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4月 16 2025 アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か
インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。
2014年の実態調査では、糖尿病治療中の患者の52%が日常生活で低血糖を経験し、そのうちの10%で運転中に低血糖エピソードを生じ、結果としてその2%が交通事故にあった、と報告されている。無自覚の低血糖を加味すれば、運転中の低血糖エピソードの頻度はさらに高い可能性があり、切迫した低血糖を予測してドライバーに警告できる信頼性の高いシステムが必要とされていた。このような背景から、研究グループは、インスリン治療を受けているドライバーを対象に、低血糖アラート機能付きのCGMの有用性を評価する単施設の非盲検ランダム化クロスオーバー試験を実施した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。対象には、2021年7月6日から2023年2月27日の間に名古屋大学医学部附属病院でインスリン治療を受け、週3回以上車を運転する成人の糖尿病患者30名が含まれた。30名の参加者は、アラート機能付きCGM群(アラート群)、アラート機能なしCGM群(非アラート群)に1対1で割り付けられた。参加者は、4週の試験期間の後、8週間おいて、群を入れ替えて再度4週間の試験期間に組み入れられた。CGMは皮膚に貼り付けるパッチ式を採用し、期間中の低血糖警告の閾値は80mg/dL(4.4mmol/L)と設定された。主要評価項目は血糖値が基準値(70mg/dL〔3.9mmol/L〕)を下回っていた時間(TBR)の割合とした。
最終的にCGMの解析に含まれた参加者は27名(平均年齢;61.9±12.6歳、女性;8名)だった。27名には、1型糖尿病8名(30%)、2型糖尿病13名(50%)、その他6名(20%)が含まれた。
2つの試験期間を統合して解析した結果、試験全体でのTBRはアラート群(中央値2.0%〔四分位範囲1.0~7.0〕)と非アラート群(同2.0%〔1.0~6.5〕)で有意な差はみられなかった(P=0.169)。しかし、事前に規定された1型糖尿病のサブグループ解析では、非アラート群と比較したアラート群のTBRは有意に減少していた(群間差-4.4%〔95%信頼区間-8.7~-0.1〕、P=0.047)。また、車を運転するときの低血糖エピソードの発生率は、非アラート群(33%)と比較し、アラート群(19%)で有意な減少が認められた(P=0.041)。
本研究の結果について、研究グループは、「今回のCGMはアラートの閾値が80mg/dL(4.4mmol/L)に設定されており、参加者は血糖が基準値以下(<70mg/dL〔<3.9mmol/L〕)になる前にブドウ糖摂取などの予防的措置をとることができた。今回示された結果は、低血糖アラート機能を備えたCGMが、インスリン治療を受けているドライバーの安全性をさらに高め、糖尿病患者の運転制限の緩和に役立つ可能性があることを示唆している」と述べた。
なお、本研究の限界については、CGMで測定した皮下組織中のグルコース濃度は、近似しているが血糖値と同一のものでないこと、CGMの使用により意識が変わり、血糖管理がより慎重になった可能性があったことなどを挙げている。
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3月 24 2025 食物繊維の摂取で肥満リスクが低下か、性別・年齢で有意差
2型糖尿病患者で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d’Avila Ferreira氏、曽根博仁氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に2月4日掲載された。
肥満の予防と管理においては、食物繊維が重要な役割を果たすことは示されているが、性別で層別化した場合に相反する結果が報告されるなど、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景からFerreira氏らは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。この横断研究では、一般社団法人糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータが用いられた。対象は、2014年12月~2019年12月の期間に、JDDMに参加する日本の糖尿病専門医クリニックで治療を受けた30~89歳までの外来患者とした。解析対象は1,565名(平均年齢62.3±11.6歳、男性63.1%)だった。
