• 便秘で認知機能低下が速まる可能性――AD、MCI患者での検討

     便秘のあるアルツハイマー病(AD)や軽度認知機能障害(MCI)の患者は、認知機能低下速度が速い可能性を示すデータが報告された。評価指標により影響の程度は異なるものの、最大で2.74倍の低下速度の差が認められたという。東北大学加齢医学研究所の中瀬泰然氏らによる後方視的研究の結果であり、詳細は「CNS Neuroscience & Therapeutics」に8月8日掲載された。

     近年、腸の機能と脳の機能が互いに影響を及ぼし合う、「腸脳軸」または「腸脳相関」と呼ばれる関連が注目されており、例えば、腸内細菌叢の組成の変化が炎症反応などを介して中枢神経にダメージを与えることなどが報告されている。一方、便秘や認知症はともに高齢者に多く、両者が相互に関連して悪化・進行する可能性も考えられるが、その実態は不明な点が多い。

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     中瀬氏らの研究は、2015~2020年に東北大学病院加齢・老年病科の初診患者のうち、ADまたはMCIと診断され、脳MRI検査や認知機能の評価が2021年までに2回以上実施されていて経時的な変化を追跡可能であり、かつ便秘の有無が把握されている患者84人を対象に行われた。便秘については、ガイドラインの診断基準に則して20人が便秘あり、64人はなしと診断された。認知機能の変化は、認知症のスクリーニングに用いられているMMSEという指標と、ADの経過の把握に用いられるADAS-Cogという計2種類の指標で評価した。また脳MRI検査では、記憶に関わる海馬の体積と、虚血によって生じる深部白質病変などを評価した。

     解析対象者の主な特徴は、年齢77.4±6.5歳、女性57.1%、AD45.2%、要介護者23.8%、MMSE24.7±3.7、ADAS-Cog11.8±5.2であり、19.0%に副作用で便秘を起こしやすい抗コリン薬が処方されていた。便秘あり群となし群を比較すると、便秘あり群では心疾患が多い、脂質異常症が少ない、ホモシステインが高いという有意差が見られたが、その他に評価した、年齢、女性やAD・要介護者の割合、MMSE、ADAS-Cog、教育歴、海馬体積、深部白質病変などの群間差は非有意だった。

     平均17.4±10.7カ月の追跡期間中のMMSEの変化は、便秘の有無にかかわらず追跡期間との有意な相関が見られなかった。しかしADAS-Cogについては便秘あり群、なし群ともに、追跡期間の長い患者ほどより大きく低下しているという有意な相関が認められた。そしてADAS-Cog低下速度は、便秘なし群に比べてあり群の方が2.74倍速いと計算された。

     一方、脳MRI検査が2回施行されていた患者は67人(解析対象の79.8%)であり、便秘あり群17人、なし群50人だった。追跡期間中に海馬の体積は両群ともに有意に減少しており、減少速度に有意差はなかった。しかし深部白質病変については、その拡大速度が便秘あり群で1.65倍速いと計算された。

     次に、ADAS-Cogおよび深部白質病変の1年あたりの変化と、便秘、脂質異常症、心疾患、ホモシステイン、糖尿病との関連を検討。その結果、便秘のみが有意に相関することがわかった〔スピアマン順位相関係数がADAS-Cogは0.2387(P=0.0288)、深部白質病変は0.2252(P=0.0395)〕。ただし、混合効果モデルでは、便秘も含めて全てが非有意だった。

     著者らは、本研究について、単一施設での後方視的研究であり、認知機能に影響を及ぼし得る身体活動量やApoE4の影響を考慮していないといった限界点を挙げた上で、「ADおよびMCI患者の便秘と、深部白質病変拡大に伴う認知機能低下速度との間に、有意な相関が認められた」と結論付けている。この相関の背景については、AD患者では腸内細菌叢の組成が変化すること、またAD患者は身体活動量や水分摂取量の低下によって便秘になりやすく、便秘も腸内細菌叢の組成を変化させ、腸内細菌叢の組成の変化は炎症反応を惹起し、中枢神経に影響が及ぶ可能性が考えられるとしている。さらに、腸管粘膜の障害がホモシステイン高値、酸化ストレス亢進、血管内皮機能低下につながり、神経変性を加速させるという経路も想定されるとの考察を加えている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2022年10月24日
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  • 救急患者の低血糖の原因は副腎不全が意外に多い

