分な70歳代(平均年齢75.9±0.9歳、男性54.2%)と、90歳代(92.5±1.6歳、男性37.5%)を解析対象とした。全員が自立して生活していた。
血清25(OH)D(以下、血清VDと省略)の平均は、70歳代では21.6±5.0ng/mLであり、35.8%が欠乏症(20ng/mL未満)だった。90歳代では平均23.4±9.1ng/mLであり、43.8%が欠乏症だった。なお、VDは日光曝露によって皮膚で生成されるため、日照時間の違いを考慮して季節性を検討したところ、70歳代の男性では、冬季測定群に比べて夏季測定群の方が有意に高値だった。
サルコペニアのリスク評価に用いられている、SMI、握力、歩行速度、および、BMIや血清アルブミン、血清クレアチニンと、血清VDとの関連を単回帰分析で検討すると、年齢層にかかわらず、SMIと握力が血清VDと有意に正相関し、その他の因子は関連が見られなかった。それぞれの相関係数(r)は、以下の通り。70歳代の血清VDとSMIは0.21、血清VDと握力は0.30(ともにP<0.0001)、90歳代の血清VDとSMIは0.29(P=0.049)、血清VDと握力は0.34(P=0.018)。
続いて、SMIおよび握力を従属変数、性別を含むその他の因子を独立変数とする重回帰分析を施行した。その結果、70歳代のSMIについては、血清VDが有意な正の関連因子として特定された(β=0.066、P=0.013)。一方、70歳代の握力に関しては、血清VDは独立した関連が示されなかった。また90歳代では、SMI、握力ともに血清VDは独立した関連因子でなかった。
著者らは本研究の限界点として、横断的解析であり因果関係は不明なこと、日光曝露時間や栄養素摂取量が測定されていないことなどを挙げた上で、「地域在住の自立した高齢者では、血清VDレベルはSMIや握力と関連しているが、歩行速度とは関連のないことが明らかになった。この結果は90歳代よりも70歳代で明確だった」と総括。また、「さらなる研究が必要だが、血清VDレベルを維持することが骨格筋量の維持に寄与する可能性があるのではないか」と付け加えている。
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11月 05 2024 発酵乳製品の摂取頻度の多寡で高齢者の歩行速度に差が生じる――中之条研究
発酵乳製品が加齢に伴う歩行速度の低下を抑制することを示唆するデータが報告された。摂取頻度の多寡によって、男性では歩行速度に7.3年分に相当する差が生じ、さらに日常の歩数の多寡も考慮した場合、最大で22.0年分の差が生じる可能性があるという。東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室の青栁幸利氏らの研究によるもので、詳細は「Beneficial Microbes」に7月5日掲載された。
加齢に伴い身体機能およびトレス耐性が低下した、要介護予備群とも言える「フレイル」への公衆衛生対策が急務となっている。フレイルの予防には適度な運動とバランスの良い食事が大切と考えられていて、特に食事に関してはタンパク質摂取の重要性とともに近年、ヨーグルトなどの発酵乳製品の有用性が示されてきている。ただし、その効果を実際にヒトで検討した研究報告はまだ少ない。
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横断的解析の対象は581人(年齢範囲65~92歳、男性38.6%)で、発酵乳製品の摂取頻度が週3日以上の割合は、男性では56.3%、女性は71.1%。男性・女性ともに両群間で年齢、BMI、および1日の歩数に有意差はなかった。男性の日常の歩行速度は、発酵乳製品の摂取頻度が週3日以上の群が1.37±0.21m/秒、摂取頻度が3日未満の群は1.31±0.20m/秒であり、最大歩行速度は同順に2.15±0.45m/秒、2.02±0.42m/秒だった。交絡因子(年齢、BMI、喫煙習慣、飲酒習慣、およびエネルギー摂取量またはタンパク質摂取量)を調整後、両群の歩行速度に有意差が観察された。女性の歩行速度については、有意差が認められなかった。
一方、1日の歩数が7,000歩以上の割合は、男性では48.2%、女性は45.1%であり、7,000歩以上の群は年齢が若くBMIが低かった。交絡因子(年齢、BMI、喫煙習慣、飲酒習慣)を調整後、性別にかかわらず日常の歩行速度および最大歩行速度ともに、歩数7,000歩以上の群の方が有意に速いことが分かった。
発酵乳製品の摂取頻度と歩行速度を組み合わせて全体を4群に分けて比較すると、男性では発酵乳製品の摂取頻度が高くて歩数が多い群の日常の歩行速度が最も速く、他の3群との間に有意差が認められ、女性もほぼ同様の結果(歩数7,000歩以上で発酵乳製品の摂取頻度3日/週未満の群との差は非有意)だった。
なお、男性では、1歳高齢になるごとに日常の歩行速度が0.0082m/秒低下すると計算された。発酵乳製品摂取頻度の多寡による2群間の歩行速度の差は0.06m/秒であったことから、歩行速度上は7.3年分の年齢差が存在していると考えられた。さらに歩数の多寡を考慮した場合、発酵乳製品の摂取頻度が高くて歩数が多い群と発酵乳製品の摂取頻度が低くて歩数が少ない群との群間差は0.18m/秒であり、22.0年分の年齢差が生じていると計算された。
縦断的解析は、2014年と5年後の2019年の調査に参加した240人(年齢範囲65~91歳、男性42.9%)を対象として実施された。2014年時点で発酵乳製品の摂取頻度が週3日以上だったのは68.8%だった。2019年の日常の歩行速度は、摂取頻度が週3日未満の群では5年前と比べて0.11±0.14m/秒低下していたのに対して、摂取頻度が3日以上の群の低下幅は0.064±0.169m/秒にとどまっており、交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙習慣、飲酒習慣、2014年時点の日常の歩行速度)を調整後に有意な群間差が認められた。
これら一連の結果を基に著者らは、「発酵乳製品の習慣的な摂取が高齢者の歩行速度の低下抑制に寄与する可能性があり、また歩数が多いことと相加効果も期待できるのではないか」と述べている。なお、発酵乳製品の効果発現のメカニズムとしては、既報研究からの考察として、発酵乳製品中に含まれる微生物による腸管内の短鎖脂肪酸の増加を介して筋肉にエネルギーが供給されたり、慢性炎症が抑制されたりすることの関与が考えられるとしている。
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