参加クリニックでは、希望する外来患者に対して、JDDMの開発した生活習慣に関するアンケートを実施。患者は身長・体重を自己申告し、食習慣については、それぞれ食物摂取頻度調査票(FFQ)に記入してもらった。栄養素および食品の摂取量は標準化された栄養計算ソフトウェアで計算し、1日当たりの摂取量が600kcal以下または4,000kcal以上の場合は外れ値として解析から除外した。身体活動は国際標準化身体活動質問表(IPAQ)の短縮版を用いて計算した。肥満の定義は日本肥満学会に従い、BMIが25kg/m2以上とした。
性別・年齢およびライフスタイル要因、主要栄養素の摂取量を調整した多変量解析を行った結果、全患者において食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった(オッズ比OR 0.591〔95%信頼区間0.439~0.795〕、P trend=0.002)。層別解析では、男性(P trend=0.002)および59~68歳群(P trend=0.038)で有意な逆相関の傾向が認められ、69~89歳群(P trend=0.057)でも有意傾向がみられた。一方で女性(P trend=0.338)および30~58歳群(P trend=0.366)では逆相関の傾向は認められなかった。また、男性では食物繊維の摂取量が多いほど、ライフスタイルが健康的であることも分かった。その特徴として、身体活動レベルが高いこと(p<0.001)や、喫煙率の低さ(p<0.001)が挙げられる。
食物繊維摂取量と食品群との相関関係をみると、全患者において、野菜、果物、大豆/大豆製品が強い相関を示したが、穀物は弱い相関を示した。ビタミンおよびミネラルの場合は、葉酸、カリウム、ビタミンCなどが食物繊維の摂取量と強い相関を示していた。
研究グループは本研究について、横断研究であり、日本人の2型糖尿病患者集団のみを対象としたことからも一般化できないといった限界点を挙げた上で、「肥満を効果的に管理するには、食物繊維の豊富な様々な食品を推進するような的を絞った取り組みが必要。また、多様な集団における食物繊維と肥満の関係を理解するには、さらなる研究が必要と考える」と総括している。
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3月 04 2025 歯周病治療で糖尿病患者における人工透析リスクが低下か
歯周病を治療している糖尿病患者では、人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが明らかになった。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの草間太郎氏、同センターの竹内研時氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Periodontology」に1月5日掲載された。
慢性腎臓病は糖尿病の重大な合併症の一つであり、進行した場合、死亡リスクも高まり人工透析や腎移植といった高額な介入が必要となる。したがって、患者の疾病負荷と医療経済の両方の観点から、慢性腎臓病を進行させるリスク因子の同定が待たれている。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。歯周病は糖尿病の合併症であるだけでなく、糖尿病自体の発症やその他の合併症の要因でもあることが示唆されている。また、歯周病と腎機能低下との関連を示唆する報告もされていることから、研究グループは糖尿病患者における定期的な歯周病ケアが腎機能低下のリスクを軽減または進行を遅らせる可能性を想定し、大規模な糖尿病患者のデータを追跡した。具体的には、歯周病治療を伴う歯科受診を曝露変数として、人工透析に移行するリスクを後ろ向きに検討した。
本研究では、40~74歳までの2型糖尿病患者9万9,273人の医療受診データ、特定健診データが用いられた。2016年1月1日~2022年2月28日までの期間に、2型糖尿病を主傷病としていた患者を登録した。
9万9,273人の参加者(平均年齢は54.4±7.8歳、男性71.9%)における人工透析の発生率は1,000人あたり1年間で0.92人だった。交絡因子については、年齢、性別、被保険者の種類、チャールソン併存疾患指数、糖尿病の治療状況(外来の頻度、経口糖尿病治療薬の種類、インスリン製剤使用の有無、治療期間)、健診結果(高血圧、高脂血症、蛋白尿、HbA1c)、喫煙・飲酒といった生活習慣などが共変量として調整された。
交絡因子を調整後、人工透析開始のハザード比(HR)を分析した結果、歯科受診をしていなかった患者と比較して、1年に1回以上歯周病治療を受けている患者で32%(HR 0.68〔95%信頼区間0.51~0.91〕、P<0.05)、半年に1回以上治療を受けている患者で44%(同0.56〔0.41~0.77〕、P<0.001)、人工透析開始のリスクが低いことが示された。