     救急部門に収容された患者の低血糖の原因として、血糖降下薬、飲酒に続き、副腎不全が3番目に多いというデータが報告された。新小文字病院内分泌・糖尿病内科の河原哲也氏らの研究結果であり、詳細は「Journal of the Endocrine Society」に8月4日掲載された。同氏は、「副腎不全による低血糖はわれわれが考えているよりもはるかに多い可能性がある。原因不明の低血糖症例では副腎機能を評価すべきと考えられる」と述べている。

     低血糖の大半は原因を特定可能なものの、救急患者の低血糖の約1割は原因不明との報告も見られる。一方、低血糖の既知の原因の一つとして副腎不全が挙げられ、適切に治療されない場合、副腎クリーゼなどの重篤な状態につながる可能性がある。ただし、救急患者の低血糖原因としての副腎不全の実態は明らかにされていない。河原氏らは、同院の救急部門で低血糖が認められた患者を対象として、この点の詳細な検討を行った。

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     2016年4月~2021年3月に同院救急部門に収容された患者のうち、低血糖症状の有無にかかわらず、血糖値70mg/dL未満であることが確認された18歳以上の患者528人を解析対象とした。妊婦や迅速ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)負荷試験施行の同意が得られなかった患者は除外されている。年齢中央値は62歳(範囲19~92)であり、52.1%が男性で、血糖値は平均48.5mg/dL(95%信頼区間31.5~54.7mg/dL)だった。96.0%にあたる507人は、発汗、動悸、振戦、空腹感、めまい、せん妄などの低血糖症状が出現していた。

     解析対象528人のうち389人(73.7%)は、血糖降下薬が処方されていた。そのほかの低血糖を来し得る原因として、35人(6.6%)に飲酒、19人(3.6%)に重症感染症または敗血症、18人(3.4%)に低栄養、15人(2.8%)に悪性腫瘍、13人(2.5%)に肝機能障害などが認められた。また、インスリン自己免疫症候群が4人(0.8%)、インスリノーマが3人(0.6%)、非糖尿病の血液透析症例が2人(0.4%)、非膵島細胞腫瘍が1人(0.2%)含まれていた。

     迅速ACTH負荷試験は、血糖降下薬が処方されていた糖尿病患者を除く139人に対して施行した。その結果、32人(解析対象全体の6.1%)が血清コルチゾールレベル18μg/dL未満であり、副腎不全と診断された。前記の低血糖を来し得る原因別に見た、副腎不全患者の割合は、飲酒者では35人中2人(5.7%)、重症感染症または敗血症では19人中7人(36.8%)、低栄養では18人中1人(5.6%)、悪性腫瘍では15人中4人(26.7%)だった。

     また、副腎不全患者は、副腎機能正常患者に比べて血清ナトリウム値が低く(132対139mEq/L、P<0.01)、好酸球比率が高く(14対8%、P<0.01)、収縮期血圧が低かった(120対128mmHg、P<0.05)。血糖値は有意差がなかった。インスリン負荷試験、CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)負荷試験、持続的ACTH負荷試験などにより、副腎不全の原因を精査した結果、原発性(アジソン病)が32人中3人、下垂体性が27人、視床下部性が2人だった。

     以上より著者らは、「われわれの研究では、救急部門に収容された時点で低血糖を来している患者のその原因として副腎不全が3番目に多く、予想よりもはるかに高頻度に認められた」と結論付けている。また、迅速ACTH負荷試験は比較的簡便に施行でき、安全性も高く、かつ低コストであるとして、「原因不明の低血糖、特に低ナトリウム血症や低血圧、好酸球増多を伴う場合は、積極的に迅速ACTH負荷試験を行い副腎機能を確認すべきではないか」と提案している。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2022年10月24日
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  • 小児期の継続的な受動喫煙は男児の肥満リスク

     小児期に継続的に受動喫煙にさらされることが、男児の肥満のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。ただし、保護者が禁煙するなどにより状況が改善すると、肥満リスクは低下する可能性があるという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Pediatric Research」に8月13日掲載された。

     世界的に小児肥満が増加しており、2016年の有病率は18%と報告されている。小児肥満は成人後の肥満につながることが多く、代謝性疾患や心血管疾患と、それらによる死亡を増加させることから、子どものうちに肥満を解消することが重要。