研究グループは本研究の結果について、「これらの結果は、糖尿病性の腎疾患の進行を緩和し、患者の転帰を改善するためには、糖尿病治療に日常的な歯周病治療を組み込むことが重要であることを示唆している。また糖尿病患者の管理における専門医と歯科の連携欠如は以前より報告されており、本研究でも患者の半数以上が歯周病ケアを受けていなかった。今後、糖尿病患者の健康を維持するためには、専門医と歯科のさらなる連携が必要と考える」と総括した。なお、本研究の限界について、登録データは企業が提供する雇用保険に加入する個人のみが含まれていたことから、研究の参加者は日本人全体の特徴を表していない点などを挙げている。
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糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。
12月 16 2024 野菜を先に食べている糖尿病患者は高次生活機能が高い
野菜を先に食べる習慣のある高齢糖尿病患者は、高次生活機能が高いとする研究結果が報告された。一方で最初にタンパク質や炭水化物の食品を食べることは、高次生活機能との関連が有意でないという。伊勢赤十字病院糖尿病・代謝内科の井田諭氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Nutrition」に9月27日掲載された。
高齢の糖尿病患者が増加していることを背景に、糖尿病臨床においては血糖管理のみならず、患者の高次生活機能の低下を防ぐことが重要な課題となってきている。高次生活機能とは、買い物や金銭の管理などの手段的日常生活動作(IADL)のほか、知的な活動や社会的な活動を積極的に行うための機能であり、食後の高血糖がこの機能を低下させるリスク因子の一つである可能性が指摘されている。一方、食事の際に野菜を最初に食べることは、食後高血糖の抑制に役立つ。これらを背景として井田氏らは、野菜から食べ始めることが、糖尿病患者の高次生活機能の維持に対して保護的に働いているのではないかとの仮説の下、以下の横断的研究を行った。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。研究参加者は、2022年7~12月の同院糖尿病外来受診者のうち、60歳以上の346人(平均年齢72歳、男性59%、HbA1c7.6%)。このうち、野菜を最初に食べると回答した患者は39.7%で、炭水化物が最初は28.6%、タンパク質が最初は14.4%であり、19.3%の患者は食べる順序を意識していなかった。
高次生活機能の評価には、東京都長寿医療センターで開発された「老研式活動能力指標(TMIG-IC)」を用いた。TMIG-ICは13項目の質問で評価され、スコアが高いほど高次生活機能が高いと判定する。前記の4群のTMIG-ICスコアは、野菜優先群は11.1±2.3、炭水化物優先群は10.2±2.9、タンパク質優先群は10.0±2.3、決まった順番なし群が9.7±2.8だった。
次に、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、HbA1c、運動習慣、併存症、社会的フレイル〔外出頻度が少ないことなどで判定〕)を調整変数に含めた重回帰分析を行い、食べる順番とTMIG-ICとの関連の偏回帰係数を求めた。すると、男性、運動習慣なし、社会的フレイルは、TMIG-ICと負の有意な関連が認められた一方、野菜を最初に食べる習慣は有意な正の関連が認められた(係数1.00〔95%信頼区間0.33~1.66〕)。炭水化物またはタンパク質を最初に食べる習慣は、TMIG-ICと有意な関連がなかった。
続いて、調整変数として栄養不良(MNA-SFスコア)と認知機能(自記式質問票のスコア)を追加した解析を行ったところ、野菜を最初に食べる習慣は、係数0.77(95%信頼区間0.23~1.31)とやや関連性が弱まったが、引き続き正の有意な関連因子だった。なお、性別に解析した場合、男性では全体解析と同様に有意な関連が認められた一方、女性では関連が非有意となった。
これらの結果から、野菜を最初に食べるという習慣は高次生活機能を保護するように働くと考えられ、その関連の一部は栄養状態や認知機能によって媒介されることが示唆された。著者らは、本研究が専門外来受診者を対象とした横断研究であり、教育歴や摂取エネルギー量などが考慮されていないことなどの限界点を挙げた上で、「野菜を最初に食べるという簡単な食習慣が、糖尿病患者の高次生活機能の維持につながる可能性がある」と総括している。
なお、性別の解析で女性では関連が示されなかったことについて、「女性は男性に比べて食習慣が良好であるためではないか」との考察が加えられている。実際、本研究における野菜優先の割合は、男性が31.9%に対して女性は48.8%と、ほぼ半数に及んでいた。
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11月 27 2024 前立腺肥大症治療薬のタダラフィルが2型糖尿病リスクを抑制
前立腺肥大症(BPH)の治療に用いられているタダラフィルが、2型糖尿病(T2DM)発症リスクを低下させる可能性が報告された。京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の髙山厚氏らによる研究の結果であり、論文が「Journal of Internal Medicine」に9月17日掲載された。
タダラフィルはホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)と呼ばれるタイプの薬で、血管内皮細胞からの一酸化窒素の放出を増やして血管を拡張する作用があり、BPHのほかに勃起障害(ED)や肺高血圧症の治療に用いられている。近年、T2DMの発症に血管内皮機能の低下が関与していることが明らかになり、理論的にはPDE5iがT2DMリスクを抑制する可能性が想定される。ただし、そのエビデンスはまだ少ない。これを背景として髙山氏らは、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)し、観察研究でありながら介入効果を予測し得る、ターゲットトライアルエミュレーションによる検証を行った。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。研究には、日本の人口の約13%をカバーする医療費請求データベースの情報を用いた。2014年5月~2023年1月にBPHと診断され、タダラフィル(5mg/日)の処方、またはα遮断薬の処方の記録がある40歳以上の男性患者から、糖尿病の既往(診断、血糖降下薬の処方、HbA1c6.5%以上の検査値で把握)、タダラフィルとα遮断薬の併用、薬剤使用禁忌症例などを除外。タダラフィル群5,180人、α遮断薬群2万46人を特定し、T2DMの発症、処方中止・変更、死亡、保険脱退、または最長5年経過のいずれかに該当するまで追跡した。なお、α遮断薬はBPH治療薬として広く使われている薬で、T2DMリスクには影響を及ぼさないとされている。
ベースライン時点において、タダラフィル群の方がわずかに若年でHbA1cが低かったものの有意差はなく、その他の臨床指標もよく一致していた。追跡期間は、タダラフィル群が中央値27.7カ月、α遮断薬群は同31.3カ月だった。T2DMの発症率は、タダラフィル群では1,000人年当たり5.4(95%信頼区間4.0~7.2)、α遮断薬群は同8.8(7.8~9.8)と計算され、タダラフィルの処方はT2DM発症リスクの低下と関連していた(リスク比〔RR〕0.47〔0.39~0.62〕、5年間の累積発症率差-0.031〔-0.040~-0.019〕)。
前糖尿病(HbA1c5.7%以上)に該当するか否かで二分した上での解析(前糖尿病ではRR0.49〔0.40~0.69〕、HbA1c5.7%未満ではRR0.34〔0.20~0.63〕)や、肥満(BMI25以上)の有無で二分した解析(肥満ではRR0.61〔0.43~0.80〕、非肥満ではRR0.38〔0.24~0.62〕)でも、全てのサブグループで全体解析同様の結果が示された。また、感度分析として、T2DM発症の定義などを変更した15パターンでの解析を行ったが、結果は一貫していた。
著者らは、保険非適用のPDE5i処方(ED治療目的)が把握されていないことや残余交絡が存在する可能性などを研究の限界点として挙げた上で、「BPH男性の治療におけるタダラフィルの処方はα遮断薬の処方と比較して、T2DM発症リスクの低下と関連しているようだ。この関連のメカニズムを明らかにし、同薬のメリットを得られる集団の特徴をより詳細かつ明確にする必要がある」と述べている。
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10月 29 2024 2型糖尿病患者のフレイルリスクに地域差――国内多機関共同研究
高齢2型糖尿病患者のフレイルリスクが、居住地域によって異なるという実態が報告された。農村部では都市部よりリスクが高く、また農村部居住患者は手段的日常生活活動(IADL)と社会的日常生活活動(SADL)の低下も認められるという。香川大学医学部看護学科慢性期成人看護学の西村亜希子氏、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の原島伸一氏らによる論文が、「BMC Geriatrics」に8月17日掲載された。