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     一方、受動喫煙が小児肥満のリスク因子の一つである可能性が指摘されており、受動喫煙は保護者への介入で修正可能であることから、小児肥満対策の一手として期待される。ただし、受動喫煙が改善された場合に子どもの肥満リスクが低下するか否かは、これまで明らかにされていない。藤原氏らは、東京都足立区で行われた「子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD Study)」のデータを用いた縦断的解析によって、この点を検討した。

     A-CHILD Studyは、足立区内の全ての公立小学校69校で実施され、2018年に小学4年生、2020年に小学6年生の児童とその保護者を対象とするアンケート調査が行われた。本研究では、その両年の調査に回答し、かつ6年生の時点の学校健診における身長・体重からBMIのデータのある3,605人の児童を解析対象とした。なお、体重については、BMIのWHO基準におけるZスコアが1未満を低体重または普通体重群、Zスコア1~2未満を過体重群、同2以上を肥満群と定義した。

     解析対象児童の74.1%は、4年生時、6年生時ともに受動喫煙にさらされていなかった。一方、15.2%は両方の時点で受動喫煙にさらされていた。5.8%は途中で受動喫煙が終了し、残りの4.8%は反対に途中で受動喫煙が始まっていた。継続的に受動喫煙にさらされていた子どもの家庭は世帯収入が低く、母親が若年で教育歴が短い傾向があった。

     6年生時のBMIに影響を及ぼす可能性のある因子(4年生時のBMI Zスコア、性別、世帯収入、運動の頻度、テレビの視聴、携帯電話の使用、加糖飲料の摂取頻度、母親の年齢・教育歴、肥満の家族歴)を調整後、順序ロジスティック回帰分析により、受動喫煙の状況と肥満発症との関連を検討。その結果、継続的に受動喫煙にさらされていた群は、受動喫煙歴のない群に比較し、6年生時により高いBMIカテゴリーに該当する割合が有意に高かった〔オッズ比(OR)1.51(95%信頼区間1.16~1.96)〕。

     追跡期間の途中で受動喫煙が終了した群はOR1.11(同0.75~1.66)、受動喫煙が始まった群はOR0.90(0.57~1.45)であり、どちらも肥満の発症と有意な関連がなかった。

     次に、性別で層別化して解析すると、男児では全数解析と同様に、継続的に受動喫煙にさらされていた群でのみ、肥満の発症が有意に多いという関連が見られた〔OR1.74(1.25~2.44)〕。それに対して女児の肥満の発症は、受動喫煙歴のない群と他の全ての群で有意差がなかった。

     以上の結果から著者らは、「受動喫煙は、男児の肥満のリスク因子の一つであると考えられる。ただし、受動喫煙の状況が改善されると肥満リスクは低下するようであり、小児肥満の防止に役立つのではないか」と結論付けている。また、新型コロナ感染症パンデミックで保護者の在宅勤務や外出頻度の減少により、受動喫煙の機会が増えている可能性があることから、「この関連のより詳細な研究と、保護者の禁煙がより一層重要になっている」とも述べている。なお、受動喫煙による肥満リスクへの影響が性別で異なる理由に関しては、既報文献を基に、脂肪燃焼に関係しているβ-3アドレナリン受容体のTrp64Argバリアントの肥満への影響に性差が存在する可能性などを挙げている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2022年10月17日
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  • 摂食速度の速い高齢糖尿病患者は筋肉量が減りにくい

     一般に「早食いは体に良くない」とされている。しかし、高齢2型糖尿病患者のサルコペニア予防という視点では、そうとは限らない可能性を示唆するデータが報告された。自己申告で「食べるのが速い」と回答した人は、筋肉量の低下速度が緩徐だという。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の小林玄樹氏、松下記念病院糖尿病・内分泌科の橋本善隆氏、京都府立医科大学の福井道明氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Nutrition」に6月23日掲載された。

     糖尿病患者に対しては、食欲にまかせた大食いを防いだり、食後高血糖の抑制のために、ゆっくり食べるように勧められることが多い。一方で近年、人口の高齢化に伴い、サルコペニア(筋肉量や筋力の低下)を併発している糖尿病患者が増加し、高血糖による合併症ではなく、サルコペニアが予後を左右するようなケースの増加が指摘されている。サルコペニアの予防や改善には、タンパク質を中心とする栄養素の十分な摂取と、筋力トレーニングが必要とされる。加えて同研究グループでは、摂食速度がサルコペニアリスクと関連があることを、横断研究の結果として既に報告している。ただし、2型糖尿病患者の摂食速度が筋肉量の変化に影響を及ぼすか否かは不明であった。そこで小林氏らは、京都府立医科大学などが外来糖尿病患者を対象に行っている前向きコホート研究「KAMOGAWA-DMコホート」のデータを用いた縦断的解析を行った。

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     同コホートの参加者のうち、生体インピーダンス法により筋肉量が複数回測定されている患者284人を解析対象とした。年齢により推奨される摂取エネルギー量が異なるため、解析は65歳未満(91人)と65歳以上の高齢者(193人)に分けて行った。なお、摂取エネルギー量が極端な患者(600kcal/日未満または4,000kcal/日超)、体組成に影響を及ぼし得るステロイドが長期処方されている患者、および追跡期間が6カ月未満や解析に必要なデータの欠落している患者は除外されている。

     参加者の主な特徴は、65歳未満の群は平均年齢54.0±8.7歳、男性48.4%、BMI26.6±5.3kg/m2、骨格筋量指数(SMI)7.3±1.0kg/m2、HbA1c7.8±1.7%、糖尿病罹病期間9.2±6.8年。高齢者群は平均年齢72.2±5.2歳、男性56.5%、BMI23.8±3.9kg/m2、SMI6.9±1.0kg/m2、HbA1c7.2±1.0%、糖尿病罹病期間15.9±10.0年であった。

     「食べる速さは?」との質問に、「かなり速い」または「やや速い」と答えた人を摂食速度が「速い」群と定義し、「普通」と答えた人を摂食速度が「普通」の群、「やや遅い」または「かなり遅い」と答えた人を摂食速度が「遅い」群と定義した。65歳未満では摂食速度が「速い」群50.5%、「普通」群42.9%、「遅い」群6.6%であり、65歳以上では同順に40.4%、38.3%、21.3%であった。

     65歳未満群は1.6±0.6年、高齢者群は1.7±0.7年後に追跡調査を実施。年齢、性別、喫煙・運動・飲酒習慣、インスリン・SGLT2阻害薬の処方、摂取エネルギー量およびタンパク質摂取量で調整後の1年あたりのSMI低下率は、65歳未満群では摂食速度が「速い」群は0.67%、「普通」群は0.58%、「遅い」群は-1.84%であり、群間に有意差はなかった。一方、高齢者群では摂食速度が「速い」群はSMI低下率が-1.08%とSMIの上昇を認めたのに対して、「普通」群は0.85%、「遅い」群は0.93%とSMIは低下しており、摂食速度「速い」群との間に有意差が存在した。

     次に、既報研究に基づき、年0.5%以上の筋量低下を「SMI低下」と定義し、「SMI低下」の発症について検討した。解析に際しては前記の交絡因子に加え、BMI、HbA1cを独立変数として設定した。その結果、65歳未満群では摂食速度は「SMI低下」と有意な関連がなかった。一方、高齢者群では、摂食速度「遅い」群と比較して「速い」群では、「SMI低下」のオッズ比(OR)が0.42(95%信頼区間0.18~0.98)と有意に低かった。摂食速度「普通」群はOR0.82(同0.36~2.03)と有意差を認めなかった。

     65歳未満群では摂取エネルギー量および摂取タンパク質量が多いこと、HbA1c高値、および飲酒習慣が、SMI低下に対する有意な保護因子として抽出された。高齢者群では摂食速度以外の関連因子は特定されなかった。

     以上より著者らは、「高齢2型糖尿病患者では、遅い摂食速度が筋肉量の減少と関連していた。サルコペニア対策の観点からは、摂食速度にも細心の注意を払う必要があるのではないか」と述べている。なお、早食いが筋肉量の維持に有利に働く機序としては、ゆっくり食べることでGLP-1やペプチドYYなどの食欲を抑制するように働くホルモンが分泌され摂取量が減ることや、食事誘発性熱産生が亢進することなどの影響が考えられるという。さらに、筋肉量が減少しているために嚥下機能が低下していて摂食速度が遅くなるという、因果の逆転の影響も想定されるとしている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2022年10月17日
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  • 日本人では内臓脂肪が多いほどインフルエンザ罹患リスクが高い