糖尿病は、ストレス耐性が低下した状態であるフレイルのリスク因子であり、両者が併存する場合、身体障害や死亡のリスクがより上昇する可能性があるため、早期介入が特に重要と考えられる。また、フレイルリスクを高める因子として居住地域も該当し、都市部よりも農村部でリスクが高いことが示唆されている。ただし、糖尿病とフレイルの併発に居住地域の影響があるのかという点は未だ検討されていない。西村氏らは、糖尿病患者のフレイル予防に関する多機関共同研究(f-PPOD研究)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。f-PPOD研究は国内の糖尿病専門外来のある医療機関8施設が参加。分布の偏りを避けるために各施設の外来患者数の10%を上限として、2017年3月~2020年2月に患者登録が行われた。適格基準は、基本的な日常生活活動(ADL)に支障がなく、重度の糖尿病合併症や併存疾患、身体障害、精神疾患のない、60~80歳の2型糖尿病患者。フレイルの判定には介護予防・日常生活支援総合事業で使用されている「基本チェックリスト」を用い、スコア8点以上をフレイル、4~7点をプレフレイルとした。
解析対象は417人で、このうち64.5%が都市部(人口100万人以上の都市とそれに隣接する通勤圏内)、35.5%が農村部(前記以外の地域)に居住していた。両群を比較すると、都市部の患者の方が、高齢(70.6±5.5対69.0±5.2歳、P=0.003)でHbA1c高値(7.33±1.00対7.04±0.91%、P=0.003)であり、罹病期間が長かった(16.6±10.9対12.0±10.3年、P<0.001)。握力は農村部の患者の方が高かった(26.8±8.0対29.6±8.2kg、P=0.001)。性別の分布には有意差がなかった(女性の割合が48.0対43.2%、P=0.356)。
フレイルの該当者率は、都市部では18.6%、農村部では23.0%、プレフレイルは同順に37.5%、47.3%であり、農村部で高かった(P=0.018)。居住地域、年齢、性別、HbA1c、糖尿病罹病期間を説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、農村部への居住(オッズ比〔OR〕2.554〔95%信頼区間1.384~4.711〕)とHbA1c値(OR1.453〔同1.095~1.926〕)の二つが、フレイルに独立して関連のある因子として抽出された。また、プレフレイルに独立した関連のある因子は、農村部への居住(OR2.102〔同1.296~3.408〕)のみが抽出された。
次に、基本チェックリストのサブスケールのスコアと、前記の解析で独立変数とした各因子との関連を多重線形回帰分析で検討。すると、農村部に居住している糖尿病患者は、IADL(B=0.279、P<0.001)およびSADL(B=0.265、P=0.006)のスコアが有意に低いという関連が示された。なお、その他のサブスケール(運動器機能、栄養状態、口腔機能、認知機能、抑うつ)については、居住地域との有意な関連は見られなかった。
基本チェックリストの各質問の回答を比較すると、「バスや電車で1人で外出しているか」、「友人の家を訪ねているか」、「家族や友人の相談にのっているか」、「15分くらい続けて歩いているか」という4項目に有意差があり、いずれも都市部居住者の方が「はい」の割合が高かった。
以上を基に著者らは、「農村部の高齢2型糖尿病患者は、都市部の患者に比べてフレイルリスクが高く、IADLやSADLの低下が認められる」と結論。その理由として、「公共交通機関を利用しての外出が少なく歩行時間が短いこと、他者との交流が少なく孤立しやすいことなどの影響が想定される」とし、また既報研究を基に「ヘルスリテラシーの差異も関与しているのではないか」と考察を述べた上で、「フレイル予防のためには個人のリスク評価とともに、社会参加とコミュニケーションを促すような介入戦略が必要と考えられる」と総括している。
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10月 22 2024 DPP-4iとBG薬で糖尿病性合併症発生率に差はない――4年間の後方視的解析
血糖管理のための第一選択薬としてDPP-4阻害薬(DPP-4i)を処方した場合とビグアナイド(BG)薬を処方した場合とで、合併症発生率に差はないとする研究結果が報告された。静岡社会健康医学大学院大学(現在の所属は名古屋市立大学大学院医学研究科)の中谷英仁氏、アライドメディカル株式会社の大野浩充氏らが行った研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に8月9日掲載された。
欧米では糖尿病の第一選択薬としてBG薬(メトホルミン)が広く使われているのに対して、国内ではまずDPP-4iが処方されることが多い。しかし、その両者で合併症の発生率に差があるかは明らかでなく、費用対効果の比較もほとんど行われていない。これを背景として中谷氏らは、静岡県の国民健康保険および後期高齢者医療制度のデータを用いた後方視的解析を行った。