     日本人では内臓脂肪が多いほどインフルエンザに罹患しやすいことを示唆するデータが報告された。木下佳大氏〔弘前大学大学院医学系研究科社会医学講座、花王(株)〕、大里直樹氏(花王)、井原一成氏(弘前大学大学院医学系研究科社会医学講座)らの研究の結果であり、「PLOS ONE」に7月26日、論文が掲載された。

     肥満は免疫反応を低下させて感染症リスクを高めると考えられており、BMIとインフルエンザ罹患率との有意な関連も報告されている。ただしBMIの値には脂肪量だけでなく筋肉量も反映されており、さらに種々の疾患のリスクとの関連は皮下脂肪よりも内臓脂肪の影響が大きいことが知られている。よって、インフルエンザに関してもBMIより、内臓脂肪の方がリスクとの関連が強い可能性が考えられるが、それを検討した研究は報告されていない。また、肥満とインフルエンザの関連を示した研究も主として欧米で実施されたものであり、アジア人での知見は少ない。そこで木下氏らは、弘前大学が行っている住民対象疫学研究「岩木健康増進プロジェクト・プロジェクト健診」のデータを用いてこの点を検討した。

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     2019年5月25日~6月3日に、1,065人が同プロジェクトの一環として実施された住民健診に参加。データ欠落者などを除外し1,040人(平均年齢52.5±15.1歳、女性59.3%)のデータを横断的に解析した。インフルエンザの罹患状況は、過去1年以内の罹患の有無を自記式アンケートにより把握した。内臓脂肪面積は、花王が開発した内臓脂肪計(腹部生体インピーダンス法)により測定した。

     過去1年間でインフルエンザに罹患していたのは119人(11.4%)だった。インフルエンザに罹患していた群は、対照群に比べて若年で(P=0.024)、世帯規模が大きく(P=0.036)、高血圧の頻度が低かった(P=0.042)。性別(女性の割合)や喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、糖尿病・脂質異常症の有無、およびBMIは、群間に有意差がなかった。

     次に、内臓脂肪面積(VFA)に基づき全体を4群に分け、インフルエンザ罹患リスクに影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、世帯人員、教育歴、高血圧・糖尿病・脂質異常症の有無、健康状態の自己評価スコア)を調整の上、罹患状況を比較検討した。その結果、VFAが大きいほどインフルエンザにかかりやすいことが分かった。具体的には、VFA100cm2未満の群を基準とすると、VFA100~150cm2未満ではオッズ比(OR)1.62(95%信頼区間0.84~3.12)、150~200cm2未満ではOR1.97(同0.71~5.45)、200cm2以上ではOR5.03(1.07~23.6)であり、傾向性P値が0.049と有意だった。

     続いて、BMIに基づき全体を4群に分け、同様の交絡因子を調整後に検討したところ、インフルエンザ罹患との有意な関連は認められなかった。具体的には、BMI25未満の群を基準として、BMI25~30未満ではOR0.84(0.45~1.56)、30~35未満ではOR0.54(0.13~2.32)、35以上ではOR0.44(0.04~4.62)であり、傾向性P値が0.356と非有意だった。

     2020年の健診データを用いて行った解析からも、上記と同様の関係が認められた。

     著者らは本研究を、内臓脂肪面積とインフルエンザ罹患との関連を検討した初の研究と位置付け、論文の結論を「日本人成人では内臓脂肪蓄積がインフルエンザ罹患リスクと関連のあることが示唆される」とまとめている。なお、欧米での先行研究ではBMI高値がインフルエンザリスクであることが示されているが、本研究ではBMIとの関連が非有意だった。この違いの理由について著者らは、「アジア人はBMIがそれほど高くなくても内臓脂肪蓄積に対する感受性が高いことが一因ではないか」との考察を述べている。

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    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2022年10月11日
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  • 生活保護を受けている高齢者は自殺リスクが高い可能性

     近年、国内の自殺者数は一時期よりは減少したものの、高齢者では高止まりしている。そしてさらに、生活保護を受給している高齢者の自殺リスクは、非受給者よりも有意に高いことを示すデータが報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の木野志保氏(研究時の所属は京都大学大学院医学研究科社会疫学分野)らが、日本人高齢者を対象に行った調査の結果であり、詳細は「Journal of Epidemiology and Community Health」に7月20日掲載された。