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主要評価項目は脳・心血管イベントと死亡で構成される複合エンドポイントとして、イベント発生まで追跡した。副次的に、糖尿病に特異的な合併症の発症、および1日当たりの糖尿病治療薬剤コストを比較した。追跡開始半年以内に評価対象イベントが発生した場合はイベントとして取り扱わなかった。
マッチング後のBG薬群(514人)とDPP-4i群(2,570人)の特徴を比較すると、平均年齢(68.39対68.67歳)、男性の割合(46.5対46.9%)、BMI(24.72対24.67)、HbA1c(7.24対7.22%)、収縮期血圧(133.01対133.68mmHg)、LDL-C(127.08対128.26mg/dL)、eGFR(72.40対72.32mL/分/1.73m2)などはよく一致しており、その他の臨床検査値や併存疾患有病率も有意差がなかった。また、BG薬、DPP-4i以外に追加された血糖降下薬の処方率、通院頻度も同等だった。
中央値4.0年、最大8.5年の追跡で、主要複合エンドポイントはBG薬群の9.5%、DPP-4i群の10.4%に発生し、発生率に有意差はなかった(ハザード比1.06〔95%信頼区間0.79~1.44〕、P=0.544)。また、心血管イベント、脳血管イベント、死亡の発生率を個別に比較しても、いずれも有意差はなかった。副次評価項目である糖尿病に特異的な合併症の発生率も有意差はなく(P=0.290)、糖尿病性の網膜症、腎症、神経障害を個別に比較しても、いずれも有意差はなかった。さらに、年齢、性別、BMI、HbA1c、高血圧・脂質異常症・肝疾患の有無で層別化した解析でも、イベント発生率が有意に異なるサブグループは特定されなかった。
1日当たり糖尿病治療薬剤コストに関しては、BG薬は60.5±70.9円、DPP-4iは123.6±64.3円であり、平均差63.1円(95%信頼区間56.9~69.3)で前者の方が安価だった(P<0.001)。
著者らは、本研究が静岡県内のデータを用いているために、地域特性の異なる他県に外挿できない可能性があることなどを限界点として挙げた上で、「2型糖尿病患者に対して新たに薬物療法を開始する場合、BG薬による脳・心血管イベントや死亡および糖尿病に特異的な合併症の長期的な抑制効果はDPP-4iと同程度であり、糖尿病治療薬剤コストは有意に低いと考えられる」と総括している。
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7月 01 2024 2型糖尿病患者の消化器症状は不眠症と関連
糖尿病患者には、上部消化器症状(胸やけ、胃痛、胃もたれなど)や下部消化器症状(便秘、下痢など)がしばしば見られる。日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、これらの消化器症状が患者の不眠症と強く関連していることが判明した。これは京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の南田慈氏、岡田博史氏、福井道明氏らによる研究結果であり、「Journal of Diabetes Investigation」に3月5日掲載された。
消化器症状は、糖尿病患者におけるQOL低下の一因である。一方、夜間頻尿により睡眠が中断されることや、糖尿病神経障害による痛み、夜間の血糖値の急激な変化、抑うつなどを伴うことで、糖尿病患者には不眠症が生じ得ることも報告されている。しかし、糖尿病患者における消化器症状と不眠症の関係についてはこれまでにほとんど検討されていない。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、「KAMOGAWA-DMコホート研究」に参加している2型糖尿病患者を2014年1月~2022年1月に登録し、横断研究を行った。消化器症状の評価には、胸やけ、胃痛、胃もたれ、便秘、下痢の5つの症状を評価する「出雲スケール」を用いた(各症状とも3つの質問項目から0~15点で評価され、スコアが高いほど症状が悪い)。また、睡眠は「アテネ不眠症尺度」で評価し、合計スコア6点以上または睡眠薬を使用している場合を不眠症と定義した。
解析対象者は175人(男性100人、女性75人)、年齢中央値は66歳(四分位範囲57~73歳)で、そのうち68人が不眠症に該当した。不眠症の人はそうでない人と比べ、収縮期血圧および拡張期血圧が有意に高かった。
出雲スケールの結果を比較すると、総スコアの中央値(四分位範囲)は、不眠症の人の方がそうでない人よりも有意に高く、それぞれ14点(5.25~20.75点)と5点(2~10点)だった。症状ごとの結果も同様で、胸やけは2点(0~4点)と0点(0~1点)、胃痛は0点(0~4点)と0点(0~0点)、胃もたれは2点(0~4点)と0点(0~2点)、便秘は4点(2~6点)と2点(0~4点)、下痢は3点(1~5点)と1点(0~3点)であり、全て不眠症の人の方が有意に高かった。