     高齢者の自殺リスクを高める主な原因は、健康問題と貧困の二つと考えられている。生活保護を受けることは貧困を意味しているが、これまでのところ、生活保護を受給している高齢者の自殺リスクは十分に検討されていない。そこで木野氏らは、全国の自治体が参加して行われている「日本老年学的評価研究(JAGES)」の2019年調査の回答者のデータを用いて、横断的な解析を行った。

    うつ病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
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     データ欠落者などを除外後、65歳以上の高齢者1万6,135人を解析対象とした。このうち202人(1.25%)が生活保護を受給していた。生活保護受給者は非受給者に比べて、男性が多く、同居者数が少なく、教育歴が短く、世帯収入が低い傾向があった。また、老年期うつ病評価尺度(GDS15)で評価したうつレベルが高く、複数の疾患に罹患している人が多かった。

     「今までの人生の中で、本気で自殺をしたいと考えたことがありますか」との質問により自殺念慮を抱いた経験の有無を把握し、また、「今までに自殺しようとしたことがありますか」との質問によって自殺未遂経験の有無を把握した。その結果、自殺念慮を抱いた経験がある人は772人(4.8%)、自殺未遂の経験のある人は355人(2.2%)だった。なお、質問に「答えたくない」と回答した人は解析対象から除外されている〔自殺念慮については1,100人(6.30%)、自殺未遂については861人(4.93%)〕。

     生活保護受給状況別に比較すると、非受給者は自殺念慮の経験ありが4.6%であるのに対して、受給者は14.9%に上った。また自殺未遂の経験ありの割合も同順に2.1%、9.9%と、後者の方が高かった。自殺リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、世帯員数、教育歴、世帯収入、うつ症状(GDS15スコア5以上)、手段的日常生活動作(IADL)、併存疾患数、居住している自治体など〕を調整後も、生活保護受給者は自殺念慮や自殺企図の経験のある割合が有意に高かった。

     具体的には、生活保護受給者で自殺念慮を抱いた経験のある割合は非受給者より47%高く〔有病率比(PR)1.47(95%信頼区間1.02~2.13)〕、自殺未遂経験のある割合は91%高かった〔PR1.91(同1.20~3.04)〕。生活保護の受給以外では、うつ症状を有することが自殺念慮(PR4.00)と自殺未遂(PR3.26)の経験の双方と有意な関連があった。また、併存疾患が三つ以上あることは自殺念慮の経験と有意な関連があった(PR1.25)。

     一方、教育歴の長さは、自殺念慮や自殺未遂の経験が少ないことと有意な関連があり、同居している家族の多さは、自殺念慮の経験が少ないことと有意な関連があった。なお、性別は、自殺念慮、自殺未遂のいずれとも有意な関連がなかった。

     著者らは結論として、「国内で生活保護を受けて暮らしている高齢者は自殺リスクが高い可能性がある。今後はその要因を特定し、エビデンスに基づく政策立案に反映させていく必要がある」と総括している。なお、「この研究は生活保護の受給の有無と自殺念慮や自殺未遂経験とを同時に調査しているため、両者の因果関係は分からない点に注意を要する。生活保護を受けている状況が自殺のリスクとなる可能性もあるし、自殺のリスクが高まるような状況が生活を困窮させ、生活保護に至る可能性もある」と付け加えている。また、両者の関連のメカニズムについて、既報研究を基に以下のような考察を述べている。

     まず、生活保護受給者に対しては根強い偏見や差別が存在するため、差別的な扱いを受けてメンタルヘルスを悪化させやすい可能性が考えられるという。また身体的な疾患は自殺の大きなリスク要因であることが知られているが、生活保護受給者などの社会経済的なストレスを抱えている人は大量飲酒や喫煙など、健康に悪影響のある行動の頻度が高く、慢性疾患の有病率が高いことが報告されており、そのため自殺リスクも高い可能性も考えられるとしている。

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    HealthDay News 2022年10月11日
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  • 透析開始2週後の高BMIが死亡リスクの低さと関連――国内単施設での検討

     透析導入時点のBMI低値は死亡リスクの高さと関連する一方、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連するというデータが報告された。中東遠総合医療センター腎臓内科の稲垣浩司氏らの研究によるもので、結果の詳細は「PLOS ONE」に6月24日掲載された。

     肥満は代謝性疾患や心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)のリスク因子だが、一方で高齢者や一部の慢性疾患患者ではBMI高値の方が死亡リスクが低いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が見られることが知られている。日本人透析患者でも、BMIが低いほど死亡リスクが高いとする報告がある。ただし、BMI高値が死亡リスクの低さと関連することは示されていない。また透析患者のBMIは体液量によって大きく変動するため、どの時点でBMIを評価するかによって、死亡リスクとの関連性が異なる可能性がある。そこで稲垣氏らは、初回透析時のBMI、および、体液過剰が是正されたと考えられる透析開始2週間後のBMIと、全死亡のリスクとの関係を検討した。

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     同院で2013~2019年に維持血液透析を開始した20歳以上の患者284人のデータを後方視的に解析。エンドポイントは、腎移植の施行、追跡不能、または2022年2月の追跡終了までの全死亡とした。なお、追跡期間が3カ月未満の18人は解析から除外した。解析対象者266人の平均年齢は68.9±12.0歳、男性が66.5%で、54.1%は糖尿病、31.2%は心血管疾患を有していた。

     初回透析時の平均BMIは23.3±4.24で、BMI18.5未満の「低値群」が8.3%、18.5~23.9の「正常群」が55.6%、24以上の「高値群」が36.1%を占めていた。透析開始2週間後は、平均BMIが22.0±3.80であり、低値群18.4%、正常群54.9%、高値群26.7%と、全体的にBMIが低下していた。また、足浮腫を認める患者は初回が58.3%、2週間後が12.8%であり、心胸郭比は同順に、54.6±6.98%、52.4±6.57%だった。

     平均3.89±2.12年の追跡で30.1%が死亡。3年死亡率を初回透析時のBMIカテゴリー別に見ると、低値群40.4%、正常群16.4%、高値群10.5%であり、低値群は他の2群より有意に死亡率が高かった。透析開始2週間後のBMIカテゴリー別では、低値群28.5%、正常群17.7%、高値群4.5%であり、高値群は他の2群より有意に死亡率が低かった。

     次に、単変量解析によって死亡率と有意な関連が認められた因子(年齢、BMIカテゴリー、収縮期血圧、eGFR、心血管疾患の既往など)、および性別、糖尿病の影響を調整したCox回帰分析を施行。その結果、初回透析時のBMI低値群は、正常群に比べて有意に死亡リスクが高いことが示された〔ハザード比(HR)2.39(95%信頼区間1.13~5.03)〕。BMI高値群は正常群と有意差がなかった〔HR0.72(同0.40~1.29)〕。

     一方、透析開始2週間後のBMIに関しては、低値群は正常群との差が有意でなくなり〔HR1.43(同0.81~2.53)〕、高値群の死亡率は正常群より有意に低くなっていた〔HR0.38(同0.18~0.81)〕。なお、65歳以上の高齢者のみで検討すると、BMI高値群ではより大きなリスク低下が示された〔HR0.23(同0.09~0.61)〕。

     著者らは、「初回透析時のBMI低値は死亡リスクの高さと関連し、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連しており、高齢者ではこの関連が顕著だった」とまとめている。また、「体液過剰是正後のBMI高値は、高齢者や慢性疾患患者での死亡リスクの低下との関連が示唆されている筋肉量や脂肪量の多さを表していると考えられる。よって本研究の結果は、透析患者においても十分な栄養と身体活動が、予後改善に寄与する可能性を示唆している」と述べている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

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    HealthDay News 2022年10月3日
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  • COVID-19感染リスクを過小/過大評価する人の特徴――高齢日本人での検討

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患するリスクを過小評価しがちな人と、その反対に過大評価しがちな人の特徴が明らかになった。京都大学大学院医学研究科社会疫学分野の竹村優太氏らが、日本人高齢者を対象に行った調査の結果であり、詳細は「SSM – Population Health」9月号に掲載された。

     COVID-19対策には適切なリスク評価が重要であり、リスクを過小評価する楽観的認識は、予防対策の軽視による感染リスクの上昇につながりかねない。反対にリスクを過大評価する悲観的認識は、精神的ストレスによる健康上の問題につながりかねない。高齢者はCOVID-19罹患率が高く重症化しやすいため、楽観/悲観的認識に基づく予防対策の差異の影響が、より大きく現れる可能性がある。そこで竹村氏らは、日本人高齢者を対象とする調査を行い、COVID-19罹患リスクを過小/過大評価しやすい人の特徴の把握を試みた。