次に、不眠症と関連する要因がロジスティック回帰分析により検討された。年齢、性別、BMI、収縮期血圧、HbA1c、糖尿病神経障害、インスリン療法、夜間頻尿の影響を調整した解析の結果、出雲スケール総スコアの1点上昇ごとのオッズ比(95%信頼区間)は1.10(1.06~1.16)であり、不眠症と有意に関連することが明らかとなった。同様に、症状ごとのスコアについても有意な関連が認められ、オッズ比は胸やけ1.32(1.13~1.55)、胃痛1.38(1.16~1.63)、胃もたれ1.33(1.13~1.56)、便秘1.21(1.08~1.36)、下痢1.29(1.12~1.47)だった。
以上の結果から著者らは、「消化器症状は2型糖尿病患者の不眠症と強く関連している」と結論。また、糖尿病患者の睡眠障害は血糖コントロールやQOLに影響を及ぼす可能性があることから、「消化器症状の管理に注意を払う必要がある」と指摘している。
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12月 25 2023 TG/HDL-C比は2型糖尿病発症の強力な予測因子――日本人12万人の縦断的研究
中性脂肪(TG)と善玉コレステロール(HDL-C)の比が、将来の2型糖尿病の発症リスクの予測に利用できることが、12万人以上の日本人を長期間追跡した結果、明らかになった。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の弓削大貴氏、岡田博史氏、福井道明氏、パナソニック健康管理センターの伊藤正人氏らの研究によるもので、詳細は「Cardiovascular Diabetology」に11月8日掲載された。2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値は、2.1だという。
TGをHDL-Cで除した値「TG/HDL-C比」は、インスリン抵抗性の簡便な指標であることが知られているほか、脂肪性肝疾患や動脈硬化性疾患、および2型糖尿病の発症リスクと相関することが報告されている。ただしそれらの報告の多くは横断的研究またはサンプルサイズが小さい研究であり、大規模な追跡研究からのエビデンスは存在せず、2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値も明らかになっていない。弓削氏、岡田氏らは、国内の企業グループの従業員を対象とするコホート研究(Panasonic cohort study)のデータを用いた縦断的解析によって、この点を検討した。
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2018年までの追跡〔期間中央値6.0年(四分位範囲3~10年)〕で、6,080人が新たに2型糖尿病を発症した。2型糖尿病発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、空腹時血糖値、喫煙習慣、運動習慣、収縮期血圧)を調整後に、脂質関連検査値と2型糖尿病発症リスクとの間に、以下の有意な関連が認められた。
まず、TGは10mg/dL上昇するごとのハザード比(HR)が1.008(95%信頼区間1.006~1.010)だった。同様の解析でHDL-CはHR0.88(同0.86~0.90)、LDL-CはHR1.02(1.02~1.03)であり、TG/HDL-C比は1上昇するごとにHR1.03(1.02~1.03)となった。
次に、向こう10年間での2型糖尿病発症を予測するための最適なカットオフ値と予測能(AUC)を検討。すると、予測能が低い指標から順に、LDL-Cがカットオフ値124mg/dLでAUCは0.609、HDL-Cは54mg/dLでAUC0.638、TGは106mg/dLで0.672であり、最も高いAUCはTG/HDL-C比の0.679であって、そのカットオフ値は2.1と計算された。TG/HDL-C比の予測能は、他の3指標すべてに対して有意に優れていた(いずれもP<0.001)。
続いて、性別およびBMI別のサブグループ解析を施行。すると、男性では全体解析と同様に、TG/HDL-C比が1上昇することによる2型糖尿病発症のHRは1.03(1.02~1.03)だったが、女性は1.05(1.02~1.08)であり、より強い関連が示された。ただし交互作用は非有意だった。
BMI25kg/m2未満/以上で層別化した解析からは、25未満の群でTG/HDL-C比が1上昇するごとのHRは1.04(1.03~1.05)である一方、25以上の群ではHR1.02(1.02~1.03)であって、有意な交互作用が観察された(交互作用P=0.0001)。最適なカットオフ値は、BMI25未満では1.7、25以上では2.5だった。
著者らは本研究の特徴として、日本人を対象とする縦断的研究でありサンプルサイズも大きいことを挙げる一方、女性が少ないこと、比較的若年者が多いことなどの限界点があるとしている。その上で「TG/HDL-C比は、LDL-C、HDL-C、TGよりも10年以内の2型糖尿病発症の強力な予測因子であることが示された。この結果は、2型糖尿病発症抑制のための今後の医療政策に有用な知見となり得る」と述べている。