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     この研究は、全国の自治体が参加して行われている「日本老年学的評価研究(JAGES)」の一環として実施された。2020年11月30日~2021年2月8日に、11の市区町村から65歳以上で要介護認定を受けていない一般住民2万4,613人を無作為に抽出し、調査協力を依頼。1万8,238人(74.1%)から回答を得た。データ欠落者などを除外し、1万8,045人を解析対象とした。解析対象者の主な特徴は、平均年齢75.7±6.5歳、女性52.5%で、70%以上が何らかの慢性疾患を有しており、86.5%は日常生活に介助を必要としない自立した生活を送っていた。

     「緊急事態宣言期間中(2020年4~5月)、あなた自身が新型コロナウイルスに感染する可能性はどの程度あると感じていましたか」との質問に四者択一で回答してもらった。回答の割合は、「まったくない」が8.8%、「あまりない」37.5%、「多少ある」42.9%、「かなりある」7.1%となった(無回答など3.7%)。1つ目を選んだ人を楽観的、4つ目を選んだ人を悲観的と定義し、2つ目および3つ目を選んだ人を対照群として、多項ロジスティック回帰分析により、楽観/悲観的認識と関連のある因子を検討した。

     まず、基本的な属性との関連については、年齢が高いほど楽観的認識が強いという関連があった〔オッズ比(OR)1.05〕。ただし、年齢と悲観的認識との関連は非有意だった。性別や配偶者の有無は、楽観/悲観的認識の双方と関連がなかった。

     社会経済的要因については、教育歴が長いことは楽観的認識の弱さと関連し(OR0.72~0.76)、悲観的認識とは関連がなかった。主観的な所得の高さは楽観的認識の強さと関連し(OR1.10)、悲観的認識とは関連がなかった。有職者であることは悲観的認識の強さと関連し(OR1.81)、楽観的認識とは関連がなかった。

     自己申告による慢性疾患のうち、糖尿病患者は楽観的認識が強く(OR1.11)、心疾患患者は楽観的認識が弱かった(OR0.72)。また、呼吸器疾患患者は悲観的認識が強かった(OR1.54)。脳卒中やがんは楽観/悲観的認識ともに、有意な関連がなかった。老年期うつ病評価尺度(GDS15)で評価したうつレベルの高さは、楽観的認識の弱さ(OR0.69~0.73)、悲観的認識の強さ(OR1.37~1.91)の双方と関連していた。

     居住地域の社会的な絆の強さは悲観的認識の弱さと関連し(OR0.94)、楽観的認識とは関連がなかった。そばに相談相手がいることは楽観的認識の弱さと関連し(OR0.82)、悲観的認識とは関連がなかった。ボランティアやスポーツ、趣味などの社会参加の頻度は、楽観/悲観的認識ともに有意な関連がなかった。

     行動をとる上で最も参考にしていた情報ツールとの関連については、テレビのニュース番組を参考にしていた人は楽観的認識が弱く(OR0.79)、悲観的認識が強かった(OR1.22)。テレビの情報番組を参考にしていた人は楽観的認識が弱く(OR0.84)、悲観的認識とは関連がなかった。インターネット情報を参考にしていた人は悲観的認識が強く(OR1.22)、楽観的認識とは関連がなかった。行政から発信される情報を参考にしていた人は楽観的認識が弱く(OR0.94)、悲観的認識とは関連がなかった。医療スタッフを参考にしていた人は悲観的認識が強く(OR1.60)、楽観的認識とは関連がなかった。家族や友人の情報を参考にしたことは、楽観/悲観的認識ともに有意な関連がなかった。

     以上、一連の結果を基に著者らは、「高齢、教育歴が短い、経済的に恵まれている、および糖尿病といった因子を持つ人はCOVID-19罹患リスクを過小評価する傾向がある。これらの人に対しては、感染リスクを強調して伝えるべきかもしれない。一方、うつ傾向のある人や有職者はリスクを過大評価する傾向があり、感染予防対策をしっかり行えばあまり不安がらなくても良いといったアドバイスが必要かもしれない」とまとめている。

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