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11月 20 2023 非インスリン療法患者のisCGMによるHbA1c改善には治療満足度が関与
インスリン療法を行っていない2型糖尿病患者が間歇スキャン式持続血糖測定(isCGM)を使用すると、早ければ使用開始の翌週から血糖管理が有意に改善すること、HbA1c改善幅は治療継続に関する満足度の高さと相関することなどが明らかになった。名古屋大学大学院医学系研究科内分泌・糖尿病学の尾上剛史氏、有馬寛氏らによる論文が、「Primary Care Diabetes」に10月9日掲載された。
現在、保険診療でisCGMを使用できるのはインスリン療法を行っている患者のみだが、有馬氏らはインスリン療法を行っていない2型糖尿病患者でもisCGM使用によって血糖コントロールが改善することを、多施設共同無作為化比較試験の結果として既に報告している。今回の論文は、そのデータを詳細に事後解析した結果の報告。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。この研究では、インスリン療法を行っていない20~70歳未満でHbA1c7.5~8.5%未満の2型糖尿病患者100人を登録し無作為に2群に分け、1群をisCGM群、他の1群を血糖自己測定(SMBG)群とした。過去にisCGMまたはSMBGを行ったことのある患者や腎機能障害のある患者などは除外されている。12週間の介入でisCGM群はSMBG群に比較しHbA1cが有意に大きく低下し、介入終了から12週後にも有意な改善効果が持続していた。今回の検討では、isCGM群(48人)のみを解析対象として、血糖管理改善の推移や関連因子を解析した。
まず血糖関連指標の推移を見るとisCGM開始後の翌週には、平均血糖値が有意に低下、血糖値が70~180mg/dL以内にあった時間が有意に増加、180mg/dLを超えていた時間が有意に減少していた。またGMI(glucose management indicator)やMAGE(mean amplitude of glycemic excursions)といったCGMを用いた血糖管理の評価指標も、それぞれ開始翌週、2週後に有意に改善していた。また、これらの有意な改善は、介入期間を通じて維持されていた。
次にisCGMの使用状況に着目すると、isCGM装着時間が占める割合は第1週が中央値97.1%(四分位範囲87.1~99.1)と最も長く、最終週は同86.1%(31.8~96.9)と、介入期間中に徐々に減少していた。同様に、血糖値や血糖トレンドの確認(スキャン)回数は、第1週が9.2回/日(5.7~12.7)と最も多く、最終の12週目は6.4回/日(3.0~10.0)と徐々に減少していた。isCGMの装着時間が長いほど、12週間の介入期間中のHbA1c低下幅が大きいという、有意な相関も認められた(r=-0.39、P=0.009)。ただし、介入終了から12週後まで(計24週間)のHbA1cの低下幅との関連は非有意だった(r=−0.13、P=0.395)。また、スキャン回数は、12週後および24週後、いずれのHbA1c低下幅との関連も非有意だった。
続いて、年齢や性別、罹病期間、BMI、介入時点のHbA1c、処方されている経口血糖降下薬(OHA)の数、および糖尿病治療満足度質問表(Diabetes Treatment Satisfaction Questionnaire;DTSQ)の回答と、HbA1c低下幅との関連を検討した。
その結果、介入終了時点(12週後)までのHbA1c低下幅は、介入時のHbA1cと逆相関し〔HbA1cが高い患者ほどより大きく改善(r=-0.290、P=0.048)〕、DTSQの8番目の項目(現在の治療を継続することへの満足度)のスコアと正相関していた(r=0.390、P=0.009)。一方、介入終了から12週後(介入開始から24週後)までのHbA1c低下幅は、DTSQの8番目の項目のスコア(r=0.373、P=0.012)、および、5番目の項目(治療法の融通性に関する評価)のスコア(r=0.364、P=0.014)と正相関していた。年齢や性別、罹病期間、BMI、OHAの数、DTSQの他の項目(自分自身の糖尿病の理解度に関する満足度など)は、HbA1c低下幅と有意な関連がなかった。
以上より著者らは、「非インスリン療法の2型糖尿病患者がisCGMを使用することにより、血糖コントロールが迅速かつ持続的に改善し、その改善の程度はisCGMの使用を含む治療の継続に対する満足度の高さと関連していた」と総括している。
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